かなり街中に住んでいる人でも、朝家の中にいると、鳥の鳴き声がずいぶんと聞こえてくることに気が付くはずです。
街中には限られた種類の鳥しかいないのでしょうか。誰でも知っているのはスズメやカラス、暖かな季節になるとツバメもやって来ます。
でも、もしかすると気付かぬうちに、小さな鳥はみんなスズメだと思いこんでいるかも知れませんよ。
ちゃんと見ていると、自分の身近に四十雀のような鳥がいたのかと、新たな発見ができます。
今回は四十雀について解説します。
四十雀について知ることで、身の周りの鳥を観察する楽しさを知ることができますよ。
小さくてかわいい!四十雀はどんな鳥?名前の読み方と由来!
四十雀の読み方は「シジュウカラ」です。全長は約14.5cm、スズメと同じくらいの大きさなので、大きさだけで判断していると、スズメと間違えてしまうかも知れません。
四十雀はスズメと同じスズメ目に属しており、シジュウカラ科シジュウカラ属に分類される鳥です。
名前の中にも雀という字が使われていますが、四十雀とスズメはまったく別の鳥で、色や模様も違います。
羽は黒みがかった灰色で腹の真ん中に黒い筋が1本通っています。
この黒い筋がまるでネクタイを締めているように見えます。
メスよりもオスのほうが太い筋が入っていますが、まさにサラリーマンのネクタイのようですね。
また頭頂部も黒い羽毛も、1目で四十雀を見分けるための目印になっています。
四十雀という名前は鳴き声が由来になっているそうです。
鳥の鳴き方は大きく分けると「さえずり」と「地鳴き」の2種類があります。
さえずりは繁殖期の美しい声の鳴き方で、地鳴きはそれ以外の単純な鳴き方をいいます。
四十雀のさえずりは、バリエーションが豊富で全部で20種類ほどの鳴き声を使い分けます。
甲高いよく通る声でさえずるため、かなり遠くからでも聞こえますが、対して地鳴きは「ジジジッ」と聞こえます。
この地鳴きを昔の人は「シジウ」と表現しました。
そのため、平安時代に四十雀は「シジウカラメ」と呼ばれるようになりました。
これが室町時代に「シジウカラ」と略されて呼ばれるようになったのです。四十という漢字は「シジウ」の音に当てはめたとものだと考えられます。
ちなみに「カラ」は雀と書きますが、これは鳥類を意味する言葉です。今でも「ヤマガラ」など、鳥の名前に使われていますね。
四十雀は会話ができる?様々な鳴き声は高い能力の証拠だった!
四十雀の鳴き声はバリエーションが豊富ですが、実は四十雀はその鳴き声を単語として使っていることが最近明らかになりました。四十雀は単語を組み合わせることで文章を作り、仲間同士でコミュニケーションを取っています。
危険が近付いているときなどは、仲間同士でコミュニケーションが取れれば、それだけ回避できる可能性が大きくなりますね。小さな四十雀が生きていくためには、仲間同士でのコミュニケーションは大切なことだったのでしょう。
文法の規則通りに鳴き声を組み合わせるなら、四十雀は初めて聞いた文章も正しく理解できるそうです。
また、四十雀だけでなく、ほかの種類の鳥(例:コガラ)の鳴き声も理解できます。
文章を作り、コミュニケーションを取ることのできる能力は、今のところ人間以外では四十雀だけが持っています。
四十雀を研究することで、人間がなぜ言葉を持つようになったのかが、解明されるかも知れませんね。
四十雀の能力が明らかにされたのは、2017年のことです。
昔の人たちはそんなことは知る由もありませんでしたが、俳句の題材として四十雀の鳴き声をとりあげていますし、四十雀のバリエーション豊富な鳴き声に心を奪われていたことは確かです。
私たちが気付く前から、昔の人たちは四十雀の会話が聞こえていたのかも知れませんね。
現代の私たちも四十雀がコガラやヤマガラたちとも話しているかも知れない、と想像するだけでも楽しくなりますね。
たまには鳥のさえずりに耳をすませる時間を持ちたいものです。
巣箱を使ってくれるから、四十雀の生活に密着できる!
四十雀は樹洞(木にできた空洞)に巣を作るだけでなく、石垣や民家の隙間にも巣を作ります。
屋外の排水口など、思わぬところに巣を作ることもあるようです。
この点はスズメの性質とよく似ています。人間の近くで生活すること、また少しの隙間を利用することで、大きな動物からの被害を免れることができます。だから四十雀は人間がかけておいた巣箱を利用することでも知られています。
関東では暖かくなる3月下旬頃から巣作りを始め、2回、3回と子育てをする四十雀もいます。
四十雀は観察をするのには最適な鳥なのです。
巣箱をかけておくと、四十雀は3月中旬には夫婦で下見に来ます。気に入れば巣作りを開始します。
土台には苔を使いますが、卵を温める産座という部分には動物の毛を使います。
四十雀が動物の毛をくわえて巣箱に入っていくと巣作りはもうすぐ完了です。
4月に入り、繁殖の時期になるとメスは毎朝1つずつ卵を産みます。全部で8個から9個の卵を産み終わると、抱卵が始まります。
抱卵をするのはメスだけで、オスは巣箱のそばでさえずるのが仕事のようです。
2週間近く抱卵が続いた後に、ヒナが孵化します。このヒナは孵化後20日前後で巣立って行きます。
ネットではたくさんの人たちが四十雀の巣作りや子育てを観察し、報告しています。
【四十雀 巣箱】などと検索すると、かわいい四十雀のヒナの様子を見ることができます。
私たちの直ぐ側まで来てくれる野鳥として、四十雀がみなに愛されていることがよくわかります。
命が生まれ、育って行くのを見るのは嬉しいものです。これは何も現代人が自然に飢えているからではありません。
昔から、私たち人間は四十雀が大好きだったようです。
四十雀は季語!理由は昔から愛されてきたから!
俳句の季語に使われていたことが、昔から人間が四十雀を大好きだった証拠になります。
四十雀は夏の季語ですが、巣立ちが5月頃であることを考えると、夏は四十雀が最も活躍する季節ということができるでしょう。
四十雀は昔から使われていた季語のようで、松尾芭蕉の句にも
「老の名のありとも知らで四十雀」
とあります。四十という初老の名前が付いているなんて、まったく知らない様子の四十雀たちだ、という意味のようです。
現在では四十という年齢に老いを感じる人はいないでしょうが、最近まで四十は初老といわれ、老人の域に入りかけた年頃だといわれていました。
四十雀の見た目の愛らしさと四十という年齢から受ける印象の落差の面白さを芭蕉はこの句で表したのでしょうか。
四十雀という鳥はスズメのように地面に降りて、のんびり何かをついばんでいる姿を見かけることはほとんどありません。
木から木へと移動していることが多い鳥です。夏には当然木の葉が茂っていますから、四十雀の姿を確認するのは簡単ではありません。
四十雀は夏の季語ですが、その姿よりもさえずりを題材として作られた俳句が多いようです。
芭蕉は大好きだった四十雀の姿をいつも追い求めていたのでしょうか。
ほかにも高浜虚子や水原秋桜子など、教科書でしか見かけないような俳人も四十雀を詠んだ句を残しています。
ずっと昔から人間が観察していた四十雀ですが、どれだけ見ていても見飽きぬ魅力があるようです。
四十雀は大食漢!でもそれが人間の役に立つ!
四十雀は小さな体ですが、意外と大食漢です。
果実や種子のほか昆虫を食べますが、四十雀が1年間で食べる虫は12万5千匹だといわれています。
害虫対策として、積極的に四十雀を呼ぶ庭造りを提案している人もいるほどです。
スズメも益鳥といわれていますが、昔は人間によく捕まえられて食べられていました。
これはスズメが害虫以外に、穀物を食べてしまうためだと思われます。
四十雀は好き嫌いなく虫を食べてくれます。
ツバキ科の木によくいるチャドクガは、毛に毒があり、直接触らなくてもかぶれてしまう人がいるほど強力な害虫で、自分で駆除しようとすると大変な苦労をしますが、これも四十雀はしっかりと食べてくれます。
四十雀はそのかわいい見た目や鳴き声だけが魅力なのではありません。
害虫を食べることで人間の庭や森林を守ってくれますから、昔から四十雀が愛されるのも納得できます。
昔の人たちはちゃんとそこをわかっていたのですね。
四十雀の名前の由来は、鳴き声のほかにもう1つあります。
それはスズメ40羽分の働きをするから、というものです。
あまり比べるのも気の毒ですが、その説にも少しうなずけるものがありますね。
まとめ
今回は四十雀について解説しました。四十雀の名前の由来や読み方に加え、どんな鳥なのか、その特徴と鳴き声についても詳しく説明しました。散歩のときなど、ぜひ四十雀を探してみてください。
季語になるほど親しまれてきた四十雀は、見た目や鳴き声が愛されたのはもちろんですが、害虫を食べてくれるために余計に人間に愛されました。四十雀が存在していることは、都市の緑地のバランスのよさの証明でもあります。
私たちはこれからも四十雀が生きていけるように、見守って行きたいですね。
それにはまず、四十雀という存在を知ることが大切です。
今回の記事をきっかけにして、四十雀という鳥に心を寄せてみてください。
ネットで四十雀の画像を見るのもよいですが、四十雀が詠まれた俳句を探してみるのも楽しいですよ。
四十雀というかわいい存在を通して、昔の人ともつながることができるかも知れません。