大安といえば、結婚式が行われる日というイメージが強いですね。おめでたい日に、お通夜や葬儀を行ってもよいのでしょうか。そもそも、なぜ日本人は「お日柄」にこだわるのでしょう。今回は意外と知らない六曜の意味と歴史、お葬式の日程の決め方などについてご紹介していきます。
六曜とは?
大安や仏滅は、六曜(ろくよう)と呼ばれるものの一つです。よく「結婚式を挙げるなら大安がいい」「仏滅は縁起が悪い」などと聞きますが、六曜とはいったい何なのでしょう。
現代の曜日と一緒
六曜(六曜星の略)とは本来、単なる日にちを区別するために必要なものでした。現代で言うところの、七曜(月・火・水・木・金・土・日)と同じ働きを持つものです。起源は中国とされ、日本へは室町時代に伝わりました。
占いに変化
六曜が一般的になったのは、江戸時代(天保年間/1830~1844)のことです。幕末あたりから“日の吉凶”を占うのに使われ始め、明治6年(1873)から広く知られるようになりました。ちょうど日本が太陽暦を導入したときです。
六曜は現在でも、カレンダーに小さく載っていますよね。大切な行事の日程を決める際の、一つの基準になっています。ところが本来は、「いい日」「悪い日」といった区別はありませんでした。あくまでも占いの一つ、根拠のない迷信なのです。
とは言っても、やはり気になりませんか? 結婚式や新居への引っ越しなどは、たとえ迷信であっても、いい日に行いたいものです。下記では詳しく、六曜の吉凶について見ていくことにしましょう。
六曜の意味
六曜は基本的に、「先勝」「友引」「先負」「仏滅」「大安」「赤口」の順で、繰り返し割り当てられています。
各日の吉凶
気になる具体的な吉凶は、下記のようになっています。なお、地方などによっては、下記とは別の読み方をする場合もあります。
- 先勝(せんしょう):「先んずればすなわち勝つ」から、午前は吉・午後は凶。
- 友引(ともびき):正午は凶・他の時間帯は吉。【後ほど詳しく】
- 先負(せんぶ・さきまけ):「先んずればすなわち負ける」から、午前は凶・午後は吉。
- 仏滅(ぶつめつ):大凶日。祝い事は避ける。
- 大安(たいあん):大吉日。祝い事を行う。
- 赤口(しゃっこう):正午は吉・他の時間帯は大凶。祝い事は避ける。
【参考】不規則な理由
カレンダーを見ると、六曜は不規則ではありませんか? 不規則に見えるのは、旧暦各月の1日が次のように固定されているからです。
- 正月1日・7月1日→先勝
- 2月1日・8月1日→友引
- 3月1日・9月1日→先負
- 4月1日・10月1日→仏滅
- 5月1日・11月1日→大安
- 6月1日・12月1日→赤口
私たちの使っている六曜は、上記を新暦に直したものです。不規則な配置ゆえ、何かしら意味があるように感じますが、実は機械的に決められていたのです。
大安にお葬式を行っても問題ない
大吉日とされる大安に、お葬式を行っても大丈夫なのでしょうか。六曜は迷信とはわかっていても、不謹慎な気もしますね。結論としては、大安にお葬式を行っても問題ありません。
宗教と六曜は関係なし
仏滅を“大凶日”とする六曜は、仏教と深い関係がありそうですね。仏が滅すると書く「仏滅」を、仏教徒が縁起の悪い日と考えるのは当然のことのように思えます。ですが実際のところ、仏教と六曜は何ら関係ありません。
同様に、キリスト教や神道などとも関係がないのです。繰り返しますが、六曜は一種の占いです。宗教という観点で言うと、お葬式の日は大安だろうが仏滅だろうが、まったく構わないわけです。
非常識と思う人もいる
一方、日本社会に深く根付いた六曜ですから、今でも気にする人は大勢います。「大安に葬式をやるなんて非常識」と、言われてしまうかもしれません。はっきりと口にしなくても、抵抗を持つ人も多いでしょう。
いろいろな人がいる中で、参列者全員の理解を得るのはかなり難しそうです。そこで一番簡単な方法は、はじめから縁起が悪い日は避けることです。自分とは異なる考えを持っている方にも、できる限りの配慮をしたいものですね。
友引の日は避ける
お葬式を執り行うのに、大安よりも避けたい日が友引です。迷信だけでなく、現実的な理由もあります。
【理由1】配慮
友引にお葬式を行うのは、六曜ではとても縁起が悪いことと考えられています。友引は本来、勝負のつかない日という意味でした。必ずしも悪い意味ではなかったのです。
一方、六曜とは別に、陰陽道にも“友引”がありました。災いが友に及ぶとされる方角のことです。陰陽道で縁起の悪い“友引”は、六曜の友引と混同されてしまいます。「友を引く」から“友引のお葬式は他人の死を誘う”と考えられ、友引はお葬式を避けるという習わしにつながっていくのです。
よって六曜を気にする方への配慮として、友引にお葬式を行うのは避けたほうがよいでしょう。参列者に万が一のことがあったら、お互いに気分が悪くなりそうですしね。ただし、お通夜であれば友引の日に行ってもよいとされています。
【理由2】火葬場が休み
いやいや、迷信なんて気にしない! 友引でもお葬式をやる! と思う方もいるかもしれませんが、物理的に無理な場合があります。先ほどご紹介した迷信が広まり、お葬式を避ける人が多く、友引を定休日にしている火葬場が多いためです。友引のお葬式は、嫌でも避けることになるかもしれません。
現実的な日程の決め方
お葬式の日程はどのように決めたらいいのでしょう。縁起の良し悪しも大事ですが、やはり現実的な理由は無視できません。いろいろな事情があるかと思いますが、最低限考慮したい事項をご紹介します。
遺族の予定
お葬式のスケジュールは、亡くなった翌日にお通夜、2日後に葬儀と火葬を執り行うのが一般的です。少し余裕を持たせ、1日ずらすこともあります。とはいえ、まずは遺族の予定をおさえなければいけません。葬儀社の方にしっかりと遺族側の希望を伝え、無理のないスケジュールを立てましょう。
なお、死亡してから24時間以内は、遺体を火葬してはいけないと法律で定められています。言い換えれば、亡くなってから24時間以上経っていれば、お葬式はいつ行っても大丈夫なのです。
斎場・火葬場の空き状況
お葬式をするには、斎場と火葬場をおさえないと始まりません。空いていればどこでもいいわけではなく、希望するお葬式の規模に見合っているのか、アクセスしやすいかといった条件を考慮して選びましょう。
僧侶などの予定
加えて僧侶など、宗教者の方の予定も重要です。お葬式の日程を決める際には、菩提寺などにも連絡を入れます。お寺との付き合いがないという方は、葬儀社に紹介してもらうこともできますよ。
まとめ
大安や仏滅といった「六曜」は、本来は日にちを区別するためのものでした。現在では日の吉凶を占うのに使われていますが、根拠のない迷信です。お葬式は亡くなってから24時間以上経っていれば、いつ行っても問題はありません。
大安にお葬式を行っても大丈夫ですが、縁起が悪いとされる日(特に友引)のお葬式は、嫌がる人も多いものです。そういった方への配慮もしつつ、現実的で無理のないお葬式のスケジュールを立てたいですね。