イチョウの葉っぱが黄色く色づき始めると、もうすぐ銀杏の実の季節だなあと思いますよね。強烈な匂いをくさいと思う人も多いですが、食べ物としての銀杏の実は立派な秋の味覚です。
食卓に秋を運んでくる銀杏の実ですが、下処理の方法を間違えると肌がかぶれてしまうこともあります。さらに、中毒性があるため食べる量も注意が必要です。では、一体どのような点に注意をすれば良いのでしょうか?今回の記事では、銀杏を安全に美味しく食べるための方法や注意点について、詳しくご紹介します。
銀杏の実がなるのは雌の木だけ
黄色に染まるイチョウ並木は、風景として楽しむだけでも美しいですよね。目で楽しむ時期を過ぎて銀杏の実がなり始めると、今度は木の根元で銀杏拾いをしている人をよく見かけます。初めて銀杏拾いをする人は、イチョウの木でさえあれば必ず実が拾えると思ってしまいますが、実はイチョウの木には性別があるのです。
イチョウは「生きている化石」と例えられるほど、はるか昔から存在している植物です。株は雄株と雌株に分かれていて、雄株で咲いた花の花粉が雌株の花に受粉することで実をつけます。風で飛ばされた花粉は1km先にまで飛ぶこともあり、周囲に雄株の銀杏がないのに雌株が実をつけることも可能です。
銀杏の実は裸子なので、果物のような果肉に覆われた中に種子があります。ピスタチオのような殻を割ると出てくるのが、食べられる実の部分です。銀杏の実を生産目的で栽培している地域も多く、雌株と雄株を意図的に配置して確実に実を採取できるようにしています。
イチョウはパッとみただけでは雄雌の区別がつかないので、実がなってみないことには性別がわかりません。雌の木になった銀杏の実は、果肉がオレンジ色になる頃地面へと落下します。自分で銀杏拾いをしてみたいと思った人は、イチョウの葉っぱが色づく頃によく木の枝を確かめて、実がついているかどうか確認してみましょう。
銀杏拾いは果肉や汁に注意して
ほくほくの銀杏の実は美味しいですが、自分で採取する時にはかなり注意が必要です。種子の周りを覆っている果肉や汁は匂いがくさくて取れにくく、皮膚につくとかぶれることもあります。さらに、腐った果肉で濡れた地面は大変滑りやすいため、足元も十分に注意しなければなりません。もし自分で銀杏拾いをする場合には、最初に次のような道具を揃えましょう。
- ゴム手袋
- 長靴
- 完全に密閉できるような袋(破れにくいもの)
- 汚れても大丈夫な洋服(上下の雨合羽など)
- マスク
- 消臭スプレー・ウェットティッシュなど
銀杏の果肉はアレルギーを起こす成分が含まれているので、肌が弱い人や重度のアレルギーを持つ人は要注意です。とくにお子さんには強い反応が出ることもあるので、果肉には触れさせないようにしましょう。
拾う時に注意をしていても、袋から汁が漏れたり枝葉で果肉が傷つくと、思わぬ時に皮膚についてかぶれる可能性があります。採取した実は厚手のビニール袋かビニールを二重にしておき、汁が漏れないように持ち運びしましょう。
洋服についたくさい匂いはなかなか取れないので、最初から汚れても良い服装で銀杏拾いをします。もし車で移動をするのであれば、上下の雨合羽を動きやすい服装の上から着るといいですね。匂いの元となるのは果肉と汁なので、洗い流しやすい装備を揃えると良いでしょう。それでも果肉や汁がついた場合は、消臭効果のあるもので匂いを消すのが効果的です。
靴についた汁は重曹を振りかけておくだけでもかなり匂いが取れますし、消臭スプレーを使う方法もあります。銀杏の果肉や汁が皮膚についた時には、手早く洗い流した後に消臭作用があるウェットティッシュで拭き取るのも良いでしょう。
銀杏の種子を取り出すための方法
食べる部分の銀杏の種子を取り出すためには、果肉部分を落とさなければなりません。最初から果肉が柔らかくなっている実を拾えば取り出しやすいですが、一つ一つ確かめながらは拾えませんよね。もし果肉がまだ柔らかくない実を拾った場合には、主に二つの方法があります。
《土に埋めて腐らせる》
果肉がついたままの銀杏を土に埋め、自然に果肉が落ちるのを待ってから種子を取り出す方法です。昔からよく行われている方法で、周囲に匂いが漏れないというメリットがあります。種子がこぼれ落ちない程度の網目のネットに入れてから埋めておくと、種子だけを簡単に引き上げられます。ただし、埋める方法は果肉が落ちるまでに時間がかかり、そのまま忘れてしまう可能性があるので要注意です。
《水で洗い流す》
銀杏の実をバケツに入れ、果肉を潰しながら水で洗い流す方法です。最初から綺麗に取れるわけではありませんが、何度も洗い流すうちに果肉が綺麗に取れるので、時間をかけたくない人にはおすすめです。ただし果肉からの匂いは周囲に広がるので、屋外で作業を行うようにし、果肉や汁などが皮膚につかないよう注意しましょう。
果肉を完全に落とした後は、天日干ししてしっかりと乾かして行きます。ざるに並べて時々入れ替えしながら、完全に乾いたら種子の取り出し完了です。もし上記のような方法が難しいようなら、銀杏拾いの時に足で軽く果肉を踏み落としたり、種子が見えているものを拾ってくるのも一つの方法です。マンションや密集した住宅地に住んでいると、銀杏の匂いに敏感な人もいるかも知れません。銀杏拾いの前に種子をどのように取り出すか決めておき、状況に合わせて対応するようにしましょう。
銀杏の調理と保存方法
料理で食べる銀杏は、大きな豆のような形をしていてすでに火も通っていますよね。実際には、果肉が落ちただけではまだ中身は取り出せていないので、殻を外して食べられる状態にしなければいけません。殻を外す方法としては、主に次のようなものがあります。
- トンカチやペンチで殻を割る。
- フライパンで炒って殻を弾けさせる。
- 電子レンジで加熱して殻を弾けさせる。
上記の方法のうち、一番簡単なのが電子レンジによる加熱です。20個ほどを目安にして茶封筒に入れ、口を閉めてレンジで1分を目安に温めると、殻が弾けて綺麗に身を取り出すことができます。熱の入り具合によっては身が弾けすぎたり、硬くなってしまうこともありますので、ご自宅のレンジに合わせて時間を調整します。
レンジで食べる分だけ温める方法だと、殻付きのままで2週間は保存することができます。新聞紙は封筒に包んで冷蔵庫保存をしておけば、食べたい時に温められて便利です。
もし大量の銀杏があり食べきれない時には、トンカチやペンチで殻を割った種子を茹でてから冷凍保存します。少し黄色くなるので風味は落ちますが、茹でてある銀杏は料理にもすぐに使えて重宝します。銀杏の量に合わせて、どのように調理するかを考えてみましょう。
銀杏中毒と食べてもいい目安の数とは?
ほくほくした味が美味しくてつい食べ過ぎてしまう銀杏ですが、実は銀杏は食べ過ぎると中毒症状を引き起こす可能性があります。もともと銀杏は動物に食べられないための毒素が含まれているので、たとえ加熱して処理をしても食べ過ぎると中毒症状が出てしますのです。主な症状は以下のようになっています。
- 嘔吐
- 痙攣
- 呼吸困難
- 発熱
- めまい
- 意識の混濁
美味しい銀杏にこんな毒素があるかと思うと、ちょっと怖いですよね。とくにお子さんに食べさせる場合、どのくらいなら大丈夫なのか心配になってしまいます。銀杏中毒が出る可能性としては、大人で最低40個前後、子どもだと最低7個前後で発症することもあります。中毒を発症しても半日から1日半で回復しますが、稀に死亡例もあり油断はできません。
もちろんこれは目安ですので、全ての人が必ず中毒になるわけではありません。それでも毒素があるのは確かなので、体が弱っていたりお子さんの体が小さい場合、少量でも銀杏中毒が出る可能性はあります。もし銀杏を食べた後に上記のような症状が出た場合には、すぐに病院に行き治療するようにしましょう。お子さんに食べさせる時には数をしっかりと確認した上で、体調を見ながら食べさせるようにしましょう。
まとめ
今回は、銀杏の処理方法や注意点などを詳しくご紹介してきましたが、いかがでしたか?匂いや中毒など気にしなければならない点はありますが、しっかりとポイントを抑えれば美味しく安全に銀杏を食べられます。せっかくの秋の味覚、一年に一度の楽しみとしてしっかり味わいたいですよね。しっかり処理方法を確認したら、今年は家族全員で銀杏拾いにチャレンジしてみるのも良いかも知れません。肌寒くなった秋にほくほくの銀杏を添えて、食卓に秋の演出をして見ましょう。