『大雨時行』という言葉を聞いたことがありますか?四字熟語みたいだけれど一体なんて読んだらいいのでしょうか。意味もなんだか分かりずらいですよね。これは、72候の1つです。『たいうときどきふる』と読みます。行くが降ると読むのが不思議な感じがします。更に大雨が時々降るというのは一体どういうことなのか、大雨って長く続く雨のことなのかそれとも一度に多くの雨が降ることなのか、どう理解したらいいのか難しい表現ですね。
『大雨時行』の時期と意味、どんな由来があるのかについて紹介していきます。雨の呼び方とこの時期の特徴を知って上手に乗り切りたいですね。
大雨時行は何て読むの?
『大雨時行』という言葉を知っていますか。聞きなれない言葉ですよね。何て読んだらいいのかも迷ってしまいますね。これは『たいうときどきふる』、『大雨』は『だいう』とも読み、72候という日本に古くからある暦の第36番目の候に当たります。36番目ということで、ちょうど半分が終わる時期です。
72候というと聞きなれない方が多いかもしれませんが、24節気は耳にする機会が多い、季節を表す言葉ですね。24節気という言葉自体には馴染みはなくても24節気を表す、暦の上で春になる立春や、同じように夏になる立夏、立秋、立冬はニュースでも紹介されるのでなんとなく聞き覚えのある言葉ですよね。夏至や冬至も同じく、24節気の1つです。カレンダーにも24節気が書かれていることがあるので、なんとなく聞いたことがありますね。
天保時代に完成し、明治の初め(明治6年、1873年)まで使っていた『天保暦』と呼ばれる太陽太陰暦がいわゆる旧暦です。この旧暦は太陽と月の動きをもとに作られていて、月の満ち欠けにより1か月の日数が決まっていました。新月を1か月の初日にしていた為、1か月が29日と30日となり、1年が354日だったので、どうしても暦と季節感がずれてしまいました。このずれを修正するために24節気を使っていました。24節気は地球から見た太陽の軌道を15度ずつ24分割して、それぞれに名前を付けたものです。1年を24分割しているので1つの節気は15日間ですが、これを更に初候、次候、末候と5日ずつ3分割したのが72候です。72候では、その時期の特徴となる自然現象をつけています。
『大雨時行』は、24節気『大暑』の末項で、初候は『桐始結花』で『きりはじめてはなむすぶ』、次候は『土潤溽暑』で『つちうるおうてむしあつし』で土が太陽に熱しられて熱を放ち、蒸し暑い時期という意味です。
どんな時期?大暑との関係は?
『大雨時行』は、一体どんな時期なのでしょうか。『大雨時行』は、大暑の末項で72候の36番目(8月2日~6日頃)ということはこの末候が終わると一年の半分が終わりますね。旧暦の1年は、立春、つまり春から始まっていますので半分が終わるということは夏が終わるということです。
『大暑』の時期は、とにかく暑くて大変だから『大暑』という名前がついたくらいの、暑さ真っ盛りの時期。だいたい7月23日頃から8月6日ごろまでで、土用の期間とも重なっています。もちろん、ウナギを食べる土用の丑の日も大暑の期間に含まれています。
『大雨時行』は、大暑の末候だからそろそろ暑さが終わる時期と思われるかもしれませんがそうではなく、収まることを知らない暑さが続いている時期で、暑さ対策や、暑さに負けないように体を冷やしていかなくてはいけない時期なのです。そのため体を冷やす効果のある夏野菜などの食べ物を食べたり、土用の丑の日のように体力をつける食べ物を食べたりして暑さを乗り切るという訳です。
そしてこの時期の天候の特徴を指すのが、『たいうときどきふる』なのですが、どんな情景なのか、この『たいう』が長い期間の雨のことなのか、雨の量の多さなのか、雨の降る激しさを指しているのか、どれも当たりそうですが、長い期間の雨を指す場合は時期が違うような気もしますし、量や激しさでもイメージが異なり、悩んでしまいます。
『大雨』がどんな雨の情景を指すのか紹介します。
大雨はどんな雨?
夏の『大雨』というとどんなイメージがありますか?梅雨のようにしとしとと長い期間降り続く雨、台風のような強い風をともなる嵐のような雨、夏の空の入道雲から降る夕立、スコールのようなゲリラ豪雨などあります。『大雨』がどんな雨かを考えるうえでカギとなるのが、『時行(ときどききふる)』です。『行』はふるの意味で使われていますので『時』は『ときどき』と読んでいます。この『ときどき』が現在私たちが使う『ときどき』とは意味が違うのです。今、『ときどき』というと、『その時その時』とか、『その都度』とか『しばしば』のように頻度が低い場合に使いますが、ここでいう『時』は『突然』という意味で使っています。そうなると『大雨時行』は、『突然降りだす大雨』となり、夏のこの時期に突然降る大雨といえば夕立ですね。
夕立の季節ですよと言われれば、納得できますよね。真っ青な空に入道雲。まさに真夏の光景です。夏の午後のにわか雨、晴れていたと思ったら夏の強い日差しによる上昇気流によって入道雲が急激に発達して急に大粒の雨が激しく降る夕立。時には雷鳴が鳴り響き、稲妻が走り、一気に激しく降る夕立。天気の急変に驚かされた経験がありますよね。
そして夕立の後の涼しい空気が何とも言えない、雨が降ることでムッとした暑い空気を運び去ってくれたかのような涼しい空気を運んでくれる天の恵みのような夕立がある、そんな時期が大暑の末項『大雨時行』なのです。
雨には種類がある?思わずうなずく雨の呼び名
夕立の特徴は、なんといっても突然に激しく降る雨ですが、もう一つの特徴は局所的に降るということです。この夕立の特徴を表す故事として『夕立は馬の背を分ける』があります。これは夕立は局所的に降るため、ある場所では雨が降っているのにとても近い場所では晴れている様子を表現したものです。
夕立の語源はいろいろあるようですが、一つには『夕立つ(ゆうだつ)』が変化したものが語源という説があり、これは夕方に風や雲、波が起こるという意味ですが、これが転じて夕方ににわか雨が降ることを意味するようになったというものです。この他に、雨の呼び名に関係するものとして、雷を伴って急に降る雨を『彌(いや)降り立つ雨』と読んでいたのが『やふたつ』『ゆうだつ』『ゆうだち』になったという説もあります。前者は急に降る夕方の雨、後者は急に降る雨で急に降る雨ですね。
急に降る激しい雨というと頭に浮かぶのがゲリラ豪雨です。夕立との違いが気になるところですが、ゲリラ豪雨の発生原因は夕立と同じで地上の空気と上空の空気の温度差により、上空の大気の状態が不安定になり積乱雲が発達して局所的に雨が降るというものです。違いといえば、皆さんもお気づきと思いますが、夕立は夕方に降るものですが、ゲリラ豪雨は午前中でもお昼でもいつでも発生しています。つまり発生する時間が関係ないのがゲリラ豪雨と呼ばれているようですね。
日本的な雨の呼び名としては、にわか雨の意味の『驟雨(しゅうう)』、辺りが白く見えるほどの激しい雨のことを『白雨(はくう)』、雨粒が小さく光る矢のように見える雨を『銀箭』ぎんせん)』、光る竹のように降るので『銀竹(ぎんちく)』などのように雨の降る様子からいろいろな名前があります。なんだか風情がありますね。
夏の風物詩の紹介にはやはり俳句? お祭りや食べ物にはなにがある?
大暑の期間は、夏の風物詩といわる行事が多く行われる時期でもあります。特に『大雨時行』の期間には、青森ねぶた祭り(8月2日~7日)、秋田竿燈まつり(8月3日~6日)、仙台七夕まつりや山形の花笠まつりなどの東北区4大祭りの他にも全国各地で夏祭りが行われています。
次に、暑さを乗り切る方法としては、体を冷やしたり、栄養となるものをとったりしますね。そんなことで土用の丑の日がこの大暑の期間にあります。昔からこの時期には『う』のつく物を食べるとよいと言われ、ウナギ、梅干しが夏バテ防止に食べられてきました。その他には大暑の日の食べ物として、てんぷらがありますし、冷たい食べ物や夏に旬を迎える枝豆やキュウリ、ナス、トマトなどの夏野菜は体を冷やすために効果があり、夏の暑さを乗り切る食べ物として取り入れられていますね。
そしてこの時期を楽しむには昔の人の知恵・俳句ですね。大雨それ自体は季語にはなっていませんが、『夕立』は立派な季語で西行法師の『よられつるのもせのくさのかげろひて涼しく曇る夕立の空』(『千載集』)や、森鴎外の『夕立の鞍に着せたる合羽かな』などがあります。
まとめ
- 大雨時行は、『たいうときどきふる』と読み、夕立が発生する季節という意味。
- 大雨時行は、72候の第36番目で24節気の大暑の末候。
- 時期は例年8月2日~6日頃。
- 大雨は、突然に激しく降る雨のことで夕立のこと。
- 夕立とゲリラ豪雨は発生のメカニズムは同じですが、ゲリラ豪雨は時間の限定がない点が夕立との違い。
72候の1つ大雨時行は、とても暑い時期にあたりますが、夕立があがった後は涼しくなりこの時期を過ごしやすくしてくれる天然のクーラーみたいですね。自然の恵みに目を向けてみるとしばしこの季節を楽しむことができるかもしれませんね。