友人の自宅で、食事に訪れた店で、予想以上のおもてなしを受けたことはありませんか?「そこまでしていただかなくても」と思いはするものの、やはりおもてなしを受けることはとてもうれしいものですよね。
おもてなしは相手にどんな事をしてもらったかも大切ではありますが、それよりも自分に対し「何かをしてあげよう」と思ってもらえるその気持ちにとても感動するものです。
日本人に根付いたおもてなしの精神やマナーは、一体いつ頃から、どうして始まったのでしょうか?こちらではおもてなしについて、日本の歴史的背景に触れながらご紹介していきます。
おもてなしの意味を考えてみる!
日本人に根付いているおもてなしの心。
おもてなしという言葉の意味は「もてなし」に、丁寧語の「お」がついた言葉であります。
それでは「もてなし」の意味とは、どの様なものでしょう?
もてなしを調べてみると、「客人に対する接待」「待遇」「ごちそう」その他にも、「取り計らい」や「振る舞い」などのことをしめすと説明があります。
つまり、簡単に言うと、「人に対する親切な対応」ということで間違いないでしょう。
人に対する親切な対応といっても、さまざまな意味合いを含んでいますよね。
例えば高級レストランでの対応は賃金が発生するサービスのことを指すことが多いですし、店での販売接客は対価を払ったお返しとも言えます。
つまりそこに代金が発生すると、受け取り手はそれを「当然」ととる場合があるので難しいところなのです。
それを踏まえて考えると、もてなしとは代金や想像以上のサービスや気遣いを見せてくれた時に使う言葉といえます。
受け手が「当然」と考える以上の気持ちを相手から受け取った時、はじめて「もてなされている」と感じるのかもしれません。
そうなると、もてなしとは目に見えない気遣いや思いやり、その人だけへの特別に親切な気持ちのことを指すのでしょう。
日本人が仕事に真摯に取り組む姿勢であることは世界中でも有名であり、中でも接客へのホスピタリティーが高いことでも知られています。
もちろん業務上のマニュアルで行わなければいけない場合も多々あり、それを忠実に守っているだけだと言われてもおかしくありません。
ですがその中に、「その相手」だけにしかかけない言葉や、態度があるのも事実。
例えば毎日通うコーヒー店でいつもと違う時間に訪れた際に「今日は遅いのですね。お疲れさまです」
という声かけや、相手の注文がいつもと違う時に「こちらもおすすめですよ」などと声をかけられたらどうでしょう。
たくさんいるお客さんの中で存在を覚えていてくれた、そんな店員さんの気持ちがうれしかったりしませんか。
これはコーヒー代金以上の気持ちをもらっていますし、マニュアルにはないですよね。
あくまでも店員さんのおもてなしの気持ちから出た言葉。
そんな心の中にある「相手への優しさ」を行動にうつすことが、おもてなしの意味合いなのかもしれません。
おもてなしのマナーの発端は千利休だった!
日本で有名になったおもてなしという言葉ですが、最初にこの言葉を作ったのは誰なのでしょうか。
もともとおもてなしは茶道のマナーに由来していると言われており、千利休が最初にこの精神を生み出したと言われています。
茶道において茶会などに招いた時は、訪れる客人のことを思い入念に準備をします。
これは千利休が作った利休七則に基づいていると言われています。
利休七則とはまさに茶の湯の精神7箇条と言えます。
こちらで現代の言葉で説明してみましょう。
①心より客人のことを思って茶をたてるのが良し。
②お湯を沸かす炭に火を付けるだけではなく、火が付く本質を見極めてからが良し。
③四季を大切に、その中に合った風情を大切にする。
④花の命を尊び自然に溶け込ませるだけではなく、一輪の中におのずと美しさを見いだす。
⑤自分の時間と同じく、相手の時間のゆとりを同じように大切に。
⑥どんなことが起こっても動揺せずに対応できる準備と心構えが大切。
➆どんな関係性でも一緒に呼ばれた客人同士を大切に。
実際にはこの時代の言葉で記されていますが、利休七則を簡単に解釈をするとこの様な意味合いがあります。
千利休は茶をたてる名人ではありましたが、茶の世界に日本人の心の美意識をしっかり組み込んでいることがうかがえますね。
おもてなしの由来、茶道の世界を表現する言葉を解説
千利休が茶道におもてなしの基本的なマナーを作り上げたということがわかりました。
それ以外におもてなしの言葉を作り出した考え方として、「わび・さび」というものがあります。
今でこそ日本を代表するような美意識として有名な言葉。
千利休の茶のスタイルを表現する際に「わび茶」として説明されることで知られた「わび・さび」という言葉ですが、実は江戸時代以降に使われた言葉であると言われています。
つまり千利休は自分が出していた茶のスタイルを、「わび茶」だとは思っていなかったということですね。
ではなぜ「わび茶」なのでしょうか。
千利休は詫び、今でいうところの「質素」を愛したと言います。
時代の流れで中国から輸入される高価な茶器が流行した当時でも、千利休は自身で茶碗をデザインするなどの工夫を施しました。
それは日本国内で作るということと、地味であるということにこだわりぬいたことにつながっているのでしょう。
また茶道の世界が教えてくれる日本人の精神が「一期一会」。
この言葉は人との出会いや別れを表現する時に良く使われますが、実は茶道の世界の言葉であることをご存じでしょうか。
誰もがわかっている様で知らない言葉。
出会いや別れは1度きりという意味のこの言葉ですが、もともとは茶道の道具もその時の茶会で出会う人々もその1度きりであるということを表現しているのです。
最後に「和敬清寂」という言葉についてです。
この言葉はわび茶というものを作った村田珠光の言葉が起源となったもので、この一言が茶道の精神を表現したとも言われています。
調和・敬意・清潔・静寂といった、いたってシンプルなその考え方は、現在のおもてなしの基礎になっているのです。
おしゃれな飲み物で現代風のおもてなしを実践してみよう!
おもてなしという言葉は茶道から来ているということがわかりましたが、すべての人が茶道の道にたけているわけではありません。
当然自分なりのおもてなしで、相手の方に接するのが一番大切なこと。
では現代風のおもてなしをするのには、一体どの様にしたら良いのでしょうか?
自宅に友人を招くときは、招いた相手の好きなものをさりげなく食卓に並べるのが良いでしょう。
もし付き合いが長ければ、酒の好き嫌いや趣向なども知っていることもありますよね。
お酒が好きな方であれば、珍しいワインや焼酎を出すのも、もてなしの1つ。
もしお酒自体はそこまで強くはないけれど、カクテルなどが好みであるなどの場合は果物を使った「サングリア」などもカラフルでとてもオシャレです。
またお酒が飲めない、または車で来る場合などは、自家製のレモネードやフルーツポンチなどのかわいらしい飲み物を作るのもおすすめ。
透明のデキャンタなどが映える様に色見にこだわるだけで、お酒ではなくてもとても華やかに映ります。
お子様を連れて来られている方には、時期によりスイカやパイナップルを器にして中に果物と炭酸水などを入れるのも彩が爽やかです。
おもてなしの料理は、簡単レシピでも実現!
「おもてなしをする」という事を考えると、一体どの様なことをしたら良いか悩みますよね。
おすすめのおもてなしの方法の1つに、料理を出すということがあげられます。
料理といっても特別に豪華な料理を出すということではなく、手軽に作ることができるものでも十分もてなすことができます。
例えばいつものサラダにゆで卵を散らした「ミモザサラダ」や、ローストビーフにクレソンを上手に盛り付けるだけで華やかですよね。
外国の方も喜ぶてまり寿司など、見た目はもちろんですが、いつもの料理に何か人手間を加えるだけでとてもかわいらしいものになるものがたくさんあります。
またバーニャカウダも最近女性を中心に人気がある料理ですが、ソースのコツさえつかんでしまえばあとは好みの野菜を用意するだけなのでとても作りやすくおすすめです。
おもてなし料理とは会話を楽しみながら、さりげなく手を出しやすい手軽さも重視すると喜ばれるでしょう。
前菜をいくつも作り大皿で飾り付けなどをすると彩も良い上、ゲストのことを考えているので「おもてなし料理」としておさえておきたいポイントです。
まとめ
こちらでは日本人に根付く「おもてなし精神」について、解説をしてきました。
おもてなしとは、マニュアル以上の気持ちや気遣いを見せることであるといえます。
相手のことを思い、「どの様にしたら喜んでもらえるか」ということに重きを置くのが良いでしょう。
茶道の心から現代の日本にまで継承されている日本人ならではの奥ゆかしさ。
外国の方から見て、「非常に素朴でいて質の高いホスピタリティー」という様に評される理由もわかりますね。