大根焚きという行事があることを耳にしたのだけれど、大根を焚いてどんな行事をするのだろう?自分の住んでいる所では行われていないけれど、どこで行われているの?と知らない人も多いのではないでしょうか。今回は、どこでどのように行われ、どのような意味があるのか?大根焚きについてお伝えします。
大根焚きとは?
京都では冬になると「大根焚き」という年中行事が行われるのが、現在では当たり前の風物詩と言っても過言ではないようです。
京都に住んでいる人には恒例の行事である「大根焚き」とは、昔、お釈迦様が悪魔の誘惑にまけることなく、12月8日に悟りをひらいたことを喜ぶとともに感謝したのが始まりです。時は流れ、お釈迦様の悟りを開いた12月の初旬に大根を大きな鍋で焚いたものを仏前にお供えし、参拝者へもふるまうように変化しました。
大根を焚きあげるので、「だいこんたき」と言ってしまいそうですが、実際には「だいこだき」と呼ばれています。
毎年、11月末位から翌年の2月の間いずれかに京都の特定の寺院で行われ、中風などにかからないようにとの諸病封じや健康でいられるようにと無病息災の願いを込めて祈願するもので、寺院ごとに多少、大根焚きにまつわる意味合いや作り方など違いがあるようです。
どの寺院においても毎年多くの参拝者が訪れ、一年を何ごともなく過ごせたことに感謝し、来年も元気で平和に暮らしていけるようにと願いながら、ふるまわれた大根焚きをいただくそうです。
最近では、大根焚きのツアーも組まれるほどの人気ぶりで、まさに冬の京都の行事としてかかせないものとなっています。
大根焚きの大根
ひと言に大根焚きといっても、それぞれの寺院のよって大根の焚き方には違いがあるようです。各寺院ごとに大根焚きの由来や捉え方に違いがあるのと同じく、大根を必ずこのように焚き上げなければいけないといった決まりはありません。
大根に凡字を書いて焚き上げる寺院もあれば、大根だけを炊き上げるところ、大根と油揚げを一緒に炊き上げるところ、焚き上げた大根と油揚げに柚子をそえるところなど、寺院ごとに炊き上げ方も異なります。
味つけにおいても、塩だけで焚き上げる寺院・しょうゆも合わせて焚き上げる寺院があり、寺院ごとで違った味つけです。また、参拝できなかった人のために凡字の書かれた生の大根を用意している寺院もあり、お土産にと手に取る参拝者の姿も多く見られます。
大根には、カリウム・カリシウム・リン・マグネシウム・ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンC・ナイアシン・パントテン酸・葉酸といった人の体に必要な成分がたっぷりと含まれる食材で、捨てるところは全くないといってもよいほど、豊富な栄養を含んでいる、昔から人々に重宝される食材です。
また、昔から冬になると、昼の時間が短くなることから、太陽の力が弱くなり、人々が生きる上での力も弱ってしまうと考えられていました。冬場には火を焚くことで、弱まりつつある人間の力を補おうという昔の人々の思いがありました。
栄養たっぷりの大根を火で焚いて、昔の人たちは一年の無事を感謝し、これからの無病息災・五穀豊穣などを大根焚きという形にし、冬場に枯渇した人たちが力を蓄えられるようにと願ったと言えます。
「自分の住んでいる地域の寺院では、大根焚きは行われていない。」と残念に思う人も多いことでしょう。そんなときには、ご自宅で自分なりに感謝と祈願を思いながら、大根・油揚げを使って大根焚きをしてみてはいかがでしょうか。
大根焚きはどこで行われるの?
大根焚きは主に京都の寺院で行われます。大根焚きを行っている京都の寺院として、鳴滝了徳寺・大報恩寺・岩倉妙満寺・宇多野三宝寺・嵯峨覚勝院・新京極蛸薬師堂・大原三千院・嵐山鈴虫寺などがあります。
大根焚きと聞くと、京都の風物詩として有名なため、京都だけで行われている年中行事のように思えますが、調べてみると、京都のみならず大根を焚いて厄除け・無病息災・五穀豊穣などを祈る地域があり、実は日本でも姫路市の阿弥陀寺は毎年11月23日に霜月の行事として大根焚きが行われています。
ほかにも大阪市の法楽寺では、毎年12月28日に不動境内でおおきなかまどで大根と赤いこんにゃくを焚き、参拝者たちに柚子みそとともに振る舞われているようです。また、奈良県の宝山寺でも、大根は人の体にある毒を消すとして聖天厄除大根焚きとして、参拝者に大根を振る舞います。
大根焚きはいつ行われるの?
大根焚きっていつ行われいるのだろう?と気になる方も多いことでしょう。元々、お釈迦様が悟りを開いたことを由来としていることから、毎年11月末から翌年の2月までの約3カ月の間に行わています。
大根焚きを行う日数は、1日しか行わないところ、2日間行うところ、3~4日間行うところと寺院によっても異なります。
鳴滝了徳寺では毎年12月9日と12月10日に約三千本の大根を昼夜を問わず大鍋で焚き、約一万人ほどの参拝者にふるまわれます。大報恩寺では、毎年12月7日と12月8日に法要を行い、無病息災を願う多くの参拝者に味つけして煮込んだ大根がふるまわれます。
岩倉妙満寺では12月8日に行われる成道会の法要の後で、厄除けにも諸病除けにも効くと言われる大根が振る舞われ、宇多野三宝寺では厄落としとして毎年12月の第一日曜日に大釜で何時間もかけて焚いた大根を振る舞います。
嵯峨覚勝院では、ほかの寺院より少し早めの旧暦の小雪の日の始まりである2日間に、歓喜天・聖天様にお供えすると喜ばれるとされるお供え物・生命を養う薬として焚き上げた大根を振る舞います。
新京極蛸薬師堂では毎年12月31日に無事に1年間過ごせたことに感謝し、新年を元気に過ごせることを願って大根を振る舞い、嵐山鈴虫寺では毎年最後の地蔵菩薩縁日と前日の2日間にお地蔵さんに感謝の気持ちを伝え新しい年の無病息災を願うとともに、炊いた大根が振る舞われます。
東山法住寺では、三十三間堂の通し矢と同じ日に大根焚きが行われ、多くの参拝者においしく炊き上げた大根が振る舞われます。
ほかの寺院より少し遅く大根焚きが行われるのは、大原三千院です。大原三千院では毎年、立春を過ぎた初午の日に開運招福・五穀豊穣・無病息災を願い、有機栽培された大根を焚いたものが振る舞われます。京都の大根焚きの締めくくりが三千院です。
2019年の大根焚き
どの寺院も毎年、時間をかけて祈願しながら焚き上げます。お釈迦様への感謝の思い・人々の健康を祈願して行われる大根焚きですが、2019年にそれぞれの寺院で行われる、京都の寺院ではいつ行われるのか?調べてみました。
〇宇多野三宝寺では、11月30日・12月1日
〇大報恩寺では、12月7日・8日
〇岩倉妙満寺では、12月8日
〇鳴滝了徳寺では、12月9日・10日
〇嵐山鈴虫寺では、12月14日・15日
〇東山法住寺では、1月15日に近い日曜日
〇大原三千院では、2月8日・9日・10日
2019年の大根焚きはこのような日程で予定されていました。(令和元年11月25日現在の情報です。)大根焚きという、昔ながらのすてきな年中行事ですので、足を運んでみるのもよいのではないでしょうか。
大根焚きを振る舞われる時間帯は、寺院ごとによって異なりますので、行く機会がある方は前もって情報を集めて「大根焚きの大根がもらえなかった…。」などといったことにならないように、気を付けたいところです。
また、京都以外の寺院で行われる2019年の大根焚きの日程はこのようになっています。
〇阿弥陀寺(姫路市) 毎年11月23日
〇法楽寺(大阪市) 毎年12月28日
〇宝山寺(奈良県) 12月1日
すでに終わってしまっている寺院・これから開催される寺院とさまざまですが、人々が元気に暮らしていけるようにと祈願して行う日本に古くから伝わる年中行事です。
まとめ
「大根焚き」について今まで知らなかったという人も多いことでしょう。日本には今回の大根焚きのように、まだ知られていない、古くから伝わるすてきな年中行事がたくさんあります。いつの時代になっても、昔の人々の思いや伝統をのちの時代に伝えてみてはいかがでしょうか。