「私が死んだら、遺骨を海に撒いてほしい」と考えている人も居るかも知れません。とてもロマンチックな話ですが、本当に海にお骨を撒くことができるのでしょうか?その場合、どんな点に気を付けて、どの位の費用がかかるのでしょうか?ここでは、海洋散骨のアレコレについて詳しくご紹介します。
海洋散骨とは?基礎知識と費用
海洋散骨とは、故人を火葬して骨壺に納め、墓石の下に埋めるのではなく、遺骨を海に散布する方法です。自然に還りたいと願う人や、海が大好きであった人に人気の高いものです。自然葬の一つとして捉えられています。
海洋散骨には大きく分けてヘリコプターなどで空から海へ撒く方法と、船上から海に撒く方法とがあります。
ヘリコプターやセスナ機で海洋散骨する場合は、船酔いなどを心配する必要がありません。でも、搭乗人数が2~3人に限られますので、皆で見送りができないのがデメリットです。尚、この場合の費用は35万円程が一般的です。
船舶での散骨は、故人のために船を丸ごと貸切るチャーター散骨プランと、何名かを合同で見送る合同散骨プラン、親族の代わりに散骨を頼める代行散骨プランとがあります。費用はチャーター散骨プランは20万円~、合同散骨プランは15万円~、代行散骨プランは5万円~が一般的です。それぞれのプランで見送りに立ち会える人数も変わります。チャーター散骨プランでは、船を貸切るため20名以上が乗船でき親族一同で見送ることが可能です。合同散骨プランでは、他の家庭も同時に乗り込みますので、2~3名での乗船が可能です。代行散骨プランでは、陸から散骨の様子が見られることもあります。
また、ペットを海洋散骨できるプランもあり、5万円~の費用で行っております。
海洋散骨が可能な場所は?法律を守り許可が必要?
海洋散骨は法律に違反するのでは?と心配する人も多いことでしょう。でも、墓地以外に遺体を埋葬することは禁止されているものの、散骨を禁止する規定はありません。且つて、刑法の「遺骨遺棄罪」という罪に抵触するのでは?と議論されていましたが、散骨は葬送のため、祭祀の一つの方法として節度を持って行えば違法にならないという見解です。そのため、散骨はあくまで個人の自由なのです。だからといって、散骨がどこでも許可なしに自由に行えるわけではありません。地上の場合、他者の私有地に撒くわけにはいきませんし、許可が不要な自己所有の土地であっても周辺住民とのトラブルに発展してしまうことがあります。
その点、海洋であれば大きなトラブルに成り辛いというメリットがあります。では、具体的にどんな場所で散骨が認められているのでしょうか?次項で詳しくみていきましょう。
漁業や環境に影響が無いように!海のルールは守る
前述の様に、海洋散骨は法律に抵触しないため比較的人気の高い散骨方法です。でも、海では漁業なども行われており、環境の保全やトラブルを防止するために、「一般社団法人 日本海洋散骨協会」によってガイドラインが設定されています。
- 遺骨は1~2mm程度の粉末にする。
- 人間などが立ち入る海岸は避け、立ち入り可能な陸地から一海里以上離れた沖で行う。
- 養殖場、養魚場、航路は避ける。
- 副葬品は自然に還らない物NG。水溶性など水に溶けるもの、自然に朽ちるものだけにする。
- 花の場合はセロハンなどはNG、花びらだけにするなど工夫する。
- 乗船前に保険に加入しておくなど、参列者の安全確保に努める。
- 船の乗り降り時など、海辺の一般の方に配慮し、喪服は着用しない。
主にこのようなルールが決められていて、漁業や環境、周辺住民や一般客などに配慮することが求められています。海洋散骨をする人がルールやマナーを守り続けることで、今後も続けていけるということを理解する事が大切です。
尚、遺骨の粉砕は、特殊な加工なので海洋散骨クルーズを行う会社などへ別途依頼をします。
セレモニーは必要?どんな流れ?
海洋散骨では、船上で簡単なセレモニーが行われます。
まず、参列者で海洋散骨を行います。別途写真サービスなども用意されていますので、散骨のお別れシーンを写真に収めてもらうことができます。その後、皆で海に向かい黙祷を捧げます。献花と献酒を行います。花びらと酒を海に撒きます。その後、散骨した海域を周回し、お別れをします。
船によっては散骨の儀式を終えた後にバーベキューやビュッフェなど食事を楽しめるプランもあります。
故人が還った海を眺めながら、親族や親しい仲間で食事を取り、故人との思い出話に花を咲かせることもできるのです。
船酔いなどが心配な場合には、陸に戻ってから食事会を設ける人もいます。
また、オプションで水溶性の紙にメッセージを書き、海へ浮かべるということをする方もいます。
オンライン乗船ができるプランもあり、遠方に住む方や体調が優れない方、事情があり船に乗れない方にもお別れの様子を見てもらう事ができます。
お参りがしたい場合にはどうしたら良いの?年忌法要は?
海洋散骨を選択すると、当然ながら目に見える形でのお墓は存在しません。では、故人へのお参りや年忌法要の際にはどのようにしたら良いのでしょうか?
海洋散骨を手掛ける会社では、基本的にメモリアルクルーズのプランを用意しています。メモリアルクルーズは参加一人当たり1万円ほど掛かるのが一般的です。勿論、年忌法要のプランもあり、一回当たり2~3時間で船内セレモニーを行います。
乗船すると最初に散骨ポイントを回遊し、お参りと献花・献酒を行います。その後は船内で会食などを行います。天気が良ければデッキに出て記念撮影などを行うこともできますし、プランによっては海から見える観光名所に立ち寄ることもできます。東京湾ではレインボーブリッジやお台場周辺などを回るのが人気です。
大切なのは故人の想いを誰が引き継ぐか?
終活で海洋散骨を心に決める人も多く、その詳細がエンディングノートなどに纏められていることがあります。
たとえ後を継ぐ親族が海洋散骨に良いイメージを持たなくても、故人の希望はなるべく叶えたいと考えるはずです。同じ海洋散骨でも、担当するアドバイザーや手掛ける会社により、プランは様々です。大切な人を失った傷心の中、後を任された親族が多くの事を選ぶのは酷なものです。本当にこれが本人の希望なのか?と悩んでしまうこともあります。そのため、海洋散骨でも生前予約を可能としているプランもあり、故人本人が生前にじっくりプランを見比べ、決めることができます。既に予約まで済ませてあれば、引き継ぐ者もスムーズに実行に移せます。故人の想いを確実に引き継いでもらうためには、生前予約の活用が良いのかも知れません。
まとめ
海洋散骨は、自然葬の一つで海に遺骨を撒く供養の方法をいいます。海洋散骨は有名人なども活用していて、徐々に知名度や人気が高まっています。セスナやヘリコプターを使い空から海へ撒く方法と、船から海へ撒く方法とがありますが、価格や利便性、プランの多様さから船の方が多く選ばれています。年忌法要なども散骨場所を回遊して、お参りや供養をするなど工夫がなされていますので、思ったほど不都合が起こらないのも特徴です。終活をしている人も、これを機に海洋散骨を前向きに考えてみては如何でしょうか?