普段の私たちの生活の中で和紙を目にする機会は多いですが、和紙はどんな素材でできているのでしょうか?良く見ると細かいスジが入っていて、コピー用紙やチラシの紙とは少し違いますよね。
独特の手触りを持つ和紙は、日本が誇る文化です。
和紙がどうやって作られているのかをご紹介します。また、最近話題の和紙畳についても説明いたします。
和紙の歴史は長いの?
縄文時代の頃より、日本人は紙に近い物に字を書く文化がありました。この頃には、中国の古墳が作られ、その中から出てきた紙が現存する中で最も古い紙だと言われています。弥生時代には葵倫(さいりん)という中国のお坊さんが紙を作りました。大麻を原料としていたのですが、そこに樹皮や草皮繊維を混ぜた物をスノコですくい、紙漉き和紙を作りました。
この頃から品質の良い紙が大量に生産されるようになりました。飛鳥時代には曇微(どんちょう)というお坊さんが紙漉きを日本に伝えました。紙漉きの技術は墨や絵の具と共に日本に伝えられてきたのです。戸籍を作るという決まりができ、その為に紙に書くようになりました。紙はその地域ごとに用意することになったので、国が紙漉きを決めました。京都に紙を漉くために家も決めたのです。
奈良時代に入ると麻やコウゾ、ガンピで作られた紙の名前がありました。
平安時代には京都に国が紙漉き所を建てて、紙漉きはどんどん発展していきました。そのために、男の人が年貢として紙や紙の原料を納めるようになりました。紙の技術が発展し、模様のついた紙が作られるようになったのもこの頃です。
室町時代には愛知県でも紙漉きが始まり、江戸時代になると各地で紙漉きが普及しました。さまざまな紙が江戸に集まり始めて、人々の生活に欠かせない物になっていったのです。
それまで紙は貴重な物だったのですが、各地で作られ始めてからは人々の生活に広まっていきました。明治時代に入ると和紙はパリの万国博覧会にも出展されるようになりました。欧米の紙の日本に入り始めましたが、日本の手漉き和紙の技術も負けていませんでした。国のお札にも使われるようになり、郵便切手も作られるようになりました。そしてとうとう機械で紙が作られるようになりました。
文明開化により雑誌や本が大量に作られるようになると、印刷機と相性の良い洋紙が重宝されるようになりました。大量に機械で作られるようなると、和紙を作る家は減り始めたのです。大きな需要は減ってしまったのですが、現代にも手作り和紙は残っています。
現代は手漉き和紙よりも機械漉きの和紙作りの方が生産量は多いのです。このまま手漉き和紙の文化は無くなってしまうのかと懸念していた先に、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。和紙の歴史はこれからもまだまだ続きそうです。
和紙の素材は何なの?
和紙の中心の素材はコウゾ、ミツマタ、ガンピという食物の繊維です。他には麻や竹、藁なども用いて作られることがあります。素材によってできあがる紙の雰囲気も異なるので、素材選びが大切なのです。和紙の素材は自生していた物を取り、栽培していました。
しかし、紙の生産量が減り素材の生産量も減りました。特にコウゾは紙作りには欠かせない素材です。クワ科の植物なのですが、その大きさは3メートルにもなります。容易に栽培できるため、収穫も毎年行います。繊維がとても太くて丈夫なので、美術用の紙や障子の紙などに幅広く使えます。ミツマタはジンチョウゲ科の低木植物です。植えてから3年ごと収穫しますが、大きさは2メートルにもなります。日本固有の製紙の原料なので、計画的に生産されていくようになりました。繊維は細くて柔軟で光沢があるため、印刷に適しているのです。
その他には書道用紙や美術の工芸紙にも使用されています。ミツマタと同じように、ガンピもジンチョウゲ科で落葉低木です。細く短い繊維で光沢があります。コウゾやミツマタとは異なり、栽培が難しいので自生している物を使います。
毎年春から夏にかけて自生している物を生剥ぎします。ガンピは箔打ち紙や、襖の下貼り様の紙など特殊な物に使われます。
手漉き和紙の作り方は?
手漉きで和紙を作るには、まずは素材のコウゾ、ミツマタを煮ます。時間をかけて煮ていくと、和紙に必要な繊維質だけを取り除けます。取り除いた繊維質はさらに細かくほぐしていきます。水と一緒にかくはんしていくと、繊維質がどんどんほぐれて綿のようになってきます。この状態で一度脱水します。脱水した物を再び水に溶かして、「とろろあおい」と呼ばれる植物の根を混ぜます。ここまでが下準備です。
とろろあおいを混ぜた物は溶液と呼び、その溶液を「船」に流し込みます。「船」とは木の枠とすだれでできている物です。溶液槽の中で船に溶液を流し込むと、素材と水分に分離します。そのまま上に引き上げると、すだれの上に紙となる素だけが残るのです。まるで豆腐のようにやわらかい紙の素は、すだれの上で均一に伸ばされています。すだれで漉すと、紙にすだれの跡が残ります。
この後が手漉き和紙の特徴とも言えます。何回も前後にゆするため、繊維がからんでどんどん強度も上がっていきます。紙は3千枚から4千枚ほど漉くこともあります。この紙の素を1枚1枚慎重に重ねていき、一晩置きます。一晩置くことで余分な水分は抜かれます。
さらに圧さく機で脱水し、天日で乾燥します。10日程乾燥させるとカチカチの板状に変化します。乾燥させることで紙の中で繊維が結びつき、強くなっていくのです。3千枚から4千枚もの紙がカチカチになっているため、ここから1枚1枚紙をはがしていくのは熟練の業なのです。
紙をはがす場合は、再び水に浸すのですが、浸しすぎてしまうと破れ、水分が足りない場合ははがれません。この作業は職人さんでないとできないのです。はがし終わった1枚の紙が「和紙」です。その1枚の紙をまた鉄板に貼り付け、大きなアイロンのような物で熱していきます。
出来上がった和紙は品質を確認した後裁断します。そうしてようやく製品となるのです。
手漉き和紙と機械漉きの和紙の作り方はどこが違うの?
手漉きの和紙作りと機械漉きの和紙作りの違いはどこでしょうか?
もっとも違うのは、機械だと大量に生産できるという事です。手漉きは熟練の職人さんが手作業で作りますが、機械の場合には工場の道具で一気に作ります。まずは手漉きと同じく、細かくかくはんしていきます。この作業は「離解」と呼ばれます。その後漂白を行い、紙漉きに入ります。
手漉きの様に船と呼ばれる物があり、その中に溶薬を流し込んでいきます。船は常に振動しているため、溶薬が一定の厚さを保てます。手漉き和紙と同じ様に何枚も重ねて置いていくのではなく、何メートルもの大きい和紙を作れるので1枚で十分です。巨大なローラーで脱水を行うと、手漉き和紙と同様に、繊維と繊維で強く結びつきます。ですが手漉きの様に何層にも繊維を絡ませることができないので強度は手漉きよりも弱いです。天日に干す事もなく、そのままアイロンにかけて和紙をはがせばできあがりです。
手漉きよりも早くたくさん作ることができますが、機械漉きでは手漉きの様にすだれの跡が作れません。機械によって均一な紙はできますが、和紙の味ともいえるすだれの跡はないのです。裁断も機械で行われますので、障子紙や習字の紙など、大量に使う商品に対応が可能です。手漉きよりも比較的安価ですので和紙の初心者も手に取りやすいです。保存性に関しては手漉きも機械漉きも変わらないので、好みで選ぶこともできます。
和紙畳ってどんなものなの?
和紙畳とは、イ草を使わずに和紙で作った畳の事です。
イ草よりも色が豊富ですので、最近の住宅事情にも柔軟に対応できてインテリアとしてもお洒落です。
イ草の弱点をほぼ克服しているので人気が上がってきています。
ほとんど変色もせず、撥水機能に優れているのでお水やジュースをこぼしても安心です。
ダニやカビも発生しにくく、寝転がってもカスが服に付きません。
和紙畳はイ草よりも清潔に保てますので、小さいお子さんが居る家庭にも安心です。
傷つきにくいので、室内犬や猫の居る家庭にもぴったりです。
床暖房にも対応しているので現代の住宅にもぴったりです。
色だけでなく、編み方も色々あるので組み合わせによって豊富に楽しめます。
部屋の全てを同じ色にしても良いですし、1色だけアクセントにしてもお洒落です。
ヘリの色だけ変えるという事も可能ですので、お部屋の模様替えに和紙畳を使ってみるのはいかがでしょうか。
まとめ
和紙は現在では手漉き和紙と機械漉きに別れています。古くからの文化である手漉き和紙も大切ですが、機械漉きにもメリットは多いのです。大量に生産できるからこそ多くの人の手に渡ります。
日本の大切な文化である和紙ですが、身近な存在でもあります。手漉き和紙の職人さんは減ってきていますが、文化はずっと残っていきます。この先も形を変えつつ、和紙は私たちの生活の中に生きて行くのでしょう。