初薬師に出かけたことはありますか? その昔医者にかかれなかった日本では、人々は薬壺を持っている薬師如来像を崇め、救済を願っていました。
古来から知られている薬師如来像は現在も、薬師寺と名の付く寺のご本尊として人々に愛されています。
そんな薬師如来は8日と12日が縁日。
特に年明け1月8日は、初薬師として大勢の参拝客が訪れているのです。
一体初薬師とはどの様な意味があり、どこで行われているのでしょう。
こちらでは薬師如来の歴史と共に、解説していきます。
初薬師の意味とは?
初薬師の時期がやってきました。
普段仏教を意識して生活をしていない方にとっては、初薬師と聞いても何のことがわからないですよね。
初薬師とは1月8日のこと。
薬師の日とは月に2回ある縁日のことで、合わせて1年に24回も存在します。
日にちは毎月決まっており、必ず8日と12日。
つまり1月の8日が、、1年で最初の薬師の日のだということですね。
だからこそ「初薬師」と言うのです。
それでは肝心の初薬師の日に何をするのかということですが、基本的には薬師とつく寺にいき最初のお参りをすることを言います。
薬師という寺は数多くありますので、それぞれ住んでいる場所や旅先などで行く場所は変わる事でしょう。
また初薬師の日にお参りに行くことももちろん御利益があるとされているのですが、薬師と名の付く寺に元旦にお参りに行くと、通常時のお参りに比べ3千日も多くご利益があるとされているのです。
このことは仏教のお寺に良くあることで、四万六千日などもそうですね。
昔の日本では感染症が流行してしまい、地位のない人間は特に貧しかったこともあり病に伏せてしまうことも多かったのでしょう。
そのどうしようもなくやるせない心を救済したのは、医師ではなく寺だったとも考えられます。
古来の日本では医学自体がそこまで発展していなかったこともありますし、何より医者に診てもらうことができるお金を持っていたのは貴族や商人、武家だけでした。
庶民たちは何とか大切な家族、または自分の健康を取り戻すべく、祈ることしかかできなかったのですね。
そこで1年最初の初薬師の日を大事にしていたとされているのです。
初薬師と薬師如来の関係
初薬師をしにいくお寺は、基本的に薬師如来をご本尊としているお寺になります。
もともと薬師如来の縁日が8日と12日だったことで、その日を薬師の日としていたのです。
その昔から薬師如来とは浄瑠璃世界の教主とされており、あらゆる怪我や病気を治すと信じられていました。
というのも、薬師如来の左手は薬壺を持っています。
もともと薬師如来は修行をしている最中に12の目的を叶えることを実行しましたが、その中に病気の救済という項目がありました。
その後悟りを開き、見事浄瑠璃世界の救済主となったわけです。
他の仏様が死んだ世界の浄土を安泰なものにしてくれるということに対し、薬師如来は現在生きていて苦しんでいる人々を救済してくれるというのが人々の間に浸透した理由です。
病気を治したいと思うのは、昔も今も同じ。
しかも現代の様に気軽に医師に診せることができない日本では、まさにお医者様のところに行く感覚だったのかもしれません。
もともと仏教はインドで始まり、中国に伝わりました。
日本最古の薬師像は、聖徳太子が法隆寺金堂のものです。
その後日本にも伝来されてくるわけですが、本格的に薬師如来が伝わったのが600年後半から700年代。
聖武天皇が天災や飢饉、さらに感染症などによる混沌とした日本を、どうにか仏教の力で救済したいと考えたのが始まりでした。
そこで741年、「国分寺」と付く寺を各地に建立し、そのご本尊のほとんどを薬師如来にしたのです。
奈良県にある薬師寺は680年に建立され、遷都や改修をすることもありましたが現在まで多くの人に愛されています。
それも、日本人の信心深さが関わっていると言っても良いでしょう。
だからこそ薬師如来の縁日である8日と12日には多くの人が救済を求め、また初薬師の日を特別なものにしているのですね。
東京で初薬師にお参りにいきたいなら?
病気になったり、精神的にバランスを崩してしまったり、人は常に悩みを抱えるもの。
医療が発達した現在であっても、頼るのは仏様でるということもありますよね。
ですが一体どこの薬師寺に行くのが良いのでしょうか。
まずは東京で初薬師に行きたい時に、おすすめの場所をご説明していきます、 実はなぜ縁日が8日になったのかというと、薬師如来についての信仰を説く法会、すなわち薬師講が毎月8日に行われていたことがきっかけではないかと言われれいるのです。
そのこともあり、初薬師の日には薬師講を聞きに行くという目的も良いでしょう。
多くの薬師如来を祀る寺では、法会を行うことが多いのです。
もともと薬師寺は奈良県にある寺が法相宗の大本山でありますが、品川にも薬師寺東京別院があることはあまり知られていません。
この薬師寺東京別院には、毎月奈良県から薬師寺の官主がやってきて有難い説法をしてくれます。
ただ新年最初の初薬師の日には、この説法を聞きたいという信心深い多くの方がやってきてとても混雑をするのです。
また東京の中で初薬師目的で訪れた場所として忘れてはいけないのが、新井薬師です。
新井薬師は中野区にある寺院で、正式名称を新井薬師梅照院と言います。
中野駅から徒歩15分ほどの場所にあり、徳川二代将軍秀忠の五番目の娘が酷く患った目の病気をこの新井薬師で祈願したことで治癒したことが信仰された理由。
「目の薬師」とも呼ばれたり、小児医薬をここで調整したという言い伝えがあることから「子育て薬師」との別名もあるのです。
比較的薬師寺東京別院よりも行きやすく、素朴ながら屋台などが出る事も多いので訪れてみるのも良いかもしれませんね。
京都で初薬師にお参りに行きたいのなら?
京都と言えば、かつて日本の都であった場所であります。
現在でも多くの寺院が残され、歴史深い地として外国人をはじめ、多くの観光客でにぎわっていますね。
そんな京都にも、当然初薬師で有名の寺があります。
まずは因幡堂とも呼ばれている因幡薬師平等堂。
こちらは日本産如来の1つの薬師如来像をご本尊としているのです。
三如来の残りの2つですが、信濃善光寺の阿弥陀如来像と同じく京都の嵯峨にある清凉寺んの釈迦如来像のこといいます。
日本三如来の意味は、この三体の仏像はどれも天竺から伝わったものであるとされているから。
そのため三大如来という言い方をしており、その中で唯一薬師如来像である因幡薬師平等堂だけが、初薬師を行っているということになりますね。
もう1つ京都でいきたい初薬師を行うお寺が、下京区にある水薬師寺です。
京都十二薬師霊場の第3番にもなったえいるこのお寺では、902年に大池の中から薬師如来が出現したことで建立されたといいます。
現在は付属の幼稚園が併設されており、観光目的で出かけると一瞬入り口に悩んでしまいますが、問題なく入る事ができます。
ご本尊はもちろん薬師如来像ですが、毎年1月8日の初薬師の日のみが御開帳になります。
そのためもしも有難い薬師如来を拝見したいというころであれば、初薬師の日に訪れるのがおすすめです。
京都には歴史ある寺院などはたくさん残されていますが、決して派手な造りではない中でしっかりとした人々の思いが込められているこのお寺は是非訪れたい場所の1つですね。
初薬師とは俳句でも使われていた!
初薬師と聞いたのが初めてだという方もいますよね。
初薬師は実は俳句の季語としても使われています。
俳句の季語と言うと、季節を表現する風景や情緒などの言葉が思い浮かびますよね。
ですが実は初薬師という言葉もしっかりと季節を表現しています。
初薬師という言葉が、1月8日のことを指しているのは一目瞭然。
つまり言葉だけを知っていれば、初薬師と付いた俳句が元旦を過ぎた8日めのことであることを理解できるのです。
基本的に「初」と付く言葉は季語になりやすいと言われており、俳句の中にどの「初」が付いているかで季節がわかることもあります。
例えば初富士や初鳥、初雀、初凪などもそうですね。
1年始まって最初のものであるという意味があり、俳句に使うとそれは1月最初のことであるということがわかるのです。
特に初鳥、初雀などは身近なものであるため、日常で目にするものでした。
そのため初という言葉を付ける事で、より特別感が出せたのでしょう。
また初鳥に関しては、鶏が元旦に鳴くことをいいます。
最近では鶏が鳴いて起きるという生活をしている人も少なくなっていますが、鳥が鳴くということだけで元旦の深夜から朝であるということがわかるのも面白いところですね。
このように初薬師も1月8日前後を表現する時期として、使われているでのす。
まとめ
こちらでは薬師如来に関係している、初薬師について説明してきました。
初薬師とは1年最初の縁日。
説法をきくことで薬師如来に対する理解を深め、無病息災を願うものです。
医療がそこまで進んでいなかった平安時代から、人々の心の中を救済してきた薬師如来。
古来の日本では信心深いことももちろんですが、やはり民衆の心のよりどころとなっていたことは確かですよね。
今もこうして変わらぬ姿で人々を見守っている薬師如来像を、初薬師だけでも拝んでみてはいかがでしょうか。