うちわまきと聞いて、すぐに何のことかわかる人はあまりいないかも知れませんね。
しかしこのうちわは、ただのうちわではありません。
たくさんの人に欲しがられる価値のあるうちわです。
うちわまきとは何なのか、どうしてうちわをみなが欲しがるのかを説明します。
理由がわかれば、みなさんもきっとうちわを手に入れたくなりますよ。
うちわまきとは何?その由来とは
うちわまきは奈良県の唐招提寺で、毎年行われる行事です。
名前の通り、たくさんのうちわを観客にまく行事で、唐招提寺の中興の祖、覚盛上人(かくじょうしょうにん)にちなんだものです。
唐招提寺といえば、鑑真という名前を思い出します。
鑑真は唐招提寺を建立した僧で、日本の仏教はこの人によって整えられました。
しかし平安時代以降、唐招提寺は衰退してしまいます。
これを復興したのが覚盛上人でした。
覚盛上人は鎌倉時代の人で、ひたすらに仏道を極め、殺生を嫌いました。
修行中に蚊に刺されても、自らの血を与えるのも仏の道であるとして、弟子が蚊を殺すことを許しませんでした。
その話を聞いた人々が、覚盛上人が亡くなった後に、蚊を殺さなくても、せめて払ってさしあげたいと、上人の墓前にうちわを供えたことがうちわまきの由来だといわれています。
うちわには魔を払う魔除けの意味があるため、うちわまきの日にはうちわ目当ての大勢の人たちが唐招提寺にやってきます。
同じようなうちわがいつでも1000円で手に入りますが、やはりうちわまきで手に入れるうちわには、特別感があります。
しかもこの日のうちわは無料なので、欲しくなる気持ちは大いに理解できますね。
うちわまきはいつ行われる?参加する方法とは
うちわまきは曜日にかかわらず、毎年同じ日、5月19日の15時から行われます。
これは覚盛上人の命日が5月19日だからです。
覚盛上人の徳を偲ぶ法要が終わった後に、唐招提寺の鼓楼の上からうちわがまかれます。
うちわまきの前には参加券が配られます。
参加券は数が決まっているので、参加券のために大勢の人たちが並びます。
うちわまきに参加して、うちわを手に入れたい人は、まず参加券を手に入れる必要があります。
参加券が配られるのは、午前9時からですが、開門はそれより早いために7時頃には並ぶ人がいるそうです。
参加券と抽選券の数だけうちわは用意されていますから、参加券が手に入れば、うちわは必ず手に入ります。
かつてうちわまきにはたくさんの人が殺到し、手を伸ばすためにうちわがボロボロになってしまうことが多かったそうです。
参加券方式にしてからはそのようなことはなくなり、うちわまきは安全な行事になりました。
参加券を手に入れた人たちは50名ずつに分けられて、うちわまきに参加します。
混雑や争いはありませんから、みながうちわを無傷のまま持ち帰ることができます。
くれぐれも地面に落ちたうちわを踏んで壊したりしないように、注意してください。
またもらえるうちわは1人1本と決まっており、うちわを手に入れたら、その場から退場するルールになっています。
このルールも必ず守るようにしてください。
安全のために、うちわまき参加者には年齢制限が設けてあります。
参加できるのは、原則20歳から60歳までとなっています。
遠方から出かけて、参加できないのは残念ですから、十分に注意してください。
参加券の配布の後は、抽選券が1000枚配布されます。
参加券が手に入らなくても、諦めずにこちらを手に入れましょう。
抽選券は14時30分まで配布されますが、これはうちわまきが終わった後に、当選した人がうちわを受け取れるものです。
うちわまきに参加できるわけではないので、勘違いの無いようにお願いします。
午前中に参加券を手に入れた後は、15時のうちわまきまで時間が余ってしまいますね。
うちわまきの日は参加券を見せれば、1回の拝観料で何回も唐招提寺に出入りできます。
安心して、周辺の観光などを楽しんでくださいね。
うちわまき当日、唐招提寺で楽しむために
うちわまきの当日、唐招提寺の鼓楼周辺には著名人が奉納したうちわが飾られています。
漫画家ちばてつやさんが描いたものはひときわ目立って、毎年人気があります。
過去に奉納されたうちわも屏風仕立てにしてあり、鑑賞できます。
参加券をもらうために朝早くからやって来た人も、あっという間に時間が経つこと毎違いなしです。
うちわまきが始まる前には舞楽の奉納が行われます。
色鮮やかな異国情緒の漂う衣装を身に着けた踊り手が、雅楽の音色に合わせて踊る様子は見応え満点です。
普段、舞楽はなかなか見られませんから、ぜひ鑑賞することをお勧めします。
ただし舞台があるのは屋外です。
5月の奈良の日差しはとても強いので、紫外線対策や水分補給を忘れないようにしてください。
また唐招提寺に来たからには、金堂も忘れずに見学しておきたいですね。
金堂には梵天・帝釈天立像が控える中に、盧舎那仏坐像、薬師如来立像、千手観音立像が並んでいます。
どれもみな国宝に指定されているものです。
博物館に展示されている仏像もよいですが、やはりあるべきところにある仏像を眺めたいものです。
うちわまきのついでというより、これらを鑑賞するために唐招提寺を訪れてもよいくらいです。
唐招提寺の中だけでもかなり楽しめそうですね。
うちわまきでまかれる特別なうちわ「宝扇」とは
みんながこれほど欲しがるうちわとは、一体どんなものなのでしょうか。
うちわは宝扇という名前がついていて、長さは持ち手の部分も入れて約40cm、扇の部分は赤い和紙で縁取られたハート型をしており、梵字で真言(仏の言葉)が書かれています。
魔除けになるのはもちろんですが、雷や火事などの災難を防ぎ、無病息災、安産のお守りにもなります。
害虫も防ぐとして、畑にこのうちわを立てる人もいるそうです。
うちわの持ち手に使われるのは、女竹という笹の1種ですが、これは三重県の名張市や伊賀市から無償で提供されたものです。
提供された女竹は1年間保管された後に、水洗いをされて唐招提寺内の建物の縁側に天日干しされます。
これは春の風物詩になっていて、近隣の人たちはこの光景を見ると、うちわまきが近付いてきたことを感じるようです。
宝扇は寺の僧侶や職員によって1本ずつ丁寧に仕上げられますが、寺の人たちだけでなく、近隣の人たちの心が入っているのを感じます。
だからより一層ご利益を感じるのかも知れませんね。
ハート型なのも人気の要因のようで、唐招提寺の売店では、宝扇そのものも売っていますが、宝扇をミニチュアにしたストラップや宝扇を図案にしたガーゼタオルなども売っています。
なぜハート型なのかの由来はわかりませんが、蚊の命まで大切にした覚盛上人の慈愛の心を形にしたようにも思えます。
また、お釈迦様は菩提樹の木の下で悟りを開いたといわれています。
菩提樹の葉の形がハート型をしているため、仏教とハート型は縁が深いのです。
だから宝扇もハート型なのかもしれません。
ハート型は、ただかわいいだけではないのですね。
ちなみに宝扇は、壊れる可能性があるので、郵送などはしていないそうです。
現地に行かなければ購入できないところがありがたみを感じさせて、一層手に入れたくなりますね。
宝扇はうちわの形をしていますが、お守りです。
ご利益は1年間です。1年経ったらお寺に奉納して、また新しいものを手に入れましょう。
現在は参加券の配布により、混雑が緩和されているため、それほどうちわを遠くまでまかなくてもよくなりました。
それでも5月の明るい空の下で、鼓楼からハート型の宝扇がまかれる光景は、見る人の心を和ませて明るくしてくれます。
宝扇をまく僧侶のみなさんの顔まで笑顔になっているのが印象的です。
この光景が、宝扇のご利益といってもよいのではないでしょうか。
うちわまきに確実に参加するために、注意した方がよいこととは
あまりにも有名な唐招提寺ですが、最寄り駅はJR・近鉄奈良駅か近鉄西ノ京駅になります。
奈良交通六条山行きバスに乗車して、バス停唐招提寺で下車してください。
うちわまき参加券を手に入れるためには、拝観料が必要になりますので、注意してください。
大人・大学生は600円です。
また雨天の場合はうちわまきが中止になることもあります。
その場合は、直接手渡しになるそうです。
もちろん、参加券を持っていない人はうちわをもらえないので、雨が降っていても参加券はもらっておいた方がよいですね。
産経ニュースによると、今年は参加券が500枚配られるそうです。
昨年よりも数が多くなっていますから、うちわを手に入れられる可能性が高いです。行ってみる価値があると思います。
まとめ
うちわまきの由来や時期を知ることで、うちわがみなに喜ばれ、欲しがられる理由がわかっていただけたと思います。
人はみな災難を払い、幸運を呼ぶものが大好きです。
そんなものが自分の眼の前に、無料で落ちてきたら、それこそ幸運を感じられますよね。
だからみなが朝早くから並んででもうちわまきに参加するのです。
それに伝統ある唐招提寺と、ハート型のうちわの組み合わせはとても新鮮です。
この新鮮さも人々を惹きつけるのかもしれません。
みなさんも有名な唐招提寺で、初夏の空に舞うたくさんのハートを見物してみてはいかがでしょうか。