お通夜や告別式に参列する際は、マナーをしっかり押さえておくことが大切です。特に、服装やお焼香、お香典などは宗教や宗派によって細やかな違いがあります。簡略化された作法も多くなっていますが、基本となる注意点は守って失礼のないふるまいを心掛けたいものです。本記事では、お通夜・告別式の参列者が気を付けたいマナーについてご紹介します。必要な持ち物についても解説しているため、参列する前にチェックしておきましょう。
知っておきたい「お通夜」と「告別式」の違い
お通夜と告別式は同じことをしているようで、儀式の意味には違いがあります。
- お通夜とは
お通夜といえば告別式の前に行う儀式ですが、元々は、故人と親しい人たちが集まり、ご遺体を見守りながら朝まで過ごす風習でした。一晩中交代でろうそくの火を灯し続けなければならないという風習は今も残っています。
一方、近親者のみという認識は現在ではあまりなく、お通夜の方が参列者が多い傾向があるようです。お通夜は夕方から行う儀式であり、時間の都合がつきやすいという特性があるためです。
- 告別式とは
告別式とは、故人と最後の別れを偲ぶための儀式です。本来、告別式の前には遺族が故人の冥福をお祈りするための「葬儀」がありますが、現在ではまとめて「告別式」とされることが増えています。式の流れの中では割愛せず、葬儀と告別式を行います。
午前や昼間に行われることがほとんどのため、都合がつきにくく遺族や近親者のみの参列となることが多いようです。
お通夜に参列か告別式に参列。どちらが良い?
現在では、お通夜への参列、告別式への参列、どちらを選んでもかまわないとされています。親しい友人やお世話になった方ならば、お通夜と告別式の両方に参列しても良いでしょう。
お通夜・告別式に参列する際の服装マナーを解説
喪服は弔事用の衣装であるため、持っている場合は着ていくことをおすすめします。喪服には種類があるため覚えておくと安心です。
- 正喪服…正喪服は正装とされている格式が最も高い喪服です。遺族や喪主が着用することが多いでしょう。
- 準喪服…一般的に喪服というと準喪服のことを指します。服装の指定がない場合、持っているのならば準喪服を着て参列しましょう。
- 略式喪服…略式喪服は黒をはじめとしたダークカラーでまとめた服装です。スーツやワンピースを合わせた落ち着いたコーディネートが一般的です。
近年ではお通夜、告別式ともに略式喪服での参列者も増えているようです。準喪服を持っている場合でも「平服で」という指定があった場合は略式喪服を着て行きましょう。
略式喪服(平服)のマナーをチェック
略式喪服は決まった形がないだけに何を着て行けば失礼に当たらないのか迷うこともあるでしょう。お通夜・葬儀・告別式に参列する際の服装の注意点について、男性、女性に分けて解説します。
略式喪服の基本「男性編」
黒色(または濃紺)の上下セットになったビジネス用スーツが基本です。ジャケットもスラックスも無地で光沢がない素材を選びましょう。スーツに合わせるものも柄物は避け、光沢やテカリがないオーソドックスなものがおすすめです。
ネクタイ | 黒色・無地 ※くぼみを作らないよう結ぶ。 |
シャツ | 白色・無地 |
靴下 | 黒色・無地 |
靴 | 黒色・無地 |
バッグ | 黒色・無地 |
いずれもビジネス用のもので問題ありません。
略式喪服の基本「女性編」
黒色か濃紺で、ジャケットとワンピースのセットアップが無難です。ない場合は上下セットのスーツでかまいません。露出は適していないため、スカートの丈は膝が隠れるよう注意しましょう。無地で装飾や光沢がないものを選びます。
ストッキング | 黒色・無地(ラメはNG) |
靴 | 黒色・無地。パンプスが無難。 エナメルや光沢のある素材は避ける。 ヒールは3~5㎝。 |
バッグ | 黒色・無地。装飾がないシンプルなもの。 布製で光沢がない素材が基本。 |
ネックレス | 一連の真珠のものが無難。 二連や派手なものは避ける。 |
参列者の服装「その他の注意点」
- アクセサリーは着用しない
結婚指輪以外のアクセサリーは外した方が良いとされています。 - コートを着る際もシンプルなものを
なるべくダークトーンで装飾がないものを選びましょう。毛皮や革製のものはマナー違反です。 - マスクは白の不織布が無難
オーソドックスな白の不織布が無難ですが、黒でも失礼にあたらない場合が多いです。 - 学生は制服でOK
制服は着崩さずに着用しましょう。
制服のない学校に通っている子や未就学児は黒やダークトーンで無地の服を着せると安心です。
参列者の身だしなみ。髪形や化粧の注意点
服装だけでなく髪型やメイクもチェックしましょう。
髪型の注意点
- 髪色
黒色、暗い茶色が良いとされています。金髪や派手な色の場合はできれば暗く染めた方が無難です。
ただし、お通夜では「訃報を知って急いで来た」という捉え方もあるため、明るい髪色のままでも良いという意見もあります。
ヘアスプレーを使用する方や暗い色のウィッグをつけて参列する方もいるようです。 - 髪型
アレンジはせず、まとまった髪型が適しています。
ヘアワックスで立たせたり光沢を出すのは控えましょう。
長い髪は下の方で一つに結んでおくと良いでしょう。黒やダークカラーのヘアゴム・ヘアピンを使用します。
お化粧の注意点
薄めのお化粧が基本です。色はあまり使わず、シンプルが良いとされています。
一方ですっぴんもマナー違反にあたるため、普段メイクをしない人も簡単な作法は覚えておきましょう。
- ベースメイク:パールが多く入ったものは避け、薄めに仕上げましょう。
- アイシャドウ:ベージュ系を使用し、派手にならないようにします。
- アイライナー、マスカラ:使用しない場合が多いです。使う場合も控えめにしましょう。
- チーク、リップ:使用しない場合が多いです。使う場合は色が派手なものは避けましょう。
- ネイル:マニキュアは落としましょう。すぐに落とせない場合は手袋を着用するという手段もあります。
お通夜、告別式に参列する際の持ち物は?
参列する際には以下の持ち物が必要です。不足なく準備をして向かいましょう。
【参列者が必ず持参するもの】
①香典
香典は遺族より辞退の申し出がない場合は必ず持参しましょう。お札の封入方法や金額、香典袋への書き方は宗教によって違いがあります。基本的なものを覚えておきましょう。
-
- 香典袋:無地で黒×白か相銀の水引がついたもの
- 表書き:御霊前が無難とされている
- お札の枚数:偶数と9は避ける※10は例外でOK
- お札のルール:新札はNG。新札なら折り目をつける。
- 内袋:名前、住所、金額を記入する。
(金額の目安)
親 5万円~10万円 兄弟 3~5万円 祖父母 1~3万円 親族 1万円 友人、仕事関係者 5千円~1万円
②袱紗
香典袋を包むために必要です。色は暗めのものを選びましょう。
③数珠
珠の大きさが大きめのものは男性向け、小さめのものは女性向けです。
数珠はおまもりの意味合いもあるため貸し借りせず自分のものを準備しましょう。
④ハンカチやティッシュ
ハンカチは黒や白のシンプルなものを用意しておきましょう。
【参列者が場合により持っていくもの】
- 予備用のストッキング
ストッキングは伝線しやすいため、予備を持っておくといざという時に良いでしょう。 - 名刺
仕事関係者のお通夜・告別式に参列する場合は持っておくと安心です。
お焼香の意味と正しい作法
お焼香は、仏様や故人へ敬意を示し拝むものという意味合いがあります。詳細な作法は宗派により違いますが、基本的な動作はほとんど同じです。
お焼香は喪主、遺族、親族と順に行います。自分の順番が来たら静かに立ち、焼香台の前へと進みましょう。
【お焼香の流れ】
- 焼香台の前に立ち、ご遺族へ一礼する。
- 一歩進み、遺影に向かい一礼する。
- 抹香を右手で取り香炉に入れる。この時使う指は親指と人差し指、中指です。
- 必要な回数、3の動作をする。宗派ごとに良いとされている回数は違います。
- 遺影に向き直り、合掌。その後一礼します。
- 焼香台から少し離れ、ご遺族へもう一度一礼する。
- 静かに席まで歩きます。
(宗派ごとの回数の目安)
真言宗 | 3回 |
曹洞宗 | 2回 |
浄土真宗大谷派 | 2回 |
浄土真宗本願寺派 | 1回 |
臨済宗 | 1回 |
日蓮宗 | 1~3回 |
浄土宗 | 1~3回 |
天台宗 | 1~3回 |
宗派によっては、抹香を手に取った際に額の高さに掲げることもあります。
故人との関係が親族や友人の場合は、先に喪主や遺族が宗派に倣った方法でお焼香を済ませるため、見ておくと良いでしょう。
お通夜・告別式の参列マナーQ&A
「こんなときはどうする?」「これはマナー違反になる?」などのQ&Aを集めました。参列する際の参考になれば幸いです。
服装や作法以外に注意するべきマナーはある?
忌み言葉を言わないように配慮が必要です。忌み言葉とは、死や苦のイメージにつながりやすい言葉や、悲しみの繰り返しを連想させるような言葉で、お通夜や告別式では使うとマナー違反になるとされています。例えば、以下のような言葉です。
- 死や苦のイメージ:四、九、死亡、生きていた
- 繰り返し:たびたび、重ね重ね、追って
参列できない場合の対応は?
参列することができない場合は、後日弔問するという方法もあります。アポなしでの訪問はマナー違反のため、ご遺族に日程を相談しましょう。
妊娠中は何を着て参列したらいい?
妊娠中は締め付けのない衣服で、黒色・無地のものを着用しましょう。マタニティ用の喪服をレンタルできる貸衣装屋などもあるため探してみても良いでしょう。
まとめ
今回は、お通夜・告別式へ参列する際のマナーについてお伝えしました。
葬儀は服装や身だしなみ、持ち物など、気を付けなければマナー違反となってしまう事柄があるため、まずは基本をしっかりと抑えて準備したいですね。注意すべき点を守り、大人として恥ずかしくないふるまいでお通夜・告別式へ参列しましょう。