宴会や結婚式など大勢の人が集まる場面で必ず行われるのが乾杯です。
仲のよい友人や家族の間でも、なにかおめでたいことがあると、食卓を囲むときに乾杯をしますよね。
なぜ乾杯をするのか、深く考えたことがない人が多いでしょうが、乾杯の意味を知っていると、きっと乾杯の習慣を大切にしたくなるはずです。
今回は乾杯について解説します。
乾杯の意味、乾杯のときの挨拶や音頭について、乾杯をお願いする場合に気を付けたいことまで詳しく紹介しますので、この次に集まりに参加するときには役に立ちますよ。
乾杯の意味とは?乾杯の発声と乾杯の音頭はどう違う?
さて乾杯とはどんな行為を意味しているのでしょうか。
人数の多少に関わらず、集まりが開かれると、出席者が全員揃ったときに、集まりの主催者または主催者が指名した人が酒などを注いだクラスや盃を掲げて「乾杯」と発声します。
それを合図に、その他の出席者が同じようにグラスや盃を掲げて「乾杯」と唱和し、口を付ける一連の流れを乾杯といいます。
乾杯は食べ物や飲み物に手を付けるきっかけになっています。
集まりの前には「乾杯の発声」や「乾杯の音頭」をとるようにお願いされることがありますが、どちらも意味をはっきりわかっている人は少ないかも知れませんね。
先に立って1人が何かをして、その後にみなが続くとき、先に立つ人の行動を「音頭をとる」といいます。
先程の乾杯の説明でも、まず1人がグラスを掲げて乾杯と声を出した後に、みなが唱和しますから、これを乾杯の音頭をとるといいます。
発声は声を出すという意味ですが、それだけではなく大勢の人に先立って、最初に声を出して音頭をとるという意味があります。
つまり乾杯の発声と乾杯の音頭をとることは、どちらも同じ意味で、これがあることでみなの乾杯がバラバラにならずに済みます。
音頭をとる人がいないと揃って乾杯をするのはとても難しいことですから、乾杯の発声、または乾杯の音頭をとることは大切なことです。みなで揃ってする乾杯は、その後の場面を盛り上げるのに役に立ちます。
乾杯の歴史!グラスを合わせて音を出すことにも大切な意味が!
グラスや盃を掲げるだけの乾杯もありますが、くだけた宴会の席などでは、グラスや盃を互いに合わせて音をさせる乾杯もよく行われます。
楽しい集まりを予感させる音ですが、昔はグラスや盃を合わせることで酒の中の悪魔を追い払うとか、グラスや盃をぶつけることで、お互いの酒が混ざるので、毒が入っていない証明になるなどの理由があって音をさせていました。
中世ヨーロッパでは、酒に毒物を混ぜて相手を殺害することが頻繁に行われていたので、毒が入っていないという証明は大切なことでした。乾杯はかつて、お互いに敵意がないことを確認する行為だったのです。
もとも乾杯はと神や死者のために酒を捧げた宗教儀式でした。それが仲間の健康や成功を願う儀礼に変わり、現在のようになりました。
日本で最も古い乾杯は、幕末に日英和親条約を結んだ後(1854年)のことでした。様々な取り決めも終わり、イギリス側と日本側が晩餐を共にしたときに乾杯が行われたようです。そのため現在の日本で行われている乾杯は、ヨーロッパの影響を受けていると考えられています。
ただそれまで日本に乾杯の習慣がなかったわけではなく、神前結婚で行われている三々九度なども乾杯の一種と考えられています。
現在、乾杯は世界中の国々で行われています。乾杯はお互いに敵意がないことを示す友好の印ですから、どんな国にも乾杯があることは当然なのかも知れませんね。
乾杯!英語での言い方は?その国の乾杯を知ると、人との距離が縮まる!
ヨーロッパの影響を受けている日本の乾杯ですから、乾杯を英語では何というのか気になりますね。
日本語の乾杯は杯(さかずき)の酒を飲み干す、という行為がそのまま言葉になっていますが、英語でも同じような由来「Bottoms up!」という言葉があります。
グラスの底を上げろという意味になりますが、確かにグラスの底を上げれば、自動的に飲み物は口に流れ込んできますね。
日本でも外国でも宴会の席で考えることは同じなのかも知れません。
日本では大正時代になるまでは乾杯の代わりに「万歳」が多く使われていたようです。
万歳は天皇陛下に対して使う言葉だったために、乾杯が使われるようになりましたが、もしかするとBottoms upの影響があったのかも知れませんね。
日本人にもよく知られている英語での乾杯は「Cheers!」でしょう。実際に使われる機会も多いようです。
Cheersには乾杯のほかに、ありがとうという意味があります。仲間同士の別れの挨拶(日本語でのじゃあね、くらいの意味)としても使われるそうです。英語の初心者にも使いやすい言葉ですね。
「Toast!」という掛け声もあります。これは私たちがよく知っているトーストのことですが、実は古代ローマ時代には、ワインに焼いたパンを入れて祝杯をあげる習慣がありました。そのため今でも乾杯の掛け声としてToastが使われています。
グラスを合わせれば、みな仲間だと確認できるのが乾杯ですから、違う国籍の人たちと交流を持つ場合には相手の国の言葉で乾杯をしたいですね。距離がグッと縮って仲良くなれるに違いありません。
挨拶が必要!改まった席での乾杯で気を付けたいこととは
もし改まった席で乾杯の音頭を取るようにお願いされたら、その前には挨拶が必要です。
いきなり「乾杯!」と発声するのでは、出席者も心の準備ができません。
当日は司会者などから、乾杯のご挨拶をお願いします、などといわれますから、その後でみなの前に出て自己紹介をします。
仕事関係の会合なら、名前のほかに部署名や役職、結婚式ならどのような立場で出席しているか(例えば新婦の叔父であるなど)を述べるとよいでしょう。
同時にその席に招いていただいたことへの感謝の気持ちを伝えられるとよいですね。
例えば姪の結婚披露宴での乾杯を頼まれたら、このような挨拶が考えられます。
「ただいまご指名いただきました新婦の叔父、〇〇〇〇(自分の名前)と申します。
〇〇君(新郎の名前)、〇〇さん(新婦の名前)ご結婚おめでとうございます。
またご両家のみなさまも、誠におめでとうございます。
このような晴れがましい場に臨むことができて、私も本当に嬉しく思っております。
本日は僭越ながら私が乾杯の音頭を取らせていただきます。みなさまご唱和をお願い致します」
そしてみなに飲み物が行き渡っていることを確認した上で、乾杯ということになりますが、そのときも一言お祝いのメッセージを付け加えるとよいでしょう。
「みなさま飲み物の準備はよろしいでしょうか。
それでは、新郎新婦の末永いお幸せとご両家ならびにご列席のみなさまの益々のご繁栄を祈念して、乾杯!」
これでは挨拶が短すぎるのではないかと思われるかも知れませんが、出席者はすでに主賓のスピーチを聞いている上に、
グラスを持ったまま、お預けを食っている状態です。乾杯のときの挨拶はスッキリと短い方がよいのです。
乾杯は誰に頼めばよい?頼むときに気を付けたいこととは
乾杯をお願いする場合、誰に頼めばよいのか迷う場合もあるでしょう。
その集まりによっては乾杯の音頭をとる人の役職や家(結婚式の場合)が決まっている場合がありますから、まずはそんな決まりがないかどうか確かめてください。特に決まりがない場合、乾杯を頼むのは出席者の中の準主賓に当たる人になります。
本来主賓にはスピーチや挨拶をお願いしますが、事情があって断られた場合には、主賓に乾杯をお願いするとよいでしょう。
また、乾杯にはこの後の楽しい酒宴のスタートを知らせる役割もあります。楽しい酒宴を想像させるような、声のよく通る明るい喋り方の人を選ぶというのも1つの方法です。
乾杯をお願いする相手に対して気を付けて欲しいことがあります。
長いスピーチとは違い、気軽にお願いできそうな乾杯ですが、お願いされる方にすればみなの前で挨拶もしなくてはなりません。相手が負担を感じることを忘れてはいけません。
乾杯の音頭をとるくらいなら、と当日になってお願いしたという例もありますが、これはあまりよくありません。
誰でもいきなり乾杯の音頭とりを任されて、あたふたする様子をほかの出席者に見られたくありません。
落ち着いてできるように、乾杯についても事前にお願いしておくのが最善の方法です。
結婚式の場合は招待状に乾杯をお願いする旨を記した別紙を同封することが多いようですが、できれば直接顔を見て乾杯の音頭をとってくれるようにお願いしましょう。どうしても乾杯はこの人にお願いしたいという熱意を感じさせるのも、乾杯をお願いするときのコツです。
誰かに断られたから、お願いしたいなどの理由は絶対に避けてください。
気持ちよく引き受けてもらった方が、当日の乾杯もきっと晴れがましいものになるはずです。
まとめ
今回は乾杯について解説しました。乾杯の意味や歴史から、乾杯の音頭をとる場合、反対に乾杯の音頭とりをお願いする場合に気をつけるべきことを詳しく説明しました。もうどちらの状況になっても安心ですね。
その場に居合わせたみなが仲間だと確認しあい、楽しい時間が始まることを知らせてくれる乾杯には古い歴史があることがわかりました。私たちはこれからも乾杯の習慣を伝えていきたいですね。
世界中に存在している乾杯を大切にしていれば、世界中の人々と仲良くなれるはずです。
英語での乾杯の言い方も、ぜひ役に立ててください。
乾杯が世界の平和を守ってくれるかも知れませんよ。