10月の半ばになると「そろそろ栗名月ですね」といった会話が聞こえてきます。
意味や由来を知らない人からすると、栗名月とはいつのことなのか何なのかまったくわからないですよね。
名前からして和菓子のこと?と思う人も多いのではないでしょうか。
栗名月と並んでよく聞くのが、芋名月という言葉です。
ふたつの意味は、どのように異なるのかも気になりますよね。
今回は栗名月の意味や由来について時期や芋名月との違い、和菓子の情報も詳しくご紹介していきます。
栗名月の意味と名前の由来について
栗名月と聞くと真っ先に和菓子が思い浮かんできますが、本来の意味や名前の由来は何なのでしょうか。
栗名月の説明をする前に「中秋の名月」はご存知ですか?中秋の名月とは「十五夜」のことで、旧暦の8月15日にキレイな満月が見えたことから名付けられました。
中秋の名月の次にキレイな月が見られるのが、旧暦の9月13日です。
十五夜に続いて十三夜が、秋に月がキレイに見える日という意味があり有名なんですね。
十五夜には月見団子をお供えするのが一般的ですが、十三夜には収穫時期を過ぎた栗や豆をお供えします。
栗や豆がたくさん収穫できたことを祝い、感謝するために栗名月があるのですね。
名前の由来としては栗をお供えしたことから、十三夜を「栗名月」と呼んでいるのです。
豆もお供えされることから「豆名月」とも呼ばれます。
中秋の名月から後の時期に月がキレイに見えることから「後の月(のちのつき)」とも呼ばれることがあります。
栗名月とはいつのこと?
栗名月は、具体的にいつのことを言うのでしょうか。
十五夜は旧暦の8月15日、現代では9月中にあります。
栗名月と呼ばれる十三夜は旧暦の9月13日、現代では10月中になるのです。
栗名月の時期は十五夜の約1カ月後ということですが、年によって日にちが異なります。
2018年の十五夜・中秋の名月は9月24日で、十三夜・栗名月は10月21日でした。
2019年は十五夜・中秋の名月は9月13日で、十三夜・栗名月は10月11日となっています。
十五夜はキレイな月を見るためにお月見イベントなども各地で開催されていますが、例年のように十五夜は天気に恵まれないことが多いです。
一方で栗名月はすがすがしい天気に恵まれることが多く、十五夜よりも美しい月が見られる可能性が高い傾向にあります。
晴天の日が多いことから「十三夜に曇りなし」ともいわれるほど。
一年で一番キレイな月を見ることができるとは、秋は贅沢な季節ですね。
栗名月と芋名月の違いは?
栗名月と似たような言葉に、芋名月があります。
ふたつの言葉は似ているようで、実は異なる意味を持っているのです。
芋名月とはどんな日なのか、どんな違いがあるのかを詳しく見ていきましょう。
①日にちが異なる
栗名月が十三夜で10月なのに対して、芋名月は十五夜のことで栗名月よりも1カ月早い9月なのです。
芋名月は旧暦8月15日、栗名月は旧暦9月13日なのでそれぞれ十五夜と十三夜という名前で呼ばれています。
②お供えするものが違う
芋名月と栗名月という名前の通り、十五夜には9月に収穫される里芋などをお供えしたことから「芋名月」と呼ばれているのです。
同じく栗名月も10月に収穫できる栗をお供えしたことから名前がつきました。
栗名月は栗だけでなく豆も収穫の時期を迎えることから「豆名月」とも呼ばれています。
③伝わった由来が違う
芋名月である十五夜は、平安時代に中国から「キレイな月を見て楽しむ」という文化が伝わりました。
一方で栗名月である十三夜は、日本で生まれた文化なのです。
10月は穀物などの収穫があり、五穀豊穣を祝う時期と重なったことから生まれたとされています。
単にキレイな月を楽しむだけではなく、お祝いも兼ねているところが日本らしいですよね。
④実は満ちていない?
芋名月の十五夜といえば「中秋の名月」と呼ばれるように、非常に大きくてキレイな満月を拝むことができます。
年によっては満月でない場合もありますが、ほんの少しだけでほぼ満月に見えるものです。
栗名月も同じように満月なのかと思われがちですが、十三夜の場合は明らかに満月から欠けているのが特徴です。
栗名月という限りでは、昔から「あと少しで満月になる」というある意味未熟な状態が美しいとされてきたのですね。
日本人の美的センスとして、完璧なものよりも限りなく完璧に近い不完全が良いというのもわかる気がします。
栗名月にすることとは?
栗名月にぜひしたいことは、どんなことがあるのでしょうか。
お供えしたいものや食べ物、縁起に関することなどを見ていきましょう。
①栗名月でお供えしたいもの
栗名月でお供えするものとして、一番に思い浮かぶのは月見団子ですよね。
月見団子は何個お供えしたら良いのかというと、簡単に十三夜は13個で十五夜は15個という考え方があります。
他にも普段は12個の月見団子をお供えするけれど、4年に1度ある閏年には13個お供えするという考え方もあるのです。
月見団子以外の食べ物としては、栗名月というだけあって栗や枝豆といった収穫時期の合ったものを供えます。
柿などの季節の果物やお月見に欠かせないススキに、お神酒をお供えしてお月見が終わったらみんなでお団子を食べると良いですね。
②栗名月で縁起の悪いこと
栗名月で縁起の悪いことなんてあるの?と思いますが、実は芋名月(十五夜)と深い関係があるのです。
芋名月と栗名月はセットになっているので、どちらかのみの月を見るのは縁起が良くないとされています。
どちらか一方のみのお月見をすることを「片見月」と呼んでいるのです。
縁起が悪いとはいうものの、どちらかといえば「両方キレイなのにどちらか一方を見逃すのはもったいない」と解釈したほうが良いでしょう。
栗名月のお供え物の由来とは?
栗名月といえば、やはり月見団子などのお供え物は欠かせませんよね。
月見団子やススキなどをお供えするのには、一体どのような理由があるのでしょうか。
まず月見団子はもち米から作られており、秋に収穫される米でできています。
月見団子をお供えすることで、米を無事に収穫できたことへの感謝を表しているのです。
お団子を丸い形にするのは、まんまるのお月様の形を模して楽しんだためといわれています。
月見団子は各地によってバラエティ豊かなのが特徴で、沖縄では「ふちゃぎ」と呼んで小豆をお団子のまわりにまぶしてあります。
大阪では、月見団子はお月様ではなく、里芋の形を真似ているのが特徴です。
お団子をあんこで包んでおり、見た目も白くありません。
愛知県ではカラフルな串に刺さった三色団子が、月見団子としては主流です。
次にどうしてススキを飾るのかというと、実はススキは稲穂を模して飾られているのですね。
たしかに見た目はなんとなく似ているので、五穀豊穣を祝うお月見としてはありがたい雰囲気がします。
場合によってはススキではなく、本物の稲穂が飾られていることもあるのだとか。
各お供え物の由来を知っていると、より感謝の気持ちを持ちながら栗名月を楽しむことができますね。
栗名月が2回ある年も?!
4で割り切れる年は閏年といって2月が29日まであり、1年の日数が1日多くなります。
閏年を設けることで季節にズレが生じないように、少しずつ調整されているのです。
閏年と同じように季節のズレが起こらないようにするため、旧暦では3年ごとに閏月を設けていました。
旧暦の9月と10月の間で1日多く閏9月があったため、栗名月の日が二度もあったのです。
旧暦の考え方では最近だと2014年に閏月があり、2014年の前だと1843年でした。
非常にレアな閏月には、栗名月は二度楽しめるのです。
二度目の栗名月のことを「後の(のちの)十三夜」と呼びます。
栗名月はどんな和菓子?
栗名月といえば十三夜のことではなく、老舗有名和菓子店の和菓子を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
栗名月という名前だけあって、十三夜の日の前後だけ限定販売している和菓子店がほとんどです。
各有名和菓子店の栗名月は、どんなものなのか詳しく見ていきましょう。
誰もが知っている老舗和菓子店のとらやが販売している栗名月の場合は、見た目は白くて点心のような姿です。
白餡と栗でできた生地で、中身の御膳餡を茶巾絞りされています。
上品な甘さが特徴で、栗の香りや味が引き立つ逸品です。
2018年の場合は10月21日の栗名月に合わせて、10月19日から21日までの3日間しか販売されませんでした。
他にも栗名月といえば真ん中に栗が丸ごとひとつ入った、食べ応えのある栗まんじゅうというイメージです。
とらやにかかわらず、栗名月は限定販売の和菓子として有名なようですね。
栗名月というレアな味を、十三夜とともにいただきたいですね。
まとめ
栗名月の意味や由来について時期や芋名月との違い、和菓子の情報を詳しくご紹介してきました。
栗名月は十三夜のことで、旧暦の9月13日に月がキレイに見えるという意味があります。
時期は現在でいえば10月にあたりますが、栗を収穫後にお供えしていたことから栗名月と呼ばれるようになりました。
芋名月は十五夜のことで、中秋の名月とも呼ばれます。
栗名月の1カ月ほど前が、芋名月なのですね。
ぜひ月見団子とススキなどとともに、和菓子の栗名月を楽しみながら豊作をお祝いしましょう。