弔辞(ちょうじ)は、故人と特に親しかった方が告別式で故人のことを語りながら別れを惜しむ言葉を読み上げることです。
この記事では弔辞の書き方や例文、弔辞を述べる際のマナー、心構えなどを詳しくご紹介します。
弔辞の意味と役割
弔辞(ちょうじ)は「告別式で、代表者が故人に向けて述べるお別れの言葉」のことです。故人と特に親しかった方が読み上げるのですが、最近ではお孫さんにお願いするというケースも少なくありません。
また弔辞には故人と最後のお別れを述べる役割の他にも、参列者に故人の偉業や人柄を伝え、遺族を慰めるような意味も含まれてるので弔辞を任された際はそのことも踏まえて準備をします。
●弔電とは何が違う?
似たような言葉で「弔電(ちょうでん)」というものもあります。混同されやすいのですが、弔電はいわゆる電報のこと。遠方にいたり諸事情により葬儀に参列できないという場合に、喪主宛にその旨を伝えるために送るメッセージのことを指します。
字面はそっくりですが、中身はまったく違うものですのでご注意を。
弔辞を述べる(読む)際の心構え
弔辞で大切なのは「故人を悼む気持ちです。」故人とあなたの思い出、あなたにとって故人との関係は唯一無二です。形式ばる必要はなく、ご自身の言葉で素直な気持ちを故人に伝えます。
ただ、その中でもある程度の構成はあったほうが良いです。
なぜならあなたは弔辞を述べる数少ない代表者だから。
あなたの言葉を通して、その場にいる人たちが故人の素晴らしさ、故人の生き方などを振り返り、改めて故人のことを想い、悼むからです。
弔辞の文章構成
弔辞の文章は以下のような構成で考えます。
- 故人へ呼びかけるような始まり
- ご自身と故人とのエピソード
- 遺族へ向けた慰めの言葉(故人と親族でない方が弔辞を述べる際は必須)
- 別れ(結び)の言葉
この順番に文を考えると、聞いている方により故人の人柄が伝わり、遺族への配慮もされた文章になります。
ただし弔辞を述べる方が故人と親族であった場合は、ご自身も遺族にあたりますので、以下の「3」は盛り込まなくとも問題ありません。
弔辞の長さ
時間にして3~5分程度、原稿用紙2~3枚ほどの文字量が丁度いいようです。
避けるべき言葉
弔辞にはふさわしくない言葉があります。
「忌み言葉」といわれるもので、不幸があった場には似つかわしくない言葉と考えられるものです。いくつか例を挙げてみますので、このような言葉は使わないようにしてください。
- 生死を連想させる言葉:自殺、死亡、急死、生存、など
- 繰り返すことを連想させる言葉:重ねる、くれぐれも、追って、いよいよ、再び、再三、など
- 故人の成仏に関する言葉:迷う、浮かない、消える、など
- 遺族の悲しみを掻き立てる言葉:大変、辛い、など
ただし直接的な表現でなかったり、繰り返しの音がない表現であれば、同じような言葉でも使用できます。
「生前→お元気な頃」「くれぐれも→十分」といった使い方です。
上述したような表現にならないよう気をつけましょう。
宗教上の理由で使うべきでない言葉
日本では多くの場合仏教式の葬儀になるかと思いますが、中には他の宗教式で執り行うご家庭もあるでしょう。宗教別に気をつけるべき言葉もいくつかあるので注意が必要です。
- 仏教:天国
- 神道・キリスト教:冥福、哀悼、成仏、供養、往生
弔辞の例文
弔辞を書く際の文章の例をご紹介します。
一度目をとおすと雰囲気がお分かりいただけるかと思いますので、初めて弔辞を担当する方は例文を参考に、故人との思い出部分をオリジナルのものにすると上手くまとまります。
故人へのお別れ文ですので、基本的には敬語で揃えるよう意識するイメージですが、呼び方などは生前故人に対し言っていたもので問題ありません。
文例1(友人へ向けた弔辞)******************
○○、
まさか先日一緒に出掛けていたばかりなのにこんなことになるなんて。突然のことで驚くばかりです。
お別れを言おうとしているのが未だに信じられません。
○○とは小学校から同じクラスで、最初はお互いライバルみたいでしたね。
しかし同じサッカーチームが好きということが分かってからすっかり仲良くなって…
それ以来遊びに行くときは必ず○○を誘っていましたね。
進学し違う学校になってからも、月に何度かは顔を合わせ、お互いの話でよく盛り上がったものです。
その後も…
○○が逝去し、ご遺族のみなさまをはじめ、また○○と親交のあった方々の御悲嘆は察して余りあります。くれぐれもご自愛下さいませ。
○○、今まで本当にありがとう。
またたくさん話せるよう、サッカーも仕事も頑張って続けていこうと思うから、見守っていてください。
〇〇年〇月〇日
友人代表 △△
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文例2(祖父へ向けた弔辞)******************
おじいちゃん
こんなに早くお別れを言わなくてはならないなんて、ただ驚くばかりで実感が沸きません。
祖父はよく私と将棋をさしてくれました。聡明であり優しい人でしたから、上手いこと私を勝たせてくれたり、逆に負けさせる時には私にさまざまなことを教えてくれましたね。
寡黙な面もありましたが、私の前ではいつもニコニコしてくれて、祖父のことが本当に大好きでした。しかし甘やかすだけでなく、時には私をしっかり叱ってくれましたね。大切にされていたんだと大人になって気がつきましたが、「あの時はありがとう」と面と向かって言えないままになってしまいました。
その他にも祖父は…
祖父には本当に感謝しかありません。
長い間お疲れ様、ゆっくり休んでくださいね。
〇〇年〇月〇日
孫代表 △△
*******************************************
これはあくまでも例文です。故人との思い出は例で表現できるものでありませんので文章構成の参考程度に見ておいてください。
弔辞の書き方
弔辞文を書く際は、一度原稿用紙に書いてみると、文字数が分かり下書きにも丁度いいです。下準備が整ったら、式場に持って行くために清書を行います。
ここでは式場で読み上げる際に使う弔辞の書き方を紹介します。
巻紙と薄墨を使う
正式な弔辞の書き方は巻紙や奉書紙といった和紙に薄墨で書き上げる形です。
故人が厳格な方であったり形式を重んじる方であったなら、由緒ある巻紙と薄墨で書く方法がいいでしょう。
清書する際は、書き出しを10cmほど空けたところからにし、縦書きで書くようにしてください。適度に行間をとって書き進めると、当日読みやすくなります。
便箋と万年筆を使う
弔辞用の便箋がされているので販売さ使用しても問題ありません。滲んだりすることなく綺麗に書けるように、万年筆やサインペンで清書してください。
パソコンで打って印刷する
現代ならではの方法ですが、パソコンで印字したものでもOKとされています。ただし形式を重んじる方もいるかと思いますので、ご自身も遺族にあたる場合にのみ限定した方がいいかも知れません。
もし印刷するのであれば、印字可能な和紙も売っているようなので、見た目だけでも整えておくとより良いかと思います。
弔辞の包み方
清書が終わりましたら、弔辞を包み葬儀場に持って行く準備をしましょう。
弔辞は手紙であると考えると、最後は封筒に入れるのと同じことですね。清書した時の書き方によっても包み方は変わりますので、併せて確認しておいてください。
巻紙と薄墨で清書した場合
巻紙や奉書紙で清書した際は、使用した紙と同じ材質のもので上包みをします。不祝儀袋で見かける封筒のようなものです。
まず弔辞を書いた紙を、左前になるよう三つ折りにしましょう。
この時余白部分は切り取ってしまって構いませんので、綺麗に三つ折りできるように整えてください。弔辞文を畳み終えたら、上包みをしていきます。
上包み用の紙の中央に弔辞文を置き、上から三つ折りで包みます。包む際も紙は左前になるよう注意してください。三つ折り後は下の部分をまず折り、最後に上部を折って上包みの完成です。不祝儀袋と同じで、上側が下側を覆うような形にします。
上包みの形ができたら、にじまないよう包んだ弔辞を先に取り出し、上包みの正面に「弔辞」または「弔詞」と書き入れて完成です。
便箋と万年筆で清書、またはパソコンで打って印刷した場合
弔辞用の便箋に清書した際やPCで印字した場合は、弔辞を封筒に入れても大丈夫です。
セットのものは便箋も付属していますので便利です。別途用意する際は、真っ白かつ一重の封筒を選んでください。
弔辞は左前になるよう三つ折りにし、封筒の正面には「弔辞」または「弔詞」と書いたうえで入れるようにしましょう。
弔辞の述べ方(読み方)
一連の流れや読み方のポイントについて解説します。
弔辞を述べる際の流れ
読経後に進行役からお声がかかる場面から順を追ってご紹介します。
ご遺族の前、遺族代表として読むものですから、最後まで丁寧な振る舞いを心がけてください。
- 進行役から名前を呼ばれたら、起立し遺族席に一礼する
- 祭壇の前まで進み、正面が上になるよう左手で包みを持ち、右手で弔辞を取り出す
- 遺影に一礼し、両手で弔辞を捧げ持ち読み上げる(左手で持った包みは落とさないよう注意)
- 読み終えた後、元通り弔辞を包みにしまい、遺影の方に向くようにして卓上に弔辞を置く
- 遺影に一礼し、遺族席にも一礼をして、席に戻る
読み上げる際に気をつけること
悲しみの中とはいえ、やはり人前。大勢の視線が集中しますので、多くの方が緊張します。
緊張していると早口になり、また声が小さくなってしまいがちなので、弔辞を読む際はその点を踏まえ、やや大きめの声でゆっくりと話すようにしてみましょう。
3~5分という時間は案外長いので、原稿用紙2~3枚程度の文字数であればゆっくり読んでも十分時間内に収まります。
まとめ
突然やってくるお別れですから、弔辞を読むことを任されるのもまた然り。弔辞を任された際は故人とのお別れを丁寧な形で行えるよう、参考にしていただければと思います。