穀雨という言葉をご存知でしょうか?季節が詳しく書いてあるカレンダーやスケジュール帳をお持ちの方は、この言葉を目にしたことが有るでしょう。簡単に言えば、日本の季節を24分割したものの一つなのですが、農耕にとって欠かせない目安の時期となっているのです。でも、農耕に携わる人や、趣味でガーデニングをする人でなければこの言葉を聞いたことがないかも知れません。
ここでは、そんな穀雨についてどんなものなのかを詳しくご紹介します。
穀雨とは?どういうもの?
穀雨とは、二十四節気の第6番目にあたるものです。二十四節気は日本の季節を春夏秋冬よりも更に細かく24に分け、より詳しくその時期を表わしたものになります。
穀雨は、太陽黄経が30度の時といわれており、例年4月20日頃(旧暦では3月24日頃)になります。この穀雨の解釈には様々なパターンがあり、
- 太陽黄経30度の地点を通過したその瞬間をいう
- 太陽黄経30度の地点を通過した日をいう
- 通過した日から次の節気までの期間をいう
と考えられています。
尚、天文学では⓵の通過した瞬間を指し、暦では②の通過する日を指しています。期間として捉える場合は、次の節気(
立夏)までとなります。西洋占星術では、金牛宮=おうし座の始まりを穀雨としています。
農耕の開始時期にあたるこの頃は、田畑を耕し農作物を育てる準備をします。植えた芽や蒔いた種は、太陽の光と豊富な水分により成長していきます。そのため、優しい雨による水が重要です。穀雨は、「穀物を運ぶ雨」という呼び名が有るくらい農作物の芽吹きに大切な雨なのです。
穀雨の読み方は?
穀雨の読み方は「こくう」です。この時期に降る雨は「百穀春雨」とも呼ばれ、穀物のための雨、五穀豊穣をもたらす雨といわれれています。穀雨に非常に似た意味を持つ言葉に「瑞雨(ずいう)」「慈雨(じう)」「甘雨(かんう)」などがあり、これらも穀物の成長を促す大切な、喜ばしい雨という意味があります。
「催花雨(さいかう)」という花の成長を促す雨や、「菜種梅雨(なたねづゆ)」「桜雨(さくらあめ)」のように菜の花や桜が咲く頃に降る春の雨もたくさんの種類があります。
雨の種類はまだまだたくさんあります。読み方が特殊な物も多く、なかなか日常生活で使うことも無いものですが、「今日の雨は何の雨かな?」と考えながら生活するだけで、季節を感じることができ、憂鬱な気分も紛れるのではないでしょうか。
穀雨とは具体的にいつ?毎年同じ日なの?
前述の通り、穀雨は、太陽黄経30度の地点を通過した瞬間からを言います。日本ではおよそ4月20日となるのですが、その年により19日になることも20日になることもあります。では、穀雨がいつなのか?どのように分かるのでしょうか?
穀雨の計算方法は、天変地異的な変動が起きない限りは【西暦÷4をした余りの数】という計算方法で算出できます。
そして、その余りが1.2.3の年は4月20日、余りが無い年は4月19日となります。
例えば、2019年は4で割ると504と余り3になるため、2019年の穀雨は4月20日になります。更に2020年は4で割ると505ちょうどになり余りはありませんので、穀雨は4月19日となるのです。2020年以降も、この方法で穀雨の日が手軽に分かります。
このように、その年の穀雨がいつなのか、比較的簡単に分かりますので、話のタネに知っておくと良いかも知れません。
穀雨の七十二候は?どんな意味?
二十四節気の穀雨には、初候、次候、末候というものがあります。これらは七十二候と言われ、ひとつの節気をおよそ5日ずつ3つに分け、動植物の動きや気候などをピンポイントで表現しています。
穀雨の初候(4月20日~24日頃)
日本では「葭始生(よしはじめてしょうず)」葦の芽が出始めるという意味になります。中国では「萍始生(うきくさはじめてしょうず)」浮草が芽吹き始める時期という意味になります。
穀雨の次候(4月25日~29日頃)
日本では「霜止出苗(しもやんでなえいず)」霜が降りなくなり、苗が成長するという意味になります。中国では「鳴鳩払其羽(めいきゅうそのはねをはらう)」鳴鳩が羽を払うという意味になります。
穀雨の末候(4月30日~5月4日頃)
日本では「牡丹華(ぼたんはなさく)」ボタンの華が咲く頃という意味になります。中国では「戴勝降于桑(たいしょうくわにくだる)」郭公(カッコウ)が桑の木に止まり蚕をうむという意味になります。穀雨の時期は、晩春から初夏へ移り変わる大切な時期です。桜が散ると「春も終わりだな」と感じる人が多いかも知れませんが、実は晩春から咲く花も非常に多く、とても美しい時期へと進んでいくのです。
穀雨と八十八夜
穀雨の終わりごろに「八十八夜(はちじゅうはちや)」を迎えます。
八十八夜とは、立春の日から数えて八十八日目にあたる日の事です。具体的には、穀雨の終わり際の5月2日頃になります。この日は比較的冷えやすく、春の霜が降りる可能性があると古くから言い伝えられてきました。「八十八夜の忘れ霜」と呼ばれています。そのため、この八十八夜付近は農作物に注意を払う必要があるのです。
また、「茶摘み」という唄の歌詞にあるように、八十八夜に摘んだお茶は非常に上質な物で、八十八夜の日本茶を飲むと長寿になれるといわれています。八十八夜に摘まれるお茶は、新芽で、ビタミンやカテキン、テアニンという旨味成分を豊富に含んでいるため、とても爽やかで美味しいのです。
穀雨の時期に旬を迎えるもの
蓬(よもぎ)やアスパラガス、ゴボウ、アジ、サザエ、こごみ、枇杷(びわ)、牡丹、藤などです。
蓬は新芽を摘んで蓬餅にしたり、天ぷらにして食します。この時期に採った蓬を湯がいて冷凍保存しておけば、しばらく草餅などが楽しめます。また、この時期のアスパラガスはとても柔らかく、甘く美味しいものです。旬のアスパラガスであれば、サッと塩ゆでしたものをそのまま食べたり、サラダに添えるだけで豪華なものとなります。
牡丹の花は、穀雨の時期に咲くので別名「穀雨花」とも呼ばれています。直径20センチ程にもなる大ぶりの花が特徴で、中国では花の王様などといわれ、愛されています。また、藤の花も南の方から開花を迎えます。咲き誇る藤棚は実に綺麗なものです。
ガーデニングをする場合もこの時期を狙って!
穀雨は蒔いた種や植えた苗を成長させるために必要な恵みの雨です。穀雨を境として、少しずつ雨の量が増え成長を促すのです。ですから、穀雨頃までに田畑の準備をすると良いとされています。
気温も徐々に寒暖差が消え、八十八夜を過ぎる頃には冷え込む日も少なくなります。農耕を行う人々からすれば、この時期に準備をするのが目安となるのです。
ホームセンターや花屋のガーデニングコーナーも、この頃から非常に賑わいます。ガーデニング初心者でも比較的簡単に育てられる作物もありますので、覗いてみてはいかがでしょうか?
日本ではゴールデンウィークの時期になる
穀雨は4月20日頃から5月4日頃までとなりますが、この時期、日本では大型連休のゴールデンウィークに入ります。ゴールデンウィークの頃は、比較的気温も穏やかで天気も荒れず、旅行や観光を楽しみやすい季節といえます。ただ、近年では急に寒さが戻ることもありますので、体温調節のできる服装で出かけるのがポイントです。
ゴールデンウィークのために早々に仕事や田畑の準備を整え、国外へ旅行に行くという家庭も多いかも知れません。休みが続くため、少し遠出をして見るという人も多い時です。
また、中にはゴールデンウィークに野山の散策を行うという人も居るでしょう。穀雨により山々の芽吹きも促され、「山笑う」という表現がされることもあるほど、新緑が美しい時期です。スギ花粉も落ち着く時期になりますので、思う存分リフレッシュを楽しんでみると良いでしょう。
まとめ
二十四節気では春の最後を飾るのが「穀雨」です。穀雨とは、農作物が育つための大切な恵みの雨を指します。
現代では的中率の高い天気予報があり、優れた情報を得られますので、二十四節気を気にすることがありませんが、昔はこの時期に農作物の成長を促す雨が降るとされ、その頃を目安に田畑を整えました。
「清明には雪が降らなくなり、穀雨には霜も降りなくなる」ともいわれています。八十八夜が最後の霜といわれているのです。安定して穀物を育てられるのはこの時期からになりますので、恵みの雨を無駄にしないようにしなくてはならないのです。