日本人なら日々の生活の中で、何かしら縁起物を目にする機会はあることでしょう。ご自宅でも、縁起物の飾りを置いていたりしませんか?実は縁起物と考えられているものはたくさんあり、今回ご紹介する中でも「これもそうだったの?」と思われる部分があるはずですよ。
こちらで日本のさまざまな縁起物について、ご一緒にみていきましょう。新しい発見もあり、お楽しみいただけると間違いなしです。
置物によくある動物系の縁起物!
一番よく目にするのが、動物がモチーフの縁起物かと思います。可愛らしい見た目が多く、置物に多いタイプですね。さらに縁起物の動物は種類も多岐に及びますから、ひとまずは置物に見られる動物について紹介してまいります。
●フクロウ
漢字では本来「梟」ですが、当て字で「福来郎」や「不苦労」とも表現できることから、福が来る・苦労なく生活できるように、という願掛けがされる動物です。また夜目が効く夜行性の生き物なので、夜分の災いを退けてくれる守り神として扱われることも。
●コウモリ
今でこそあまり良いイメージがないコウモリですが、実は一昔前までは縁起物とされていたんです。これは中国から伝来した考えで、「蝙蝠」の蝠の字は中国語で福の発音「フゥ」と同じであることから縁起がいいとされています。
●狸
狸がモチーフの置物は、みなさんも一度は見かけたことがあるでしょう。狸は「他抜き」と当て字され、群を抜いて繁盛できるように願が掛けられているんです。商売繁盛の縁起物ゆえに、多くのお店で狸は愛されています。災難から身を守るための笠を被ったデザインの置物が多いようですね。
●仔犬
仔犬は元気にすくすく育つ様子から、厄除け・成長祈願の願いがこめられた「犬張り子」という人形が作られました。張り子とは、枠組みに和紙を張っていき形を整える技法を用いた人形のこと。独特のニュアンスが出て、温かみを感じさせる見た目で、犬張り子は願掛けと共に可愛らしさからも愛されてきた縁起ものです。
●猫
猫で縁起物といえば、招き猫ですよね。招き猫の由来は諸説あるのですが、元になったとされる出来事ではみな「猫が人を招いていた」というシーンが出てくるようです。現在では「招く」という特徴から、商売繁盛の守り神として親しまれていますね。右手で招くとお金と福を、左手で招くと人を集めてくれるといわれています。
●猿
音の特徴から、「去る」と当てはめられ、病や不幸が去っていくように、という願掛けがされています。日光東照宮でも、有名な「見ざる聞かざる言わざる」は猿がモチーフになっていますね。
●蛙
蛙は雨になると出てくる生き物ですから、「雨を呼ぶ」として昔から豊作の象徴でした。その他にも、卵を多く産むことから子宝の縁起物とされていたり、その名前から「帰る、変える、返る」と当て字され、「福が返ってくる」という願掛けもされてきたそうです。蛙自身には荷が重いかもしれませんが、さまざまな願いの表れの縁起物とされてきたんですね。
●ヘビ
よく「ヘビを見ると良いことがある」と言われますよね。縁起物として名高いヘビですが、何故縁起がいいとされているのでしょうか。まず一つ目の理由が、「巳」という漢字の形に隠されています。巳のルーツは胎児が丸まっている様子からきており、そのため「誕生=未来の象徴」と考えられているのです。
二つ目の理由は、脱皮をする生物ということに関係します。脱皮をして新しい体に生まれ変わることから永遠の象徴ともされ、古くから縁起がいい言われています。神として祀る風習がある地域も中にはありますね。
着物などの柄にも縁起物が!?
古くから縁起物は大切にされてきたものですから、もちろん着物や手ぬぐいなどの柄としても親しまれてきました。先ほどご紹介しなかった動物もよくデザインされていたようです。どんな柄にどういった願いや意味が込められているのか、こちらでみていきましょう。
●鶴
縁起がいいとされ、昔から親しまれている鳥ですね。動物にしては長い、平均20~30年という寿命から、長寿の象徴としても知られています。さらに鶴は一度つがいになると一生添い遂げる習性があるため、夫婦円満の象徴でもあるんですよ。
●亀
亀全体の姿はもとより、甲羅の亀甲紋も模様として人気が高い動物ですね。鶴と同様長寿のシンボルとされていますが、確かに種類によっては100年以上生きる亀もいるようなので、人間より長生きする生き物といえますね。長寿という縁起のよさに加え、甲羅模様が六角形であることから、亀甲紋には「縁起が六方向(各方面)に及ぶように」という願いもこめられています。
●鳳凰
中国から伝来した考え方で、「世界が平和になった際に舞い降りる幻の鳥」とされている伝説上の生き物です。平和の象徴であることから、円満な関係性を築くことができるようにと願掛けがされています。
●オシドリ
「オシドリ夫婦」と聞いたことがあるかと思いますが、雄雌の仲がいい鳥と考えられているため、婚礼の際に好まれる縁起物です。羽の色が美しいため、オシドリの姿をあしらった着物もあるんですよ。現在では研究が進み、「実はオシドリはそこまで仲睦まじくない」ということが判明していますが、古くから縁起物とされていたので、願いを込めているという形としては今でもその地位を失ってはいません。
●オウム
古くは奈良時代の着物にも見られる模様です。ペルシャから中国経由で伝来したので、昔の日本でも知られていた鳥なんですね。人の声を真似る賢さを備えた鳥であり、また、つがいで子育てする様子から夫婦円満の象徴としても考えられています。
●鈴
古くから儀式の際に用いる神聖な楽器であった鈴は、邪気を払い魔除けの効果がある音色を出すと考えられていました。可愛らしい見た目から、縁起物の模様としても人気の柄です。
●釘抜(くぎぬき)
菱形の中に丸が描かれた模様です。打ち込まれた釘を抜く道具の名前であり、「苦を抜く」という語呂合わせから、釘抜模様は武家に好まれて用いられてきました。
●糸巻
有名なアニメーションからのイメージで、糸巻は良くないものと捉えられがちですが、日本では昔から長寿の象徴として縁起がいいとされていました。巻いた糸は長くのび続くことから考えられたことですね。
●扇
末広がりの形をしていることから、扇の模様は縁起がいいと考えられています。「徐々に広がっていく=将来の発展」を表したものということですね。
●矢絣(やがすり)
矢の模様が連続して続いている柄です。放った矢は戻ってこないことから、「出戻りしない」ということで、嫁入り道具の中に矢絣柄の着物や手ぬぐいを持たせていたようですよ。
●紗綾形(さあやがた)
卍の形を崩し連ねた模様で、途切れずに続く模様であることから「繁栄、長寿」の象徴として縁起がいいと考えられてきました。
ご存知のものも多い!?縁起のいい食べ物
お正月や試験前などに食卓に並ぶお料理は、縁起物の食材を使用していることが多いかと思います。後ほどご説明しますが、分かりやすいところでは鯛が有名ですよね。その他にも多くの縁起物食材がありますので、確認していきましょう。「食べたことはあるけど縁起物とは知らなかった」と思われる食べ物もあるかもしれませんよ。
●鯛
「おめでたい(鯛)」という当て字もでき、また赤色は邪気を払う色として考えられていたため、古くから縁起物として親しまれてきた食材です。
●カツオ
戦国時代に起源をもつ縁起物。「勝つ男」という当て字から武士に好まれる魚となりました。また鰹節に加工されても縁起がいいとされ、こちらは断面の模様が松の木(一年を通して枯れない木であるため、縁起物とされる)に似ていることや、二つ並べると亀甲模様に見えることから縁起物として考えられています。
●ブリ
成長するとともに名前を変えて呼ばれる「出生魚」という点から、繁栄の願いをこめた縁起物として親しまれている食材です。お正月のおせちに入れられることもある魚ですね。
●アワビ
現代でもお高いイメージのある食材ですが、昔から同じように高価な食材でありました。薬としての効用もあると考えられ、不老長寿に効く効能があるということで、縁起がいいとされたようですよ。
●カニ
水族館の水槽で目にすることもありますから、カニは水中でしか生きられないとお考えの方も多いはず。しかしカニは水陸どちらでも生息でき、生命力が大変強い生き物です。また脱皮をして生まれ変わる様子や茹でた際には邪を払う赤に染まることからも、縁起がいい生き物と考えられていました。
●海老
海老は背中が曲がったような姿をしていますね。そのことから「背が曲がるまで長生きできるように」という願いが込められた食材なんですよ。昔は農作業に従事する方が多く、年をとるごとに腰が曲がっていく傾向にあったためですね。
●昆布
実は昆布は縁起物。昆布と書いて「えびすめ」と読まれ、七福神の恵比寿様の名前が入っていることから縁起がいいと考えられてきました。また「よろこ(ん)ぶ」という語呂ができるのも縁起物とされる理由の一つです。
●小豆
「お祝い事にはお赤飯」という意識がみなさんにもあるかと思います。小豆は古くから縁起物とされてきましたが、起源はお供え物として作られていた赤米とも言われています。朱色は邪気を払う神聖な色ですから、お赤飯の見た目からも縁起がいいとされていたのでしょう。
贈り物に選ぶなら、どんなものがぴったり?
縁起物といえばもちろん、贈り物にもよく選ばれる品ですよね。お祝い事に贈るなら特に、受け取り手の幸福を願ったものにしたいですから、相手にも気持ちが伝わるような、縁起のいい品にしたいものです。今までご紹介してきた縁起物の中からシーン別で代表的な縁起物ギフトをまとめてみましたので、ぜひ参考にしてみてください。
●結婚のお祝いに
ご友人が結婚した時に何か贈り物をするとすれば、オウムや鶴がモチーフの品を選んではいかがでしょう。どちらも夫婦仲が良い鳥ですし、色味も柄も素敵なギフトがたくさん見つかりそうですよね。新婚さんはお箸などを贈られることも多いでしょうから、あえて雑貨類を選ぶことで被らず使ってもらえる贈り物になるかと思います。
●新生活のスタートに
新しいことにチャレンジする方へ贈るなら、扇や鈴柄のギフトがぴったりでしょう。末広がりの形で未来へ向かうことへのエールをこめられますし、鈴は可愛らしい見た目の柄が多いので、プレゼントにも素敵な商品が見つかりやすいと思います。鈴柄のギフトでは良くないことを退け、快活なスタートを切って欲しいという願掛けもできますね。
●両親への日頃の感謝を込めて
ご両親やお世話になった方への贈り物には、フクロウがモチーフのギフトがいいでしょう。何かと物騒な世の中ですし、気をつけてくださいね、という気持ちをこめることができ、また労わりの意味も持たせることができます。フクロウの置物は守り神として玄関先に飾られますし、お相手がお持ちでないのなら素敵な飾りを選んでみてはいかがでしょうか。
家にある縁起物、処分したい時はどうすれば?
使用するにつれ、縁起物とはいえ経年劣化もしていきますし、時には落としてしまうといったこともあるでしょう。壊れてしまったり古くなったので買い替えたい、そんな時に縁起物の処分はどうしたらいいか不安になってしまいますよね。縁起物の処分はどうすればいいのかについて、こちらで確認しておきましょう。
●お清めをしてから処分しましょう
飾りや人形などは、物とはいえ捨てにくいものの一つですよね。縁起物や願いのこもった物を捨てる際は、以下の手順でお清めをしてから処分するといいですよ。ダルマやお守りなど、特定のイベント事や場所で求めたものについては、各々別の処分方法や奉納方法がありますので注意してくださいね。
- 処分したい縁起物より大きめの新聞紙や紙、もしくは白い布を用意する
- 「1」の上に処分したいものを置く
- 塩を小皿などに入れ用意する
- 感謝の念をこめながら、塩を左→右→中央という順になるよう振りかけ、お清めをする
- その後「1」に包んで、家庭ごみとして分別し処分する
まとめ
縁起物について各種ご紹介してきましたが、たくさんの種類や願いがあることがお分かりいただけたかと思います。置物だけでなく、普段使いするような手ぬぐいに至っても縁起のいい柄が使用されていたりと、驚かれる点も多々あったのではないでしょうか。
生活の中で散りばめられた縁起物は、ギフト選びのお役にも立つはずですから、贈り物をする際はぜひこちらを参考にしてみてくださいね。