香典には金額、書き方、包み方などさまざまなマナーがあり、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。特に、仏教では宗派の違いにも気を付けなければなりません。本記事では、一般的な香典の金額や包み方、渡すときのマナーまで、宗教や宗派の注意点にも触れながらご紹介します。
香典袋の選び方。仏教なら蓮の花柄もOK
香典袋の選び方にはいくつかポイントがあるため、覚えておくと安心です。
香典袋の柄
香典袋は喪家がどの宗教を信仰しているかを基準に選びます。
例えば、仏教、キリスト教では以下のタイプが適しています。
- 仏教…無地、または蓮の花が描かれたもの
- キリスト教…無地、または百合や十字架が描かれたもの
喪家の信仰している宗教がわからない場合は「無地」の香典袋を用意しておくと安心です。
特に、神道(神式)の葬儀の場合は、柄物はマナー違反とされるため、かならず無地の香典袋を準備しましょう。
水引の形や色
水引の形や色も無難とされるタイプを選ぶと良いでしょう。
・形:結び切りが最適
・色:仏教やキリスト教、神式、いずれの場合も「白×黒」または「双銀(銀×銀)」のものが一般的
結び切りには「一度きり」や「繰り返さない」という意味があります。
水引の方向を間違えると縁起が悪いため、正しい向きで付けましょう。
金額に見合った香典袋を
市販の香典袋では、水引がプリントされているものや高級和紙を使っているもの、水引が手の込んだアレンジになっているものがあります。以下のような使い分けが一般的です。
- 水引がプリントされている香典袋:包む金額が5千円以下の場合や、郵送で香典を送る場合に使用
- 高級和紙を使った香典袋:包む金額が5万円以上の場合に使用
- 水引がアレンジされた香典袋:10万円以上包む場合に使用
商品のパッケージに金額の目安が記載されているものもあるため、店頭で選ぶ際はよく見て合うものを選びましょう。
香典袋の表書きは御霊前?仏教でも宗派による
香典袋を準備するときは「表書き」に迷うかもしれませんね。宗教ごとに使用できるとされている表書きの例をご紹介します。
仏教 | 御霊前、御香典(御香料) |
キリスト教 | 御花料、御霊前※プロテスタントの場合はNG |
神道 | 御神前、御玉串料、御榊料、御霊前 |
「御霊前」は、どの宗教でも概ね使用できますが、仏教の場合は宗派によっては表書きとしてふさわしくないことがあるため注意が必要です。
「御霊前」の使用がふさわしくない宗派として知られているのは浄土真宗です。
浄土真宗では死後すぐに極楽浄土で仏様になるという考えがあるため、霊ではなく仏様にお供えする「御仏前」「御香典(御香料)」が適しています。
心配な時は事前に斎場に問い合わせてみても良いですが、一般的には下記のような対応で充分とされています。
- 喪家の信仰する宗教がわからない場合…御霊前
- 仏教であると把握しているが宗派は不明の場合…御香典
キリスト教や神道でも同様に、教派により「御霊前」が適さない場合もあることを覚えておきましょう。
香典袋の書き方
香典袋の上半分に表書きを記入し、下半分に名前を書きます。
使うペンは、薄墨の筆ペンが適しています。涙がインクを薄めてしまった状態を連想させることから悲しみを表しているといわれています。
表書きが香典袋にプリントされているものなら袋に直接記入、短冊になっているものなら短冊に記名します。
お札を包む際のマナーとは。内袋の書き方と注意点
お札を選ぶときのポイント
①偶数を避ける
香典のお札の枚数は、偶数を避けて包みます。偶数は割り切れる数であることから「縁を切る」を連想させてしまうためです。
10万円は、基本的にはこのルールに含みません。
②4と9は避ける
日本では昔から、4や9は縁起が良くないという考えがあるため、避けた方が無難です。
③新札、汚損を避ける
「新札=不幸が起こると予想し準備していた」という考え方があるため、できれば避けましょう。新札しか用意できなかった場合は、お札すべてに折り目をつけることで新札ではないことを表します。
新札以外が良いとはいえ、汚れや破れがあるお札は相手に失礼となるため注意しましょう。
中袋の使用方法
①お札の向きを調整する
香典の場合は、お札を裏返し、中袋の表側にお札の裏面がくるように入れます。
②中袋(内袋)への記入
中袋には金額、住所、氏名を記載します。ご遺族が確認する際にわかりやすくなるための配慮です。
金額の記入は大字(旧漢字)で書くことが一般的です。
《大字での書き方》
一 | 三 | 五 | 七 | 十 | 千 | 万 | 円 |
壱 | 参 | 伍 | 漆 | 拾 | 仟 | 萬 | 圓 |
例えば、1万円の場合「金壱萬圓也」と書きます。
香典の一般的な金額をご紹介
香典は故人との関係性によって、相場とされる金額が変わります。
年齢も金額を左右する理由になるため、20代なら目安の範囲内で低めの金額、30代以上なら目安の範囲内で高めの金額を選択することをおすすめします。
《お通夜・告別式に持参する香典の相場》
両親、配偶者の両親 | 5万円~10万円 |
兄弟姉妹 | 3万円~5万円 |
祖父母 | 1万円~3万円 |
親族 | 1万円 |
友人 | 5千円~1万円 |
友人の家族 | 5千円 |
会社関係(上司・同僚・部下) | 5千円~1万円 |
近所の人 | 5千円 |
- 香典は1世帯につき1つが一般的です。夫婦で葬儀に参列する際は、連名で香典を準備しましょう。
- 自分が喪主を務める場合や、葬儀費を負担する場合は香典は必要ありません。
- 未成年者や学生で親の扶養に入っている場合、両親と一緒に参列する葬儀で香典の準備は不要です。
近年では「香典は辞退します」と事前に連絡される場合もあります。ご遺族の申し出に反して香典を渡すと、かえって失礼になることもあるため気を付けましょう。
香典を渡すときの正しいマナー
香典を持っていくときは、袱紗(ふくさ)に入れて持っていきます。
弔事の場合は、紫色や紺色、茶色の落ち着いた配色のものが無難です。
渡すタイミングは受付時です。以下のような流れが一般的です。
①受付に行き、小声でお悔やみを伝える。
(お悔やみの言葉)
・この度はご愁傷さまでございます
・心よりお悔やみ申し上げます
②芳名帳に住所や名前を書く
マンション名や部屋番号を漏れがないように書きます。
③香典を渡す
受付の方の前で袱紗を開き、香典を出します。香典袋の向きを受付の方が読みやすい向きにし、両手で渡します。
香典を渡す際、軽く言葉を交わすこともありますが、忌み言葉を使わないよう気を付けましょう。
(忌み言葉の例)
・重ね言葉:重ね重ね、くれぐれも、時々
・死や苦痛を連想させる言葉:苦しい、つらい、終わる
宗教によっても葬儀の際に避けるべき言葉は違います。
仏教では「浮かばれない」や「迷う」といった表現が良くないといわれています。逆に仏教以外では「成仏、冥福、往生」などの言葉は使用しないようにしましょう。
お通夜と告別式、香典はいつ渡す?
香典はお通夜と告別式、どちらか一方のみで渡します。
お通夜、告別式、両方で香典を渡すことは縁起が良くないとされているため避けましょう。葬儀で香典を2回渡すこと=不幸を重ねるという考えがあります。
以前は告別式の際に香典を渡す流れが主流だったといわれていますが、現在は両方参列する場合、お通夜の際に渡す方が多いようです。
葬儀に参列できない場合
①後日弔問の際に持っていく
お通夜・告別式ともに参列できず後日弔問に伺う場合は、辞退の申し出がない限り香典を持っていくと良いでしょう。
後日伺う際は突然の訪問は避けましょう。事前にご遺族に許可を取り、日時を合わせて伺うことが大切です。
②現金書留で郵送する
参列できない場合、香典を郵送するという手段もあります。 香典を郵送する際にはいくつか注意するポイントがあるため、おさえておきましょう。
・現金書留で送る
・お悔やみを手紙で伝える
・中袋に住所と名前の記載を忘れない
・現金書留用封筒に必要事項を間違えずに記載する
現金を普通の封筒で郵送することは郵便法の違反にあたるため、必ず現金書留用の封筒で送ります。現金書留用封筒に直接現金を入れるのはご遺族の方に失礼なため、かならず香典袋の上から現金書留用封筒に入れるようにしましょう。
四十九日や一周忌の香典の相場、注意点は?
四十九日、一周忌などの法要に参加する場合も、ご遺族からの辞退がなければ香典の用意が必要です。
葬儀の際の香典と、法事・法要の香典の相違点をご紹介します。
①法事の場合の表書き
仏教では、四十九日からは「御仏前」を使用します。
葬儀の際は薄墨の筆ペンで書くのがマナーですが、法事では濃墨の筆ペンで書きましょう。
②法事の場合の相場
法事では、法要のみ参加するか会食も参加するかにより香典の金額が変わります。
《四十九日・一周忌の香典の相場》
自分から見た故人との関係 | 会食あり | 会食なし |
両親、配偶者の両親 | 3万円~5万円 | 1万円~3万円 |
兄弟姉妹 | 3万円~5万円 | 1万円~3万円 |
祖父母 | 1万円~3万円 | 5千円~1万円 |
親族 | 1万円~3万円 | 5千円~1万円 |
友人 | 1万円~3万円 | 5千円~1万円 |
夫婦・家族で会食に参加する場合は香典を目安よりも多めに包みます。
四十九日・一周忌の法要に参加できない場合、香典を後日持参するか郵送すると良いでしょう。
仏教の四十九日や一周忌の法要のように、他の宗教でも以下のようなものがあります。
・キリスト教
追悼ミサ…3日目、7日目、30日目に行う。
・神道
霊祭(みたままつり)…十日祭、三十日祭、五十日祭がある。
宗教により香典マナーも変わるため、参加する予定がある場合は調べておくと安心です。
まとめ
今回は、一般的な香典マナーについてお伝えしました。
香典袋の書き方や包み方には宗教・宗派によって違いがあり、ルールに沿うことが故人やご遺族に対する配慮にもなります。間違った書き方や偶数、渡す際の忌み言葉などの「避けるべき」なことは控え、大人として常識のあるふるまいを心掛けましょう。
香典のマナーは、一度覚えておくと今後困らない知識です。ぜひ参考にしてみてくださいね。