熨斗(のし)を目にしたことがある人も多いでしょう。御祝い事などに使う熨斗紙や熨斗袋の右上に付いている飾りを熨斗というのですが、一体何を意味して何を表わしているのでしょうか?ここでは、熨斗の基本知識と用途別表書き一覧を中心にご紹介します。
熨斗とは何?由来は?
熨斗とは、慶事・祝い事に使われる贈答品や進物などに飾られているものです。熨斗紙の右上に付けられています。
熨斗鮑が由来で、昔から縁起物、神饌として献上されてきました。熨斗鮑は、鮑の身を薄切りにして干し、琥珀色になったところで竹筒で伸ばし、更に水洗いをして乾燥を何度か繰り返して作られました。現在では、黄色い紙を熨斗鮑に見立てて紅白の紙で包んだ形状が一般的です。また、印刷してあるものも広く使われています。
熨斗は「ウット」とも読まれます。熨=皺を熱でのばす、斗=ひしゃくを表わしていて、昔はアイロンを火熨斗と呼んでいました。中国語で熨斗はアイロンを意味します。
基本知識と用途別表書き一覧
熨斗には用途別に表書きの書き方が決められています。ここでは、その基本知識をご紹介します。
<お祝い全般>
表書き・・・御祝い、御祝
水引・・・紅白の花結び
<結婚>
表書き・・・寿、御結婚御祝、御婚礼御祝
水引・・・金銀もしくは紅白の結び切り
<出産>
表書き・・・祝ご出産、御出産御祝
水引・・・紅白の花結び
<初節句>
表書き・・・初節句御祝、祝御初節句
水引・・・紅白の花結び
<七五三>
表書き・・・七五三御祝、3歳:賀御髪置、5歳:賀御袴着、7歳:賀御帯解
水引・・・紅白の花結び
<入園・入学>
表書き・・・御入園(入学)御祝、祝御入園(入学)
水引・・・紅白の花結び
<卒業>
表書き・・・祝御卒業、御卒業御祝
水引・・・紅白の花結び
<栄転>
表書き・・・祝御栄転、御栄転御祝
水引・・・紅白の花結び
<新築>
表書き・・・祝御新築、御新築御祝
水引・・・紅白の花結び
<開店>
表書き・・・祝御開店、御開店御祝、祈御発展
水引・・・紅白の花結び
<快気祝い>
表書き・・・祝御全快、御本復御祝
水引・・・紅白の結び切り
<長寿>
表書き・・・福寿、60歳:祝還暦、70歳:祝古希、77歳:祝喜寿など
水引・・・紅白または金銀の花結び
<お祝い返し全般>
表書き・・・内祝、粗品
水引・・・紅白の花結び
<結婚内祝い>
表書き・・・内祝・寿
水引・・・紅白の結び切り
<出産内祝い>
表書き・・・内祝
水引・・・紅白の花結び
<快気祝い返し>
表書き・・・快気内祝、快気祝
水引・・・紅白の結び切り
<年始>
表書き・・・御年賀、賀正、迎春、御年始
水引・・・紅白の花結び
<お歳暮>
表書き・・・お歳暮
水引・・・紅白の花結び
<お中元>
表書き・・・御中元
水引・・・紅白の花結び
<暑中見舞い>
表書き・・・暑中御見舞、暑中御伺※目上の方には御伺を用います。
水引・・・紅白の花結び
<寒中見舞い>
表書き・・・寒中御見舞、寒中御伺
水引・・・紅白の花結び
<病気見舞い>
表書き・・・御見舞、粗品、御伺
水引・・・紅白の結び切り、白無地
<災害見舞>
表書き・・・御見舞、御伺
水引・・・白無地
<御礼>
表書き・・・御礼、謝礼、寸志、松の葉
水引・・・紅白の花結び、無地
<お餞別>
表書き・・・御礼、御餞別
水引・・・紅白の花結び
<転居挨拶>
表書き・・・ご挨拶
水引・・・紅白の花結び
表書きを書く際は、濃い色の墨を使用します。書くスペースが限られているため、「御○○御祝」のように長い文字はバランスを考え、正面に大きく「御祝」の文字を書き、右上に小さ目に御○○などを書くようにします。
また、4文字はシ=死を連想させ良くないイメージがあるため、御祝や祝の文字を大きめに書き、スペースを空けるなど工夫をしましょう。
御祝いなどには水引も併用されます。水引は元々、贈答品に掛けられた和紙を留める紐でした。水引には花結び(蝶結び)、結び切りとがあります。花結びは何度も結び直せるため、何度起きても嬉しいい御祝い(出産や長寿祝いなど)に用いられます。結び切りは一度だけの御祝い(結婚や快気祝いなど)に用いられます。
熨斗には種類があるの?
熨斗には様々な種類があります。
一番有名なのは、熨斗鮑ですが、それ以外にも以下のものがあります。
折り熨斗・・・黄色の短冊状の紙を鮑に見立てて、紅白の紙で折り包んであるものをいいます。折り方によって、真・行・草など分類されます。
長熨斗・・・熨斗鮑と同じですが、ひも状に細長く、途切れることなく切り干したものをいいます。
印刷熨斗・・・現代では更に簡略化されて、折り熨斗が印刷されたものも多く見られます。また、印刷熨斗の形も様々です。熨斗鮑や折り熨斗の形を用いない次の様なものも存在します。
<文字熨斗>「のし」の2文字を印刷したものです。
<わらび熨斗>わらびをデザインした熨斗です。
<松葉熨斗>松葉をデザインした熨斗です。
鮑は縁起が良いの?
伊勢神宮では、現在でも熨斗鮑が奉納されています。奉納は、毎年6月12月に行われる「月次祭(つきなみさい)」と、10月に行われる「神嘗祭(かんなめさい)」にされています。熨斗鮑は今でも手作業で作られています。毎年6~8月に三重県の鳥羽市国崎町にある「神宮御料鰒調製所」というところで作られます。一回に200キロもの鮑が使われ、布のように干されている様子を見ることができます。
鮑は元々、100年生きると信じられていて、長寿を表わすものでした。そのため、お見舞いにも熨斗が使用されるパターンもあります。
名前は筆ペンで書く!?選び方は?
熨斗紙や熨斗袋に書く表書きは、筆文字であるのが一般的です。でも、いちいち墨汁と硯を持ちだし、筆で書くのは手間が掛かり、日常的に書道をし慣れない人には大変なものです。そんな人にオススメなのは、やはり筆ペンです。筆ペンも様々な種類がありますので、自分に合うものを探すと良いでしょう。
筆ペン初心者は、筆が細めで固いものをおススメします。固めの筆はサインペンの感覚で書けますし、留めや払いだけに気を付ければ綺麗に書けます。初心者向けの物に慣れてきたら、次はもう少し筆の柔らかい軟筆のものを選びましょう。筆が柔らかくなるため、真っ直ぐな線にも気を配らなくてはなりませんが、より筆っぽい字に近付きます。
筆に慣れている人は、毛質の筆ペンを使いましょう。線に緩急が付き、筆で書く文字を再現できます。
また、筆ペンは細字、中字、太字と書ける太さも変わります。細字と太字がセットになっているものもありますので、書くスペースにより使い分けても良いでしょう。
筆ペンの中には濃墨と薄墨がセットになっているものもあります。慶事が濃墨、弔事が薄墨で表書きを書きますので、一本で慶事も弔事も使い分けができます。
熨斗は祝い事以外には使わないの?
熨斗には、幾つかのしきたりがあります。
弔事や仏事には熨斗を付けません。熨斗は長寿の象徴で、慶事の時にしか使わないのです。また、仏教では、生物の臭いを避けるため、鮑は用いないのです。
魚介類を贈る場合には熨斗を付けません。鮑も魚介類の一種なので、二重になり相手が混乱しないように付けません。でも、近年では気にせず付ける人も居ます。
まとめ
日本では様々な節目、御祝いに熨斗を使用します。熨斗は熨斗鮑が由来の飾りですが、本物の熨斗鮑を用いる人は殆ど居ません。飾りか印刷で済ませるのが一般的です。
熨斗は相手の幸福を祝い、長寿を願う意味が込められていて、素敵な文化です。表書きで何のお祝いか分かるようにすれば、数々の御祝い事に使用できますので、熨斗袋や筆ペンは常備しておいても良いでしょう。
また、御祝いを贈る際は、熨斗のマナーと併せて、贈る時期やタイミングのマナーも守りましょう。