葬儀や法要の際に、香典という言葉をよく見聞きします。
でも、香典とはどんなものなのか?いつ、どうやって渡せばよいものなのか?いくら渡すべきなのか?ということを詳しく知らないという人もいるのではないでしょうか。
ここでは、最低限知っておきたい香典についてのアレコレをご紹介します。
香典とは一体どんなもの?何のために渡すの?
香典という言葉は仏式でしか使用しません。
そもそも香典とは「亡くなった人の霊前に供える、お香代わりの金銭や品物」という意味合いがあります。
香料とも呼ばれます。
香は線香などを表わしており、線香の代わりに供えるということになります。
そのため、抹香や線香で焼香をしない神道やキリスト教などの宗派では香典という言葉自体を基本的には使用しないのです。
現代の香典は、お金を不祝儀袋へ入れてお渡しするのが当たり前になっていますが、元々はお金を贈るものではありませんでした。
昔は「香奠」と表記するのが常であり、奠はお供え物という意味がありました。
そのため、故人のためを想い、香やお花を持参したのです。
でも、香は非常に高価で、庶民が気軽に買えるような代物ではありませんでしたので、お香の代わりに米や野菜などの作物を持ち寄り供えていました。
お供えをすることで、故人を弔う気持ちと、喪家の負担を減らす意味合いがありました。
集落全体で喪家の負担を減らす相互扶助の目的があるのです。
相互扶助の精神は、香典が現金に変わった現代でも続いています。
いまでも、全国各地で香典の風習があります。
例えば、鳥取などの山陰地方や九州などの一部では、米を一俵贈る「一俵香典」というものがありますし、東北地方では赤飯を持ち寄ることがあります。
赤飯と言うと御祝いのイメージがありますが、赤い小豆は魔除けになるとされ、葬儀や法要には赤飯以外にも餡子を利用した饅頭や餅などが出されることがあります。
戦後になると、品物から徐々に現金の香典を渡すようになっていきました。
香典と不祝儀は混同しないように・・・
香典と不祝儀(ぶしゅうぎ)を混同してしまう人も多いのではないでしょうか。
でも、これらは実は全く別の事を指しますので、注意が必要です。
不祝儀というのは、「めでたくないお悔み事」や「祝い事ではない状態」そのものを指し、不祝儀の際に持参する金品を入れるものを不祝儀袋と呼んでいます。
そのため、香典は不祝儀袋に入れて持参するものとです。
ちなみに、祝儀は慶事の婚礼、不祝儀は弔事の葬儀が代表です。
祝儀の場合は、「ご祝儀です」と相手に渡すことがありますが、それはめでたい事だからであり、「不祝儀です」と香典をお渡しすることはありません。
ちなみに、婚礼などお祝いの場合には、ご祝儀袋に「御祝い」「寿」などと書き、「御祝儀」とは書きません。
それと同様に、葬儀や法要の場合も「御霊前」「御仏前」「御玉串料」「御花料」などと書き、「不祝儀」とは書きません。
香典を渡すタイミングはいつ?
香典を渡すタイミングは、故人の葬儀に参列する際です。
通夜のみに参列する場合は、通夜の際に渡します。
告別式のみに参列する場合は、告別式の際に渡します。
通夜も告別式も参列する場合は、先に参列する方でお渡しするのが基本です。
ただ、地域の風習により、通夜で渡す、告別式で渡すという決まりごとがある場合もありますので、不安な時は受付に確認すると良いでしょう。
香典の渡し方には、様々な地域差があります。
例えば、長野県の一部の地域で行われている「枝義理」という香典の渡し方などです。
これは喪家ではなくその親族に香典を渡す方法です。
このように、地域により様々な風習がありますので、それに倣うのが一般的です。
通夜と告別式の両方に参列するからといって、香典を2度渡すのは「不幸が重なる」「再び不幸が起こる」という悪いイメージがありますので避けましょう。
やむを得ない状況で、通夜や告別式に参列できない場合は、香典を郵送することができます。
その際は、まず弔電を打ち、それから現金書留で香典を送ります。
現金書留は届け日や時間指定ができませんので、斎場ではなく喪主の自宅宛に送るようにします。
亡くなった日から一ヶ月以内には手元に届く様に送りますが、告別式の日は誰も受け取れない可能性が高いため、その日以降に到着するようにしましょう。
現金書留には香典袋をそのまま入れて送ります。
直接現金を入れてしまうと、なんのお金かが分からないからです。
現金書留の封筒は不祝儀袋が入るサイズになっていますので、少し厚みが出てもそのまま入れましょう。
また、香典を送る際には、白い便せんにお悔やみの言葉を記して同封すると丁寧です。
仏式の香典袋はどんなものを選べば良いの?
香典袋には様々な種類があり、一体どれを使用するべきか迷ってしまいます。
通常は、故人や葬儀の宗教・宗派によって不祝儀袋(香典袋)の使い分けをします。
もし、宗派などが分からない場合には、斎場などに確認すると詳しく教えて貰えます。
仏式の香典袋は、基本的に白地に蓮の花の絵柄が描かれたものを使用します。
白黒や双銀の水引が掛けられていますが、中には既に水引が印刷されているものもあります。
水引は結び切りのものを用います。
注意しなくてはいけないのは京都府の場合です。
京都では、宗派に限らず黄白の結びきりの水切りが掛かった袋を使用します。
黄白の水引の掛かった不祝儀袋は関西方面で主に使用されています。
豪華な水引のものは、中に入れる金額も多くしなくては釣り合いません、そのため、中身が1万円くらいまではシンプルな水引の香典袋を選びましょう。
水引が印刷されている香典袋で充分です。
仏式以外の宗教の香典は?
神道でもキリスト教でも香典に代わるものが存在します。
神道では、白無地の封筒に白黒か双白の結びきり水引を掛け、「御霊前」「御玉串料」「御榊料」などと記入します。
水引は無くても構わないとされています。
キリスト教では、白無地の封筒、または十字架や白百合が描かれた封筒を選び、双銀の結びきり水引を掛けます。
水引は必須ではありませんので、掛けなくても構いません。
表書きは「御花料」です。
カトリックでは「御ミサ料」と書く場合がありますが、葬儀や法要への参列者は「御花料」とするのが基本です。
「御ミサ料」は、正確には喪主が教会側にミサの御礼として渡すのに書かれます。
表書きの書き方は?
香典の表書きの書き方は、宗派によって少々異なりますが、基本的には「御霊前」「御香料」となっています。
「御仏前」や「御佛前」という書き方は、四十九日法要以降からの法要に使用されます。
葬儀など故人の霊が成仏する前は御霊前、成仏してからが御仏前と考えられているためです。
ただし、浄土真宗では、人が亡くなるとすぐに成仏し仏になると考えられているので、葬儀の際でも御仏前(御佛前)とします。
御霊前は使用しませんので注意が必要です。
また、京都では、宗派に関わらず御仏前(御佛前)と書きます。
上段に「御霊前」「御仏前」などを書き、氏名を下段に書くのですが、字を書く際には薄墨を使用するのが香典の基本です。
もし、間違えて記入をしてしまった場合は、修正をせずに新しい香典袋を用意して書き直しをします。
内袋には何をどう書けば良いの?
不祝儀袋には、内側に白い封筒が付いているものもあります。
その封筒のことを内袋と呼びます。
喪家が香典金額を確認する際、外の袋から内袋を出した時に、誰から貰ったものかが分からないと困ってしまいます。
そのため、内袋にも氏名と金額は間違いなく書くようにしましょう。
内袋に住所や氏名を書く欄や金額を書く欄が印刷されているものもあります。
金額は数字で書いても、漢数字で書いても良いとされています。
漢数字で書く場合は、旧字体で書くと付け足しができずに安心です。
一は壱、二は弐、三は参、千は阡、万は萬などです。
内袋に書く際も、薄墨を使用します。
内袋が無いタイプの不祝儀袋の場合は、直接現金を入れて構いません。
香典に薄墨を使う理由は?
香典に書く表書きなどの文字は、薄墨を使用するのが基本です。
「硯(すずり)の中に涙が落ちて墨が薄くなってしまった」という理由や、「悲しみから力を入れて墨を擦ることができない」、「涙で墨が滲んだ」という理由から薄墨を使用しているとされています。
現代では、薄墨にこだわらない家庭も増えていますので、普通の墨や硬筆で書いても問題ないとされつつあります。
ただ、あまり薄すぎる文字や、すぐ消えてしまいそうな文字、読めない字で書くのは失礼にあたりますので、充分注意しましょう。
中には、苗字だけ、名前だけを記入するような人も居ますが、それでは一体どこの誰なのかが分からなくて困ってしまうことが考えられます。
その点ははっきりと記すようにしましょう。
香典金額はいくら包むべき?相場は? ※表作成
香典に包む金額は、故人との関係により決まります。
故人と自分の関係性により、相場の金額があり、その相場金額は年齢によっても変わります。
通夜・葬儀のとき
仕事関係者の場合
自分との関係 |
故人 |
自分の年齢と金額相場 |
||
20代 |
30代 |
40代以降 |
||
職場の上司 |
本人 |
5千円 |
5千円~1万円 |
1万円~ |
家族 |
3千円~5千円 |
3千円~1万円 |
5千円~1万円 |
|
職場の同僚・部下 |
本人 |
5千円 |
5千円~1万円 |
1万円~ |
家族 |
3千円~5千円 |
3千円~1万円 |
3千円~1万円 |
仕事関係者の場合、連名や社長名で香典を取りまとめて出す場合がありますので、あらかじめ上司などに相談すると良いでしょう。
また、社葬が行われる場合にも香典の扱いをどのようにするか相談しましょう。
親戚、親族、友人、知人などの場合
自分との関係 |
自分の年齢と金額相場 |
|||
20代 |
30代 |
40代以降 |
|
|
祖父・祖母 |
1万円 |
1万円~3万円 |
3万円~5万円 |
|
父・母 |
3万円~10万円 |
5万円~10万円 |
10万円~ |
同居・別居ともに同額包むのが基本です。 |
義理父母 |
3万円~10万円 |
5万円~10万円 |
10万円~ |
|
兄弟姉妹 |
3万円~5万円 |
5万円 |
5万円 |
|
義理兄弟姉妹 |
3万円~5万円 |
5万円 |
5万円 |
|
おじ・おば |
1万円 |
1万円~2万円 |
1万円~3万円 |
付き合いの深さにより金額が変わります。 |
甥・姪 |
1万円~3万円 |
1万円~5万円 |
1万円~5万円 |
|
その他親族(いとこなど) |
3千円~1万円 |
3千円~2万円 |
3千円~3万円 |
|
友人・知人 |
5千円 |
5千円~1万円 |
5千円~1万円 |
|
友人の父母 |
3千円~5千円 |
3千円~1万円 |
3千円~1万円 |
友人同士で出し合う形で渡すこともあります。 |
先生や恩師 |
3千円~5千円 |
3千円~1万円 |
3千円~1万円 |
|
近隣住民など |
3千円~5千円 |
3千円~1万円 |
3千円~1万円 |
|
法要のとき
法要の時は、案内状が来て会食に出席する間柄かどうかで香典をお渡しするかどうかが決まります。
何の案内も無い場合は、敢えてお渡しする必要はありません。
自分との関係 |
自分の年齢と法要の香典相場金額 |
|||
20代 |
30代 |
40代以降 |
|
|
職場の上司 |
1千円~5千円 |
1千円~5千円 |
1千円~1万円 |
|
職場の同僚・部下 |
1千円~5千円 |
1千円~5千円 |
1千円~5千円 |
|
祖父母 |
3千円~1万円 |
3千円~3万円 |
3千円~3万円 |
同居か別居かで少々金額が変わる場合があります。 |
両親 |
1万円~5万円 |
1万円~5万円 |
1万円~10万円 |
|
兄弟姉妹 |
1万円~3万円 |
1万円~3万円 |
1万円~5万円 |
|
おじ・おば |
3千円~1万円 |
5千円~2万円 |
5千円~3万円 |
|
その他親族 |
3千円~1万円 |
5千円~1万円 |
5千円~1万円 |
|
友人・知人 |
2千円~5千円 |
3千円~1万円 |
3千円~1万円 |
|
近隣住民など |
2千円~5千円 |
2千円~5千円 |
2千円~1万円 |
|
自分の親が亡くなった場合、喪主以外の子供は香典を渡すのが一般的です。
孫などの場合は、孫一同など合同で出すことも多いため、両親に相談して決めるようにします。
夫婦で葬儀や法要に参加する場合は、香典自体は1人分で構いませんが、その後の会食に出席する場合は、その分を考慮して人数分の金額を入れます。
夫婦で会食へ参加する際は2万円~が基本です。
お金の入れ方は?決まりはあるの?
香典に入れるお札の向きは諸説あり、必ずこの入れ方という決まりはありません。
どんな入れ方でも特に失礼にあたることはないとされています。
ただ、複数枚を入れる際には全て同じ向きに揃えて入れましょう。
不祝儀袋を買うと、お札の入れ方などが載っている場合もありますので、それを参考にしても良いでしょう。
以前は、葬儀は急なことで銀行に新札を取りに行く時間はなく、新札を準備していた=死を予感していたという悪いイメージがあり、旧札のほうが良いとされていました。
でも、現代では、ATMが普及しているため新札でも問題視されなくなりました。
一番注意したいのは、お札の入れ忘れや、金額の書き間違いです。
入れたつもりが忘れてたり、内袋そのものを入れ忘れてしまったという失敗エピソードも聞かれます。
また、内袋を入れた後は、下→上の順番で重ね水引を掛けます。
結婚祝いなどで渡す祝儀袋の重ねとは逆になります。
袱紗に包むのが基本
香典は袱紗に包んで持参するのが基本です。
香典を渡す際には、折り畳んだ袱紗の上に置き、両手で差し出すようにします。
名前が相手から読める向きで渡すのが丁寧です。
受付では芳名帳を記入しますが、記入をしてから渡すのか、渡してから記入するのかはその会場により異なりますので、そこの方法に合わせましょう。
袱紗はシックな色を使用します。
明るい色は慶事用になりますので使用できません。
香典を差し出す時に掛ける言葉は?
仏式葬儀の場合は、香典をお渡しする際にお悔やみの言葉を述べます。
「ご愁傷さまです」などが一般的です。
通夜や葬儀に参列できないため、直接香典を持参する場合には、「この度はご愁傷さまです。
通夜・告別式に参列できませんので伺わせていただきました。
お忙しい中申し訳ありません。心ばかりですが、お納め下さい」と伝えます。
通夜や葬儀の受付で香典を渡す際には、「ご愁傷さまです」「お気の毒でございました」などの短めな言葉を掛けます。
葬儀後に直接持参する場合には、「この度はご愁傷さまです。
通夜・告別式に参列できず申し訳ありませんでした。
遅くなりましたが、お供えして下さい」などと渡します。
この時、「大変だと思いますが、御無理はなされないよう・・・」など相手を気遣う言葉を掛けるととても丁寧な印象を受けます。
また、法要の際に持参する香典は「仏前にお供え下さい」などと声を掛けながらお渡しします。
香典を辞退する場合は?
香典は、必ず貰わなくてはいけないという訳ではありません。
香典返しを用意したりするのも大変ですし、小規模な家族葬をしたいという場合には、香典辞退をしても構わないのです。
香典を辞退する場合は、必ず事前にお知らせしなくてはなりません。
方法としては、葬儀の案内状などに記載する、もしくは、受付の前に辞退の旨の看板などを置くというものです。
それでも持参してしまった人には、「故人に代わり、お気持ちだけ頂戴いたします」と丁寧にお断りしましょう。
香典返しは必ず必要!?
香典返しは、基本的にどの宗派でも忌明けに合わせて贈られています。
そのため、仏式では四十九日の法要が終わってから、神式なら五十日祭が終わって忌明けをしてから、報告や御礼を兼ねて贈られます。
キリスト教には忌明けという概念自体がありませんが、仏式や神式に倣って亡くなってから一か月後の召天記念日の後に贈っています。
香典返しは、頂いた香典金額の3割~5割を目安に考えられています。
地域によっては、通夜の席で香典返しを行う場合や、香典の一部を参列者へ現金で返金するような所もあります。
特殊ですがこれも香典返しの一種と言えます。