神社には、鳥居というものがあります。ほとんどの神社で鳥居を見掛けるのですが、何のためにあるのかを知らない人も多いのではないでしょうか?鳥居があると、その近くに神社があるということは分かりますが、一体何を意味しているのでしょうか?ここでは、神社の鳥居についてを詳しくご紹介します。
・神社の鳥居は何のためにあるの?
殆どの神社には鳥居があります。鳥居は、神社の門の役割をしていて、鳥居から内側が神の領域とされています。いわば、神域への入口、結界なのです。そもそも、鳥居は神社が作られる前から存在していました。現在では、神社など神を祀る場所に建てられています。鳥居だけ建っているという場所は、区画整理などで神社と離れてしまったケースが考えられます。
鳥居は神社のイメージがありますが、寺院などの前に作られていることもあります。
鳥居の起源は諸説ありますが、奈良時代から作られた門の一種であり、昔は木を縄で結んだものであったといわれています。神の使いである鳥の止まり木という意味で鳥居と呼んでいる説もあれば、鴨居同様の建築用語であるという説もあります。
また、神社の鳥居前に作られた町を「鳥居前町」などと呼んでいます。
・鳥居の色や形は何を意味しているの?
鳥居は赤、朱色で塗られているものが多く、非常に特徴的です。鳥居の赤い色は、燃える炎、沈む太陽、血液など生命の躍動を表現していて、魔除けの意味を持ち、災いを防ぐために赤色に塗られたという考え方があります。
また、赤色の顔料となっている朱は水銀が原材料なので、木材に塗ることで防腐剤の役目を持たせていたという実用的な理由もあります。
中には、古代ユダヤ教のヘブライ聖書からの影響で赤く塗られているとされる説もあります。
鳥居は赤いものだけではなく、白木を使用した白いもの、黒いもの、石造りのものなどもあるため、赤くなくてはいけないという訳ではありません。ただ、稲荷神社は赤、伊勢神宮は白など祀られている神様によって、暗黙の了解で色が決まっていることもあります。
鳥居の形に関しては、一般的に明神鳥居、神明鳥居のどちらかが採用されていて、変わった形の鳥居というものはありません。長崎市の山王神社にある二の鳥居は、元々二本柱の一般的な鳥居でしたが、原爆により一本が吹き飛ばされ、一本柱鳥居となった非常に珍しいものです。
・鳥居はくぐっても良いの?くぐる際の礼儀作法は?
鳥居が神の居る聖域との結界であることを知ってしまうと、「安易にくぐることはできないの?」と感じてしまいます。でも、鳥居はくぐることができます。ただ、神様の通り道なので、礼儀作法には注意して出入りしましょう。
参道自体も、真ん中は神様の通り道です。人間は端を歩くようにします。何人かで横並びで話をしながら通るような気軽な場所ではありません。小さい子供と一緒ならば、大人が手を繋ぎ一緒に歩きます。
鳥居の前まで参道を進んだら、脱帽し一礼します。神道では「進左退右」という作法がありますので、神様に向かい進む際は左足、退く時は右足から進みます。また、神社を出る時も、鳥居をくぐり終えたら社の方に向き直り、最後に一礼します。
礼儀作法を間違えてしまっても、神様が怒ることはありませんが、礼儀作法を守ろうとする心掛けこそが大切なのです。
・外国にも鳥居のようなものはあるの?
日本の神社には鳥居があるのが一般的ですが、外国にもこのような文化があるのでしょうか?
インドの仏教で伝わるトーラナ、中国の烏竿や華表、牌楼、イスラエルにある移動型神殿、アカ族(雲南省とビルマの国境付近に住む種族)のロコーンという名の村の門が鳥居の起源ではないかという見解もあるくらい、海外にも鳥居様の建築物が存在します。
中でも、中国の牌楼(ぱいろう)は、様々な装飾が施され鳥居よりも華やかなですが、赤を基調とするカラフルな色を使用していて、見た目や形も似ています。
また、アカ族の村の門には、上に木彫りの鳥が置かれたり、鳥を模した造形物が飾られているところから、鳥居の原型なのでは?と考えられています。
このように、諸外国にも鳥居のようなものは存在します。でも、鳥居といえば日本といった形で、外国人観光客が日夜日本の神社を訪れています。
・鳥居の数え方は?
鳥居は、そのものを数える場合は、1基、2基、3基・・・と数えます。
日本では、動かないものは「基」と数えるのが基本となっています。例えば、エレベーター、ベンチ、歩道橋、タワー、ダム、ピラミッドなどです。人力では簡単に動かせないものばかりです。鳥居もその概念に当てはまりますので、基と数えます。
また、参道に幾つも鳥居がある神社では、「一の鳥居、二の鳥居、三の鳥居・・・」とそれぞれを呼んでいます。
近年インスタ映えスポットとして非常に人気の千本鳥居のある京都の伏見稲荷神社では、境内に約1万基もの鳥居が存在しており、華やかさも楽しめます。
・鳥居の構造や材質は?
鳥居の構造は、二本の柱の上に笠木と島木を渡します。柱や笠木などに反りや照りなどが施してあるものを「明神鳥居(みょうじんとりい)」といい、それらが施されていない物を「神明鳥居(しんめいとりい)」といいます。
また、鳥居の素材は様々なものがあり、檜や杉など木材を使用したものを「木鳥居」、石を使用したものを「石鳥居」、銅板などを使用したものを「銅鳥居」や「金鳥居(かなどりい)」といいます。銅鳥居の中でも「唐金鳥居(からかねとりい)」と呼ばれ、浮世絵などにも描かれています。
木製の鳥居の場合、地面に直接埋められていると白アリ被害や腐敗などが起こり危険なため、根元に根巻き石などを施すことがあります。
珍しい素材の鳥居もあり、佐賀県の陶山神社には陶磁器製の鳥居があります。京都府の飛行神社にはステンレス製のものが、秋田県の副川神社には塩化ビニール製のものなどがあります。その他にも、鉄パイプでできたものや、鉄筋コンクリートでできたものもあります。
近年では、耐久性や修復の手間の軽減の観点から、塩化ビニール製の鳥居が選ばれることが増えました。
・日本の有名な鳥居とは?
日本には三鳥居が存在します。
<吉野>銅の鳥居・・・金峯山寺(きんぷせんじ)の参道にある鳥居です。重要文化財に登録されています。
<安芸の宮島>朱丹の大鳥居・・・厳島神社の社殿前、海中に建っています。木造で重要文化財、世界遺産に登録されています。元々平安時代から存在したものですが、現在のものは8代目のもので、1875年7月に建てられたものです。
<大阪四天王寺>石の鳥居・・・1294年に建てられた日本最古の石造りの鳥居です。重要文化財に登録されています。
また、日本三大鳥居というものもあり、厳島神社、伊勢神宮、春日大社です。
日本三大石鳥居は、日光東照宮、八坂神社、鶴岡八幡宮で全て重要文化財に登録されています。
有名な神社にありますので、興味がある方は観光がてら訪れてみても面白いかも知れません。
・まとめ
鳥居は、人の世界と神の世界を分ける結界のような働きをするものです。神域への門とも考えられています。人がくぐる際には、脱帽し一礼をしてから入るのが礼儀です。他人の家や敷地に入るのと同じように礼儀を持って入ることが望まれます。
鳥居は様々な素材や大きさで作られていますが、基本的な形は同じです。置かれている意味も同じです。
このように、鳥居についての知識を得てから神社へ行くと更に神社巡りが面白くなるのではないでしょうか。