鷹乃学習という言葉をご存知でしょうか?日本の夏を表わす言葉なのですが、見たことも聞いたことも無いという人が多いと思います。
そもそも、夏に鷹が飛んでいること自体を知らないという人もいるのでしょう。
ここでは、鷹乃学習や鷹についてを詳しくご紹介します。
鷹乃学習とはどんなもの?どんな意味があるの?
鷹乃学習とは、一体どんな意味を持つのでしょうか?
日本には、春夏秋冬の四季以外にも風土に合わせて細かく季節を分けた二十四節気(にじゅうしせっき)というものがあります。
一年間を24に分けているため、四季よりもピンポイントに季節を表わしています。
二十四節気の一つを更に3分割し、日本の動植物や天気の変化を表現したものを七十二候(しちじゅうにこう)といいます。
七十二候は一節気を初候、次候、末候で分けています。鷹乃学習は、二十四節気では小暑の末候にあたります。
鷹乃学習と書き、「たか すなわち わざを ならう」と読みます。「たか すなわち がくしゅうす」と読むこともあります。
鷹は、毎年5月から6月頃にかけて孵化します。鷹乃学習は、生まれて1ヶ月ほど経った小鳥が、鷹としての飛び方や獲物の捉え方を習う時期という意味です。
鷹が巣立ちの準備を始める時期という意味で捉えると分かりやすいでしょう。
鷹乃学習とは具体的にいつを指すの?
では、鷹乃学習は具体的にいつ頃をいうのでしょうか?二十四節気の小暑が7月7日から7月21日頃までとなっているため、
三分割すると初候「温風至」が7月7日から7月11日頃、次候「蓮始開」が7月12日から7月16日頃、末候「鷹乃学習」が7月17日から21日頃を指します。
梅雨明けし、太陽の光が強く降り注ぎ、気温が急激に高くなる頃です。本格的な夏が到来しますので、
熱中症や夏バテにも注意しなくてはなりません。鷹はこの暑さにも負けず、大空を飛び回ります。
元々、鷹といえば大鷹を指しました。
大鷹は、非常に大きなイメージがあるかも知れませんが、カラスと同じ位のサイズです。
狩猟能力に長けているため、空中で椋鳥や鳩などを捕獲します。
鷹乃学習の頃に旬を迎えるものは?
鷹乃学習の時期に旬を迎えるものは、ウナギ、梅干しやモロヘイヤです。暑い夏が到来しますので、滋養強壮や疲労回復を目的とした栄養のある食べ物が好まれます。
旬とは少し異なりますが、この頃は海の日があり、海水浴が行われます。学生は夏休みに入りますので、家族連れなどが海水浴場を訪れるのです。
また、土用入りをする時期です。日本には四季や二十四節気、七十二候とは別に雑節という暦が存在します。
土用とは、雑節の一つで、他には彼岸、節分、八十八夜などがあります。
土用は夏だけと思われがちですが、実は年に4回あり、春土用・夏土用・秋土用・冬土用と四季それぞれにあります。
それぞれ立春、立夏、立秋、立冬になる前の18日間をいい、春土用は4月から5月にかけて、夏土用は7月から8月にかけて、
秋土用は10月から11月にかけて、冬土用は1月から2月にかけての期間です。尚、詳しい日付は、毎年少しずつ異なります。
土用は、土公神という神様が土の中にいる時期であり、草むしりや土いじり、引っ越し、改築など土や土地に関することを避けたほうが良いといわれています。
土用は季節の変わり目でもありますので、新しいことにチャレンジすると疲れてしまいます。なるべく養生して過ごすようにしましょう。
鷹は猛禽類の王様!!
狩りが得意な鷹は、生きるために獲物を狩るワザを学びます。
鷹は、3月頃から親鳥が杉や松、ヒノキなど、比較的高い木に巣を作り、4~5月にかけて産卵が行われます。
2~3個の卵を産み、温め始めます。35~38日ほどで卵が孵り、雛が産まれます。
雛は一般的にはヒヨコと同じぐらいの大きさです。その後、1ヶ月ほどかけて親鳥と同じ位の大きさまで成長します。
大きくなると、飛行訓練から始めます。鷹乃学習の頃になると、羽根の生え揃った若鳥から飛行訓練に入りますが、
最初は上手くいかずに落下したり、低空飛行になってしまうものもいから狩りを始め、トンボ、カブトムシなどの虫を狩りの練習に使います。
こうして、徐々に大物を狩れるようになっていくのです。
野生の鷹は、10~15年が平均寿命です。生涯狩りをして過ごすため、翼、くちばし、爪は生涯磨き続けられます。
これらの鷹最大の武器が失われると、それが生命の維持に直結するのです。
我が国でも、古くから「鷹狩り」と呼ばれる、鷹を使用した狩りが行われていました。
主に貴族が鷹を所有し、狩りに興じていました。鷹を使う狩りは、実は世界中で行われており、その歴史は古いものです。
現在でも日本では、鷹匠と呼ばれる鷹使いが存在します。今の鷹匠は、狩りというよりも、鷹を使い害鳥を追い払ったりすることを主に活躍しています。
鷹狩に使われるのは、鷹だけではないって本当!?
日本には、およそ22種の鷹が存在します。
鷹匠はこれらの鷹を使って鷹狩をしていると思われていますが、実は鷹匠が扱うのは大鷹、ハヤブサなどが一般的です。
ハヤブサなのに鷹匠?と不思議に思うかも知れませんが、「鷹」という字には猛禽類全般を指す意味があり、
タカもハヤブサもコンドルもフクロウもノスリも全て鷹と呼ばれます。
鷹そのものだけを指す場合は、カタカナ表記をするのが、鷹使いである鷹匠の基本なのです。
鷹匠は、タカ以外の鳥で狩りをすることもありますが、狩る対象の生き物や、場所、狩りの特性などを良く理解した上で、使う鷹を決めるのです。
鷹は様々な諺にも使われている
鷹乃学習の他にも、日本では様々なところで鷹の名を見聞きします。特に、諺(ことわざ)で使われることが多く、
「トンビが鷹を産む」、「能ある鷹は爪を隠す」という言葉は有名です。
トンビが鷹を産むとは、トンビ=平凡な親が、鷹=優秀な子供を産むというものです。
能ある鷹は爪を隠すとは、優れた能力がある人は、それを自慢したりひけらかしたりしないという意味です。
その他にも、以下のような諺があります。
一富士二鷹三茄子・・・初夢に見ると非常に縁起が良いものとされています。
鷹の前のすずめ・・・鷹を前にした雀のように、身をすくめて何もできない様をいいます。
鵜の目鷹の目・・・鵜や鷹が獲物を探し狙うように、懸命に何かを探しだそうとする様をいいます。
鷹は飢えても穂を摘まず・・・高潔である人は、どんなに困ることがあっても決して不正はしないということ。
鳶の子は鷹にならず・・・平凡な親の子は、やはり優秀にはならず平凡になるということ。
鷹乃学習の使い方は?
鷹乃学習を日常生活で用いる場合、どのような使い方をすれば良いのでしょうか?
七十二候は、時候の挨拶としての使い方が一般的です。
具体的には、
「鷹乃学習 鷹の幼鳥が飛び方を覚える時期になりました。皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます」
「鷹乃学習といわれる時期になり、本格的な夏の暑さがやってまいりました。」
などと使用します。
時候の挨拶は、手紙やハガキ、会報やブログなど様々な場所で利用できます。七十二候を使うことで、
ピンポイントな時期を美しく表わすことができ、受取り手の印象も良くなります。難しいのではないか?と敷居が高い感じがするかも知れませんが、気軽に使ってみましょう。
中国の宣明歴では・・・?
中国には、日本の七十二候の元となる宣明歴という暦があります。
元々、日本でもこの宣明歴をそのまま使用していましたが、日本と中国ではやはり風土が異なり、動植物の動きや季節がずれてしまうため、徐々に改訂されました。
改訂されたものは七十二候、略本歴と呼ばれ、現在でも変わらず使用されています。
では、鷹乃学習の時期は、宣明歴では何と呼ばれているのでしょうか?調査したところ、日本と同じく「鷹乃学習」となっていました。
鷹は中国でもこの時期に幼鳥が飛び出すのでしょう。中国でも古くから鷹狩が行われています。
まとめ
鷹乃学習とは、七十二候のひとつで、7月17日から21日頃を表わします。意味は「鷹が飛行や狩りを覚え始め、巣立ちの準備を始める時期」です。
鷹は、狩りを覚えるまでに何度も失敗を重ね、地道に努力して、結果的に猛禽類の王様と呼ばれる狩りのプロになります。
成長過程が人間に似ているため、鷹に憧れるという人もいるでしょう。
鷹を飼育するのは非常に大変ですので、鷹匠になるには相当な覚悟と努力が必要です。
気軽に触れ合える鳥ではありませんが、夏真っ盛りに大空を飛ぶ鷹を目にした際には、「鷹も頑張っているんだ」と心の糧にしてみてはいかがでしょうか?