日本では、「乳歯が抜けたら投げる」という話を聞いたことがある人が多いでしょう。
昔から各家庭で大切に言い伝えられているジンクスで、実際に歯を投げた経験を持つ人もいるのではないでしょうか?歯を投げることにどんな意味があるのでしょうか?ここでは、そんな抜けた乳歯を投げるということについて詳しく調べてみました。
歯を投げるのは何故?
人間は、子供の頃に乳歯が抜け、生え替わり、永久歯へとなります。
乳歯はおよそ5歳前後から徐々に抜け始め、新しい歯へと変わって行くのですが、日本では昔から「抜けた歯を投げる」という言い伝えや風習が広く浸透しています。
これには、「健やかな歯が育ちますように」という願いが込められており、下の歯は上に向かい伸びてくるようにという意味を込め屋根の上へ投げ、上の歯は床の下に放ったり、床下の土に埋めるなどしていました。
乳歯が抜けるということは、人間であれば全ての人が経験する、いわば通過儀礼であり、日本だけでなく世界中でさまざまな迷信が言い伝えられています。
歯を投げる由来や意味は?
歯を投げるのにはどんな由来や意味があるのでしょうか?
昔から歯は、古い歯に向かって伸びると信じられていました。
その迷信から伸びて欲しいと願う方向へ歯を投げるというジンクスが生まれたのです。
真っすぐで丈夫な永久歯が生えるように願いを込めて歯を投げるのですが、その投げ方は地域によっても違います。
同じ日本でも、投げる際の掛け声が異なっていたり、投げる歯の上下が逆の場合もあります。
どんな投げ方であっても、「子供に丈夫な良い歯が生えるように」という大人の願いが込められています。
子供の歯は健やかな成長に欠かせないものであり、生涯永久歯を使わなくてはなりません。
歯は大切なものだということを子供自身に伝えるという意味も込められているのです。
また、子供にとって今まであった歯が抜けるということは、非常に怖いことのように感じられてしまうものです。
「次にもっと丈夫な歯が生えて来るよ」といいながら投げることで、その恐怖心を和らげる目的もあるのでしょう。
このように、手段は違えども、世界中で良い歯が生えるよう願われているのです。
歯を投げる方法は?
歯を投げる場合、その方法を気にする人もいるかもしれません。
昔から、抜けた乳歯の反対側(上の歯は下へ、下の歯は上へ)に投げるのが一般的です。
しかし、地域によっては上の歯は上、下の歯は下と同方向へ投げる場合もみられます。
抜けた歯に関する迷信は色々あり、必ずこうしなくてはならないというものではないため、自分の信じる投げ方をすれば良いのです。
また、投げる際に「ネズミの歯と替えて」など掛け声と共に投げることが多い様です。
昔は縁側から投げましたが、近年では縁側のある家も少なくなり、窓から投げることが増えました。
ネズミの歯は強い?
歯を投げる際、「ネズミの歯と替えて」「ネズミの歯みたいに丈夫に」と願うことが多いものです。
でも、何故ネズミの歯なのでしょうか。
ネズミの歯は次から次へと真っすぐ伸びる強い歯であるため、それにあやかって強く丈夫な歯になるよう願いを込めているのです。
日本では主にネズミ、スズメのようにと願うのですが、世界では小鳥、カラス、お月さま、太陽、妖精などさまざまなものに祈っています。
欧米では抜けた歯をどうしてる?
欧米ではトゥースフェアリーという妖精の迷信が広く信じられています。
この妖精は、綺麗な乳歯を集めにくると言われています。
抜けた歯を枕の下に入れて寝ると、夜中にトゥースフェアリーという妖精が来て、歯を持っていく代わりにコインやプレゼントをくれるというものです。
この妖精は綺麗な歯でないと交換しれくれないと言われているため、幼い頃から綺麗な歯を保つために歯磨きを頑張る子も多いのです。
歯磨きの大切さも同時に教えられるため、非常に良いジンクスといえます。
同じ欧米の中でも、抜けた歯を木の下に埋める地域もあれば、抜けた乳歯をパンなどに埋め込み、雌犬に食べさせて良い歯が生えることを祈る地域もあります。
そのため、全てがトゥースフェアリーの儀式を行っている訳ではありません。
その他の国の言い伝え
欧米のトゥースフェアリーは有名ですが、その他の国でもさまざまな言い伝えがあります。
コスタリカ・・・母親が抜けた歯を使いアクセサリーを作りプレゼントする。
ボツワナ・・・お月様に新しい歯をくれるように祈り、抜けた歯を屋根へ投げる。
トルコ・・・子供のなりたい職業やなってほしい職業などに関係ある土地に抜けた歯を埋める。
エジプト・・・抜けた乳歯を綿に包み、太陽に向かい投げる。
シリア、サウジアラビア・・・窓から太陽に向けて投げる。
フランス・・・抜けた歯を枕の下に置いて寝ると、ネズミがコインに変えてくれる。
韓国・・・カラスに新しい歯を持ってくるよう願い、屋根に投げる。
中国・・・上の歯は布団の下、下の歯は屋根に置く。
ロシア・・・地面のネズミの巣穴へ抜けた歯を落とす。
スウェーデン・・・コップに抜けた歯と水を入れて置いておくとコインやプレゼントに変わる。
ドイツ・・・特に何もしない。
このようにさまざまなジンクスがあり、日本と同様、歯を投げたり埋めたりする国もあります。
抜けた歯を使い、イヤリングやペンダント、ブローチなどのアクセサリーを作るのは、日本でも行われています。
抜けた歯を保管する場合は?
近年の日本では、マンションや賃貸アパートで暮らす家族も増え、歯を投げたり埋めたりする事に抵抗を感じる人も多くなりました。
確かに、いつ引っ越すかもわからない場所に我が子の歯を埋めたり、マンションの共用部分に歯を転がしておくのは現実的ではないと言えます。
そこで、抜けた乳歯を保管するという家庭も増え、歯を保管するための容器の販売も行われるようになりました。
歯を保管する容器は、陶器製のもの、プラスチック製のもの、木製のものなどさまざまなデザインや材質で存在しますが、中でも一番おすすめなのが桐の箱です。
湿度の高い日本では、湿気対策が一番重要です。
保管を間違えると、カビだらけで捨てなくてはいけない場合も出てきてしまいます。
桐は着物や衣類、へその緒など日本で古くから保管する箱に使用されてきました。
桐には、除湿効果や抗菌、防臭効果も備わっており、保管にはうってつけの素材なのです。
桐の箱のトゥースケースにもさまざまなものがありますが、歯列ごとに並ぶケースが後々見返す際にも分かりやすくておすすめです。
また、歯を保管する際に、オキシドールなどの消毒剤で拭いてから仕舞うという家庭もあるようです。
再生医療で役立つかもしれない
前述のように、近頃では抜けた乳歯を投げるということが難しい時代になっています。
だからといって、歯をゴミにしたりするのも気が引けます。
そう考えた時に、おすすめしたいのが、歯髄細胞バンクです。
抜けた歯を取っておく事で、将来の再生医療に役立つかもしれないのです。
日本では、歯科で歯を抜いてもらうと専用ケースに入れて渡してくれるところが多く、持ち帰れます。
それらを利用し、登録することが可能です。
歯髄細胞バンクとは?
献血ならぬ献歯を行える歯髄細胞バンクは、近年再生医療の分野で注目されています。
登録方法には2通りあり、自分自身や血縁者が再生医療の必要な病気を患った時の備えに保管してもらう有料のものと、再生医療の研究などのために無償で献歯として提供するものです。
どちらにしても、歯髄の幹細胞を採取し利用します。
もちろん、永久歯でも登録は可能ですが、乳歯や親知らずなど自然に抜けるものや抜いても問題のない歯を利用すると一番負担が軽く良い方法といえます。
また、虫歯菌に冒されていない若い歯の方が採取しやすい傾向にあるため、登録には一部年齢制限が設けられている様です。
誰かの抜けた歯が誰かの命を助けると考えると、無駄にはできない気持ちになりますね。
歯を投げることにも保管しておく事にも抵抗があるのならば、バンクへの保管や提供をしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
日本では抜けた乳歯を投げたり埋めたりする風習が昔からありますが、実は世界中に抜けた乳歯に関するジンクスがあります。
その全てが子供の健やかな歯の成長を願って行われているあたたかな風習です。
近年では、マンションや借家住まいも増え、歯を投げる風習自体を知らないと言う大人も多くなってきました。
抜けた歯を当たり前のように保管したり、場合によっては歯髄細胞バンクという最先端医療の研究に寄附するという家庭も増えてきました。
歯を投げても、保管しても、寄付しても子供の未来を思うことには違いありません。