小豆粥という料理の名を耳にしたことはありますか?
現代の人はあまりお粥自体を食べる習慣がない方も多いかもしれませんが、昔の日本では消化が良く、食べやすい粥はさまざまななところで食されていました。
また日本人は小豆に特別な思い入れがあり、お祝いなどの節目には口にすることも。
それでは、一体小豆粥とはどのような意味から食されるようになり、どのような味わいなのでしょうか。
こちらでは小豆粥が日本人に身近である理由とともに、作り方や歴史などをご紹介していきます。
小豆粥が食べられようになった背景とは?
小豆と聞くと、多くの方が真っ先に思い浮かべるのが「おしるこ」ではないでしょうか?
最近では小豆のアイスや、甘未などが、おしゃれな見た目で売り出されているのを良く見かけます。
小豆のスイーツは見た目の華やかさはないものの、安定した味わいと食感が日本人に愛されてきた理由です。
そんな小豆がお粥として食べられているとか。
現代で小豆粥はそこまでメジャーな食べ物ではありませんが、昔はとても重要な食べ物だと考えられていました。
そもそも小豆の使った料理は、神様に差し上げるお供え物としても知られているところ。
また小豆自体に邪気を払うという意味があり、農家などの豊作を願ったり、家族の健康を願うために食べられていたといいます。
現代でも七五三やお宮参りなどの慶事にお赤飯が出されることが多いのは、小豆を使ったお赤飯にはお祝いという特別な意味があるからです。
そもそもなぜお粥と小豆を混ぜようと思ったのでしょうか。
このお粥の文化は中国から伝来しました。
新年をお祝いする文化は日本だけではなく、世界中にあります。
特に中国ではお正月のお祝いの後に、お粥を食べるという風習があるのだそう。
これには「人日の節句」が関係すると言われています。
中国では新年が開けると数日間、毎日違う動物で占いをしていました。
占いの対象になっていた動物には、その日1日優しく接し、殺すことも禁止されていたそう。
実はこの占い行事の最後に占っていたのが、人間だったのです。
そのため人間にも優しくするようにとの理由から、「この日は身体を休める」などの意味合いを含めているとか。
これらの中国の風習が日本に伝わり、食文化として定着したのが胃を休める「七草粥」というわけなのです。
この七草粥と同じように中国から伝わったのが小豆粥でした。
小豆粥はいつ食べるのが正解?
気になる小豆粥をいつ食べるかという問題。
日本の旧暦で1月15日になると、「小正月」というお祝いをしていました。
これは太陽が満月になる日だったからという理由があります。
昔の中国や日本では満月を神聖なものと崇め、新年最初の15日で満月の日を「元旦」としていました。
それが明治5年に新暦を採用したことで、1日を元旦とすることに。
このことから現代でお正月と呼ばれる期間を「大正月」、それに対し15日を「小正月」と区別して呼ぶようになりました。
通常大正月は新年や年神様を家族で祝うことに意味を持ちますが、小正月はそうではありません。
小豆粥はこの小正月に食べる習慣を持っているのですが、主に農家の豊作や厄払いの意味合いのために各家庭で食されたとか。
つまり新年を喜ぶというよりは、生活に密着した厄を払うというものだったのですね。
小豆粥はその名の通りお粥と小豆を混ぜた料理ですが、この仕上がりによって「その年がどの様な1年になるかどうか」を占う人もいたそう。
小豆の色は邪気払いの意味もあり、おめでたい時はもちろんですが、健康や長寿などの祈願にも用いられていたのでしょう。
お馴染の小豆粥の作り方は?
小豆粥を知ってはいても、作り方を知っている方は少ないかもしれません。
そもそも小正月の伝統を、今でもしっかりやっているという家庭もそこまでいないでしょう。
小豆自体を家庭で作ることが少なくなった現代で、ぜひ小豆粥を作ってみてはいかがでしょうか。
こちらでは基本的な小豆粥の作り方をご紹介します。
材料(4人分)
- 米 1合ほど・小豆を事前に煮ておいた煮汁
- 小豆 60~70g
- 小豆を十分な水に入れて、煮立たせます。
- 煮立ったらその煮汁は一度捨てましょう。
- 小豆が箸で触って柔らかいと感じるまで中火で煮ます。
- 十分だと感じたら小豆を取り出し、別にしておきます。
- この煮汁の中に米を入れ煮立たせます。
- ある程度のところで、小豆を入れて混ぜましょう。
- お好みで塩・餅を入れます。
こちらは一番オーソドックスな小豆粥の作り方になりますが、他にもお米と小豆の煮汁に小豆とお塩を適量入れて炊飯器で炊く方法も簡単でおすすめです。
また時間がない方は小豆缶を利用するのも、手間を取らないと人気。
あまりに作り方が難しくて細部にまでこりすぎていると、それだけで疲れてしまいますよね。
まずは伝統的な小豆粥を、いかに楽な作り方で準備するかも重要なポイントとなるでしょう。
小豆粥のアレンジレシピを知りたい!
小豆粥の美味しさは、口あたりが良くほんのり残る甘さ。
それに何よりも体に優しいのが魅力ですよね。
ただし普段小豆を食べ慣れていない人や、若い世代の方にはお粥で食べるということに抵抗がある方もいるかもしれません。
そんな方におすすめの、小豆粥アレンジレシピをご紹介しましょう。
通常の小豆粥は水で作るレシピが主流です。
このお粥を作る水自体を、豆乳に変えてみましょう。
豆乳は女性の間で豆乳鍋という料理が流行るほど注目されている材料の1つで、牛乳よりもまろやかであることから汁物やお粥を作る時にも重宝します。
また豆乳粥などは体を芯から温め、冷え性改善につながるとの話も。
ただでさえ胃に優しい豆乳をお粥に利用するのですから、もちろん体に良いのは当然かもしれません。
次におすすめなのが白米を玄米に変えるレシピです。
玄米は昔から健康的な穀物であることが知られていますが、お米の様にただ炊飯器にかけるだけでは粒が硬く消化に良くないとか。
せっかく体に良い素材なのに、胃を痛めたら勿体ないですよね。
そこでおすすめなのがお粥にすることです。
お米を事前に1時間ほど水に浸けて置くと、より柔らかくなるのでおすすめ。
またそのままの小豆を利用するのが苦手だという方には、粒あんの様にペースト状にした小豆をお粥に混ぜるのはいかがでしょうか。
これならおはぎの様な甘さがほんのり口に残り、おやつ感覚でいただくこともできます。
その他にもサツマイモを混ぜたり、栗を混ぜるの小豆粥も人気。
どろっとした歯ごたえが好みではないという方には、サイコロの形にカットして事前に蒸かしておいた小さなサツマイモを上に乗せるのも良いでしょう。
口当たりがまろやかなお粥ですが、その中にしっかりサツマイモのボリュームを感じる事ができます。
小正月には小豆粥以外に餅を食べる?
悪霊払いや、その年の農作物の出来栄えを願った小正月には、厄払いとして小豆粥を食べる習慣があることはお話ししました。
それ以外にも小正月に餅を食べるという方もいるとか。
正月飾りの繭玉をご存知でしょうか?実は赤や白の可愛らしい小さな玉を飾る繭玉には、お餅がついているのです。
大正月で飾った飾りはそのままにしておかず、松の内まで。
その後は15日前後に正月飾りを全部燃やしてしまいます。
昔の日本でこの正月飾りを燃やすことは神様にまつわる行事として行われていましたが、現代では深い意味をもたず「どんど焼き」という1つのイベント事とされてることがほとんど。
どんど焼きは野原や空いている土地に薪が櫓の様に組まれ、そこで正月飾りが燃やされ火が大きく上がるのを見ます。
そこでおただ見るだけではなく、ここで繭玉についているお餅を焼き一緒に食べるということが多いとされているのです。
地域や人によっては串に刺した団子を食べる場所もありますが、一番オーソドックスなのはお餅。
実は小豆粥にもお餅を入れる文化が残っています。
お粥自体炭水化物なのにお餅を入れるの?と驚かれる方もいることでしょう。
おそらく小豆粥にお餅を入れる料理の仕方は、どんど焼きから来ているものと思われます。
このどんど焼きの名前の由来は諸説ありますが、正月飾りを燃やしている火の燃える様子を見た人々が「尊や尊」と言ったことから始まったとか。
言葉の響きが段々と変わり、「どんど焼き」などの言い方に変わったのかもしれません。
日本の歴史と食文化が、どの様に紐づいているかがよくわかりますね。
まとめ
こちらでは日本で昔から食されている、小豆粥についてお話ししてきました。
独特な味わいがある小豆と、消化に良い粥を混ぜることで邪気払いなどをしたという歴史を見ると、昔の人々がどのように過ごしてきたかが理解できそうですよね。
農作物などの収穫や正月飾りを燃やす際にも、神行事として行ってきた日本。
まだまだ知らない賢者の知恵が眠っていそうです。
ぜひ日本の風土に合った文化や考え方を学び、今だからこそ知りえる歴史の面白みを実感してみてください。