日本には多くの記念日はありますが、「勤労青少年の日」という記念日があることをご存じでしょうか?
あまり聞きなれない記念日だと感じる方の多いことでしょう。
「勤労青少年の日」にまつわる催しなどは多く、現在でも身近なところで行われているイベントもたくさんあります。
こちらでは、「勤労青少年の日」についての意味や、記念日にまつわる制度で廃止になったことなどについてお伝えします。
勤労青少年について
1970年代前後における勤労青少年呼ばれる人は、主に中学校を卒業してから進学することなく、大都会に出て店舗や企業などへ集団就職して働く若者のことでした。
現在では、労働に従事する若者のことを勤労青少年と呼ぶようになりました。
現代のおける勤労青少年は、若くて元気に働く明るいイメージが多いようですが、若者が集団就職して働いていた当時の勤労青少年といえば、
まだ中学卒業したばかりの大人にもなっていない青少年が親元を離れて働かなければいけないつらい境遇でした。
大都市で働く青少年に職業指導を充実してあげること、職業訓練の奨励すること、福祉施設を設置することなどを目的に「勤労青少年福祉法」が作られました。
勤労青少年福祉法により、若者が仕事をする上でさらに技能などをつける上での手助けになり、
仕事以外の時間に福祉施設を設置することにより同年代の人と交流を持つ機会も生まれたのです。
勤労青少年のための作られた福祉施設が、各自治体の設置されている「勤労青少年ホーム」で、
開設当時には勤労青少年ホームで知り合った二人がやがて結婚することも少なくありませんでした。
勤労青少年ホームは、働く若者が自分自身を向上されるため、他の若者と過ごしながらいろいろな趣味を過ごしながら余暇を楽しむために貴重な福祉施設であったといえます。
勤労青少年の日とは?
記念日の中には、祝日になる記念日と祝日にはならない記念日の2つの記念日があります。
他にも、毎年何月何日と日にちの決まっている記念日、毎年日にちの決まってはいない移動記念日の2種類に記念日が分かれています。
毎年7月の第3土曜日に行われる記念日「勤労青少年の日」は、
1970年5月25日に勤労青少年福祉法が施行されたことにより作られた記念日ですが、祝日にはならない移動記念日にあたります。
親元を離れて働く20歳未満の勤労青少年の数は現在でこそ減少傾向にありますが、勤労青少年福祉法が施行された1970年当時は、多くの勤労青少年がいました。
4月から働き始めた若者が、精神的にもつまずきがちな3カ月目にあたる時期にあわせたこと、お盆の帰省時期に合わせたことから毎年7月第3土曜日を「勤労青少年の日」と定めたそうです。
「勤労青少年の日」は、働く若者の福祉について考え、世間の人々の理解を深めて関心を持ってもらうことを目的としており、
勤労青少年の福祉にふさわしい事業を行われることを念頭において作られました。
勤労青少年の福祉を念頭に考える機会となった「勤労青少年の日」の制定以降、各自治体が積極的に勤労青少年ホームを設置し、
親睦会などのイベントも数多く開催されるようになり、親元を離れた若者が仕事以外でも楽しみを感じられるようにと変わっていくのです。
1966年には勤労青少年のことを考え設立された「勤労青少年旅客運賃割引」もあり、勤労青年の帰省の時にとても役に立っていた制度でした。
勤労青少年旅客運賃割引制度の設立と廃止
1966年に始まった「勤労青少年旅客運賃割引制度」という制度があります。遠く離れた親元へと帰るお盆や年末年始などを考慮して、
原則年2回、鉄道やバス、船などの帰省旅行運賃を割引するという制度でした。
「勤労青少年運賃割引制度」を利用するには条件があり、
1.お盆と年末年始の帰省の際の旅行であること
2.現在移住している最寄り駅から帰郷する最寄り駅との間を順路で利用し、往復する旅行であること
3.片道の乗車区間が100kmを超える旅行であることと、若者が帰省することを目的とした旅行にのみ使用することのできる割引であったことが分かります。
ただし飛行機と高速バスは割引の対象外で、割引できるのは鉄道・バス・船などの往復乗車券、連続乗車券、
2等乗船券などと決まりがあり、割引は乗車券・乗船券を通常より2割引するものでした。
「勤労青少年旅客運賃割引制度」を使用できる年齢や条件の制限もあり15歳以上で20歳未満の若者のみが使え、
労働基準監督機構が有している事業や事業所で働いていること、かつ親元から遠く離れた場所で働いている事などとされておりました。
一人で親元から離れて働く勤労青年にとって年2回の帰省できる機会に、「勤労青少年旅客運賃割引制度」の条件に該当する若者であれば性別は関係なく、
男性でも女性でも使える勤労青年にはとてもありがたい制度であったことが分かります。
当時のような親元を遠く離れて働く勤労青少年の数が減少したことから、「勤労青少年旅客運賃割引制度」は2011年3月31日に残念ながら廃止されました。
勤労青少年ホームの設置と役割
各自治体には勤労青少年ホームが設置されております。
1957年に愛知県で設置されたのは始まりで、一番多い時には全国で537カ所の勤労青少年ホームがありました。
現在では少子化ならびに勤労青少年の数が減少したことや、勤労青少年ホーム自体が老朽化したことなどにより、ピーク時に比べて約半分近く減少し290カ所以下の設置数です。
以前は勤労青少年福祉施設設備費補助金が国から補助がありましたが、勤労青少年ホームの衰退とともに2004年に廃止されました。
勤労青少年ホームが設置されたことにより、若者がダンスや音楽、語学やパソコン、
美術にスポーツなどといった幅広い趣味や学習を行える場所として多く集まり、
仕事場以外での癒やしを感じると共に働く意欲を与えてくれるまさに若者の福祉にふさわしいものです。
基本的には15歳以上35歳未満の青少年を対象とした人々が利用できるとあり、仕事のスキルアップとして語学やパソコンを学ぶ人、
仕事以外での趣味としてダンスをする人、音楽を楽しむ人、スポーツに汗を流して過ごす人など一人一人が自分の好きなことをできる場として活用されています。
近年では30歳以上の利用者が増え、10代20代といった若い年齢層の利用が減少している傾向にある自治体も多く見られます。
活動内容においては、勤労青少年ホームが開催している教室や講座は料理教室が多く、勤労青少年ホームで活動しているクラブはスポーツ系が多いようです。
勤労青少年に関する2018年・2019年の催し
2018年に行われた勤労青少年に関する催しとして開催されたものでは、
バレーボール大会にバスケットボール大会、クリスマスパーティや青少年会館でのイルミネーションの設置、
アート体験イベント、フリーマーケットや勤青ホーム祭など、各自治体で様々なイベントが行われています。
2019年もスポーツ大会にクリスマスシーズンにイルミメーション設置など様々なイベントが開催されます。
何気なく目にしている全国各地のスポーツ大会やイルミネーションなども、勤労青少年の催しであることも少なくありません。
勤労青少年と地域の人たちが一緒になって楽しみながら過ごせる数々のイベントが開催されているのです。
勤労青少年や勤労青少年福祉行政関係者などによって、毎年「勤労青少年の標語」が募集されますが、
2018年度に金賞に輝いた標語には「今日の汗 明日の笑顔の 架け橋に」が選ばれました。
金賞に輝いた標語を詠んだ人が、初めて社会に出た時の自分の心境を思い出し、
優しいときもあり厳しいときもある社会の中で今日汗を流したことが力となって、明日の笑顔につながってほしい気持ちが込められているそうです。
他にも、10月7日には日本勤労青少年団体協議会により「若者を考えるつどい2018」が行われ、働くとはなんだろう?何のための働くのだろう?
といったことに関するエッセイ(800~1600字)を若者の部(中学3年生から35歳まで)と一般の部(36歳以上の人)に分けて募集し、
勤労青少年の日である7月21日が締め切りとされ多くの方が参加したそうです。2019年にも「若者を考えるつどい2019」として、6月30日締め切りで募集されたました。
まとめ
「勤労青少年の日」は、普段あまり耳にすることのない記念日ですが、働く若者のことを考えて作られた素晴らしい記念日であることが分かりました。
「勤労青少年の日」が作られた本来の意味である、働く若者の福祉を充実させることを担う取り組みやイベントが行われる機会が生まれました。
昔も今も働く現場には若者の力が必要で、若者が働く上でよりよい環境を作ることは重要な課題です。
これからを担う若者がよりよい環境で、生活の楽しみを感じながら働く意欲を向上させることのできる、取り組みがとても大切なことといえます。