暦やカレンダーに「清明」と書いてあるのを見たことがある人もいるでしょう。
この言葉を見るだけで、何だか清々しい季節の到来を感じますね。
でも、清明はただ春の気持ちよさを表した言葉ではなく、ある特定の時期を示す意味のある言葉です。
またいかにも日本的な情緒を感じさせますが、実は意外な由来があります。
今回は清明について、意味や時期、由来や使い方について解説します。
春の魅力を感じる?「清明」の意味と時期!
清明は中国で作られ、日本でも古くから使われている二十四節気の1つで、
「せいめい」と読みます。
毎年4月5日頃が清明になります。
期間としては4月5日頃から穀雨の前日・4月19日頃までを指します。
江戸時代に出版された暦便覧という本には、清明について「清浄明潔」であるから、草の芽を見付けたときに、何の草の芽なのかよくわかると書かれています。
清浄明潔とは、空気が澄んで、太陽の光が明るく照らしているため、すべてがはっきりと見えるという意味です。
清明というのは清浄明潔の略ではないかともいわれています。
日本の春の様子とは少し合っていないような気もしますが(日本の春は春霞などのためか、空気が澄んでいるとはいえないことが多いです)、現在でも清明という言葉は二十四節気とは別に、清く明るいこと、澄んで明るい様を表す言葉として使われています。
昔の日本人にとって清明というのは、魅力ある言葉だったので、少しくらい日本の気候とズレていても、そのまま使ったのかも知れませんね。
中国で、沖縄で、みんなが「清明」を楽しんでいる!
二十四節気の本家、中国では清明節を行います。
先祖の墓参り、墓掃除をするため、「掃墓節」とも呼ばれました。
日本のお盆のような行事ですが、暑い夏の盛のお盆よりも清明節の方が墓掃除もはかどりそうですね。
また清明節は春のよい季節の中で、郊外を散策する日でもありました。
今のピクニックのように、みんなで楽しむ日でもあったのです。
墓参りで一年の無事を願い、ピクニックでみなと楽しむ清明節は中国の人たちにとって、今でも大切な日になっています。
私たち日本人も、清明節の過ごし方を参考にしてもよいかも知れませんね。
この清明節は沖縄へと伝わりました。
沖縄では現在でも毎年清明祭が行われています。
清明と書いて、沖縄での読み方は「しーみー」です。
やはり墓参りや墓掃除を行いますが、なんといっても特徴は一族が揃って、墓の前でごちそうを食べることです。
天ぷらやかまぼこなど、9種のごちそうが重箱に詰められ、先祖の墓に供えた後に、みなで食べるそうですから、私たちの感覚では盆と正月が一緒に来たような楽しい行事だということができます。
中国の清明節が更に進化したように感じられますね。
先祖供養は大切なことですが、面倒だ、大変だと思われることも少なくありません。
清明祭のように、自分たちも楽しみながら先祖供養をすることが、私たちにも大切なのかも知れません。
実生活での「清明」の使い方!新しい環境に備えるために!
私たちが生活していく上で、清明だからといって何か役に立つことがあるのでしょうか。
清明の時期はちょうど新年度が始まったばかりです。
会社も学校もみな新しい年度が始まります。
新入生、新入社員はもちろん大きく環境が変わって、緊張を強いられることになりますが、そうでない人も実は清明の時期には緊張を覚えているはずです。
クラス替えや人事異動、または家族に新入生や新入社員がいるというだけでも、そこには緊張感が漂うものです。
もちろん緊張感が全て悪いのではありませんが、過剰な緊張感は人の自律神経の働きを狂わせて、体調不良の原因になります。
だから中国や沖縄のように、清明の時期に先祖の墓参りをしたり、郊外を散策したりすることが大切になってきます。
外の空気に触れることはよい気分転換になりますし、墓参りをすることは精神を安定させる効果があります。
普段は実感することがないでしょうが、今自分が存在しているのはたくさんの先祖がいたからです。
両親・祖父母・曾祖父母、時代をさかのぼるごとに自分に関係のある人の人数は増えていきますが、その中の誰か1人でも欠けると今の自分は存在できないのです。
墓参りではその先祖の存在を実感することができます。
すると、自分の目の前にたくさん積まれている悩みや不安の本当の大きさがわかってきます。
大抵の場合、先祖の存在に比べれば、自分一人の悩みや不安は小さなものです。
墓参りや墓掃除をして、親しい人たちと気持ちのよい屋外で1日を過ごせば、心も体もこれから始まる新生活に向けての準備ができます。
清明の時期になったら、新生活に向けての準備を始める、これが清明の正しい使い方なのです。
「清明」の時期の行事!春を楽しむために気を付けることとは
季節がよくなって、外に出ることが楽しくなってくるのが清明の時期の特徴です。
この時期は、春を楽しむために外に出たくなるような行事が行われます。
毎年4月8日に行われているのが、お釈迦様の誕生日「灌仏会」です。
花祭りともいわれる灌仏会は、春の花で飾られた花御堂の中のお釈迦様に、甘茶をかけてお祝いをする行事です。
子どもたちによる稚児行列が見られる寺院もあるため、微笑ましい春の1日を過ごすことができます。
また誰でも知っているのが、春のお花見でしょう。
かつては花見といえば梅を見るものでしたが、桜の花を庶民が楽しむようになったのは、江戸時代に入ってからです。
大人数で弁当や酒を楽しむのも昔からの伝統です。
これは清明節や清明祭と通じるものがありますね。
気候がよくなってくると、外に出たくなるのは、万国共通の思いなのかも知れません。
寒い冬の間は家にこもりがちになりますから、こうした行事をきっかけにして、ドンドン外に出ていければよいですね。
ただし、春先は思いのほか寒い日があります。
日本には桜の花の咲く頃の気候を説明する言葉として、「花冷え」や「花曇り」という言葉があるくらいです。
また日中は暖かくても、夕方からは急に冷え込むといったように1日の中でも温度差が激しいのが清明の時期の気候の特徴です。
温度差は私たちの体に思った以上のダメージを与えます。
体調を崩してしまっては、新生活にも影響があるでしょう。
屋外に出かけるときには、ストールやマフラーで首元を保温する、
薄手の上着やカイロを持ち歩くなどの自衛策を取るようにしてください。
「清明」の時期に食べたい旬のもの!体の中から季節の変化に備える!
新生活が始まる清明の時期に、自宅でお祝いの食卓を囲む人もいるのではないでしょうか。
4月になると、みずみずしい春の野菜や果物が次々と店頭に並ぶようになります。
野菜なら、さやえんどう、筍、三つ葉、新じゃがいも、新ごぼう、果物ならいよかんやいちご、魚ならタイなどが旬の代表といえます。
お祝いの食卓に、さやえんどうや三つ葉を散らした筍ご飯に、タイの塩焼き、デザートはいよかんといちごという献立を整えれば、お祝いの気持ちとともに季節感が味わえますね。
旬のものは美味しく値段が安い上に、時期外れのものよりも栄養価が高くなります。
また季節にあったものを育てているため、旬の野菜は農薬を使う量も少なくて済むそうです。
現在は何でも1年中手に入る時代ですが、やはり旬のものを食べるほうが、財布にも体にも優しいのです。
春の体は冬と比べると、新陳代謝が活発になり、内臓の働きもよくなっていきます。
それが冬の間に溜まってしまった脂肪や老廃物を排泄することにつながります。
私たちの体も自然の1部として、冬から春への季節の移り変わりをしているわけです。
旬のものを食べることは、この移り変わりを助けます。
清明の時期には、体も季節の移り変わりをするのだと意識して、旬のものを食べるように心がけてくださいね。
まとめ
今回は二十四節気の1つ「清明」について解説しました。
由来や意味のほかに、清明に行われる行事や実生活での清明の使い方についても説明しましたから、春を有意義に過ごすために、ぜひ参考にしてください。
誰もが待っている春ですが、実は気候も不安定だし、環境が大きく変わる人が多いため、油断してはいけない季節です。
清明の時期、自分の毎日の過ごし方はこれでよいのか、と考えるきっかけにできたらよいですね。
外に出るだけでなく、お墓参りで先祖に手を合わせて、落ち着いた時間を持つのもきっと自分のためになるはずです。
外に出て活動的に過ごす時間と、墓参りをする落ち着いた時間の両方を過ごすことで自分なりのバランスが取れるようになるかも知れませんよ。