あなたは、五臓六腑という四字熟語を知っていますか? おそらく、小説の文章表現として見かけた方が大半でしょう。
「臓」や「腑」という文字が使われていることから分かるように、五臓六腑は、人間の内臓に関する四字熟語です。ただし、現代で五臓六腑という四字熟語を使う場合は、内臓そのものの意味合いは薄いです。
この記事では、五臓六腑の意味や文例などを紹介します。
五臓六腑の意味とは
五臓六腑とは、東洋医学において「人間の内臓全体」を表す四字熟語です。
五臓は、心臓・肺・肝臓・脾臓・腎臓の臓器を指しています。心包(心臓を包んでいる膜または袋と解釈されていますが、実体のない臓器)を加えて、六臓とすることもあります。
六腑は、胃・胆・膀胱・小腸・大腸・三焦を指しています。三焦(実体はリンパ管)を外して、五腑とすることもあります。
五臓六腑の使い方と例文
五臓六腑という四字熟語は、「全身の言い換え」や「感情の誇張表現」として使われています。例文は、次の通りです。
- 打ち上げ花火が鮮やかに爆発すると、遅れて五臓六腑に響く轟音が届いてきた。
- 嫌いな上司に怒鳴られたせいで、五臓六腑が煮えくり返るほどイラついた。
- 運動部の部活が終わった後に飲む水は、五臓六腑に染み渡るようだ。
五臓六腑の各臓器の紹介
五臓六腑の指している各臓器について、簡単に紹介します。
心臓
心臓は、全身に血液を送り出している臓器です。大きさは、握りこぶし程度です。弁膜(血液の逆流を防ぐ膜)によって、心房と心室に分けられています。
肺
肺は、左右一対の呼吸器です。口や鼻を通して得た空気から酸素を体内に取りこんだり、その反対に老廃物である二酸化炭素を排出したりする役割を担っています。
肝臓
肝臓は、右上腹部に位置する最大の臓器です。胆汁(消化補助液)を作ったり、血液や栄養を蓄えたり、有毒物質(アルコールなど)を分解したりなど、さまざまな役割を担っています。
肝臓は、高い再生力を持っています。手術で半分ほど摘出しても、残った肝臓が成長することで、手術前の大きさまで再生できます。
脾臓
脾臓は、古くなった赤血球を破壊したり、一時的に血液を貯蔵したりする役割を担っています。
また、体内に入りこんだ異物(ホコリなど)や病原菌などを処理する役割も担っています。脾臓には、体の4分の1程度のリンパ球が集まっているからです。
腎臓
腎臓は、主に尿の生成を担っている左右一対の臓器です。血液から不要な老廃物や水分をろ過して、尿として体外に排出します。
心包
心包とは、心臓を包む膜ないし袋として解釈されていますが、実体のない臓器です。あくまでも、伝統的な東洋医学で語られている臓器と考えてください。
胃
胃は、人間の消化管の中で、食道の次に存在するものです。
胃に送りこまれてきた食べ物は、胃酸(塩酸やペプシノーゲンなど)と胃の収縮運動によって、ドロドロになるまで消化されます。
胃は、あくまでも消化を担当する臓器です。栄養素の吸収は、胃の次に存在する小腸によっておこなわれています。
胆嚢
胆嚢は、肝臓で作られた胆汁を濃縮して、胆管を通して十二指腸へ流す臓器です。胆汁は食事によって摂取した脂肪の分解に関わっていますが、胆汁そのものは消化酵素ではありません。
膀胱
膀胱とは、腎臓から送られてきた尿を一時的にためておく臓器です。尿道とつながっており、その入り口は膀胱頸部筋で閉じられています。
小腸
小腸は、胃と大腸の中間に位置する消化器官であり、全長は6~7メートルです。十二指腸・空腸・回腸の3つ区分されます。
小腸の粘膜には、腸絨毛という無数の突起が存在します。この腸絨毛にて、消化された食べ物の水分や栄養素(アミノ酸やビタミンなど)を吸収しています。
大腸
大腸は、小腸と肛門の間に位置する臓器です。全長は、1.6メートルほどです。盲腸・結腸・直腸の3つに区分できます。
臓器としての役割は、食物繊維の発酵・水分の吸収・一部の栄養素の吸収をおこなっています。
三焦
三焦とは、上焦(横隔膜の上部)・中焦(上腹部)・下焦(へその下部)の3つに分かれていて、呼吸・消化・排泄の機能を担う臓器と言われています。形のない臓器とされていますが、実体はリンパ管です。
まとめ
五臓六腑とは、東洋医学における「人間の内臓全体」を表す四字熟語です。
五臓とは、心臓・肺・肝臓・脾臓・腎臓の臓器を指しています。心包を加えて、六臓とすることもあります。
六腑とは、胃・胆・膀胱・小腸・大腸・三焦を指しています。三焦を外して、五腑とすることもあります。
文章における五臓六腑の使い方としては、「全身の言い換え」や「感情の誇張表現」です。「五臓六腑に染み渡る美味さ」や「五臓六腑を潰されるようなプレッシャー」などのように使います。
実生活で五臓六腑という四字熟語を使う場合は、文章の読み書きが大半でしょう。五臓六腑の意味を正しく理解して、読書や文章作成に活かしてください。