お盆の時期になると店先で見かけるようになる、色とりどりの砂糖菓子。
盆菓子とも呼ばれているあのお菓子の、正式名称をご存じの方はどれくらいいるでしょうか。見たことはあるけれど食べたことはない、そんな方もいるでしょう。
日本古来の盆菓子は、なぜお盆の時期にお供えされるようになったのか。
そもそもお盆はなぜ始まったのか?こちらではそんな当たり前の習わしについててまとめていきます。
意外にも意味を知らない、日本古来の文化への疑問をひもといていきましょう。
お盆の意味は?古代インドから始まったって本当?
日本で暮らしていると、幼少期よりお盆というものを身近に感じながら生活している方が大半でしょう。
場所によっては7月の13から15日、旧暦だと8月の13日から15日までの3日間を「お盆」としています。
日本では「お盆休み」なるものもあり、旧暦だと夏休みのど真ん中。
お盆休みで仕事の休日を取る方も多いので、旅行などに出かけるイメージもありますよね。
お盆の正式名称は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と言います。
それを略すようになり、「お盆」としているのでしょう。
盂蘭盆会は盂蘭盆経というお経を読むことから付けられていますが、もともとはインドから伝えられました。
インドのサンスクリット語を日本や中国では「梵語」と呼んでおり、現代でも礼拝用語として用いられています。
その梵語はサンスクリット語で「ウランバナ」という発音であるため、うらぼんえと変化したのではないかとされているのです。
盂蘭盆会をするようになったのは、まさに仏教というものができた釈迦の時代。
釈迦の弟子で神通力に優れていた目連という弟子が、自らの力で亡き母の死後世界での様子を確認した時のことでした。
その時、母が餓鬼の世界で来るんしんでいることを知ってしまいます。
心を痛めた目連はすぐさま釈迦に相談をしました。
すると釈迦は「7月15日に供養をしなさい」と目連にすすめたのです。
なぜ7月15日だったのかというと、この日はちょうど90日の間雨季修行を勤めていた僧侶たちが戻ってくる日であり、僧侶たちが会合を開く日だったのです。
釈迦はその僧侶たちをもてなし、母の魂を供養することを目連に指示しました。
僧侶たちをもてなしたという事の意味は、「徳を積む」という意味合いからかもしれません。
いずれにしても釈迦の教え通りに供養された目連の母は、無事に餓鬼の世界から救出されたというのです。
釈迦は目連の母だけのことを説いたわけではありませんでした。
誰にでも先祖はいるもの。
その魂にお供えをして供養をすれば、目連の母と同じように、苦しい世界にいる先祖を救えると説きました。
また供養をした者も、幸せになるという考え方を教えたのです。
これが現代でも伝わるお盆の由来であるとされています。
お盆に飾る盆菓子とは?
お盆になると、供える家庭が多い盆菓子。
盆菓子と聞くとわからないという方も、落雁と言えばおわかりになるでしょうか。
落雁は日本古来の和菓子の1つ。
素材はお米などのでんぷんと砂糖、水飴などを混ぜており、口に入れるととにかく甘いという印象を持つ方も多いはず。
この落雁は日本の伝統的な和菓子として、さまざまな形が作られています。
一年を通した果物や、四季を象徴する花などのカラフルな盆菓子。
盆菓子は季節により咲く花や、食す食べ物が違う日本ならではの美しさを形にしています。
お盆の時期にお供えする落雁は、大体薄桃色や白、淡いグリーンといった色合いで、蓮の花の形をしている物がほとんど。
蓮の花は、お釈迦様を表現する花として知られているためと考えられます。
そんな落雁がなぜお盆に飾られるようになったかというと、やはり先ほどご紹介したお盆の起源に関係しているのです。
釈迦の弟子の目連が母を救済するため、修行を終えた僧侶に食べ物でもてなしたという話。
それは徳を積むためともいえます。
このことから7月15日には、食べ物をお供えをするという考え方が根付いたのです。
落雁である理由は、昔砂糖などの甘いものは高級品であったからだという説が有力。
甘い落雁である盆菓子は、当時のごちそうであったのでしょう。
その甘いごちそうを供養のために供え、先祖の霊などを救済したと言われています。
お盆菓子のお供えの仕方は?
お盆にお供えをするということは知ってはいるものの、お供えの仕方を知らないとスムーズに作業が進みませんよね。
まず盆菓子をどこにお供えをするかを考えましょう。
もしも仏壇であれば、仏壇がどの様な形になっているか確認します。
多いのが上段・中断・下段にわかれている仏壇。
この場合、盆菓子は中断に供えるのが良いでしょう。
住んでいる場所によっては仏壇の中に段がなく、少し小さめのものという場合もありますよね。
そんな時でも心配することはありません。
仏壇の前にお盆用のお供え台を作れば、問題解決です。
またお盆菓子のお供えの仕方ですが、基本的に菓子類のお供えは箱から出します。
いただいたお供えをその場であげるのは失礼にあたると思う方がいらっしゃいますが、お供えはすぐに食べられる状態にすることがポイントです。
人と一緒でご先祖様なども中身が何かわからないと、食べられません。
もしも高坏を利用する場合のマナーですが、半紙を使います。
二つ折りにし、自分側へ角が向くようにしてください。
その上に箱から出した落雁をお供えするのが、基本的なマナーです。
果物などの場合も、人が食べるのと同じような状態にしましょう。
箱から出して水で洗ったら、食べやすいようにお皿などに入れてお供えをします。
ぶどうなどはそのままで良いですが、りんごなども丸のままではなく皮をむきましょう。
そこに人がいるかのようにお供えします。
乾物の場合も同じです。
茹でたり、火を通さないと食べる事ができない様な物は、食べられるようにしてからお供えをします。
例えば素麺などがその類です。
必ず茹で、おつゆなども付けてあげるのが理想的。
仏飯などと呼ばれる炊きたてのご飯もそのままお供えしますよね、その理由と同じです。
お供え物の種類、五供について
お供えにあげたい物は、故人の好きだった物などといろいろな物が思い浮かぶでしょう。
こちらでは、基本のお供えのルールについてご紹介しましょう。
お供えは五供と呼ばれているものがベースであり、香・花・灯燭・浄水・飲食がそれにあたります。
まずは香についてですが、仏壇に拝む時は線香、または抹香などを使いますよね。
これはご先祖様が香りをいただくという意味合いがあり、「香りに到達するまでの道と」という修行の意味も含まれているのです。
次が花です。
花は仏壇に飾る物の中で、最もポピュラーでイメージがつきやすいでしょう。
花の種類は故人の好きだった花や、仏花として販売されているものでも大丈夫です。
花を飾ることで、仏壇の中での仏の世界をより清らかで崇高なものにするのです。
そして灯燭。
蝋燭の火はお通夜などでも絶やさぬようにと言われていますが、火は知恵の象徴とされています。
本来はお盆の間中も蝋燭を消さない方が良いなどと言われていますが、火事などの危険もありおすすめできません。
拝む時だけにし、終わったら手で蝋燭の火を消しましょう。
さらに浄水。
これは水のことで、毎日お供えをするのが基本とされています。
もちろん仏様のお供えとして喉の渇きを潤すのと共に、拝む側の人間の心も浄化するという意味があります。
最後が飲食。
これはそのままの意味で、食べる物です。
食べる物のお供えは、日常家族が食べているものをお供えすれば問題ありません。
ただあげたらすぐに下げ、その後は食べてしまいましょう。
基本的にお供えは仏様がいただいた後は、分けて食べて良いとされています。
落雁を供えたあとの使い道は?
お盆菓子としてお供えをした落雁ですが、決してそのまま食べるお菓子ではありません。
大量に残ってしまった落雁の使い道に、困ってしまうという方もいることでしょう。
そんな方におすすめの使い道は、料理です。
落雁は砂糖やでんぷんで出来ていますので、口にしてももちろん問題ありません。
まずは全部包みを開け、紙の上に並べたら綿棒などで細かく砕きます。
その時に、落雁を色分けしておくと良いでしょう。
混ぜてしまうと、後で色を付けたくない料理の時に使いにくくなってしまいます。
まずは煮物や肉じゃがなど、甘さが引き立つ料理で使うとおいしく出来上がります。
この時はできるだけ、白い落雁を利用すると良いかもしれません。
もしピンクや緑の落雁を使う場合は、お菓子に使うのがベスト。
例えばパウンドケーキやクッキーなど、多少、落雁の着色料が混ざっても平気なものに使うのが良いですね。
クッキーなどはとくにそこまで気にならないので、使いやすいでしょう。
きれいな落雁はなるべくおいしく使い切ってしまうことをおすすめします。
まとめ
こちらでは、盆菓子の意味や供え方、使い道についてのご紹介をしてきました。
普段はそこまで考えないお盆や盆菓子の意味ですが、知っておくと次のお盆の時に便利です。
ご先祖様を供養すると同時に、自分自身も徳を積むという考え方は、仏教ならでは。
日常に仏教が密接ではない方も、お盆の時は先祖の存在を感じてみてはいかがでしょうか。