時候の挨拶とは季節感を表現する言葉で、手紙を書く際に頭語の後につなげて書きます。時候の挨拶は季節や天候、書き手の心情や送る相手との関係性などによって適宜変更する必要があります。ここでは、月ごとや送る相手との関係性別に時候の挨拶の一例をご紹介します。
時候の挨拶について
時候の挨拶とは?
時候の挨拶とは、季節に応じた心情や季節感を表現する言葉で、頭語の後に書きます。主に漢語調と口語調に分けられ、漢語調は口語調よりかしこまった印象を与えます。時候の挨拶の後には安否の挨拶が続きます。
時候の挨拶は手紙の冒頭付近に位置し、読み始めてすぐ目に付くため、そこで手紙全体の印象が決まるといっても過言ではありません。目上の方へ送る場合と、親しい方へ送る場合とで使用する時候の挨拶は異なるため、送る相手に適した表現を慎重に選びましょう。
年中使える挨拶
年中使える時候の挨拶は「時下」です。時下とは「今現在」「この頃」などの意味を持ち、季節を問わず使用できます。
例「背景 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。」
【春】時候の挨拶
3月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「春分」「春風」「春雨」「春色」「弥生」「春寒」「軽暖」「若草」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「春分の候」「春色のみぎり」「軽暖の折」
- 口語調
「春草萌えいづる季節を迎え」「春の彼岸の頃」「弥生の空美しく晴れ渡り」など
親しい方へ送る場合
「日増しに暖かくなり」「桃の蕾もふくらみ」「桜前線の待ち遠しい今日この頃」など
4月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「春暖」「春和」「春眠」「麗春」「桜花」「清和」「陽春」「桜花爛漫」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「春暖の候」「桜花のみぎり」「陽春の折」
- 口語調
「春たけなわ」「若葉萌えいづる頃」「うららかな好季節を迎え」など
親しい方へ送る場合
「春の日差しも心地よく」「春も深くなり」「おぼろ月夜の美しいこの頃」など
5月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「残春」「陽光」「万緑」「新緑」「立夏」「向暑」「葉桜」「藤花」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「残春の候」「万緑のみぎり」「向暑の折」 - 口語調
「緑照り映える時節」「風薫る五月」「牡丹の花が咲き誇り」など
親しい方へ送る場合
「初夏の風が清々しい今日この頃」「行く春が惜しまれる今日この頃」「風薫る五月となりました」など
【夏】時候の挨拶
6月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「梅雨」「長雨」「小夏」「薄暑」「入梅」「新緑」「向暑」「立夏」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「梅雨の候」「小夏のみぎり」「新緑の折」
- 口語調
「清々しい初夏を迎え」「雲の晴れ間の青空も懐かしく」「若葉青葉の候」など
親しい方へ送る場合
「雨に映える紫陽花の花も美しく」「木々の緑が目にしみる今日この頃」「梅雨明けが待ち遠しい今日この頃」など
7月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「盛夏」「猛暑」「大暑」「厳暑」「炎熱」「酷暑」「仲夏」「極暑」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「盛夏の候」「大暑のみぎり」「仲夏の折」
- 口語調
「暑気厳しき折柄」「涼風肌に心地よく」「土用の入りとなり」など
親しい方へ送る場合
「夏祭りのにぎわう頃」「垣根の朝顔も咲き始め」「暑い日が続きますが」など
8月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「残暑」「晩夏」「暮夏」「早涼」「新涼」「納涼」「初秋」「立秋」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「残暑の候」「新涼のみぎり」「立秋の折」
- 口語調
「降るような蝉しぐれ」「朝夕涼味を覚える頃」「秋風の訪れる窓」など
親しい方へ送る場合
「厳しい暑さが続いておりますが」「夜空に秋の気配を感じる頃」「涼しい季節が待ち遠しい今日この頃」など
【秋】時候の挨拶
9月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「早秋」「爽秋」「秋分」「秋涼」「秋色」「涼風」「清涼」「野分」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「爽秋の候」「秋涼のみぎり」「野分の折」
- 口語調
「秋色次第に濃く」「残暑去り難く」「爽やかな季節を迎え」など
親しい方へ送る場合
「秋風が心地よい時節となりました」「実りの秋を迎え」「秋の気配も次第に濃くなり」など
10月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「秋晴」「愁麗」「秋雨」「綿秋」「菊花」「紅葉」「涼寒」「初霜」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「愁麗の候」「紅葉のみぎり」「涼寒の折」
- 口語調
「秋色日毎に深まり」「天高く馬肥ゆる秋」「清涼の秋気身にしみて」など
親しい方へ送る場合
「さわやかな秋晴れの続く今日この頃」「木々の梢も色づいて」「小春日和のうららかな季節」など
11月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「深冷」「夜寒」「深秋」「氷雨」「残菊」「落葉」「初冬」「立冬」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「夜寒の候」「落葉のみぎり」「立冬の折」
- 口語調
「秋気いよいよ深く」「小春日和の今日この頃」「ゆく秋の感慨も深く」など
親しい方へ送る場合
「秋も一段と深まり」「鮮やかな紅葉の季節となり」「肌寒い日が続きますが」など
【冬】時候の挨拶
12月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「師走」「歳末」「初雪」「極月」「忙月」「短日」「寒気」「厳寒」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「師走の候」「初雪のみぎり」「寒気の折」
- 口語調
「寒気いよいよ厳しく」「年内余日なく」「北風すさぶ季節」など
親しい方へ送る場合
「年の瀬も押し迫ってまいりました」「星空が美しい季節となりました」「寒い日が続きますが」など
1月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「新春」「初春」「迎春」「厳寒」「極寒」「寒冷」「降雪」「冷雨」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「新春の候」「寒冷のみぎり」「降雪の折」
- 口語調
「新春を寿き」「寒気ことのほか厳しく」「初春の光さやけく」など
親しい方へ送る場合
「寒い日が続きますが」「正月気分が抜け」「星も凍るような寒い夜」など
2月の挨拶
目上の方へ送る場合
- 漢語調
「立春」「早春」「残寒」「紅梅」「節分」「向春」「春雪」「寒明け」など
漢語調を使用する場合、「候」「みぎり」「折」のいずれかを語尾につけます。
例「立春の候」「残寒のみぎり」「春雪の折」
- 口語調
「春寒ややゆるみ」「三寒四温の時節」「余寒厳しき折柄」など
親しい方へ送る場合
「春の陽気が待ち遠しい今日この頃」「いくらか寒さも緩み」「梅の便りが届く季節となりました」など
まとめ
今回は、時候の挨拶を月ごとや送る相手との関係性別にご紹介しました。時候の挨拶は頭語の後に続く言葉で、手紙を読み始めてすぐに目につく部分です。「せっかく送ったのに相手を不快にさせてしまった…」ということがないように、季節や相手との関係性に適した時候の挨拶を使用しましょう。