建築業界では昔から「三隣亡に気を付ける」というしきたり、迷信があります。建築関係では凶日といわれて避けられています。普段はなかなか耳にする機会が無いため、この言葉を知らない人も多いのではないでしょうか?ここでは、そんな三隣亡について、どんなものなのか?何に注意すべきか?を中心にご紹介します。
建築業界でいわれている三隣亡とは?
三隣亡(さんりんぼう)という言葉をご存知でしょうか?これは建築業界で大凶日といわれるものです。三隣亡は、その名の通り「この日に建築をすると、大火を起こし、三軒隣までを亡ぼす」といわれており、建築業界では、この日を避ける傾向にあります。
現代でも言い伝えとして色濃く残るこの迷信ですが、実は三隣亡の由来は、未だ且つて不明であり、一体いつからいわれ始めたのか全く分かっていません。でも、江戸時代の文献に「三輪宝」というものがあり、その意味が「蔵建てよし」「屋建てよし」と吉日を表わしていました。それが伝わる中で、よし(良し)があし(悪し)に変わり、「蔵建てあし」「屋建てあし」と凶日の意味が付けられたのではないか?とされています。人は、良い事よりも悪い事の方を信じやすいという深層心理があるため、悪い事の方が後世に伝わってきたのでしょう。とにかく、三隣亡に何かを築こうとすると、大きな失敗が付き纏うという怖い迷信なのです。
三隣亡=不吉?具体的になにに気を付けるべき?
前述の様に、三隣亡は不吉なものです。では、具体的になにを避ければ良いのでしょうか?
建築関係では、高い所に登ると怪我をするとも言い伝えられています。そのため、地鎮祭、上棟式、仮柱、土起こし、建前などの建築関係はやってはいけません。土地や家の購入、契約などもなるべく別の日取りにすると良いでしょう。
引っ越しなら大丈夫と考える人は多いのですが、引っ越す先の土地柄や迷信なども関わって来ますので、避けられるならばそれに越したことはないでしょう。
結婚や入籍なども三隣亡を避けた方が良いと考えられます。結婚や入籍は、「家庭を築く」という意味があるため、特に気を付けているという家庭も多いのです。また、宗派や地域によっては葬儀や法事も行わない場合があります。高齢化が進む近年では、葬儀場運営の観点から、三隣亡まで避けていられないこともありますので、家族内で良く相談して決めるようにしましょう。
三隣亡はいつなの?避ける方法は?
では、三隣亡とは具体的にいつなのでしょうか。
三隣亡は、基本的に十二支の午、寅、亥の年のことです。
この暦を避けられれば良いのですが、一年間を丸々避けると時間がかかるため、その年の中でも特に避けるべき月日だけを省く様にしています。避けるべき月日は、一年の暦を24に分けた二十四節気と干支の組み合わせで算出できます。該当の日は、それらの十二支が凶変する危険な日といわれています。
午の日・・・3.6.9.12月
寅の日・・・2.5.8.11月
亥の日・・・1.4.7.10月
これらの月日を避け、更に大将軍の遊行日と呼ばれる日にに着工すれば問題ないとされています。
また、三隣亡の前の年に地鎮祭など各種お祓いを済ませ、現場に着工の印である仮杭を予め打ち込んでおけば、該当年に工事をしても差し障りありません。場合によっては、該当する一年間その土地を鎮めておくこともできます。更に午、寅、亥の年以外にも念の為、該当の月日を避けるという建築会社も多いものです。毎年、六曜や十二支の書かれたカレンダーや手帳も販売されていますので、それらで確認すると安心です。
地鎮祭や新築、引っ越しだけじゃない!納車にも注意すべきなの?
三隣亡には、地鎮祭や新築、引っ越し、結婚などなにかを築くという事を避けるようにします。
では、その他に注意すべきことはあるのでしょうか?
納車の日程を気にする人もいますが、そこまで気にしなくても良いでしょう。でも、どうしても気になる様であれば、一粒万倍日や天赦日など、吉日を選んでみましょう。車に乗る際は安全運転が重要なので、自分が一番気分よく乗れる時に購入することが大切です。
また、厄払いや七五三など参拝は吉日が良いとされていますが、三隣亡は特に気にしなくても良い様です。厄払いも七五三も、三隣亡を気にして参拝を翌年に持ち越してしまっては意味が無いからです。参拝の場合は、特に神吉日と呼ばれる日を重要視してみましょう。
その他のお祝い事や契約事も、建築に関わらなければ特に注意する必要はありません。
新潟県や群馬県の一部地域では、三隣亡の日には贈り物をしないというしきたりがあります。それは、その日に土産物を贈った者は成金になり、貰った者は没落するという言い伝えがあるからです。
また、庄内地方では、午、寅、亥の年は一年中三隣亡であるとされています。他にも、この日には約束事をしない地域もあります。
このように、三隣亡の迷信には、多少なりとも地域差が伴います。引っ越し先や契約先などが別の地域である場合には、考慮が必要です。
意味を正しく知り、予定を立てよう
三隣亡は建築業界で最凶日といわれています。でも、私達が生活する上で必要以上に恐れることはありません。
特に家との出会いは一期一会といっても過言ではありません。手を拱いている間に、気に入った土地・家が別の誰かに取られてしまっては、後悔の念が消えないでしょう。三隣亡の意味を正しく理解し、ご紹介した避け方を駆使することで自分の気に入った家に住むことができます。但し、気を付けないと末代にまで影響があると言われていますので、ないがしろにして良いものではありません。自分達が気にしていなくても、隣近所が嫌がる場合もあります。特に昔から迷信が色濃く伝わる地域では、余所者というだけでも良い印象を与えません。その上、凶日に避けられていることを行ってしまえば、白い目で見られその後の近所付き合いに影響をもたらしてしまいます。
また、三隣亡と大安とが重なる日は注意しなければなりません。大安だから大丈夫と安易に考えず、建築関係は実行しないようにしましょう。
三隣亡は昔の大工さんたちの休日だった!!
日本が太陽暦と月曜日から日曜日までの七曜制を導入した明治時代初期頃までは、三隣亡が大工など建築職人の休日でした。例年、月に2~3日程三隣亡があるため、建築の凶日に休む事にしていたのです。
寒い日も暑い日も毎日懸命に仕事をこなしていた職人さんも、やはり定期的に休みを取らねば、思わぬ大きな事故に見舞われる可能性があります。また、昔は家を一軒建てることは、現代よりも遙かに時間と労力が掛かり近隣住民への負担もありました。職人の安全と近隣住民への心配りを三隣亡=休みという事で配慮していたのです。
まとめ
三隣亡とは、非常に謎の多い暦です。科学的根拠はなく、あくまで迷信ですが、悪いと言われる日に何かをすると良くない事が起こるのでは?と不安になり、それが現実化してしまうことを恐れる人間が大切に守ってきたしきたりです。
主に建築業界で伝わるしきたりですが、地域によっては全員で守るものとされていますので、住み慣れない土地へ引っ越す場合には注意が必要です。結婚なども、家庭を築くという意味がありますので、なるべく避けましょう。