寒九の雨という言葉を聞いたことがありますか?正月明けから、「そろそろ寒の入りだね」などという、会話をすることもあるかもしれません。
日本では四季があるため大体12月頃から寒さが厳しくなり、コートやマフラーなどを身に着けることが増えますよね。
ですが実は正月明けからが、冬本番なのです。2月前後に雪が降ることが多いのも、より寒さが増すからでしょう。
そんな寒さの中で作られた言葉、寒九の雨。
俳句にも良く使われるのですが、一体この言葉にはどの様な意味があるのかについて解説していきます。
寒九の意味とは?
まずは寒九の意味について知りたいところです。
実は旧暦では1月5日前後のことを、「小寒(しょうかん)」といいます。
もちろん季節として12月からは冬であることに変わりはないのですが、中国から伝わった二十四節気によると寒さが段々と厳しくなる時期をこのように呼ぶことにしているのです。
二十四節気を参考にしているとはいえ、日にちは若干毎年前後するので必ず1月5日であるわけではありません。
この小寒のことを「寒の入り」とも言い、寒さが始まる時期に入るという意味があるのです。
寒の入りから寒の明けまでは大体1ヵ月ほど、その期間は特に冷える季節であるということですね。
つまり1月5日前後から、2月5日前後くらいまでのことを指しています。
その中で寒九とは、寒入りをした日から九日目のこと。
1月14日前後のことを指しています。
なぜ寒入りをした9日目にスポットを当てているのかが気になるところですが、どうやら昔の日本では、寒入りをした9日目に水を汲むと一年の中で一番水が澄んでいる、その水が薬になるなどと信じられていたそうです。
寒九を過ぎ、20日頃になる季節を「大寒」と呼び、最も寒い時期に入ります。
この大寒は立春の大体2月4日頃まで続くのですが、それらすべての寒さのことを「寒の内」とも呼びます。
立春までが寒の内だからといって、そこからすぐに暖かくなるわけではもちろんありません。
毎年の気候を思い出すと、2月初旬はまだまだ寒く、場合によっては都心でも雪が降ることもありますよね。
立春とは春がやってきたという意味ではなく、「春が立つ」という文字通り、そろそろ寒さが和らいでくるという意味なのです。
1年の中で最も寒い「大寒」を過ぎ、段々と自然の中で春の準備が始まるという意味があるのでしょう。
寒九の雨の由来とは?どんな意味がある?
寒九という意味には、寒の入りから9日目のことであることがわかりました。
ではなぜそこに、雨という言葉がつくのでしょうか?先ほど寒九の時期の水は澄んでいるというお話をしましたが、この理由は乾燥と寒さにあります。
昔の日本では現在ほど衛生面が整えられていませんし、冷蔵庫などもありません。
当然夏場などは雑菌が繁殖しやすく、体力がない時期などには感染症なども起こしやすくなってしまいます。
ですが雑菌は寒さと乾燥には弱く、冬場の最も寒くなるこの時期はいつもよりも水が澄んでいると言われていたわけです。
また水の濁りがなく、雑菌繁殖がない水だからこそ、飲めば薬になるとも信じられていました。
この水が澄んでいるという発想が、どうやら「雨」という言葉に繋がったとみられています。
そこで9日めの一番水が澄む日に雨が降ると、豊作になる吉兆であると考えられたのでした。
名前だけを見ると何とも寒々しい風景に感じますが、実は畑を潤す命の雨であるという良い意味で使われていたのですね。
また他にも説があり、寒の入りになった時には周辺の山々にはすでに雪が積もり、真っ白に。
その山に積もった雪が段々と溶けだし、その溶けた雪が水となって田畑に流れてくる、その様な話もあります。
ただ実際にはまだ雪解けには早いとも言えますし、地域によって考え方に違いが生まれたのかもしれませんね。
寒九以外にも、寒さを表現した言葉がある?
寒さが厳しくなる時期になってから9日めのことを寒九というのに対し、4日目のことを「寒四郎」と呼びます。
寒九に対し、寒四郎は悪い意味で使われることが多く、厄日としている農家が多いのです。
この日が晴天だと豊作に、雨や雪になってしまうと凶作になってしまうという言い伝えがあります。
この話は農家にとっては切実でありました。
実際にはこの日だけ天気が悪くてもその年が凶作である事実はないはずではありますが、迷信とはいつからか信じられた不確かなものであることがほんとですよね。
またこの寒四郎以外にも、寒という漢字がつく日にちがあります。
それは「寒土用」と呼ばれる日。
土用というと夏にウナギを食べる土用の日を、多くの方が思い浮かべることでしょう。
ですが実は土用の人は季節が変わる時のこを指しますので、四季がある日本では1年の中に4回の土用の日が存在することになるのです。
つまり真冬にも土用の日があり、寒土用と呼ばれていてもおかしくないということですね。
冬の土用の日は立春前の18日間のことを指し、一番寒い期間。
季節の変わり目は体調を崩す人も増えるということで、人々は栄養のつくものなどを食す様によなったとも言われているのです。
このように寒九という日だけではなく、寒四郎や寒土用などと名の付く日もあることがわかりました。
それもこれもやはり中国から伝えられた、二十四節気がもとになっていると言われています。
俳句の季語としても使われる寒九
日本では松尾芭蕉をはじめ、俳句に魅了された人が数多くいます。
俳句とは5・7・5という一定のリズムで、その時の季節のものや気持ちをわかりやすく歌ったもののこと。
リズムは決められているものの、内容は極めて自由でよいのも特徴です。
いかにその短い言葉の中で伝えたいことを上手く表現できるかにより、実際にその場にいない人でもまるで見ているかのような映像が頭に浮かぶことができるのです。
そんな俳句の中での冬場の季語として、寒九の水という単語が良く使われています。
意味がわからないと何のことかわかりませんが、寒九という言葉を知っているだけでその俳句が1月14日頃のことを指すということがわかってしまうのが俳句の面白さ。
この季語を入れる俳句のことを有季定型と言い、書かれた俳句が一体どの季節のことを表現しているのか一目瞭然でわかる様にするのがルールなのです。
寒九という言葉の後に続く単語として有名なのが「水」です。
寒九の水という言葉の中の「水」という単語ですが、やはりこの時期の水が特別なものであるということを表しています。
この時期の水は澄んでいて薬のような扱いであるということも1つですが、どこか神秘的なものだと思われていたとも考えれれますね。
農家の人々はもちろんですが、自然と共に生きている人々にとっては1月の「水」は神聖なものであったに違いありません。
現代でも行われている寒九の水汲みとは?
登山愛好家なら1度は耳にしたことがあるかもしれませんが、実は現代にも「寒九」という時候を意識したイベントがあるのです。
主に新潟県の五泉市という場所で行われているというのですが、 この場所には菅名岳という山があることで知られています。
寒い地域はお酒が美味しいと言われています。
その理由はこの時期のお水は澄んでいて、仕込みに使うと味が良くなるということも関係しているのです。
五泉市にあるこの山からは「銅腹清水」という湧水が出ていることでも有名で、この地域ではこの湧水を使い日本酒が造られています。
市の名前通り、この地域には昔5つの泉があったなどという言い伝えもあり、水がきれいだったと言います。
そんな五泉市では毎年1月14日前後に、菅名岳へ湧水を組みにいくというイベントが行われています。
まさにこれこそが、「寒九の水汲み」ですね。
男女分かれて10Lから60Lのポリタンクを担ぎ、雪の登山道を歩いていきます。
実際の銅腹清水は登山道から少しだけ上の方にあるのですが、登山者の危険を回避するために、この日は登山道で水が汲めるようにきちんと準備されているとのこと。
その水を担ぎ、再び下山していくのです。
またこの汲んだ水は日本酒を仕込んでくれるというサービスもあるので、お酒好きの方にも、登山好きの方にも興味深いイベントですよね。
冬の雪山は登山の玄人でも登るのが難しいと言いますが、初心者ならなおさらです。
ですがこのようなイベントを開催することで、地域に密着した風習も学ぶことができますし、雪山での澄んだ水の良さを味わうこともでききるのでしょう。
まとめ
こちらでは日本の農家で昔から信じられている、寒九の水という言葉について解説してきました。
昔の日本では1月の寒い時期の水は澄んでいて、とてもおいしいものであったということが伺えます。
俳句としても季語として活用されている様に、寒九というと1月の厳しい寒さの中での話だという事も伝わるほど浸透していました。
日本の四季はそれぞれに風情があり、その風情を見事に表現している言葉がたくさんあります。
その中の1つでもある寒九の雨という言葉を意識して、1月9日頃に雨が降るかどうかを気にしてみましょう。
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