冬が深まるにつれ、布団から出るのが辛くなってきますよね。
12月後半にはもうマフラーや手袋が欠かせなくなってくる頃でしょう。
天気予報などでもちょくちょく雪だるまマークを見かけたりしだしますが、そんな時期に「寒の内」という言葉を聞いたことはありませんか?字面だけ見ても寒々しく、冬に関係することは何となく分かりますね。
耳にしたことはあるけど実際知られていない、寒の内のあれこれについて今回は紹介してまいります。
寒の内の時期や意味って?
年明けの天気予報などで耳にすることがある「寒の内」。
冬場の何かの期間でありそうなのは字面からも予想ができますね。
では具体的にはいったいいつのことなのか、詳しくみていきましょう。
●寒の内は日本で一番寒い時!
まず、小寒と大寒いう日についてご存知でしょうか?小寒は二十四節気(にじゅうしせっき)という昔の季節観の内の一つにあたる日で、この日から徐々に寒さが強まっていきます。
大寒も同じく二十四節気の一つで、一年で最も寒くなるとされている日です。
暦の関係で毎年前後しますが、小寒は1月6日頃、大寒は1月20日頃になります。
今回のテーマ寒の内の時期とは、小寒から大寒を過ぎ、立春が来る日までの間を指すのです。
立春は2月4日頃ですので、約1ヵ月間になりますね。
小寒から寒さが厳しくなっていき、大寒でピークを迎えた後徐々に立春へと気温が穏やかになっていくので、この間は「とにかく寒い」と昔から考えられていたんです。
だから、寒の内。
また、寒の内は「寒中」ともいわれます。
冬の厳しい時期を表すのにぴったりな言葉ですね。
寒の内は俳句の季語にもなっている!
季節のある一定時期を言葉で表現しているということは、当然俳句にも詠まれるわけで、寒の内は季語にもなっています。
厳しい寒さを表し、俳句に深みを与えてくれるんです。
有名な歌人の俳句を、こちらで2つ紹介したいと思います。
●松尾芭蕉「干(乾)鮭も 空也の痩せも 寒の内」
干鮭は冬の間に作られ広く出回っていた食材で、身が引き締まり細くなった様子を表現。
音節が全て「K」で始まり、寒空の元の乾いた空気感を一句で表しています。
●正岡子規「薬のむ あとの蜜柑(みかん)や 寒の内」
正岡子規が亡くなる年に詠んだ句です。
彼はミカンが好きだったようで、寒い季節に苦い薬を飲んだ後に食べるミカン、とても美味しく感じたのでしょう。
それとともに、どこか死を感じさせる切ない句になっています。
やはり寒々しさや厳しさを感じさせる俳句です。
寒の内はそういった表現をするのにもってこいの季語だと感じますね。
寒の内にはどんな行事・習慣がある?
1月初旬~2月の初旬、立春までにはどんな行事や習慣があるのでしょうか。
こちらで確認してみましょう。
やはり寒い時期でもあり、神事など以外は目立ったものがないことが分かります。
●寒中見舞い
冒頭でも触れましたが、寒の内は寒中ともよばれます。
この時期に出す便りといえば「寒中見舞い」。
年賀状を出しそびれてしまうことも時にはありますよね。
そういった場合はその年の小寒を過ぎてから寒中見舞いとして便りを送るのがマナーです。
出すのが遅くなった場合以外にも、喪中の年賀状のお返しをするときも寒中見舞いとして送ります。
書き出しが「寒中お見舞い申し上げます」となっているハガキのことですね。
●初〇〇初地蔵や初大師など、新年明けに神様や仏様にあいさつに詣でる日が集中しています。
それぞれの神仏には「○日が縁日」とされる日があり、新年明けの最初のその日にお参りに行くことが習慣となっているんです。
無病息災をお祈りするわけですが、寒い時期にわざわざ出向くことで、心からの願いを体現しているのかもしれません。
●藪入り昔は1月16日に住み込みの奉公人やお嫁さんが実家に帰省するとされていました。
寒の内のような寒い日には人恋しくなるものですから、そういった意味でも里帰りには良いタイミングであるといえますね。
●節分2月3日は暦上邪気が集まりやすい日と考えられ、昔からこの日には邪気払いが執り行われてきました。
当時の節分は今とは大分違うようですが、現代でも形を変えて続いている行事の一つですね。
寒いからこそ修行にぴったり!?
お祭りなどの派手な行事は少ないですが、寒い時期だからこそ行われていたものもあるんです。
寒い中で進んでやりたくないようなことをすることで、心身の鍛錬に繋がるという理由から、寒の内は修行にもってこいのシーズンとされていました。
日本の代表的な修行方法を3つ紹介いたしますが、お一人で行うのは危険を伴いますので、くれぐれも単独では実施しないようにしてください。
●寒中水泳
千葉県館山市など、伝統行事として行う地方もある寒中水泳は、ロシアなど寒い国でも冬の習慣として根付いています。
個人的には寒い中水中に入りたくはないですが、健康には科学的にも良いといわれているようです。
人は寒さを感じると脂肪を燃焼しようとするらしく、単に水に浸かるだけでなく体を動かして泳ぐことで、血行が良くなり脂肪燃焼効果も期待できるとのこと。
しかしきちんと運動しないと危険な行為ですので、実践する際は大会に参加するなど、指導があるもとで行ってくださいね。
●寒稽古
柔道や空手には、雪の積もる中、裸足に柔道着のみを着て稽古をする習慣があります。
それが寒稽古です。
武術の世界では精神統一など、技術だけでなく心の強さの向上も目指します。
寒い中稽古をすることで、心身共に鍛錬をする狙いがあるようです。
道場の指導のもと実施されますので、こちらも個人で真似をしないようにしてくださいね。
●滝行
毎年テレビでもとりあげられますが、寒の内は滝行をする習慣もあります。寒い滝の水に浴びることで、罪や穢れを取り払う、煩悩をなくすといった目的がある修行法の一つです。
冬の澄んだ空気の中、冷え切った水に打たれると頭も冴えわたりそうですね。
人によって滝に打たれていい時間は異なるので、指導員がいない中での滝行は大変危険です。
個人で実践しないようにしてください。
日本で一番寒い時期、風邪対策は万全に!
寒の内は一年を通して一番の冷え込みが予想される時期ですから、やはり体調管理はしっかりしておきたいですね。
寒い時期ならではの風邪の原因や対策方法をお話しまして、寒の内に関するまとめを終えたいと思います。
●寒さだけじゃない!
風邪の原因は?もちろん身体を冷やすことは体調を崩す原因の一つですが、寒の内にはもう一つ大きな風邪の元が潜んでいます。
それが乾燥です。
大気中の水分は雪や雨になり少なくなってしまうので、冬場は空気が乾燥しがちなんです。
空気が乾燥することで、のどや鼻の粘膜が弱ってしまうことに繋がりますし、通常は地面に落ちていくウィルスが、水分に邪魔されないため空気中に漂う時間が長くなります。
こういったことが冬風邪の主な原因といえるんです。
●冬風邪をひかないために
風邪をひかないようにするために、以下に気をつけて生活するように心がけましょう。
睡眠時間を削らない:睡眠不足は免疫力の低下に繋がり、ただでさえ風邪をひきやすい時期に悪い影響しかもたらしません。
お仕事や家事もほどほどに、しっかり休息をとるようにしてください。
最低6~8時間、規則正しい時間に眠ることが肝心ですよ。
ビタミンなどの栄養をしっかり摂る:普段の食生活で風邪予防に有効な栄養を摂り、風邪に強い身体つくりを目指しましょう。
特にビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6を日々の食事で摂れるよう意識してみてください。
ビタミンC =野菜だけでなく海藻にも多く含まれます。
ビタミンB1=たんぱく源となる肉類や魚類に多く含まれます。
ビタミンB2=肉類や魚類の他、海藻にも含まれます。
ビタミンB6=肉類や魚類の他、抹茶や唐辛子にも含まれます。
身体を動かすことを意識する:なにより、寒いからといってコタツから一歩も出ないようでは身体の調子が悪くなってしまいます。
寒の内の寒い時期でもできるだけ運動することが風邪対策には大切ですよ。
例えば家の中でも、ラジオ体操(1~3番まで)を一回行うだけで一日に必要な運動量に相当するのでオススメですよ。
まとめ
聞いたことはあっても具体的に知られていない寒の内について、豆知識も含めさまざまな情報を紹介してまいりました。
次にニュースで聞いたときには「あ、この時期のことね」と、季節感を感じられるようになっていることでしょう。
寒の内はとても寒くなる時期ですが、冬をより一層感じられるともいえますね。
風邪対策を万全に、元気にお過ごしくださいね。