叙勲受章とは、あまり聞き馴染みのない言葉かもしれません。
「そんなに凄いことなの?」とピンと来ない人も多いのではないでしょうか。
しかし、とても栄誉のあることですので、もしも身近に授与された人がいれば御祝いをすべきなのです。
ここでは、日本人なら知っておくべき叙勲や褒章の種類、御祝いのマナーなどを中心にご紹介します。
叙勲受章とは?
叙勲(じょくん)とは、国家や社会に対しての功労者に国が旭日章(きょくじつしょう)または、瑞宝章(ずいほうしょう)を授与することをいいます。
授与は毎年春と秋に行われています。
春は4月29日付、秋は11月3日付で授与されます。
そのため、春秋叙勲とも呼ばれます。
叙勲受章の際には併せて、社会の各分野において、優れた業績を納めたものに褒章の記章を授与しています。
こちらは、春秋褒章と呼ばれています。
叙勲は基本的に70歳以上の者か、所定条件に該当する55歳以上の者に贈られます。
叙勲受章では、賞状とバッジが贈られます。
賞金はありません。
叙勲受章の意味は?
叙勲受章の意味が良く分からないという人も居るかもしれませんが、簡単にいえば叙勲や褒章を授与するのは、国からの感謝の意を表わしているということです。
こういったことは、日本以外の国でも行われていて、イギリスのように功労者に爵位を与えるという国もあります。
受章というと、一般的には受賞と書きたくなりますが、実は受章と受賞では少し意味合いが異なります。
受章は勲章や褒章などモノを受ける際に用いられ、受賞は賞を受ける際に用いられます。
叙勲の種類とは?
前述の通り、叙勲には、旭日章と瑞宝章とがあります。
旭日章とは、顕著な功績をあげた人に授与するものです。
瑞宝章とは、公共的な業務に長年従事した人が授与の対象になります。
これらの叙勲は、それぞれ6段階に区分されていて、・単光章(たんこうしょう)・双光章(そうこうしょう)・小綬章(しょうじゅしょう)・中綬章(ちゅうじゅしょう)・重光章(じゅうこうしょう)・大綬章(だいじゅしょう)となっています。
外国人に対しての儀礼叙勲など、特別な場合に女性に与えられる勲章として宝冠章(ほうかんしょう)と呼ばれるものがあります。
特に大きな功績を納めた人には、大勲位菊花章頸飾(だいくんいきっかしょうけいしょく)という最高位の叙勲が贈られます。
また、著しく危険な業務に精励した人を対象にして危険業務従事者叙勲が贈られます。
日本文化の発達に関し、顕著な功績を納めた者には文化勲章が贈られます。
文化勲章は、毎年秋の叙勲だけは天皇から親授されます。
【日本の勲章】大勲位菊花章大勲位菊花章頸飾-大勲位菊花大綬章日本の最高位勲章勲章のデザインは国旗がモチーフとなっています。
桐花章桐花大綬章明治21年に旭日章の最高位勲章として制定されましたが、現在は別種の勲章とされています。
勲章デザインは日章と桐の花です。
旭日章旭日大綬章-旭日重光章 – 旭日中綬章 – 旭日小綬章 – 旭日双光章 – 旭日単光章勲章のデザインは日章に光線です。
瑞宝章瑞宝大綬章- 瑞宝重光章 – 瑞宝中綬章 – 瑞宝小綬章 – 瑞宝双光章 – 瑞宝単光章勲章のデザインは宝鏡の周りに大小16個の連珠を配置、四条または八条の光線も付けられています。
宝冠章宝冠大綬章 – 宝冠牡丹章 – 宝冠白蝶章 – 宝冠藤花章 – 宝冠杏葉章 – 宝冠波光章女性のみに贈られます。
勲章のデザインは古代女帝の宝冠を据え、周りに真珠、竹枝、桜を配しています。
文化勲章勲章のデザインは、五弁の橘の花に三つ巴の曲玉を配しています。
廃止された勲章金鵄勲章陸海軍の軍人に与えられていたものですが、昭和22年に廃止されました。
定期的に授与されている叙勲・褒章
春と秋に贈られる叙勲・褒章以外にも、随時贈られるものがあります。
勲章では、高齢者叙勲、外国人叙勲、死亡叙勲があります。
死亡叙勲に関しては、受章の対象となるべき人が既に他界している場合に贈られるもので、受け取りは本人ではなく遺族が行う場合が多いようです。
褒章は、公益のため私財を寄付した者に紺綬褒章(こんじゅほうしょう)、表彰対象者が死亡している場合に遺族に贈られる遺族追賞とがあります。
叙勲受章の歴史
日本では古来より勲功をあげた者に対し、勲一等から勲十二等までの勲位を授けていました。
明治以降には、国が個人の功績をたたえ、勲記(賞状のようなもの)と勲章を授けるようになりました。
これは、明治8年(1875年)に制定された勲等賞牌の制度に基づいています。
この制度は、近代日本の栄典制度の礎になっているともいわれています。
国が生きている者に対して叙勲や褒章を贈ることは、このように戦前から行われていました。
第二次世界大戦後の1946年から、一時的にこの制度は停止していましたが、1964年の春から春秋叙勲として再開されました。
その後、栄典制度は等級の簡素化、各勲章についていた数字の廃止などについて見直され、2003年の秋から現在の制度になりました。
それまでの叙勲は、叙等に叙すことを意味していましたが、新しい制度では勲章の受章に変わりました。
叙勲や褒章の審査、栄転制度に関する業務は、内閣府賞勲局が行っています。
栄典の授与は、天皇による国事行為のひとつとして日本国憲法に規定されています。
授与の方法
叙勲は天皇から親授される場合と、内閣総理大臣や各府省の大臣から伝達される場合とがあります。
各章の大綬章と大勲位は宮中で授与式が行われます。
宮中の授与式では天皇が親授することになるため、親授式とも言われています。
その他は、等級に応じ宮中で内閣総理大臣や所管大臣が伝達したりすることとなります。
これは伝達式とも呼ばれています。
叙勲受章の際のお祝いマナー
身近な方が叙勲受章をした場合、お祝いをすることがあります。
お祝い金の相場は5千円~でのし袋は蝶結びの水引を使用します。
身内の場合は少し多めのお金を包む場合が多いものです。
のし袋の表書きは、「御祝い」「御受章御祝」などと書きます。
受章祝賀会に招待された場合は、必ず御祝い金を用意します。
会費制の祝賀会の場合はお祝い金は不要な場合もあります。
平服で参加と言われた場合でも、なるべくフォーマルな服装で参加するようにしましょう。
祝賀会などがない場合は、個人的に御祝いに駆け付けることがあります。
直接御祝いに行く時は、知らせを受けてから10日前後で伺うのがベストです。
受章式典の前後は本人も家族も忙しい時期になるため、先方にあらかじめ連絡をしてからにしましょう。
お祝い金と共にシャンパンや日本酒、花束などを持参すると喜ばれます。
親しい仲であれば、本人の好きな食べ物や万年筆など実用的な物を持参しても良いでしょう。
御祝いに行けない場合は、祝電や贈り物をします。
贈り物にも紅白の蝶結び水引ののしを付けましょう。
祝い酒やお花、カタログギフトなどを贈っても喜ばれます。
御祝いをいただいた側は、冠婚葬祭のマナーと同様に内祝いをお返しします。
内祝いの品物には、受章日と受章記念の文字を入れるのが一般的です。
祝賀会を開く際も、引き出物として記念品を用意しましょう。
叙勲受章の際の服装
叙勲や褒章を受けるために宮内へ参内する場合、どのような服装をして行けば良いのかを悩むと思います。
参内をする際には、ドレスコードがありますので本人はもとより同伴者もそれを守らなくてはなりません。
受ける勲章によって服装の規定がありますので、その内容に従わなくてはなりません。
大勲位菊花章頸飾、大勲位菊花大綬章、桐花大綬章、旭日大綬章、瑞宝大綬章は天皇から直接親授されるため、男性は燕尾服を着用、女性はイブニングドレスやロングアフタヌーンドレスを着用します。
着物の着用は認められませんので注意が必要です。
文化勲章、旭日重光章、瑞宝重光章、旭日中綬章、瑞宝中綬章、小綬章、双光章、単光章の場合、男性は紋付羽織袴、フロックコート、モーニングコートのいずれかを着用します。
女性は色留袖または色留袖と同格のロングアフタヌーンドレスを着用します。
色留袖の場合は、薄い色の華やかな柄のものを選びます。
第一礼装の五つ紋がふさわしいでしょう。
また、帯や小物は格の高い着物に合わせた上品な物を選びましょう。
小綬章、双光章、単光章の場合は、準礼服を着用することもできます。
アンサンブルスーツやスーツでも可能ですが、スカートはふくらはぎ丈くらいのものを選びましょう。
同伴者が居る時は、2人の格を合わせるのを忘れてはいけません。
褒章の種類
叙勲と共に授与される褒章にもさまざまな種類があります。
紅綬褒章(こうじゅほうしょう)・・・自分の危険を顧みずに人命救助に尽力した者へ贈られます。
紅綬(こうじゅ)褒章・・・自分自身の危険を顧みずに、人命の救助に尽力をした者へ贈られるものです。
緑綬褒章(りょくじゅほうしょう)・・・長年に渡り社会奉仕活動(ボランティア活動)などに従事し、顕著な功績をあげた者へ贈られます。
緑綬(りょくじゅ)褒章・・・長年に渡って社会奉仕活動・ボランティア活動に従事し、その中で顕著な功績をあげた者へおくられるものです。
黄綬褒章(おうじゅほうしょう)・・・農業や工業、商業などに精励し、他の者の模範となる技術や事績を有する者に贈られます。
黄綬(おうじゅ)褒章・・・工業や商業、農業などで、他の者の模範となる技術や功績を有する者に贈られるものです。
紫綬褒章(しじゅほうしょう)・・・科学技術分野の発明・発見や、学術、スポーツ、芸術文化分野において優れた業績を上げた者に贈られます。
紫綬(しじゅ)褒章・・・科学技術分野の発明または発見や、学術、スポーツ、芸術文化の分野において優れた業績を上げた者に贈られるものです。
藍綬褒章(らんじゅほうしょう)・・・会社経営や各種団体での活動を通じ、産業の振興や社会福祉の増進などに優れた業績をあげた者。 または、国や地方公共団体より依頼されて行われる公共の事務(民生・児童委員、調停委員、保護司などの事務)に尽力した者に贈られます。
藍綬(らんじゅ)褒章・・・会社の経営や、各種団体での活動を通じ、産業の振興や社会福祉の増進などに著しく優れた業績を上げた者、または、地方公共団体や国から依頼されて行われる公共の事務(民生委員、児童委員、調停委員、保護司などの事務)活動に尽力した者に贈られるものです。
紺綬褒章(こんじゅほうしょう)・・・公益のために私財寄附をした者に贈られます。
紺綬(こんじゅ)褒章・・・公益のために、私財寄附をした者に贈られるものです。
褒状(ほうじょう)・・・褒章授与が団体などである場合飾版(しょくはん)・・・既に褒章授与を受けた者が、更に同種の褒章を授与する場合
まとめ
叙勲受章は、国が功績を讃えて贈るものです。
なかなか耳にする機会は少ないのですが、ニュースなどで取り上げられることもありますので、叙勲や褒章意味を知識として覚えておくと、さまざまな場面で役に立ちます。
もしも、身の回りに叙勲や褒章を受ける人がいると慌ててしまいそうですが、非常に名誉なことですので、すぐにお祝いをしましょう。
祝賀会に招かれることもあるかもしれませんので、御祝いのマナーも併せて覚えておきましょう。