1年間の感謝を伝えるお歳暮。年末の恒例行事として、また普段なかなか会えない方たちとの交流の機会として毎年楽しみにしている方も少なくないでしょう。
この記事では、自分や相手が喪中・忌中(きちゅう)の場合のお歳暮はどうしたら良いのか、そもそも贈ってもいいのかなど、みなさんの疑問にお答えします。
喪中と忌中の違い
喪中はよく聞きますが、喪中に比べて忌中は耳にする機会が少ないですよね。
喪中と忌中の違いは、故人が亡くなってからの期間の違です。
忌中は、仏式の場合は命日から四十九日(神式の場合は五十日)までのことを示し、喪中は忌中以降の命日から1年間のことを示します。(これは仏式も神式も同じ期間です。)
ちなみに日本の家庭のほとんどは仏式です。
喪中と忌中の違いをはっきりさせてところで、本題へと移りましょう。
喪中でも贈って問題ない
自分や、相手が喪中でお歳暮を贈っていいか悩んでいる方は多いかと思いますが、答えから先にいうと、喪中のお歳暮のやり取りは全く問題もありません。
喪中に控えるべきことの一つに「祝い事」がありますが、お歳暮は祝い事ではなく「日頃の感謝をお伝えする行事ごと」なので、自分が喪中でも相手が喪中でも贈って大丈夫です。
忌中は控える・もしくは明けるのを待つ
先に書いた理由で、贈ること自体はマナー違反ではありません。
しかし、忌中とは故人が亡くなってまだ四十九日経っていないということ。
相手先がまだバタバタしている可能性がありますし、大切な家族を亡くしてまだ気持ちの整理がついていないかもしれません。
お歳暮を受け取った側は、お返しを用意したり、お礼の連絡をしなければななりません。
その負担を考えると、忌中のお歳暮は避けたほうが良いでしょう。
ご自身が忌中の場合は、言うまでもなく無理にお歳暮を贈る必要は全くありません。
やり取りしていた人が亡くなった場合
これまでお中元やお歳暮のやり取りをしていた相手が亡くなったら、相手のご家族とよほど深い付き合いがない限り、やり取りはそこで終了です。
お中元や御歳暮は、相手の方が亡くなる=縁が終わると考えられているからです。
なので、ご家族宛に御歳暮を贈る必要はありません。
のし(熨斗)に気をつける
喪中にお歳暮を贈ること自体には問題はありませんが、のし選びには注意が必要です。
通常、お歳暮で使うのしは紅白の蝶結びの水引が描かれたのし紙を使いますが、これには「お祝い」という意味があるので、喪中のお歳暮に使ってしまうと失礼にあたります。
喪中のお歳暮には、水引無しの無地のかけ紙か、白い短冊を使うのが一般的です。
贈る相手がビジネス関係や目上の方の場合は白い短冊より無地のかけ紙を使ったほうが無難です。
表書き
表書きには「御歳暮」と書きます。忌中が明けるのを待つなどして贈るのが遅くなった場合は「寒中御見舞」、贈る相手が上司など目上の方の場合は、「寒中御伺」と書きます。
本来、お歳暮の期間を過ぎてから1月7日までの期間に贈る場合は「御年賀」と書きますが、御年賀にはお祝い事という意味が含まれるため、喪中には適切ではありません。喪中の場合は御年賀のタイミングを避けて、「寒中御見舞」「寒中御伺」と書いて贈ります。
ただし、寒中御見舞・寒中御伺として贈ることができる期間は1月8日から2月4日ごろまでなのでご注意ください。
のしについて詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
喪中の相手に贈る品物の選び方
お歳暮の品物選びに関してはそんなに神経質になる必要はなく、通常のお歳暮を贈るときのマナーを守れば問題ありません。
お歳暮のマナーに関して詳しくはこちらの記事をどうぞ。
お中元であれば、お肉やお魚など生きていた物を贈らないように気をつける場合もありますが、お歳暮は「年末に家族でテーブルを囲む際に食べるもの」が好まれる傾向にあるので、そこも神経質になる必要はありません。
例えばお歳暮といえばのハムも贈っても大丈夫。
ただし、派手な包装や、紅白の品物などのお祝いを連想するものは避けましょう。
喪中にお歳暮を頂いた場合
お歳暮とはそもそも「日頃の感謝を伝える」ものであって、祝い事ではありません。
なので、喪中であっても貰うことも贈ることも全く問題ありません。
お歳暮を頂いたら、喪中かどうかは関係なく、お礼の電話やお礼状を出します。
電話ならその日のうちに、お礼状なら遅くても3日以内に投函しましょう。
お歳暮はあくまで「感謝の気持ちで贈るもの」なので、品物のお返しは必ずしも必要ではありません。
マナーや体裁抜きに考えた時に、そのお相手に対し「感謝の気持ちをこちら側も伝えたい。」「お返しがしたい」と思う相手には、頂いた物の半額〜同等額の品物をお返ししましょう。
この時に、頂いたものより高価な品物を贈らないように気をつけましょう。
故人宛にお歳暮が届いた場合
故人宛にお歳暮が届く理由はおおむね、「他界したことを知らない」もしくは「毎年の習慣で贈った」の2つでしょう。
他界したことを知っている場合
お礼の電話、もしくはお礼状を送ります。お返しの必要はありませんが、もしお返しをする場合は頂いた品物の半額程度〜同等額の品物をお返しします。
他界したことを知らない場合
お礼と共に亡くなったことをお伝えし、お礼状には連絡しなかったことへのお詫びを必ず書きます。
お礼状の書き方
お礼状は以下のような構成で書きます。
-
- 季節の挨拶
- いただいた御歳暮へのお礼
- 亡くなったことのご報告
- 連絡が行き届かなかったことへのお詫び
- 相手の今後の健康などへの気遣い
- 結びの言葉
ー例文ー
拝啓 寒中お見舞い申し上げます。
この度は夫〇〇に思いがけず結構なお品を頂戴し、誠にありがとうございました。
夫〇〇は、2020年○月○日に老衰のため亡くなりました。
ご報告が遅れましたことを深くお詫び申し上げます。
頂戴した品は早速仏前に供えさせていただきました。
夫が生前に賜りましたご厚情に深く感謝いたしますと共に、皆様の健康とご多幸を心より祈念いたします。
お礼の品をお返しする場合はその旨も明記しましょう。
まとめ
お歳暮は1年間の感謝をお互いに伝えあい、1年間を結び、気持ちよく新年を迎えるという日本の素晴らしい文化です。
古くから伝わる伝統的な文化にはマナーやしきたりがつきもので、相手や状況によっても変化します。
何度か触れていますがお歳暮とは感謝の気持ちを伝える素晴らしい行事です。
「もらった相手の方がどう思うか?」を最優先し、お互い負担にならない気持ちの良いやり取りができたらいいですよね。
もしお相手が、忌中が明けていてもまだ心の整理がついていない場合は、マナーでは良しとされていてもお歳暮は控えたほうが良いでしょう。
大切なのは、形式より相手に対する思いやりです。
お互いが気持ちよく感謝の気持ちを伝えあい、素敵な年末をお迎えください。