青龍・白虎・朱雀・玄武、一度くらいは聞いたことがあるでしょうか? 風水に詳しい方ならご存じでしょう。筆者は幼少の頃、アニメ『ふしぎ遊戯』でそれらの単語を耳にしましたが、意味はまったく理解していませんでした……。
青龍・白虎・朱雀・玄武は、併せて風水四神獣(「四神」「四獣」)と呼ばれる神様です。今回は日本人にもなじみのある、風水四神獣についてご紹介していきます。日本に与えた影響についても書いていますので、風水には興味がない方もお読みになってくださいね。
風水四神獣とは?
風水四神獣、そして四神相応とは何なのでしょうか。かつては日本の都市計画にも、影響を与えていたようです。
四方を守る神
風水四神獣とは、青龍(せいりゅう)・白虎(びゃっこ)・朱雀(すざく)・玄武(げんぶ)というの神々のことです。古代中国の空想上の動物で、季節や四方に輝く星宿(せいしゅく/簡単にいうと星座のこと)・それぞれの方角に当てはめられました。
風水では風水四神獣の居所になぞらえ、各方角に地理的条件(下記参照)がそろった理想の場所のことを「四神相応(ししんそうおう/しじんそうおう)」の地と呼んでいます。四神相応の地は繁栄すると考えられているのです。
- 【東】青龍→河川
- 【西】白虎→街道
- 【南】朱雀→池泉
- 【北】玄武→山岳
現在、多くの日本人にとって風水は“占い”や“迷信”に近いものかもしれません。しかし風水はかつて、道教(陰陽思想・五行説)や易経(えききょう)などに基づく“最先端の技術・思想”と考えられていました。
日本の都市計画にも影響
古代中国で生まれた風水は、現代で言うところの東アジア・東南アジアなどへ伝わりました。日本も影響を受けた国の一つです。例えば、風水四神獣は高松塚古墳(奈良県)の壁画にも描かれています。
大規模なものとなると、平安京です。桓武天皇は四神相応の地を選び、平安京へ遷都しました。時代は下り、徳川家康も四神相応の地に江戸幕府を開いています。現代の京都と東京、どちらも都市計画の段階で風水の影響を受けていたのです。
- 平安京
- 【東】青龍→鴨川
- 【西】白虎→山陽道・山陰道
- 【南】朱雀→巨椋池(おぐらいけ)
- 【北】玄武→船岡山
- 江戸
- 【東】青龍→平川
- 【西】白虎→東海道
- 【南】朱雀→江戸湾
- 【北】玄武→富士山
青龍について
風水四神獣の一つ、青龍について詳しく見ていきましょう。青龍とはどんな生き物で、どういったご利益があるのでしょうか。
青龍はどんな生き物?
東を守る青龍は、青い(実際は緑っぽい)龍です(もちろん想像上の動物、以下同様)。龍は現代でもいろいろなもののモチーフとなっていますから、想像しやすいですね。しかし、なぜ“青い”“龍”なのでしょうか。
古代中国の天文学では、東方七宿(※)の星が“龍”の形をしていると考えていました。色に関しては、陰陽五行説によると東方の色は青とされていたからです。
※中国天文学では、天球上の星座を28(二十八宿)に分けていました。月はおよそ28日で天球を一周するので、1日に1宿ずつ動く計算です。
青龍がつかさどるもの
青龍は他にも、季節の春を司っています。物事の発達を促進する神様でもあり、金運・出世・成功・勝利などを呼び込んでくれると信じられています。青龍は風水四神獣の中でも、最も貴い存在と考えられ、今でも中国では“めでたいしるし”とされています。
青龍の置物は、玄関や部屋のドアを入って右側、もしくは部屋の中心から北または東に置くと、運気がアップするそうですよ。毎日、新鮮なお水をお供えするとよいと言われています。
白虎について
風水四神獣の一つ、白虎について詳しく見ていきましょう。白虎とはどんな生き物で、どういったご利益があるのでしょうか。
白虎はどんな生き物?
西を守る白虎は、文字通り、白い虎です。実在する生き物ですので、想像しやすいですね。古代中国の天文学では、西方に当たる七宿が“虎”の形をしていると考えていたことに由来します。白色も、陰陽五行説で西方を示す色です。
白虎がつかさどるもの
白虎は他にも、季節の秋を司っています。勇猛さをつかさどる神様・月の女神の化身とも言われ、リーダーシップ・商売繁盛・子宝・安産などを呼び込んでくれると信じられています。
白虎の置物は、玄関や部屋のドアを入って左側、もしくは部屋の中心から西に置くと、運気がアップするそうです。龍の置物と一緒に置くことで、陰と陽のバランスがよくなります。
【参考】白虎隊だけではなかった
白虎といえば、戊辰戦争で自刃した「白虎隊」を思い出す人もいるでしょう。当時、会津藩が組織した少年隊(16~17歳)のことです。
会津藩には他にも、年齢別に朱雀隊(18~35歳)・青龍隊(36~49歳)・玄武隊(50歳以上)をつくっていました。悲劇の最期を遂げた白虎隊ばかりが有名ですが、主力部隊はあくまでも朱雀隊と青龍隊でした。
朱雀について
風水四神獣の一つ、朱雀について詳しく見ていきましょう。朱雀とはどんな生き物で、どういったご利益があるのでしょうか。
朱雀はどんな生き物?
南を守る朱雀は、ざっくりと説明すると赤い鳥です。完全にイコールではありませんが、鳳凰(ほうおう/中国の伝説上の鳥)をイメージするとよいでしょう。どのみち、どちらも実在しませんし……。
“赤い”“鳥”になった理由は、南方に当たる七宿が“鳥”の形をしていたから、陰陽五行説では赤を南方の色としているからです。
朱雀がつかさどるもの
朱雀は他にも、季節の夏を司っています。陽気・旺盛をつかさどる神様でもあり、地位名誉・人気・芸能・アイデアなどを呼び込んでくれると信じられています。恋愛運にも効くと言われていますよ。朱雀の置物は、部屋の中心から見て南に置くと運気がアップするそうです。
【参考】日本の元号にもなっていた?朱雀
朱雀は、日本の元号にもなっていたとする説があります。大化に始まる日本の元号ですが、大化→白雉(はくち)→朱鳥→大宝と続きます。朱鳥の異称こそ、朱雀と考えられているのです。当時の天皇は、壬申の乱でも有名な天武天皇です。
平安時代には、朱雀天皇(在位930~946年)・後朱雀天皇(在位1036~45年)という、朱雀の名を冠した天皇も存在しました。
玄武について
最後に風水四神獣の一つ、玄武について詳しく見ていきましょう。玄武とはどんな生き物で、どういったご利益があるのでしょうか。
玄武はどんな生き物?
北を守る玄武は、カメにヘビが巻き付いているという、なんとも不思議な姿をしています(単純にカメの場合もあります)。古代中国の天文学では、北方に当たる七宿は“ヘビが絡みついたカメの形”をしていると考えたことに由来します。想像力がたくましいですね。
青龍(青)・白虎(白)・朱雀(赤)と風水四神獣はそれぞれ色が付いていたのに、玄武にはないの? と不思議に思ったかもしれません。確かにぱっと見だと、玄武には色が付いていませんよね。実は「玄」は黒を意味します。陰陽五行説では、黒を北方の色としているのです。
玄武がつかさどるもの
玄武は他にも、季節の冬を司っています。暗闇をつかさどる神様でもあり、また魔除け・健康・長寿・よい人間関係などを呼び込んでくれると信じられています。
玄武の置物は部屋の中心から見て北、もしくは玄関から一番遠い場所に置くと運気がアップするそうです。陰陽五行説で玄武は「水」をつかさどることから、火事の心配がある場所に置くのもよいとされていますよ。
まとめ
風水四神獣とは古代中国の空想上の生きもの、青龍・白虎・朱雀・玄武の総称です。青龍は東、白虎は西、朱雀は南、玄武は北の守護神とされ、地理的条件がそろった理想的な土地は「四神相応の地」と呼ばれます。
風水は迷信だと思うかもしれませんが、意外にも天文学などがベースになっていたことがわかります。日本の都市計画などにも影響を与えた風水四神獣、少しでも興味を持っていただけたら幸いです!