芒種という言葉をご存じでしょうか?馴染みの無い言葉ですので、一体どんな意味を持つ言葉なのか?そもそも何と読めば良いのか?など、分からないことが多いと思います。
芒種は穀物の成長に欠かせない大切な時期なのですが、具体的にはどんな季節なのでしょうか?ここでは、芒種について詳しくご紹介します。
芒種とは一体どういうもの?
芒種(ぼうしゅ)という言葉をご存知でしょうか?季節が詳しく書かれているカレンダーなどで目にしたことがある人も居るかも知れません。
我が国では、春夏秋冬の4つの季節があることは有名ですが、それ以外にも一年を24に分割して季節を決めている「二十四節気(にじゅうしせっき)」というものが存在します。365日を24分割しているので、その1つは14~15日ずつとなります。
二十四節気は、冬至と夏至の二至と、春分・秋分の二分、立春・立夏・立秋・立冬の四立の「二至二分四立」を基準に作られています。立春から始まり、雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨・立夏・小満・芒種・夏至・小暑・大暑・立秋・処暑・白露・秋分・寒露・霜降・立冬・小雪・大雪・冬至・小寒、最後に大寒という順番で一周します。
芒種とは、二十四節気で第9節目のことをいいます。旧暦の4月後半から5月前半を指していたため、五月節とも呼ばれています。現在では、定気法という方法がとられており、芒種は太陽黄経が75度になったときとなるため、6月6日頃から次の節である夏至が始まるまで(約15日間)とされています。なお、恒気法での芒種は、6月7日からとなっています。
芒種の由来や意味は?
芒種には、一体どのような意味があるのでしょうか?
芒種は、「芒(のぎ)を持つ植物の種を蒔く頃」という意味があります。芒は、麦や稲などの穂を付ける植物の種にありますので、麦や稲の種を蒔いたり植えたりする時期という意味になります。
江戸時代に作成された暦便覧(こよみ びんんらん)には、「芒ある穀るい稼種する時なればなり」と記されています。
現代では、実際に芒を蒔くのはもう少し早い時期です。5月には田植えも種まきも終わっているところがほとんどなので、芒種の時期では遅過ぎてしまいます。
旧暦の芒種は4~5月にあたります。現在の芒種とはずれていますが、芒種の頃から農耕が始まり、農家が忙しくなってくる頃です。一年で一番日が長いとされる夏至が目前のこの時期には、恵みの雨が降り注ぎ、植物にとって欠かせないものとなります。芒種で水を蓄え、夏至に太陽をたくさん浴び、成長するのです。
芒種の頃に旬を迎える食べ物や行事
芒種の頃に旬を迎える食べ物には、どんなものがあるのでしょうか?
芒種の時期には、トマトやキュウリなどの夏野菜が収穫され始めます。夏野菜は水分が多く、瑞々しいものです。そのまま食べても、加工してもおいしくいただけます。比較的短期間に数多くの野菜が採れますので、ピクルスやサルサソースなど保存のできる調理方法を試してみるのも良いかも知れません。
鮎、鱚(きす)などの魚も旬を迎えます。鱚は種類がたくさんありますが、天ぷらなどで食べられるものはシロギスと言われるものです。
梅の実も旬を迎えます。芒種の頃に収穫した梅の実を漬けて梅酒や梅ジュース、梅干しなどにします。梅干しにする梅はこの時期に収穫できる黄ばんだ梅が最適です。梅にはクエン酸が多く含まれていて、食べることで「三毒を絶つ」ともいわれています。
3つ(食べ物・血液・水)の毒を浄化する作用があるとされているのです。食べ物の毒というのは、食べ物に繁殖する細菌やバクテリアのことです。血液の毒というのは、疲労の元となる乳酸などのことです。水の毒というのは、水そのものに含まれる細菌や病原菌、雑菌のことです。
梅雨から夏にかけて、細菌の繁殖が高まり、身体の疲労も蓄積しやすくなりますので、梅を食べて元気に暮らすようにしましょう。
そらまめもこの時期に旬を迎える食べ物です。近年では、そらまめの収穫時期が早まっていて、スーパーマーケットなどでは春先から見掛けますが、本来は芒種の頃に旬を迎えます。
枇杷(びわ)も早ければ3月頃から販売されていますが、食べ頃は6月です。
食べ物ではありませんが、アジサイも旬となります。各所で様々種類・色の美しいアジサイが見られます。アジサイのライトアップなどを行っているところもあり、昼夜を通し美しい花を楽しめます。
芒種の時期には入梅が訪れます。いわゆる「梅雨入り」です。雨模様が続き憂鬱ですが、日に日に夏を感じられるようになります。
父の日もこの時期の行事です。父の日は各国で日付が異なりますが、日本では、6月の第三日曜日と決められています。この日は父に日頃の感謝を伝えます。
芒種の七十二候は何?
二十四節気の1つずつをさらに初候・次候・末候の3つに分割したものを七十二候(しちじゅうにこう)といいます。約5日間ずつになります。
芒種の初候は「蟷螂生(とうろうしょうず)」となり、蟷螂(カマキリ)が生まれる時期という意味になります。
カマキリの産卵は秋に行われますが、そのまま冬を超え、初夏になると一斉に羽化してきます。ひとつの塊に数百もの卵が産み付けられています。
次候は、「腐草為蛍(ふそうほたるとなる)」となり、腐った草が蛍になる時期という意味になります。
水辺の腐れかけた葉の中から蛍が飛び出るという表現です。蛍の生態が解明される前は、本当に腐った草が蛍になっていると信じられていました。今は、腐れかかった草の下で蛍が飛び立つ準備をしているという解釈となっています。
この次候は、中国では「鵙始鳴(もずはじめてなく)」となり、モズが始めて鳴く時期ということになります。
末候は、「梅子黄(うめのみきなり)」となり、梅の実が熟して黄ばむ時期という意味になります。昔は桜の代わりに梅を鑑賞する「花見」が盛んに行われていました。梅の花が散り、しばらくすると梅の実が実ります。この時期の梅の実を収穫し漬けるのです。
末候は、中国では「反舌無声(はんぜつこえなし)」となり、クロウタドリという鳥が鳴かなくなる頃という意味があります。
これら七十二候は、芒種の時期に見られる動植物の動きを表現したものです。
芒種と縁起の関係
芒種は始まりの季節といえます。特に芒種を迎える日に物事を始めると縁起が良いとされています。種を蒔き、その植物が成長していく姿から縁起が良いと考えられているのです。一つの籾が1万倍に増えるということから「一粒万倍日」と呼ばれ、大きな結果が返ってくる良い日といわれています。
歌舞伎や能、狂言など日本の伝統芸能の世界では、6歳の6月6日の芒種に芸事を始めると大成するとされ、この日を「稽古始め」として大切にしています。
その縁起を担いで、6月6日は音楽の日、楽器の日、生花の日などが制定されています。習い事を開始するのもこの時期が良いとされています。
芒種とは直接的な関係はありませんが、6月の花嫁「ジューンブライド」も幸せになれると有名です。芒種の時期に結婚し夫婦生活を始めることで、幸せが何万倍にもなると考えると素敵ですね。
芒種の使い方は?
芒種を日常生活で用いる際、使い方はどうすれば良いのでしょうか?
一般的な使い方としては、「芒種の候、皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます」というように、手紙やハガキなどの文頭で時候の挨拶で用いることが多いでしょう。芒種の時期には、その他にも、入梅の候、長雨の候、梅雨の候、初夏の候などが使用されます。
俳句の季語としての使い方もあります。芒種は夏の季語ですから、夏をの風景などを表わす句に使われます。
沖縄では、小満から芒種の頃が梅雨時期になります。そのため、沖縄では梅雨の事を「小満芒種(すーまん ぼーすー)」と呼んでいます。沖縄では小満芒種以外の二十四節気も独自の呼び方をしています。
まとめ
手紙やハガキなどで芒種という言葉を見掛けたことがある人もいるかも知れません。
芒種は二十四節気の第9節目となり、田植えや麦、トウモロコシなどの種蒔きに適した時期という意味を持ちます。
旧暦で生活をしていた昔は、この芒種の時期を目安に農耕を進めていましたが、現在の暦では少しズレがあり、芒種の時期には既に種蒔き田植えを終えています。
この時期は植物が根付き実るために非常に大切なときになります。穀物の収穫にあやかり、稽古始めをこの時期にすると縁起が良いとされています。何かを始めるならこの時期という縁起を担いでみても良いかも知れませんね。