日本では厄年といわれる歳が人生で何度か巡って来ます。該当年には厄落としをするのが一般的ですが、全国的に同じ方法なのでしょうか?そして、具体的にどんな方法で行われるのでしょうか?ここでは、そんな地域別の厄落としについて詳しくご紹介します。
厄年って何?厄払いは必須なの?
厄年とは、生きている上で一般的に厄災が多く降りかかる恐れがある年齢です。由来は非常に曖昧な部分が多く、はっきりわかっていませんが、平安時代には既に存在していて、人々に広く信じられています。
対象となる年齢は男女で異なり、男性は25、42、61歳、女性は19、33、37、61歳です。中でも男性の42歳、女性の33歳は大厄と言われ、一番注意が必要です。男女ともに3歳を含めるパターンもあります。
厄年はその前後も注意しなければならず、前年を前厄、該当年を本厄、後の一年を後厄としています。
該当年には、神仏の御加護を受け、守ってもらうため「厄払い」「厄除け」の名目でお参りをする人がほとんどです。
通常は、数え年で考えられていますので、神社案内板で目にする該当年齢と誤差を感じますが、一部地域や神社では満年齢で数えることもあります。
厄落としは神社のお参りが一般的?
前述の通り、厄落としは神社でお参りをするのが一般的です。
本厄のみお参りをするという人もいれば、前厄、本厄、後厄、お礼参りと4年連続お参りをする人もいます。
祈祷は、どの神社でも行っていますが、厄除け大師など専門に行っているところもあります。
また、通常のお賽銭を入れるスタイルのお参りだけで大丈夫なのかな?と不安に感じる人も居るかも知れません。厄除けのためのお参りというと、初穂料を支払い、祈祷を受け、お札やお守りをいただいて帰るというイメージがあります。でも、どちらの形式を選んでも、自分自身がスッキリするなら問題ありません。「お守りを身に付けたい」「お札を飾っておきたい」というように、より多くの安心感に包まれたい人は、祈祷を選ぶべきですし、「簡単なお参りで充分」と考える人は通常のお参りだけで良いのです。
地域差がある!?地域別の厄落としや特徴
厄落としには、地域差があります。地域別のイベントやその特徴をみてみましょう。
<北海道>
一部の地域では、草履を履いて神社へお参りに行きます。帰りにその草履の鼻緒を切り、後ろを振り向かずに帰ります。また、別の地域では、本厄時に、知人や友人、親族を招いて宴会を行います。
<東北>
東北地方では、多くが2月1日に厄落としをしています。一部の地域では、神社でお参りをした後に、わざと手拭を落として帰ります。「大原水掛け祭り」という祭りでは、25歳を迎える男性が町へ繰り出し、水を掛けて貰います。
<関東>
茨城県・・・一部地域では、1月14日に大厄(42歳)の男性が神社でお参りし、42枚の十円玉を境内に落とします。
栃木県・・・一部地域では、2月1日にもう一度正月祝いを行い、厄年を終わらせようとする「年重ね」が行われます。
<北陸>
石川県・・・お供えした餅やお神酒を持ち帰り、知人や近隣住民などに配り厄を分けます。また、一部の地域では、37歳の男性も厄年であり、冬至(12月21日頃)は、自宅で食事ができない決まりがあります。その日だけは、親類の家や会社で食事を摂るようにしています。
<甲信>
長野県・・・小正月に火を焚き、そこでみかん等を投げ、拾ってもらう厄落としをします。一部地域では、うろこ柄の着物を着ます。
<東海>
愛知県・・・一部地域で1月8日に「八日講祭り」というものを開きます。鬼と書かれた凧に矢を放ちます。終わった後、壊された凧の一部を持ち帰ると良いとされています。
<近畿>
京都府・大阪府・・・八幡様へお参りをします。
兵庫県・・・一部神社では、前厄の時に火箸を貰い、後厄が終わるまで自宅で祀り、その後奉納します。
<中国>
島根県・・・正月や節分、6月30日に厄落としをします。
山口県・・・厄年の男性が、家を建てる、リフォームなどをする、女性がお盆や茶碗など丸い道具や、長い帯などを買うと良いといわれています。
岡山県・・・1月12日に「お日待ち」という祈祷をしてもらいます。軒下に注連飾りを飾り、床の間には日の出方向に神棚を作り、一睡もせずに祈り続けます。
<四国>
徳島県・・・厄年の者で人形浄瑠璃が行われていました。薬王寺には男厄坂(42段)、女厄坂(33段)があり、訪れた人が一段毎に一枚の一円玉を置きます。
愛媛県・・・春祭りの神楽で厄を落とします。
<九州>
福岡県・・・大宰府天満宮に前厄の男性が梅の木を奉納、本厄に竈門神社に紅葉の木を奉納します。
大分県・・・本厄の男性が餅をついてそれを持ってお参りし、近所へ配ります。
<沖縄>
沖縄県では、干支の年男年女=厄年と考えられています。中でも48歳が本厄です。厄落としの祈願は台所のヒヌカン=火の神にお祈りし、仏壇でもお参りします。60歳以上に巡ってくる厄年には、近隣住民などを招き盛大に宴会をします。
捨て子の儀式も厄落としのひとつ!?
「四十二に二つの子」という言葉があり、42歳の男性に2歳の男の子という組み合わせは良くないと考えられており、捨て子の儀式が行われています。。これは、42に2を足すと44で「死死」で死を連想させて不吉というわけです。
また、厄年の女性が産んだ子供にも捨て子の儀式がされています。
捨て子の儀式は案外簡単なもので、籠などに入れた赤ちゃんを四つ辻や道祖神の前に置きます。その後、親は振り返らず進み、予め決めておいた者に拾ってもらい親元に返します。
この他にも、小川の向こう側に置いてくる、病院から退院する足で神社の境内に置いてくる、など様々な風習があります。
捨て子というと、一見酷い風習に感じますが、強くて立派な子に育つと豊臣秀吉の時代から行われているものです。このご時世では、あまり長い時間を掛けるのは危険なので、拾う役の人と協力し、子供から目を離さぬよう手早く終えるようにしましょう。
厄年は迷信!?うろこを身に付けると良いの?
厄年には確実となる根拠が全く存在しません。そのため、迷信といわれることもあります。信じる信じないは個人の自由なので、必ず厄落としをしなければいけないという訳ではありません。でも、何か身の回りに良くない事が起こった時に「厄年だからだ」と思うと、より一層不安になるでしょう。また、不安を感じると、更なる災いを呼んでしまうことがあります。それを避けリセットする為に事前に防御できることはしておくと安心です。
厄年にはうろこを身に付けると良いと言われています。昔の人は、着物の鮫小紋などを身に付けていましたが、現在では蛇柄のバッグやベルトなどを身に付けると良いとされています。その他にも、帯や帯締めなど長いもの、七色のものが良いとされていますので、レインボーカラーのチャームや天然石のブレスレットの様なものを身に付けることをおススメします。
厄年は日本だけで信じられているの?
厄年は、海外にも存在します。キリスト教の国であるスペインやイギリス、イスラム教国であるトルコやエジプトあたりでも同じような風習が存在します。各国の厄年事情も見てみましょう。
<中国>
年男・年女=厄年です。
金色や赤色のものを身に付けます。特に春節~1週間ほどは赤い服を着て、なるべく家から出ずに過ごします。
<タイ>
25歳がベンチャベートという本厄です。
<エジプト>
男女ともに4年毎に厄年が訪れ、4歳から60歳頃まで続きます。該当年には結婚してはならないなど、決まりがあります。
近隣に住むお年寄りの家を回り、布地を集めて継ぎ足し、身に纏う物を作ります。
<トルコ>
男性23、43、63歳、女性13、33、53歳が厄年です。
<ドイツ>
男性4~64歳の4が付く歳、女性9~59歳の9が付く歳に厄年です。
紙で小さな人形を歳の数作り、泥の中に立てて騒ぎます。自然と人形が無くなることでその人の厄も落ちると考えられています。
<イギリス>
男性は4が付く歳、女性は7が付く歳です。
<スペイン>
男性24、44歳、女性14、34歳が厄年です。
親族や友人などが見守る中、歳の数だけ馬の肉を食べます。その後は一昼夜踊り明かします。
<ロシア>
男女ともに9~79歳の9が付く歳に厄年です。
親族や友人知人が取り囲む中、唄いながら馬に乗り、わざと落馬します。
このように、各国にもそれぞれの厄落としがあります。
日本で厄年とされる年齢は、いわゆる身体が変化する時であると言われています。そのため、できるだけ身を慎み、大きな生活の変化を避け、健康に気を付けた穏やかな生活を心掛けると良いと考えられているのです。特に、心身の負担が伴う結婚、転職、引っ越しなどを避ける人が多いように感じられます。そして、これらの考えは、万国共通ということなのでしょう。
まとめ
厄年には地域別の厄落としが存在します。これらは古くから信じられてきたものですが、根拠はないため、信じるかどうかは自分次第です。地域の厄落としも、昔から地域ぐるみで勢力的に行っている所とそうでないところで意識の差があるのかも知れません。世界を見てみても、日本と同じように定期的に厄を落とす習慣があり、そうすることで、周囲や自分の気持ちもリセットし、新たな生活に意欲を持つようにしているのでしょう。
もし、気になるのであれば、自分の住む地域の厄落としを試してみるとスッキリとした気分を味わえるかもしれません。