大切な誰かが亡くなった時、葬儀や告別式を執り行うのが通常です。告別式で棺の中に故人の持ち物や好きだった物を入れ、棺の蓋を閉めたらいよいよ最期のお別れ「出棺」です。
これでもう故人のお顔を見ることはできませんし、遺族も覚悟を決めなければなりません。しかし改めてよく考えると、出棺に関する知識があまりないという方も多いことでしょう。
今回は、出棺の意味やマナーなどを中心として、亡くなった方に対してどのようなお見送りするべきなのかについてご紹介していきます。
出棺の意味とは?棺が火葬場へ向かう「お見送り」
出棺とは、告別式の後に棺の蓋を閉め、棺が葬祭場から火葬場に向かうことをいいます。まさに文字通り「棺が出る」という意味ですね。
故人と対面する告別式を終えた後、故人が納められた棺は霊柩車などで火葬場などに向かいます。そのため出棺は「お見送り」と表現されることもあるのです。
ただこれは地域や方法によってさまざまで、亡くなった病院や自宅からそのまま火葬場に向かうことも。そのような場合、出棺した後に葬儀が執り行われることもあります。
出棺の前に棺へ入れる「別れ花」と故人ゆかりの品について
告別式の最後に出棺のアナウンスがあると、いよいよ故人のお顔を見ることができる最期の時。葬儀で飾られていた花などを崩して係の方が持ってくるので、お顔回りや体回りに置いてあげます。
この花は「別れ花」と言い、用意された花がなくなるまで近親者や友人などが飾っていきます。別れ花はたくさん入れる場合もありますが、一輪だけの場合もあり、会場やケースによって異なることを覚えておきましょう。また、故人が生前好きだった花など、入れてあげたい花を遺族が用意しておくことも可能です。
この別れ花は仏教的儀式だと思われがちですが、実は仏教によるものではありません。仏教では、命が宿る植物を切ってしまうことは「殺生」にあたってしまうため禁止行為なのです。つまり別れ花の儀式は、一般的な告別式で行われる通例ということになるでしょう。
故人のゆかりの品も入れていいのですが、
- 金属品
- ガラス製品
- 陶磁器
など燃えないものは禁止されています。
故人が大事にしていた物やメガネなどをどうしても一緒に入れてあげたいと思うかもしれませんが、規定により禁止されているものは骨壺に入れるようにしましょう。
出棺時に行う喪主による挨拶のマナーと例文
上で説明した花入れの儀などを終えたら、出棺です。出棺の際は喪主が位牌を持ち、遺族(喪主の妻が一般的)が遺影を持ちます。
男性の遺族などで棺を担ぎ、霊柩車に収めたらいよいよ最期の挨拶の時。このとき、基本的に喪主が参列者に挨拶します。ただし故人を亡くしたショックで精神的に不安定であったり、人前での挨拶が苦手な場合は代わりに遺族代表が行っても大丈夫です。
挨拶の際、遺族は参列者の方を向いて並びます。喪主、遺影を持った遺族の順に並ぶ形が一般的です。喪主が挨拶している間は、喪主代理が代わりに位牌を持ちます。
挨拶の内容は、以下のポイントを押さえるといいでしょう。
- 3分以内の挨拶
- 参列者への来ていただいたお礼
- 故人の亡くなった簡単な理由
- 故人がお世話になっていたお礼
- 変わらぬ遺族への支援
これらを踏まえて、必要な言葉を考え自分の言葉で挨拶をします。挨拶が全て終わったら遺族は深く参列者に一礼をします。
この挨拶が終わったら火葬場へ向かうことになるので、手短に済ませることが重要となります。以下に例文を挙げておきますので、参考にしてみてください。
<例文>
皆様、本日はお忙しいなかを父〇〇の葬儀・告別式にご会葬いただき、誠にありがとうございます。
父は昨日の夕刻、〇〇病院で眠るかのごとく息を引き取りました。〇〇歳という大往生で、安らかな最期でございました。
父が豊かな晩年を過ごすことができたのも、皆様のご厚情があってこそと心より感謝申し上げます。
残された私たち一同にも、生前と変わりないご厚誼を賜りますよう切にお願いいたしまして、お礼のご挨拶に代えさせていただきます。
出棺する際の服装マナーは喪服が基本
意外と詳しく知らないのが、葬儀や告別式でのマナーや服装です。告別式の中で行われることが多い出棺に関しても、細かな服装のルールがあります。
葬祭場から出棺する場合 |
喪服を着る |
自宅や寺院から出棺する場合 |
喪服を着るが、待機中はコートを羽織ってもいい |
基本的には葬儀と同じ服装なので、参列者は親族をはじめ喪服を着るのがマナー。最近は葬祭場でお葬式を行うケースが増えているので、会場の出口から霊柩車に乗せて出棺するケースが通例です。
ですが、なかには自宅や寺院から出棺することもあります。この場合も、もちろん喪服であることには変わりないのですが、会場の出口が外だった場合は寒さや暑さも感じやすいでしょう。
とくに冬場はコートがないと出棺を待つ時間も長く感じ、その後体調を崩してしまうこともありますよね。そのため出棺の待機中はコートを羽織ってもOKとされています。ただ出棺のアナウンスがかかった場合は、すぐにコートを脱ぎ喪服で待っていましょう。
天候が悪い場合も当然ありますので、天気予報をチェックしてもしも不安な場合は、傘などを用意しておくのがおすすめです。その際には柄物やカラーが派手なものは避け、できるだけ紺や黒などのものを持っていきましょう。
棺は男性6人ほどで運ぶ形が一般的
棺を運ぶのは、男性6人ほどが一般的です。係の方に促されるので指示を出されたら速やかに準備をしましょう。
地域や葬儀社によって違いもありますが、基本的に関東地方では棺の足の部分を前にし、棺の両側を男性3人ずつで持ちます。ただ関西地方では頭を前にすることが多いので、この違いは知っておきましょう。
また宗派などによっては「棺を玄関から出さない」といった決まりもあるので、不安な方はしっかり葬儀社や寺院の方に確認しておくと安心できますよ。
出棺時には静かに待機し、霊柩車に棺が収まったら出発するまで合掌して車を見送るのがマナーとなります。
出棺の儀にはなるべく立ち会うのがマナー
告別式を含めた葬儀が終わったら退出することも可能ではありますが、できるだけ出棺の場に立ち会いましょう。
やむを得ない事態があった場合でも、読経中の退出はマナー違反ですので終わるまではいるようにしてください。読経が終わったらやむ負えない場合のみ、係の方などにその旨を伝え退出をします。
出棺時に鳴るクラクションの意味には諸説あり
出棺の際、火葬場へ出発する霊柩車が「プー」と大きなクラクションを鳴らしますよね。クラクションを鳴らす理由には諸説ありますが、主に言われているものを取り上げてみましょう。
クラクションは「茶碗割り」の代用説
「あの世への道中にお腹を減らさないように」と、葬儀の際は茶碗にご飯を盛り付ける風習があります。出棺の際には「もう現世に魂が戻ってこないように」とその茶碗を割るのですが、この茶碗割りの儀式がクラクションに変化したのではないか、という説があります。
クラクションは「礼砲」の代用説
まだ遺体安置方法や火葬場などがきちんと整っていなかった時代には、船で亡くなった方は海へ流すという弔い方が慣例でした。
連れていきたいのはもちろんでしょうが、おそらく遺体を故郷まで運ぶことができず、やむを得ずこのような方法をとっていたのでしょう。
その際には最期の別れをするため汽笛を鳴らしたり、空砲を打ったといいます。このことを「礼砲」というのですが、クラクションはその代わりとも言われているのです。
クラクションは楽器や鐘の代用説
まだ寺院などでお葬式を行っていた際、出棺の時に鐘や楽器などでお別れをすることがありました。
最近は葬祭場での式が多いのであまり見かけませんが、クラクションはこの楽器などの代用であるとも言われています。
クラクションは「一番鶏」の代用説
その昔、出棺は朝一番で行うことが多かったとされています。そのため出棺時刻に鳴く一番鶏の鳴き声の代用として、クラクションが鳴るようになったという話もあります。
このように、出棺の際クラクションを鳴らす理由には諸説がありまだ解明されていません。自分にとってしっくりくる理由で故人を敬えばいいでしょう。
また、地域や状況によってはこのような違いもあります。
- 地域によってはクラクションを鳴らす習慣がない
- ケースバイケースでクラクションを鳴らすことが禁止されている
- または短くしなければいけない
いずれにせよ、出棺時のクラクションは故人が旅立つ合図であり、残された遺族や参列にとっては故人とのお別れをより実感させられるものでもあります。クラクションの音とともに、故人へのお別れと感謝の気持ちを込めて送り出したいものです。
出棺の儀で故人に敬意を込めて最期のお別れを
今回は、出棺時の意味や別れ花・服装・挨拶にまつわるマナー、クラクションを鳴らす意味、参列する場合に気を付けたいマナーについて解説しました。
知っているようで実は知らないクラクションを鳴らす理由には、知ってみると感動を覚えてしまうような説もたくさんありました。
出棺は故人との最期の別れの場でありますし、できるだけ静粛に、そして敬意の念を表して見送ってあげたいものです。
故人が死後も安らかな思いで旅立てるように、出棺前には生前の故人のエピソードをできるだけ話しながら思い出してあげてくださいね。