神社でお参りをしようとすると、賽銭箱の上に大きな鈴が付いている場合があります。
みながお参りをしながら鈴を鳴らしていますが、実際に自分の番になると、どのタイミングで鳴らせばよいのか、何かマナーがあるのではないかと気になる人もいるのではないでしょうか。
そんなときに、落ち着いてお参りをするために、今回は神社の鈴の名前や意味について解説します。
鈴の本当の名前や意味、参拝のときのマナーなどをお知らせしますから、お参りするときに自信が持てますよ。
神社の鈴の本当の名前! 鈴の意味は楽器?
神社に下げられている鈴は、正式な名前を本坪鈴といいます。本坪鈴は、真ん中辺りにふくらみがあるのが特徴で、福鈴とも呼ばれています。寺院にも似たようなものが下げられていますが、これは鰐口といって平べったく、本坪鈴とはまったく形が違います。
鰐口は魔羯大魚という仏教に登場する想像上の巨大な魚を表しており、これを鳴らすことで魔除けになるという説があります。
それに対して、神社の鈴は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天岩戸(あまのいわと)に隠れてしまったときに、天鈿女命(あめのうずめのみこと)が鈴の付いた矛を持って踊ったことに由来しているといわれています。似たような鰐口と鈴ですが、由来はまったく違うのは興味深い話ですね。
鈴を鳴らすことは参拝の合図だけではなく、神様に鈴の美しい音をおそなえする意味があります。神様におそなえすると同時に、鈴の音は、それを鳴らす私たちの心も美しくして、神社という神聖な場所にふさわしくしてくれます。
また、鈴の音で神様がおいでになり、通じ合うことができるため、魔除けになると考えられてきました。
だから人間は縄文時代から鈴を作ってきました(当時は土で作られた土鈴でした)し、神事で巫女が神楽を舞うときにも、楽器として鈴を使います。鈴を鳴らして神楽を舞うことで、神様がおいでになり、通じ合うことができるから、神様に願い事をして、祈ることができるわけです。
巫女が使う鈴を神楽鈴といいますが、私たちは代わりに本坪鈴を鳴らすようになりました。私たちも、鈴を鳴らすことで神様とつながることができるわけです。鈴の音に力があるから、お守りに鈴が付いているのも納得できますね。
鈴だけじゃない!鳴らすためのひもにも名前と意味ががある!
本坪鈴には鈴を鳴らすためのひもがついています。このひもの名前は鈴緒といい、麻でできており、私たちの住む世界と神様の世界をつなげる大切な役割を持っています。
緒という字にはつなぐという意味があります(身近なたとえではへその緒があります)。関東では紅白2色、関西では紅白に紫や紺色を加えた3色の鈴緒が使われています。
木綿が一般的になるまで、麻は繊維が長くて紡ぎやすいため、人々に重宝に使われてきました。また、大麻の毒性が魔除けになるとも考えられいたため、多くの鈴緒は麻で作られていました。本坪鈴と鈴緒は、必ずセットで使われますが、両方に魔除けの力があるわけです。
3本、太いものは5本のひもをねじって1本のひもにしてある鈴緒からは、神様の世界との力強いつながりが感じられますね。
鈴緒の端には五色の布がついている場合がありますが、これは神楽鈴と同じで、本坪鈴が神楽鈴の代わりに使われていることがわかります。
参拝のマナー!大切なのは丁寧な行動!
参拝のときのマナーは、いろいろなことがいわれています。鈴を鳴らす前に、お賽銭を入れる、などはよくいわれていることですが、これはどちらでもよいことです(神社から指定されているときは別です)。ただ、鈴の音は参拝の合図ではないとわかっていると、最初にお賽銭を入れるのが自然に感じられますね。
鈴をいつ鳴らすかよりも、お賽銭を投げ入れたりしないように、気をつけてください。賽銭箱の近くから、滑り込ませるように入れると丁寧な印象になるでしょう。
神様の世界と私たちをつなぐ役割をしている鈴緒も乱暴に振らずに、両手で優しく揺らしてください。
鈴を鳴らす回数は1回から3回くらいにしましょう。諸説ありますが、神社では2回がよいようです。2回で陰陽を表している、本地垂迹(日本の神はさまざまな仏が姿を変えて現れたものだという考え)を表しているなどの理由があるそうですが、真偽のほどはわかりません。
あまり乱暴に鈴を振ると、鈴が落ちてくる危険もあります。実際にお参りの最中に鈴が落ちてきた経験をした人がいるようで、ネットにはたくさんの経験談が掲載されています。中にはケガをした人もいるようです。
せっかくお参りをしても、頭の上から大きな鈴が落ちてきては、ご利益どころではなくなってしまいますね。
鈴が割れて落ちるのを防ぐために、鈴のふくらんだところ(帯といいます)から下の部分をネジで止めてある、本坪栓差鈴もありますが、安全のためにも、神様の前では丁寧に行動することを心がけたいですね。
その後は神様に手を合わせて参拝をします。普通は二礼二拍手一礼といわれる参拝の作法ですが、出雲大社では違う作法がありますから、その神社の作法に従って、参拝しましょう。
鈴のない神社でも、大丈夫!
今ではすっかりおなじみになった神社の鈴は、江戸時代後期になって登場しました。これほど一般的になったのは戦後のことです。現在でも歴史のある伊勢神宮や出雲大社には本坪鈴がありません。
それでも伊勢神宮には参拝前に手を清めるための場所として、五十鈴川があります。この川の上流で取れる清らかな土を使って作られた土鈴がお守りになっています。伊勢神宮では開運鈴守というお守りもあり、鈴の音が邪気を払うと説明されています。
出雲大社では毎年8月に行われる、みたまむすびの霊行で、端鈴という鈴が用いられますし、しあわせの鈴というお守りもあります。お守りといっても鈴そのもので、1日に1回鳴らすと幸せになれるということで、とても人気を集めています。やはり神様と鈴は無関係ではいられないようです。
鈴を鳴らすことができなくても、柏手を打てば邪気は払われるので、心配は要りません。
鈴のない神社にお参りにいったときも、その神社の作法にのっとった参拝をしてください。
もともと正式な参拝とは、社殿に上がって、祝詞を上げてもらう方法です。これは昇殿参拝、正式参拝と呼ばれ、社務所や授与所での申込みが必要です。私たちにおなじみの鈴を鳴らして、お賽銭を入れて手を合わせる参拝はあくまでも略式の方法ですから、鈴がないことをそれほど気にする必要はありません。
神社での参拝方法も時代とともに、簡略化されて変わってきたのだと考えると、興味深いですね。簡略化されても、気持ちは穏やかに、清らかに保つように心がけるとよいですね。
自分のために購入できる!毎日鈴の音を聞こう!
神聖なイメージが強い本坪鈴ですが、鈴緒とともにネットで簡単に購入できます。鈴の音に魔除けの力があり、その上神様と通じ合えるのですから、自宅に用意したくなる人もいるでしょう。なかなか神社に参拝する機会がない人も、自宅に鈴があれば、お参りした気分になれるはずです。
鈴の値段は大きさによって違いますし、作り方によっても違います。すべて手打ちで作ったものはやはり高価です。
材質としてよく使われているのは、真鍮(しんちゅう)です。真鍮は銅と亜鉛で作られている合金で、亜鉛の割合によって色が違います。亜鉛が多いと、色が薄くなる傾向があります。亜鉛が少ないと、銅の本来の赤みを帯びた色が現れます。
本坪鈴は真鍮を磨いて作られたものだけでなく、金メッキを施したものも販売されていますから、好みによって選んでください。よく見ると鈴の色だけでなく、形にも微妙な違いがありますから、好みのものをじっくりと選ぶとよいですよ。
神棚につけるなら、鈴はあまり大きすぎない方がよいでしょう。ネットでは8分(約2.4cm)という小さなものからそろっていますから、自宅の神棚に合わせてちょうどよいものを選んでください。大半の鈴の大きさは寸で表されていますが、1寸は約3cmですから、覚えておくと参考になるでしょう。
まとめ
今回は神社の鈴の名前や意味について解説しました。鈴だけでなく、鳴らすためのひもにも名前や意味があることがわかりました。何だか神様との絆があるようで、心強く感じられてきますね。
神楽鈴は現在でも楽器として使われています(能や歌舞伎で使われます)。子どもでも気軽に使えるハンドベルやスレイベルという楽器もやはり鈴が使われていますし、インドのグングルという名前の足首につける楽器には、鈴が12個も付いています。
このように鈴には昔から世界中の人間をひきつけてきた魅力があるようです。今度神社にお参りにいくときは、静かに鈴の音に耳を傾けてみたいですね。そのときは、くれぐれも丁寧な行動を心がけてくださいね。