生まれてきた赤ちゃんが初めて迎えるお正月である「初正月」には、誕生日の意味や赤ちゃんの無事成長を祝う意味も込められています。ここでは、初正月の意味や祝い方、破魔弓(はまゆみ)や羽子板の意味や由来、お祝いの贈り方やお返しの仕方などさまざまな項目について詳しくご紹介します。
初正月って何?
初めてのお正月
初正月とは、生まれてきた赤ちゃんが人生で初めて迎えるお正月のことを指します。赤ちゃんの無病息災を願い、さらには魔除けの意味を込めて、男の子の場合は「破魔弓(はまゆみ)」や「破魔矢(はまや)」、女の子の場合は「羽子板(はごいた)」を飾ってお祝いします。男の子には天神様の人形、女の子には手毬を贈るという地域もあります。
誕生日の意味
現在の一般的な年齢の数え方は「満年齢」ですが、昭和24年頃までは「数え年」という数え方が主流でした。前者が「生まれた日を0歳とし、次に誕生日を迎えた日に1歳年を取る」という捉え方なのに対し、後者は「生まれた日を1歳とし、お正月を迎えた日に1歳年を取る」という捉え方をするため、当時は初正月が誕生日の意味でも捉えられていました。
無事成長に感謝する
当時は衛生環境や医療環境、個々の栄養状態が現在よりも整っておらず、生まれてきた赤ちゃんが無事に成長して初正月を迎えられるのは奇跡のようなことでした。そのため、赤ちゃんの無事成長を感謝する意味でも初正月のお祝いが行われていました。
上記のことから、初正月は生まれてきた赤ちゃんが初めて迎えるお正月であり、誕生日であり、さらにはここまでの無事成長を喜び感謝する意味合いも込められている、大変有意義な行事として古くから大切に受け継がれてきたということが分かります。
破魔弓(はまゆみ)や羽子板について
誰が準備する?
古くからのしきたりに倣(なら)うと母方の祖父母が準備することになりますが、現代では父方の祖父母が準備したり、両家で折半したりと家庭によってさまざまです。決して小さな買い物ではないため、両家でよく話し合って決めると良いでしょう。
ただし、ご両親が当時使用していたものなどを使用することは、厄も一緒に受け継がれるとして縁起が良くないとされているので注意が必要です。節句にも使用できるので、この機会に赤ちゃん専用のものを用意してあげましょう。
飾る期間は?
古来から12月13日は「正月事始め」と言い、お正月に降りてくる神様をお迎えするための準備をする日として大切に受け継がれてきました。そのため、基本的に12月の中旬から下旬頃に飾るのが良いとされています。ただし、29日と31日は「苦立て」や「一夜飾り」と呼ばれ、縁起が良くない日とされているので避けましょう。
しまう時期は?
お正月飾りを焼く行事が行われる1月15日に一度片付け、3月や5月の桃の節句や端午の節句にもう一度飾るのが一般的ですが、破魔矢や羽子板は縁起物なので年中飾っていても問題ありません。
ただし、上記の日程はあくまでも目安であり、地域によってしきたりは異なるため、自分が住んでいる場所のきまりに従いましょう。
破魔矢・破魔弓、羽子板の意味や由来
【男の子】破魔矢、破魔弓
古来から弓矢には邪気をはらう力があると信じられており、奈良時代の日本ではお正月に弓矢で的を射る行事なども執り行われていました。平安時代になると、鬼や悪魔をはらう「追儺(ついな)」と呼ばれる行事が盛んに行われるようになりました。追儺で使用する道具である「ハマ(標的)」、「ハマ矢」、「ハマ弓」の「ハマ」の部分に、鬼や悪魔を「破る」という意味で「破魔」という字が当てられたのが破魔弓や破魔矢の由来だとされています。
現在のように初正月のお祝いとして赤ちゃんに贈るようになったのは、江戸時代末期のことです。ちなみに破魔矢の矢には無病息災の意味も込められています。
【女の子】羽子板
羽子板は奈良時代に行われていた、先が平らな杖で毬を打ち合う「毬杖(ぎっちょう)」という遊びが起源だとされています。鎌倉時代には羽子板を使用する羽根つきに変化し、室町時代には羽根つき用の羽子板と、飾り用の羽子板で用途が分かれるようになりました。江戸時代末期には、害虫を食べてくれるトンボを羽根に見立てることで赤ちゃんの無病息災を願い、さらには羽子板で「魔をはね(羽根)のける」という意味合いから魔除けの効果を期待して、女の子に羽子板を贈る習慣が誕生しました。
初正月祝いについて
何を贈る?
基本的に現金を贈ります。破魔矢や羽子板の資金として贈る場合もあれば、現金とは別に贈り物をする場合もあります。ほかにも赤ちゃん用の晴れ着や羽織袴などを贈る方もいます。破魔矢や羽子板は、お正月が過ぎても節句で使用することができるので喜ばれることも多いですが、必要ないというご家庭も存在するのであらかじめ確認しておくのが無難です。
金額の相場
相場は赤ちゃんとの関係性によって変化します。
- 祖父母:10,000円から30,000円
- 兄弟・姉妹:5,000円ほど
- 親戚:5,000円から10,000円
破魔矢や羽子板の相場
相場は20,000円から50,000円ほどです。初正月のお祝いで贈る破魔矢や羽子板は、飾ることを目的に作られた縁起物なので、遊ぶ目的で作られたものよりも高額に設定されています。さらに、素材や模様などによって金額が大きく変動します。
のしについて
のしは紅白花結びのものを使用します。表書きには「祝初正月」「奉初正月」「御祝」「初正月御祝」などが使われます。破魔矢や羽子板の資金として贈る場合は「破魔弓料」や「羽子板料」が使われます。下段には送り主(自分)の名前を書きます。
いつ渡す?
初正月のお祝いは年末に手渡しするのが良いとされています。特に破魔矢や羽子板を贈る場合は、正月飾りと一緒に飾って新年を迎えるため、年末に渡すようにしましょう。もし直接渡すことが難しいようであれば現金書留を利用して郵送しましょう。
初正月祝いのお返しについて
初正月祝いのお返しは基本的に必要ないとされていますが、その分直接もしくはお礼状などを用いて感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。また、「何もお返しをしないのは気が引ける…」という方は下記の方法で検討してみると良いでしょう。
会席をする
現在は内祝いといえば贈り物をするのが一般的ですが、本来はお礼の意味を込めて祝宴をすることが一般的でした。そのため、初正月をお祝いしてくれた方を自宅に招いて会席をすることでお礼の代わりとするのも良いでしょう。
贈り物をする
内祝いとして何か贈る場合、特に期限などはありませんが、あまり遅すぎると失礼なのでなるべく早めにお返しをするようにしましょう。初正月の内祝いの相場は決められていませんが、一般的にお返しの相場は、もらった贈り物や現金の額の半分から3分の1程度とされているので、10,000円前後を目安に選ぶと良いでしょう。ただしあくまでも目安なので、相手との関係性やいただいたものによって柔軟に対応する必要があります。
お年賀をいつもより豪華に
初正月のお祝いはお返しを想定して渡すものではないため、内祝いとしてお返しをすると相手に気を遣わせてしまう可能性があります。そんなときに活用したいのが、お年賀をいつもより豪華にして渡すという方法です。これなら相手に気を遣わせることもないですし、間接的にお礼もできるため合理的です。
ちなみに、初正月内祝いののしには紅白花結びのものを使用します。手渡しの場合は外のし、郵送の場合は内のしを使用します。表書きには「内祝い」、下段には赤ちゃんの名前を書きます。
まとめ
今回は、初正月の意味やお祝いの仕方、無病息災を願い魔除けの意味を込めて飾る破魔矢(はまや)や羽子板の由来、お祝いを贈るときやお返しするときの相場やのしの書き方など、初正月に関するさまざまな項目についてご紹介しました。基本的なマナーを押さえながら、赤ちゃんが迎える初めてのお正月であり誕生日でもある大切な1日を家族みんなで楽しく過ごしましょう。
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