歳時記には2つの意味があることを知っていますか?
歳時記と聞くと一般的には日本の年中行事を思い浮かべると思います。
1つは日本の年中行事を記した書物のことを言います。
そして、もう1つは俳句の季語を集め解説している書物のことです。
歳時記について
現在最古とされている歳時記は、6世紀の中国・荊楚地方(けいそちほう 現 揚子江中流域地方)の「荊楚歳時記」(けいそさいじき)と言われています。
内容は荊楚地方の月ごとの年中行事をまとめたものでした。
「荊楚歳時記」が奈良時代の日本に伝来して、「歳時記」という名称が知られるようになり、日本でも「日本歳時記」という書物が誕生しました。
「日本歳時記」は日本の年中行事はもちろん月ごとの行事、季節ごとの動植物、二十四節気についても記され、折々の生活の諸注意や、和歌や漢詩、動植物の食用・薬効までそれに対しての諸注意なども書かれていました。全7冊にわたってありとあらゆることを網羅し、図解などで説明された暮らしの百科事典のようなものでした。
暮らしの歳時記から季語歳時記へ
江戸時代になると、歳時記の役割が変わってきます。それまでは、暮らしの百科事典だった歳時記が俳諧の季語をまとめた歳時記、「季語歳時記」という名称で俳諧の事典として確立されていきます。現在では、歳時記と言えば「季語歳時記」を指すのが一般的のようです。
次は、年中行事と季語を季節ごとに見ていきます。
正月の歳時
12月(師走)
12月31日
大晦日:大掃除、おせちの準備を終え、家族で年越しそばを食べながら、除夜の鐘を聞き家族団らんで新しい年を迎える前の日。
1月(睦月)
若水:元旦の早朝、年神さまに供え、食事の支度に使うため、初めて汲む水のことです。
初詣:松の内(7日まで)に寺院にお参りすることです。年神さま(干支)を迎えにいく儀式のことです。
年始:年の初めに日ごろお世話になっている方や親せきなどに新年のあいさつに行くことです。
1日
初夢:「一富士二鷹三茄子」がいい夢とされている、元日の夜に見る夢のことです。
4日ごろ
仕事始め(事始め):新年になって初めて仕事をすることです。官庁に合わせるのが一般的です。
7日
七草(人日(じんじつ)):7日の朝、「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ」の春の七草を入れた「七草がゆ」を食べて、無病息災を願います。
11日
鏡開き:お供えの鏡餅を刃物などは使わず、金づちなどで割ります。割った鏡餅をお汁粉などにして食べます。
15日
小正月:1月15日 旧暦では、一年のうち最初に満月となるこの日が正月とされていました。
大寒:冬至後15日目から立春までの30日間の「寒」の期間のうち、寒さが最も厳しくなる後半の15日間をさします。
正月の季語(時候)
- 大晦日
- 師走
- 年の暮
- 年の夜
- 行く年
- 元日
- 小正月
- 去年
- 去年今年
- 正月
- 新年
- 初春
春の歳時
旧暦を使う当時の歳時記に記されている季節割りは、2月、3月、4月が春に区切られます。
2月(如月)
1日
旧正月:旧暦では正月にあたります。
3日頃
節分:本来の節分は季節の変わり目である立春、立夏、立秋、立冬の前日を指す言葉でしたが、現在は立春の前日を節分といい、「鬼は外、福は内」の掛け声とともに、豆まきをして邪気を払い無料息災を願う儀式が行われています。
4日頃
立春:暦の上では春といわれるように、春の気配を感じられる頃です。
6日頃
初午(はつうま):立春後、最初に来る午の日です。各地方の稲荷神社で初午祭が行われます。
8日
針供養:折れ針や古い針をやわらかい豆腐やこんにゃくに刺して、近くの神社に納め供養します。
11日
建国記念の日:神武天皇(初代天皇)が即位したとされる日で、かつては「紀元節」といわれていましたが、戦後より「建国記念の日」として改めて国民の祝日に制定されました。
14日
バレンタインデー:元々は海外のイベントです。昨今、日本では女性から男性へチョコレート菓子をプレゼントとして贈る習慣が毎年恒例になってきています。
19日頃
雨水:暖かさに雪が雨へと変わり、農耕の準備を始める頃です。
3月(弥生)
3日
上巳の節句(桃の節句):上巳はもともと旧暦で3月最初の巳の日でしたが、後に3月3日となりました。桃の花が咲く季節であることから「桃の節句」とも言われ、現代では女児の成長と厄除けを祈願する行事として祝われています。
6日頃
啓蟄:冬の間、冬眠中の虫たちが春の気配を感じ地中から、はいだしてくる頃のことをいいます。
18日頃
彼岸入り:春分を挟んだ前後3日間が「春彼岸」、その初日を彼岸入りといいます。
21日頃
春分の日:自然をたたえ生物をいつくしむ日とされる国民の祝日です。春分春も盛り、昼夜が同じ長さになる頃です。
春分に最も近い戊の日:社日(春社)土の神(産土神:うぶすながみ)を祀り、豊作を祈願します。
24日頃
彼岸明け:春分を挟んだ前後3日間を「春彼岸」と言います。
終日を彼岸明けといいます。
4月(卯月)
1日
エイプリルフール:1年に1度だけ、害のない嘘をついても良いとされる日です。
5日頃
清明:草木が芽吹いて清らかで明るく美しいころです。
8日
花祭り:お釈迦様の誕生日です。
「灌仏会」「仏生会」「降誕会」の他さまざまな呼び方がその土地ごとにあり、釈迦誕生仏像に甘茶をかけて祝う仏事です。
20日頃
穀雨:穀物の成長を育む恵みの雨のことをいいます。
29日昭和の日(旧みどりの日)
昭和天皇の誕生日:この日は以前は「天皇誕生日」という祝日でしたが、年号改定後「みどりの日」となりました。現在は「激動の日々をへて、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」という趣旨の祝日になっています。
春の季語(時候)
- 暖か
- 麗か
- 春暁
- 春昼
- 遅日
- 長閑
- 春
- 春の暮
- 春の日
- 春の夜
- 日永
- 冴返る
- 初春
- 春浅し
- 春めく
- 余寒
- 立春
- 啓蟄
- 彼岸
- 花冷え
- 春深し
- 行く春
夏の歳時
旧暦では、夏は5月、6月、7月で区切ります。
5月(皐月)
2日頃
八十八夜:立春から数えて88日目のことをいいます。遅霜も終わり安定した天候の目安とされ、茶摘・種蒔きに適したころです。
3日
憲法記念日:日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」ことを趣旨とした国民の祝日です。
4日
みどりの日:「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心を育む」ことを趣旨とした国民の祝日です。
5日頃
こどもの日:「子供の人格を重んじ、子供の幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことを趣旨とした国民の祝日です。端午の節句男児の健やかな成長を、こいのぼりや五月人形を飾って祈願し、祝う節句です。
6日頃
立夏:夏の気配が立つころです。
第2日曜日
母の日:日頃の母への感謝の気持ちを込めてカーネーションなどプレゼントを贈ることが一般的です。
21日頃
小満:万物が次第に成長して満ち始めるころです。
6月(水無月)
6日頃
芒種:芒(のぎ)のある穀物(稲や麦など)の種を蒔く頃です。
10日
時の記念日:時間の大切さをかみしめる日です。
11日頃
入梅:立春から数えて127日目の日。梅雨の季節に入るころといわれていますが、実際の「梅雨入り」は地域により異なります。
第3日曜日
父の日:父への日頃の感謝の気持ちを込めて、父の日の象徴である「黄色いバラ」をはじめとするプレゼントを贈ることが一般的です。
21日頃
夏至:一年の間で最も昼が長い日です。
7月(文月)
1日
山開き、海開き:登山は、かつて信仰行事でした。夏の一定期間を除き禁止されており、この一定期間の解禁日を「山開き」と呼びました。現在では夏山登山の安全祈願として行われています。海開きは、海水浴場の設備が整い一般に開場することをいいます。
2日頃
半夏:生夏至から数えて11日目。半夏(カラスビシャク)という薬草が生えるころです。
7日
七夕:年に1度だけ彦星(牽牛)と織姫が出逢うことのできる日です。願い事を書いた短冊を笹の葉につるして飾ります。
7日頃
小暑:梅雨明け間近、太陽の照りも強くなり本格的な暑さに向かう頃です。
第3月曜日
海の日:「海の恩恵に感謝すると共に、海洋国日本の繁栄を願う」ことを趣旨とした国民の祝日です。
20日頃
土用:年に4回ある土用の中でも「土用の丑の日」として知られる夏の土用にウナギを食べる習慣があります。
23日頃
大暑:1年で最も暑さの厳しいころとされています。
7月中旬~8月上旬三伏
- 初伏:夏至後の第3の庚の日
- 中伏:第4の庚の日
- 末伏:立秋後の最初の庚の日
上記3つの総称を三伏といいます。暑い盛りの時期です。
夏の季語(時候)
- 明易
- 暑し
- 涼し
- 夏
- 短夜
- 夏めく
- 麦の秋
- 立夏
- 秋近し
- 水無月
- 炎ゆ
- 灼く
- 夜の秋
秋の歳時
8月(葉月)
6日
広島原爆の日:昭和20年8月6日(第二次世界大戦末期)に、アメリカ合衆国により投下された原子爆弾が広島市を壊滅しました。
8日頃
立秋:秋の気配が立つころです。
9日
長崎原爆の日:昭和20年8月9日(第二次世界大戦末期)に、アメリカ合衆国により投下された原子爆弾が長崎市を壊滅しました。
11日
山の日:「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨とした国民の祝日です。
15日
旧盆:終戦記念日太平洋戦争の終結したこの日を「終戦記念日」とし、全国戦没者追悼式が行われます。
23日頃
処暑:厳しい暑さが峠を越えおさまるころです。
9月(長月)
1日頃
二百十日:立春から数えて210日目にあたり、台風の多いころです。
8日頃
白露:秋色が濃くなり、冷気とともに草木に白露が宿るころです。
9日
重陽の節句:中国の重日思想が由来。縁起の良い奇数(陽数)の極である9が重なることから特に重要とされ「重陽」と呼ばれています。
酒に菊の花を浸した「菊酒」で厄を祓い、長寿を祈願したことから「菊の節句」ともいいます。10日頃
二百二十日立春から数えて220日目を迎え、二百十日以上に台風襲来の多いころです。
第3月曜日
敬老の日:「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」ことを趣旨とした国民の祝日です。
20日頃
彼岸入り:秋分を挟み前後3日間を「秋彼岸」と言い、その初日を彼岸入りといいます。
23日頃
秋分の日:秋分「祖先を敬い、亡くなった人々を偲ぶ」ことを趣旨とした国民の祝日です。秋分に最も近い戊の日社日(秋社)土の神を祀り、その年の収獲に感謝し祝う日です。
26日頃
彼岸明け:秋分を挟み前後3日間を「秋彼岸」と言い、その終日を彼岸明けといいます。
10月(神無月)
第2月曜日
体育の日:「スポーツに親しみ、健康な心身を培う」ことを趣旨とした国民の祝日です。
8日頃
寒露:朝夕の冷気が増し、草木に宿る露が凍りそうになるほど冷え込むころです。
23日頃
霜降:秋も過ぎ去り初霧が降り始めるころです。
31日
ハロウィン:海外のイベントです。万聖節の前夜祭で日本で言うお盆にあたります。仮装した子供達が「トリック・オア・トリート」「お菓子をくれないと、いたずらするぞ!」と唱えながら近所の家を訪ねたり、かぼちゃをくり抜き中にろうそくを灯した「ジャック・オウ・ランタン」が有名です。
秋の季語(時候)
- 秋
- 秋澄む
- 秋の暮
- 爽やか
- 秋気
- 身に入む
- 夜長
- 残暑
- 新涼
- 立秋
- 秋彼岸
- 仲秋
- 二百十日
- 八朔
- 冷やか
- 秋深し
- 朝寒
- 冷まじ
- 漸寒
- 行く秋
- 夜寒
冬の歳時
11月(霜月)
3日
文化の日:「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ことを趣旨とした国民の祝日です。
7日頃
立冬:冬の気配が立つころです。
15日
七五三:男の子は5歳、女の子は3歳と7歳に、子供の成長に感謝し厄払いと今後の成長を願って神社に参拝する行事です。
22日頃
小雪:北風が強くなり、わずかながら初雪が降るころです。
23日
勤労感謝の日:「勤労をたっとび、生産を祝い、国民互いに感謝しあう」ことを趣旨とした国民の祝日です。
酉の日:酉の市11月の酉の日に浅草の酉の寺や各地の鷲神社、大鳥神社で催される行事で開運招福・商売繁盛を願います。酉の日は12日に1回巡ってくるため、2回の年と3回の年があります。3回ある年は火事が多いといわれています。縁起熊手が有名です。
12月(師走)
7日頃
大雪:日本海側では大雪に、本格的な寒さが訪れるころです。
22日頃
冬至:1年の間で最も昼が短くなる日です。
23日
天皇誕生日:現在の天皇の誕生日を祝う日です。
25日
クリスマス:イエスキリストの生誕を祝う日です。
街中がイルミネーションで色鮮やかに飾られ、家族、恋人、友人など大切な人とプレゼントを交換したり、クリスマスパーティを開いたりすることが習慣となっています。
冬の季語(時候)
- 冱つ
- 凍る
- 寒し
- 冴ゆ
- 短日
- 冷たし
- 冬
- 冬ざれ
- 冬の夜
- 神無月
- 小春
- 立冬
- 冬至
- 寒の内
- 節分
- 春近し
まとめ
今回ご紹介した季語は季節の時候の基本季語のみですが、まだまだたくさんの季語があります。
基本季語だけでも7百はあるようですし、全体の季語の数も5千季語以上あるそうです。季語を見ればいつの季節のどの年中行事のことを言っているのか、分かるようになると思います。
年中行事が季語になって俳句が成り立っているということがお分かりいただけたと思います。