日本には、古き良き伝統行事がたくさんあります。
現代も受け継がれている日本古来の風習にはどれも深い意味があり、歴史の年輪を感じさせます。
その中の1つである「七五三」。
七五三時期の11月は、可愛らしい着物を身にまとった子供たちが千歳飴を持って神社に向かう姿を見かけませんか。
そんな時、ふと「あの子供たちが持っている千歳飴って何のため?」と、疑問を持ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
そんな素朴な疑問にお答えすべく、七五三の歴史について触れながら「千歳飴」の意味や意外な食べ方などについてお話ししていきます。
千歳飴の由来は浅草説?大阪説?七五三の歴史と千歳飴
毎年11月になると可愛らしい着物を着た子供たちが、チョコチョコと親御さんに手を引かれて歩いている姿を見かけますよね。
というのも11月15日には「七五三」があり、その月に神社にお参りに行く家庭が多いからなのです。
元々七五三を祝うようになったのは、江戸時代の話。
地方により祝い方や歴史は諸説あるものの、3歳、5歳、7歳で祝うようになったのは江戸くらいだと言われています。
しかし実は江戸時代以前に、七五三の原型となるものが存在していたということをご存知でしょうか。
それらについて少し触れていきます。
髪置の儀「かみおきのぎ」と呼びます。
3歳まで髪の毛を伸ばすことがなかった平安時代の日本では、この儀が終わると髪を伸ばせたとか。
袴着の儀「はかまのぎ」と呼び、平安時代には5歳・7歳くらいの年代で初めて袴を身に着けた年齢だそう。
年齢は伝えられている場所で変わりますが、5歳に定着したのは江戸時代といわれています。
帯解の儀室町時代が始まりといわれ、それまで付けていた子供用の着物の紐を取り、大人用の着物の帯を結んで着るようにする儀式です。
これらの儀式が江戸や明治時代を経て、現在の七五三の形に変化したとか。
なぜ江戸時代に11月15日に決定したのかというと、徳川5代将軍綱吉の息子・徳松の3歳の髪置の儀を行ったのが11月15日だったという説があります。
または中国から伝わる暦で一番良い日だった、旧暦で最初の満月の日だったなど、場所や歴史によりさまざまな説があります。
そんな七五三の定番アイテムが「千歳飴」です。
可愛らしい長細い袋には手持ちの穴が開いており、小さなお子様でもしっかり掴めるようになっています。
千歳飴は紅白で長細いのが特徴ですよね。
普通の飴とは違い引っ張ると伸びやすい質感なので、「粘り強く健康に」という子供への成長の願いが込められています。
元々千歳飴が作られたのは江戸時代の浅草で、飴売りの七兵衛という男が売り出したのが最初とか。
当時の名前は「千年飴」「寿命糖」などといったそうですが、長寿を願って縁起の良い紅白にしたのだそうです。
しかし一方で、大阪の飴商人が江戸で売り始めたという説もあります。
どちらが正しいかはさておき、浅草で千歳飴が売られたことは確かです。
千歳飴の袋には、古き良き日本の伝統が!
店先で長細い千歳飴が売られているのを目にした方もいるでしょう。
着物やスーツなどを着た子供たちが、長細い千歳飴の袋を持って嬉しそうに歩いている姿は何とも可愛らしいですよね。
最近は子供の好きなキャラクターの千歳飴の袋が作られていることもありますが、伝統的な物は松竹梅や鶴亀などのデザインが施されたものです。
鶴や亀は「長寿」
松や竹、梅は寒さが厳しい冬場でも、鮮やかな緑色や綺麗な花で人々を楽しませてくれる強さ。
このような日本古来の考え方が基になっています。
子供の健康や長寿を願った両親たちの思いがこもっているのが「千歳飴」なのです。
千歳飴はどこで販売している?ネットでも買える?
千歳飴はどこで販売されているのでしょうか。
和菓子屋さんに置いてあることが多く、特に老舗店などでは、伝統的な千歳飴を販売しています。
老舗では鶴亀の絵柄や松竹梅、子供の絵の入ったものなど、古くからあるデザインの千歳飴が販売されていることもあり、両親はもちろんですがプレゼントにと買い求める方も増えています。
子供の健康や成長を願うものですし、いくつあっても嬉しいですよね。
身近に七五三のお子さんがいる方は、販売店を見かけると思わず足が止まってしまうという方もいるのではないでしょうか。
最近では忙しいご両親が使いやすいネットでも購入できます。
ネット販売の魅力は、子供が好きなキャラクターや色、味などを店に行かずに選べること。
紅白の伝統的な千歳飴に代わり、ブドウ味などのフルーツ味のものや中にお菓子がセットになっている物もあるのです。
バラエティに富んだ千歳飴を貰ったら、子供も喜ぶこと間違いなしですね。
また最近では長い千歳飴ではなく、子供が食べやすい、短い飴を何本も入れておくというスタイルのものも販売されています。
長かったり大きかったりする飴は食べきれない場合が多く、持て余すことも多いでしょう。
そういう意味での、現代に合った千歳飴の形が出来てきるのかもしれませんね。
これは意外!千歳飴にはこんな食べ方があった!?
子供の七五三のお祝いアイテムである千歳飴。
大人が用意した千歳飴は両親からだけではなく、祖父母や親戚などからも貰うこともあるのではないでしょうか。
お祝いにと貰える事はとても嬉しいですが、あまりに増えた千歳飴の行く末をどうしようかと悩んでしまいますよね。
実は千歳飴には「決まり」があります。
大きさ直径1.5cm以内、長さは1m以内、本数は年齢の数だけ食べるということ。
とはいえこれは伝承的な物なので、出来るだけという程度の認識で良いでしょう。
つまり7歳だと長い千歳飴を7本食べることになりますね。
千歳飴が始まった当初は2本のみ袋に入れていた様ですが、現代では形を変えています。必ず奇数になってしまいますが、紅白の分量は白が1本多めになっていることがほとんどです。
また食べ方ですが、そのままなるべく1本完食するというのが理想。
しかし子供にあの高カロリーな飴を、何本も食べさせることに難色を示す親御さんもいらっしゃいますよね。飴嫌いのお子さんや残ってしまった場合も、そのまま放置しておくのはあまりに勿体ないのです。
そんな時におすすめしたいのが、意外な千歳飴の食べ方です。
良くあるのが細かく砕いて友人たちと分けて食べるなどですが、でもこれでは飴として食べる事に変わりありません。
そこで煮物やビーフシチューなど、甘さを付ける料理に溶かして使うのはいかがでしょうか。
特に煮物は少し伸びるくらいの千歳飴が、ちょうどよい甘さを加えてくれます。
また千歳飴はお菓子作りにも役立ちます。
溶かして生キャラメルを作ったり、ポップコーンの元と混ぜてキャラメルポップコーンを作ることも出来ます。
子供と一緒に料理を楽しめますし、残った千歳飴を無駄にせず有効な使い方ができます。
また千歳飴が好きなお子さんや家族には、アレンジすることでまた別の味わいを楽しむことも出来るのでおすすめです。
知っておきたい!千歳飴の意味
そもそも千歳飴は何のために食べるのでしょうか?先に説明したように、もともとは、浅草で「千年飴」と販売されたことが始まりとされています。
名前からもわかるように飴の名前には「千年生きることが出来ますように」との願いが込められています。
つまり長生きを祈願しているのですね。
七五三のお祝いで千歳飴を持つことも、この「長寿を願っている」と言われています。
これは伝染病や栄養状態、経済状況などで子供が健やかに成長するのが「当たり前」ではなかった時代ならではの祈願でしょう。
子供の成長を願わない親は、いつの時代を探してもいませんよね。
また、なぜ「飴」なのか?という事に疑問を持たれる方もいるかもしれません。
昔は飴の材料になる「砂糖」はとても貴重なものでした。
そのため、お祝い事などで贈るにも、とても高価だとされていたのです。
ましてや子供が砂糖を口にすることも、めったにできなかったのかもしれません。
だからこそ、長寿を祈願するめでたい七五三で、あの長い千歳飴を子供に贈ることに意味があったのでしょう。
千歳飴を持ち正装である着物を着用し、神社などにお参りに行ったのもそのためかもしれません。
まとめ
七五三の起源や、七五三で子供たちが持つ千歳飴について説明してきました。
時代の流れと共に意味合いや形は少しずつ変わってきてはいるのでしょうが、やはり日本古来の風習は現代でも色濃く残っているということがわかりました。
日本の古き良き行事には、たくさんの深い意味が込められています。
その伝統的な行事は機能的である生活を大事にすると共に、物や文明の進化していない時代の知恵を教えてくれます。