三伏という言葉をご存知でしょうか?日本のある特定の時期を表わす言葉です。この言葉を見聞きしたことがある人も、全く知らないという人もいるでしょう。では、一体どんな意味を持つ言葉なのでしょうか?ここでは、三伏のアレコレについて、詳しくご紹介します。
三伏って一体なに?意味は?
三伏(さんぷく)という言葉を聞いたことがありますか?暑い夏の中でも特に暑い時期のことを指す言葉です。
日本には十干(じっかん)と呼ばれる中国から伝わった暦があり、「甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸 」の10種類から成っています。
甲=きのえ、乙=きのと、丙=ひのえ、丁=ひのと、戊=つちのえ、己=つちのと、庚=かのえ、辛=かのと、壬=みずのえ、癸=みずのと
と呼ばれています。
甲・乙は木、丙・丁は火、戊・己は土、庚・辛は金、壬・癸は水とされています。
夏至後に訪れる第三の庚の日を「初伏(しょふく)」といい、第四の庚の日を「中伏(ちゅうふく)」、立秋後最初の庚の日を「末伏(まっぷく)」といい、これらを合わせて三伏というのです。
夏至後の庚の数え方が異なる場合もありますが、一般的には上記の数え方で考えられています。
陰陽五行説では、木=春、火=夏、土=土用、金=秋、水=冬とされ、組み合わせの良いものと悪いものがあります。三伏の季節は夏で、庚は金に属します。火は金を溶かすため、夏の季節の庚の日は凶と言われているのです。
該当する庚の日には、種蒔き、遠行、男女和合、療養などは慎むべきと考えられています。三伏自体に特別な意味がある訳ではありませんが、酷暑の時期を表わす言葉として用いられています。
三伏とは具体的にどの時期をいうの?
では、三伏とは具体的にいつの時期をいうのでしょうか?
前述の通り、初伏から末伏までは7月上旬から8月上旬頃を指します。この時期は毎年「酷暑」「猛暑」と言われる非常に暑い時で、一日を通して暑いため、熱中症や夏バテと呼ばれる体調不良が起こりやすい時期です。
花火大会や夏祭り、夏休み、お盆休みなど人出も多くなる時で、街には活気が溢れます。でも、調子が悪くなってしまっては外出も出来ないため、しっかり休養と水分を摂り、身体を休めるのも大切です。
熱帯低気圧や台風が近付き、悪天候が続く時期でもありますので、急激な体調不良に陥りやすく危険な時期でもあります。ゲリラ豪雨など予期せぬ大雨で危険が伴う場合もあります。天気予報をこまめにチェックし、予め必要な備えをしましょう。
暑い夏=冷やすは間違い!?どんな食べ物が良いの?
三伏の時期は暑い夏です。でも、夏だからといって冷たい物を大量に摂取して、身体を冷やしてしまうのは避けたいものです。
「冬の体調不良は夏に治すべき」とも言われており、夏に冷たい物を取り過ぎることはNGとされています。日本の隣の国である韓国などでは、三伏の時期に肉料理を食する文化が根付いています。ユッケジャンや参鶏湯(サムゲタン)を食べることが多いようです。日本では、土用の丑の日に夏バテ予防で鰻や「う」の付くものを食べますが、そのような風習と似たものと考えられます。また、台湾などでは温かい水を少しずつたくさん飲むことを推奨しており、冷たい飲み物よりも熱中症予防に効果的だと言われています。
中国医学では、三伏時期に「三伏貼」と呼ばれる病気の予防が行われています。膏薬を身体に貼り冬場に罹りやすい病気を予防するのです。膏薬を4枚用意し、それぞれ異なるツボに貼って、約8時間待ちます。その後、それを剥がすだけの簡単な物なのですが、それにより、陽の気が補われ血流も良くなると言われているのです。冬の病気を夏に治すということには一定の道理があり、陽の気が満ちている夏の時期に身体の老廃物を出しておく事で、抵抗力を高めて冬の病気に罹りにくくするのです。毒素は汗と共に流れるという説もあります。汗をかくと「気持ちが悪い」と感じるかも知れませんが、毒素の無いサラサラの汗はたくさんかいても気持ち悪くありません。
暑い三伏をどうやって過ごすの?おススメの過ごし方はコレ!!
暑い三伏はどんな過ごし方をすれば良いのでしょうか?
「伏す」という文字が使われているとおり、家の中で伏せて過ごす時期という意味が込められています。動き回るには暑すぎて適さないということなのでしょう。
昔の人は、暑い夏でも現代の様にエアコンや涼しい素材の服などは無く、自宅に氷や扇風機などを置きながら過ごしていました。今思えば「さぞ辛い夏を過ごしていたのであろう・・・」と思いますが、当時の人々はそこまで暑いと感じなかったといいます。では、なぜそんな事が起こるのでしょうか?その謎を紐解くポイントは「時間」にありました。
農家の場合、夏場は様々な野菜などの収穫などで忙しい時期です。でも、一番熱い時間を避け、涼しい時間に主な活動をすることで暑さを凌いだのです。現代よりも時間に余裕を持ち、ゆっくり丁寧な生活を送る事で、暑さを感じ辛くしてきたのです。家は風の通りやすい方角を選んで建て、陽の傾きや時間帯によりすだれの位置を変え、過ごす部屋を変えてきました。室内の風上に氷の塊を置き、涼を取るついでに野菜や果物を冷やすという画期的な使い方をしていたのです。桃などを冷やせば、桃の甘い香りが部屋中に漂い、天然のアロマとしても活躍していました。環境のことを考えたエコな涼の取り方は、現代で過ごす上でもヒントとなり得るでしょう。
三伏の時候の挨拶とは?
三伏では、その季節を表わす時候の挨拶があります。手紙やハガキをはじめ、ブログや回覧板など様々な場所で見聞きする事があるでしょう。
「三伏の候」、「三伏の猛暑」など、最も暑い季節の挨拶として使用されています。
具体的な使用例や、この時期に用いられる時候の挨拶は以下の通りです。
(ビジネスの場面での手紙)
・拝啓、三伏の候、貴社におかれましては、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
(目上の方への手紙)
・拝啓、三伏の折、ご一同様におかれましては、益々ご活躍のことと拝察致しております。
(知人・友人への手紙)
・三伏の猛暑がこたえる頃となってきました。皆様はその後、お変わりなくお過ごしでしょうか?
・うだるような暑さが続く季節ですが、皆様お変わりありませんでしょうか?
三伏の候は、「三伏の折」「三伏のみぎり」などに変えて使用することができます。また、三伏の候という言い回しは少し畏まった固い印象を与えますので、知人や友人など仲の良い関係の人への手紙には、もう少し砕けた親しみの持てる言い回しをおススメします。
また、三伏は俳句の季語にも用いられています。季語としては晩夏を表わすものです。三伏を使用した俳句は以下の通りです。
・三伏の日に酒飲の額かな
・九夏さんふく風きかぬ暑さ成
・三伏や土間の暗きに壁鏡
などが有名な句です。
まとめ
三伏とは、夏至から数えて第三、第四の庚の日、立秋を迎えてから最初の庚の日までの時期をいいます。
夏の暑い時期を指す言葉ですが、暦の上では「晩夏」です。暑気払い、納涼が欠かせないこの時期には、暑さと上手に関わっていく術が必要です。また、夏の時期にこそ、来たる長い冬を見据えて身体のことを考えた生活を送りましょう。身体を冷やし過ぎず、陽の気を上手に使い解毒を試みると良いでしょう。