修二会(しゅにえ)という行事をご存知でしょうか?日本の寺院で冬に行われるイベントなのですが、一体どんなもので、どんなことをするのでしょうか?ここでは、修二会について、一番有名な東大寺の修二会を中心に詳しくご紹介します。
修二会とは一体どんなもの?歴史は?
修二会とは、日本の仏教寺院で毎年二月に行われる法会です。別名、修二月会ともいわれます。
奈良時代には、既に主要な寺で行われていたという歴史があります。昔は旧暦一月に実施されており、その年の豊作を祈る仏教の行事でした。
修二会は悔過(けか)作法といわれ、その年に参加する僧侶が選ばれ、仏前で人々の罪を懺悔し、清めた身体で礼拝をする苦行の一種です。
修二会の歴史の起源は、751年に遡ります。笠置山で修行をしていた実忠という者が、竜穴を見付けました。そこに入り天界に辿り着いた 彼が見たものは、天人達が十一面観音の悔過を行う様子でした。行法が進むと、観音菩薩が現われ、その姿に魅せられた実忠は、「これを下界でも行いたい」と強く願いますが、天人に「天界の一日は人間界では四百年であり、到底追い付かない」と言われてしまいます。それでも諦められず、「では、少しでも追い付くべく走って行います」としたため、現在の走りの行法になったのです。
翌752年に東大寺に二月堂が創建され、初の十一面悔過が行われました。
東大寺が有名!?お水取り、花会式とは?
修二会は様々なお寺で行われますが、有名なのは東大寺二月堂で行われる修二会です。これは通称「お水取り」「お松明」と呼ばれています。薬師寺の修二会は通称「花会式」と呼ばれています。
その他にも、長谷寺、法隆寺の西円堂など主要な寺でも開催されており、全国では主に真言宗や天台宗の古い寺で行われています。
お寺では、一年を通じて様々な行事がありますが、修二会はその中でもとりわけ有名です。観光客も見れるイベントは一部ですが、それでも多くの人が訪れます。尚、イベントは元来二月に行われていたため、『二月に修する法会』のことから修二会という名がつきました。
お水取り、別火、お松明とは一体何!?
修二会では、「お水取(みずと)り」、「別火(べっか)」、「お松明(たいまつ)」など、聞き慣れない言葉を耳にします。これらは、一体どのようなものなのでしょうか?
お水取りは、3月12日の夜中=13日の午前1時頃に行われます。観音様にお供えする水を、若狭井という名の井戸から汲み上げます。これ自体は地味な儀式ですが、この日は大きな炎が見られるので人気です。
松明は本行中に毎晩焚かれます。基本的に一日10本が焚かれますが、お水取りの行われる12日には11本が焚かれます。
また、この日から3日間は、「達陀」と呼ばれる行を行います。8人の練行衆が達陀帽を被り、若狭井から汲んだ水(香水)を撒きながら松明を持ち、狭い堂内を飛び回ります。水と火の粉が舞う大迫力の舞台です。松明は、全長7メートル、重量40キロもあるものです。12日は全長8メートル、重量70キロもあり、迫力が更に増します。
別火は、本行が始まるまでの練行衆の準備期間をいいます。これは、世間と火を分ける、別にするという意味が込められています。この期間は、一般的に世間で使用されている火は使わずに、火打石で起こした火を用いて生活します。
練行衆は何人?どんなことをするの?
修二会のお勤めは「練行衆」が行います。これは、毎年選ばれた11名の僧侶が勤めます。
まず、四職(ししき)と呼ばれる上席が決められます。四職は、和上、大導師、咒師、堂司という名が付けられます。また、それ以外の7名は平衆(ひらしゅ)と呼ばれ、北座衆之一、南座衆之一、北座衆之二、南座衆之二、中灯、権処世界、処世界と名付けられます。
選ばれた者は、例年2月20日頃から別火坊の御堂である「戒壇院」という場所に入ります。ここでは、修二会に向けて身を清めます。まず、最初の5日間で「試別火」を行います。試別火の期間は、一切境内からは出られず、自由な飲食も禁止されます。21日には、「試みの湯」をして、来たる修二会への覚悟を新たにします。別火坊では、日々声明の練習をし、法具の準備もします。長いお経を読み、最終日には暗記し、腹の底から声が出せるようにします。23日からは、練行衆とそのお世話である三役を交え、仏前を飾る餅や造花を作ります。餅は約1000個も作られ、造花の椿は400個、南天は50個作られます。造花を作る作業を「花ごしらえ」といいます。皆で車座になり、紅白や黄色に染められた和紙を切り、タラの木で作られた芯に糊付けしていきます。餅は、搗いたものを丸め、一日で全て作ります。
2月26日には「総別火」に入ります。順に入浴を済ませ、紙で作られた特別な衣を纏います。私語は禁止され、飲み物などを自由に摂ることも禁じられます。また、別火坊に備えられた「テシマゴザ」という茣蓙の上しか座れません。
3月1日に練行衆は二月堂に入ります。二月堂では一日に六回、「十一面悔過」の勤めをします。
六回のお勤めにはそれぞれ名称があり、「日中」、「日没」、「初夜」、「半夜」、「後夜」、「晨朝」と呼ばれます。
練行衆のサポート役、三役なども大切
練行衆は、準備期間、本行中も非常に大変な苦行を強いられます。それでも挫折や諦めることをせずにお勤めをこなせるのは、信心する人々を救いたいと思う強い気持ちと、周囲の助けがあるからです。
練行衆を共に支え、協力、サポートするのは三役と呼ばれる人々です。三役には、堂童子、小綱兼木守、駆士という名が付けられています。彼らは別火より練行衆と共に過ごし、満行を迎えるまで外出も禁じられます。それ以外にも、童子、仲間、加供奉行、院子、大炊と呼ばれる人々も協力しており、実に30名以上の者が関わります。
修二会では、練行衆が寒い中、火鉢のみで暖をとったり、茶湯や飲食を制限されたり、せっかく作っても椿の花付けの際に取り落としてしまったものは塵とみなされ、その後使用できなくなったりと非常に厳しい作法がありますが、準備や本行が滞りなく進行するのもサポート役の手助けがあってこそなのでしょう。
修二会のスケジュールは?
ここでは、有名な東大寺の修二会のスケジュールを紹介します。
東大寺の修二会は、現在毎年3月1日から15日まで行われています。準備を含めると前年から非常に細かい行事が幾つもあります。その中でも、主な日程は、以下の通りです。
12月16日 翌年に行われる修二会の練行衆(11名)を発表
2月12日 新入習礼※初めて参加する僧侶が居る場合に行われます。
2月15日 新入、新大導師別火入り
2月18日 油はかり
※修二会で使用する灯油を測ります。
2月20日から25日 試別火(ころべっか)開始
※新入の場合は15日より入る
2月20日に試別火坊へ入り、21日に神輿洗い、内陣清掃、試みの湯、注連撒き、結界注連縄張りなどが行われます。結界を張るのは大切で、鬼の侵入を防ぐためといわれます。
23日に花ごしらえ、24日に上七日壇供搗き、25日に社参、暇乞いが行われます。この期間に、体内から、「むさぼり」「いかり」「ぐち」の三毒を祓います。
2月26日から28日 惣別火(そうべっか)開始
※閏年には2月27日に開始
惣別火の期間に貝吹き、声明の稽古、衣の儀式などが行われます。
2月26日に惣別火入りをし、糊炊きをします。27日に粟の飯、椿花付け、28日に参籠宿所入りをします。
3月1日から14日 修二会の本行が始まる
本行は最初の7日を上七日、後半7日を下七日といいます。
3月15日 満行を迎える
このようなスケジュールで進行します。
修二会の見どころは?
修二会の見どころは、お松明という人が多いでしょう。火の粉が降りかかるほど近くで見ることもできますし、遠くからゆらゆら揺れる炎を眺めることもできます。
3月1日から13日までは、毎日19時から、14日は少し早まり18時半から行われます。
火の粉を間近で見たいという人には、二月堂前広場がおすすめです。この広場には約3~4千人もの人が入れます。松明の火の粉を浴びると健康になる、幸せになると言われており、それを目当てに多くの人が訪れます。
火が怖いという人には、200メートルほど離れた第二拝観席辺りが丁度良いでしょう。ゆらゆら揺れる炎が見えます。
どちらで見る場合でも、早めにその場所に行き、余裕を持ち案内を待つことが大切です。
この期間に祈祷をしてもらうには、事前申し込みが必須です。例年2月10日までの受付なので、忘れず済ませておきましょう。
2020年に新たな感染症などが流行しており、東大寺をはじめ、様々な寺院で新しい参拝方法、イベントの見合わせ措置がとられています。修二会も今後どのような対応になるか分かりませんが、必ず毎年事前に確認するようにしましょう。
まとめ
修二会は二月を美しいものにするという意味もあります。現在は3月に行われていますが、日本の美しい冬の終わりを告げる行事です。練行衆が行う十一面悔過やお水取り、お松明は迫力満点で見る者を圧巻します。
有名な歌手も修二会を唄っていたり、非常に有名なイベントなので、興味があれば是非足を運んでみてください。