えびす講をという名前に聞き覚えのある人は多いでしょう。
えびす様というのは、日本の神様です。
七福神の一員で、右手に釣り竿を持ち、左手に鯛を抱えている姿は、もうおなじみですね。
このえびす様をお祀りして行うのが、えびす講で10月20日、または11月20日に多く行われています。
えびす講という行事は日本中、あちこちで見ることができますが、えびす様をお祀りしている神社でのお祭り、商店街が行うイベント、家庭で行う行事と地域によってその内容はさまざまです。
今回は、えびす様はどんな神様で、えびす講にはどんな意味があるのか、そして地域によってえびす講にはどんな違いがあるのかを解説していきます。
えびす様はどんな神様?「えびす講」の意味とは?いつ行われる?
えびす様は日本古来の神様で、唯一の福の神です。
えびす様と一緒に祀られることが多い、大黒天も福の神ですが、もともとはインドの戦いの神様でした。
釣り竿を持ち、鯛を抱えていることから想像できますが、えびす様は古くから漁業の神様です。
それとともに商売繁盛の願いを叶えてくれる商いの神様でもありました。
日本では旧暦の10月に各地の神様が出雲大社(島根県)に集合してしまうため、出雲以外の土地では神様が居なくなってしまいました。
そのため旧暦の10月は神無月という別名で呼ばれるほどでした。
ですが、えびす様は出雲大社に行かずに、留守を預かってくださいました。
ずっとそばに居てくださるえびす様は信用できるということで、商売をする人たちもえびす様を信仰するようになったそうです。
人々は旧暦の10月、えびす様に1年の無事を感謝して商売繁盛や、大漁、豊作を願う行事を始めました。
これがえびす講です。
講というのは、同じ信仰を持つ人々が集まってできた団体や、その団体の会合のことを意味します。
えびす様を信仰する人々が集まって行う行事なら、どんなことでもえびす講と呼べるため、日本各地にさまざまなえびす講があります。
旧暦の10月を現在の暦にあてはめて、11月20日にえびす講を行う地域も多いのです。
西日本でのえびす講は、1月10日の「十日えびす」が一般的です。
『商売繁盛で笹持って来い』の掛け声を耳にしたことのある人も多いでしょう。
このように西日本ではえびす様は、商いの神様として親しまれているため、神社などでの賑やかなえびす講が多く、露店が多く立ち並び、商店では安売りを楽しむことができます。
対して東日本ではえびす様は農業の神様を意味することが多く、家庭内で野菜や魚などの食べ物をお供えして、その年の豊作を感謝しつつ、次の年の豊作を願う行事になっています。
それでは、各地のえびす講の違いを、少し紹介したいと思います。
どこへ行くか迷う?日本各地の「えびす講」と大売り出しとの関係!
日本橋の宝田恵比寿神社を中心に、毎年10月19日と20日に行われるのが、「日本橋恵比寿講べったら市」です。
江戸時代の中頃に、えびす講にお供えするための 魚や野菜、神棚などを売る市が前日の19日に並んだのが由来です。
今では大根のべったら漬け(甘くて美味しい大根の麹漬けです)を売る露店を中心に400~500件が出店して、夜遅くまで賑わいます。
会社帰りでも十分に間に合うので、秋の夜長にぜひ出かけてみたいですね。
毎年11月23日の勤労感謝の日に長野で行われるのが、「長野えびす講煙火大会」です。
この煙火大会は、100年以上の歴史があります。
空気の澄んだ11月の花火大会は美しく、40万人もの人々が訪れるそうです。
打ち上げられる花火も1万2千発ですから、見応えも十分でしょう。
十日えびすで有名なのは兵庫県西宮市の西宮神社です。
毎年1月9日から11日まで行われますが、名物は10日の午前6時に行われる「開門神事福男選び」です。
本気の走りを見せる男性たちの姿がテレビでも取り上げられています。
高崎や甲府、広島のえびす講では、商店街やデパートでの大売り出しが行われます。
甲府の「甲府えびす講祭り」では、神輿渡御も行われます。
えびす様が納まった神輿が出るのが、見どころです。
見ているだけで、幸せな気分になれます。
えびす講の日の大売り出しにはこんな由来があります。
江戸時代、えびす講の日に、京都の遊女や商人が商売上の駆け引きで客を欺いた罪を祓い、神罰を免れようとしました。
これを「誓文払い(せいもんばらい)」といい、商人は罪滅ぼしのために、大売り出しを行うようになりました。
普段の値段は何だったのかということになりますが、これをいつしかみなが楽しみにするようになりました。
最初は西日本だけで行われていた大売り出しですが、後に全国に広まりました。
えびす様に直接関係があるわけではないのですが、大売り出しは今でもえびす講の大きな楽しみとなっています。
えびす講に出かけるなら、ぜひ買いたい!縁起物いろいろ
えびす講では福を呼ぶ縁起物として、福笹や熊手などがたくさん販売されます。
福笹には大判小判や鯛、だるまなどの縁起がよい飾りを付けて自宅に飾りますが、飾ると本当に幸せが来るような気がします。
笹といっていますが、これは孟宗竹の枝で、常に葉が青々としているため、命を生み出し続ける縁起のよい植物だとされています。
笹に付けられる縁起物の飾りは、小宝、または吉兆といい、多くの種類がありますが、それぞれにおめでたい意味が込められています。
熊手は庭の落ち葉掃きで使ったことのある人もいるでしょう。
落ち葉をかき集めるのに便利な道具ですから、福もかき集められるといわれています。
福笹や熊手のほかにも、福箕(ふくみ)や福飴が販売されています。
福箕はえびす様の顔が付いたザルです。
箕というのは、一方の口が開いたザルのことです(どじょうすくいのザルを想像してください)。
福をすくい取るという意味があるために、もともと縁起がよいとされている箕ですが、さらに縁起がよいえびす様の顔がついているので、飾るのが楽しみになりますね。
このような縁起物は値段が高いことが多いのですが(福笹の吉兆などは1つ1000円くらいするそうです。 願い事がたくさんある人は吉兆の数が増えますから、値段も高くなります)、手軽に買えて見た目もかわいいのが、福飴です。
これならお土産にもよいですね。
幸せのおすそ分けができそうです。
えびす講で購入した福笹や熊手は、次の年に神社に返納して、また新しいものを購入するとよいですよ。
そろそろ、けんちん汁が美味しい季節!家庭での「えびす講」
家庭でのえびす講では何をするのでしょうか。
昔の商家では、えびす講に合わせて売出しを行ったため、えびす講はかきいれ時でした。
忙しい1日を終えて店を早じまいした後は、神棚に祀っているえびす様の像を床の間に降ろし、お供え物をしたそうです。
野菜や魚とともに、売上帳面やそろばんなども供えたといいます。
供え物をするだけでなく、奉公人なども一緒になって盛大な宴会が催されたということです。
現在の一般家庭では(農家も含みます)、葉が付いた大根や人参(季節の根菜類)、尾頭付きの魚(どんな種類でもよいらしいです)、赤飯など(おはぎという地域もあります)をえびす様に供える地域が多いようです。
また、季節の根菜類をたっぷり使ったけんちん汁を作り、お供えする地域も多いようです。
特に東日本では、行事の度にけんちん汁を作る傾向にあり、えびす講はけんちん汁を食べる日として認識されています。
学校給食の献立にもなっているので、子どもたちの間でも、えびす講にけんちん汁というのは定着しています。
神様と同じ献立を食べられるのは、嬉しいですよね。
少し前までは一般の家庭でも、神棚のほかに台所にはえびす様と大黒様が祀られていました。
食べ物に困らないように、大漁、豊作をお願いするえびす様と大黒さまをお祀りしたのでしょう。
今は神棚もえびす様もない家庭が多いかもしれません。
神棚を今日すぐに取り付けるとか、えびす様の像を買ってくるのは難しいかもしれませんが、けんちん汁を作って家族で食べることなら、気軽にできます。
えびす講という行事があることを忘れないためにも、けんちん汁を作るのはお勧めです。
けんちん汁を作り、福笹や熊手を飾ることもできたら、最高のえびす講になりますね。
家庭でのえびす講は地味ですが、人々がその年に収穫された根菜類や新米を味わい、えびす様に感謝したことが想像できます。
また家族が揃って、ご飯を食べられる幸せを再確認できます。
自分の幸せを実感できるのが、家庭でのえびす講なのです。
まとめ
今回は、えびす様がどんな神様なのか、そして「えびす講」の意味や各地のえびす講の様子を解説しました。
以前から名前はよく聞いている神様でしたが、えびす様は貴重な日本古来の神様であることがわかりました。
しかも留守神として、いつも私たちと一緒に居てくださるのですから、親しみを感じるのも当然ですね。
日本全国にえびす講が存在するのも、納得できます。
えびす講に出かけて、福笹や熊手を買うのもよいですし、大売り出しを楽しむのもよいでしょう。
家でえびす様にけんちん汁などを供えて、家族でえびす講を楽しむのもよいですね。
秋から冬にかけて行われるえびす講、ぜひ商売繁盛、大漁、豊作を願うとともに、家族が一緒に過ごせることを感謝する機会にしてくださいね。