土潤溽暑という言葉をご存知でしょうか?七十二候という暦のひとつなのですが、なかなか日常的に使う言葉でないため、見聞きしたことがない、何と読むのか分からないという人も多いかも知れません。要するに、日本の真夏を表わす言葉のひとつなのです。では、一体どんな意味を持つ言葉なのでしょうか?ここでは、土潤溽暑についてを詳しくご紹介します。
土潤溽暑とは?どんな読み方をするの?
土潤溽暑という言葉を聞いたことがあるでしょうか?読み方は「つちうるおうてむしあつし」です。
読み方を知っても意味が分からないという人も多いと思いますが、日本の一時期を表わす美しい言葉です。
土潤溽暑の意味は、「土が潤って、蒸し暑くなる時期」というものです。
日本には、四季の他にも一年を24に分けた、より詳しい季節を表わす二十四節気というものがあります。
その二十四節気の一節気を更に初候、次候、末候で三分割したものを七十二候といい、日本の動植物や天気、天候の動きなどを表わしています。
土潤溽暑は、七十二候のひとつで、二十四節気の「大暑」の次候にあたります。大暑の初候は、「桐始結花」、末候は「大雨時行」です。
土潤溽暑は夏の暑さが表されている
「溽=むしあつい」と読みます。一文字でも蒸し暑いと読むのに、更に「暑」いという言葉が重ねられているため、真夏のむせるような暑さが容易に想像できます。
非常に蒸し暑い様を溽暑(じゅくしょ)といい、梅雨が終わり、夏真っ盛りになる頃の湿気の多い蒸すような暑さを意味します。
夏は人が汗をかくイメージがありますが、実は植物も汗をかいています。葉っぱは気孔で呼吸をしていますが、気候に合わせて水分量の調整もしているのです。太陽光の強い夏は、光合成も盛んに行われます。
植物も人間も蒸し暑い夏には、適度な水分と栄養、休息が欠かせません。
土潤溽暑はどの時期をさすの?
土潤溽暑は、具体的にどの時期をいうのでしょうか?
具体的には、7月28日から8月1日頃をさします。
日本の本土では梅雨明けをし、少し経った頃です。本格的に夏の暑さが感じられるようになる時期です。太陽の陽が強くなり、炎天下での作業をするには危険が伴います。塩分や水分の補給をこまめに行い、帽子やタオルを有効に使い、熱中症や日射病の予防に努めなくてはなりません。
また、7月半ばから8月中旬頃にかけて、ゲリラ豪雨が多発します。突然の雷や大雨に驚かされますが、雨が上がった後には天然の打ち水効果で少し涼しく感じられます。ゲリラ豪雨の後は、一時的に湿気が上がりますので、太陽が姿を表わすとより一層蒸し暑さを感じます。一定時間に急激な雨が降るため、川の氾濫や排水溝の吹き出しなどに注意しなくてはなりません。
土潤溽暑の頃に旬を迎えるものは?
土潤溽暑の頃に旬を迎えるものは、アナゴや枝豆、スイカ、きゅうり、ウニ、素麺などです。
アナゴは日本全国で食されています。ビタミンAやビタミンB2が豊富で、皮膚や粘膜を健康に保つ効果が期待できます。それ以外にも、眼精疲労や肩こり軽減に効果があります。
枝豆は、大豆になる前の若い豆です。塩ゆでするだけで美味しく、老若男女に愛される食材です。そのまま食べる以外にも、枝豆ご飯、枝豆豆腐、スナック菓子、ずんだなどで食されます。
スイカは水分の多い食材で、食べることにより身体の熱を冷ます作用があります。近年では種の無いもの、黄色い色のもの、四角いものなど様々な種類があり、味もそれぞれ異なります。
きゅうりは、90%以上が水分といわれていますが、ビタミンCやカリウム、カロテンなどが含まれています。サラダなどで生食しても、油でサッと炒めても美味しくいただけます。
ウニは東北地方から北海道で採れるものがほとんどです。ウニ漁は海女さんや潜水士が一つずつ採ります。ビタミンAが豊富で高級食材といわれています。
夏の代表的な食べ物といえば、素麺(そうめん)です。素麺は冷やしても温めても食べられますが、冷やしてツルツル食べることで、夏の食欲が衰える時期でもさっぱりと栄養の補給ができます。大葉や梅、しょうがなど、お好みの薬味を付けると更に良いでしょう。
旬とは少し異なりますが、カブトムシや蝉もこの時期ならではの昆虫です。また、この時期の行事や風物詩としてゆうめいなのが花火です。地域の夏祭りと合わせて花火大会を行う所も多く、花火大会は、そのほとんどが7月後半から8月半ばにかけて行われています。
海水浴には最適の時期!!
土潤溽暑のこの頃は、富士山も山開きを終え登山が楽しめますし、海でも海水浴が楽しめます。日本本土の海では、お盆を過ぎるとクラゲが出て来て危ないと言われていて、まだまだ泳げる時期ですが、遊泳を控える人が多くなります。また、秋に近づくにつれ、徐々に台風の出現も多くなり、海上も荒れることが増えます。そのため、7月末から8月初旬にかけての時期が一番海水浴に向いているとされています。海水浴場には多くの人が訪れ、海の家なども設置され活気付きます。近年では、浜辺の環境美化や近隣住民への配慮から、飲食物の持ち込みを制限したり、大きな音が出る機材など他人が迷惑を被る可能性が有るものの持ち込みが制限される海水浴場も増えました。また、強い日差しを浴びると肌に悪いという事から、子供から大人までラッシュガードを身に付けるようになってきました。有名な海水浴場では、ライフセイバーや看護師などを置いたり、遊泳時間を決めたりして、より皆が快適に安全に海水浴を楽しめるように工夫がなされています。
日本の夏は蒸し暑い!!
熱中症という気象病も日本独自の湿気が要因と言われています。
赤道付近の国に住んでいる人でも、日本の夏の方が暑いといいます。乾燥した暑さの地域の方には、日本の湿気の高い暑さが耐え難いようです。暑いというよりも暑苦しいということなのでしょう。
日本の夏は、湿気が高いため、なかなか汗が乾かないのが特徴です。湿度が高く不快指数が上がるのはこのためです。服の素材などにも気を使い、少しでも快適に過ごすことが望まれます。エアコンなどの除湿機能を上手に使い、外出する時間を夕方以降に調節するなど、様々な工夫も必要です。
嫌な湿気の原因は「太平洋高気圧」という海洋性高気圧です。日本の夏はこういった高気圧に覆われているため、吹き出される南風には、水蒸気が多く含まれており、湿気が高くなるのです。
秋になってくると、今度は大陸性の高気圧に変わって行きますので、徐々に乾燥した風が吹くようになります。
中国の宣明歴では・・・?
日本には略本歴と呼ばれている七十二候があります。これは、中国で大昔から使われていた宣明歴が元になっています。中国から我が国に伝わり、暫くは宣明歴がそのまま使用されていました。でも、やはり中国大陸と我が国では風土が異なるため、どうしても季節に違いが生まれてしまいます。違いを無くすため、我が国の風土に合わせて一部を改訂したものが略本歴=七十二候なのです。では、日本で土潤溽暑の時期は、中国宣明歴では何になるのでしょうか?調べて見ると、中国の宣明歴でも土潤溽暑となっています。中国の夏も日本に負けず劣らずの暑さですが、特に中国の四大かまど都市(四大火炉)と呼ばれ、まるでかまどの中に居るかのように暑いとされる地域があります。重慶(じゅうけい)、武漢(ぶかん)、南昌(なんしょう)、長沙(ちょうさ)の4都市です。これらの都市は全て内陸部に位置し、40度を超えることも多く有ります。風の流れも少ないため、サウナのような暑さです。日本のように多くの一般家庭にエアコンがあるわけではなく、水を撒いたり、衣服を可能な限り脱いだり、クーラーの効いている場所に集まるなど、様々な工夫をして灼熱の夏を凌いでいるのです。
まとめ
土潤溽暑は、7月28日から8月1日頃をさします。非常に蒸し暑い様子が伝わる言葉です。
この頃は、学校などは夏休み真っ只中となり、海水浴や夏祭り、花火大会などが行われる時期です。日本の夏は蒸し暑く、日中は注意をしないと熱中症や日射病になりやすいものです。例年、熱中症などの搬送が後を絶ちませんし、中には命を落としてしまう人もいます。室内に居ても水分や塩分の補給をし、エアコンなどを活用して身体を暑くし過ぎないことが大切です。暑い日は昼間の無理な外出を避け、夕方以降に花火大会に出掛けるなど、工夫して楽しむと良いでしょう。夏を満喫するには、旬の食べ物を美味しく食べ、健康な身体を作っておくことも必要です。