神社の参拝には、さまざまな作法があります。たとえば、鳥居の前で一礼する・参道の中央を歩かない・手水舎で手と口を清めるなどです。
当然ながら、拝殿(賽銭箱が置かれている建物)で神様に対して挨拶・願掛けする際にも、二礼二拍手一礼という作法が定められています。
この記事では、二礼二拍手一礼の意味や起源、そして具体的なやり方を紹介します。
二礼二拍手一礼の意味とは
二礼二拍手一礼とは、神社の拝殿前でおこなう作法の1つです。文字通り、作法の手順に「お辞儀2回・拍手2回・お辞儀1回」が含まれています。
二礼二拍手一礼の動作の1つ1つには、きちんとした意味が込められています。大まかに説明すると、はじめの二礼は「神様に対する挨拶と感謝、次の二拍手は「邪気払いや喜びの表現」、最後の一礼は「神様に対する感謝と見送り」を意味します。
神社の二礼二拍手一礼の起源
現在の二礼二拍手一礼の起源を探ると、1875(明治8年)4月に式部寮(皇室の祭典や儀式などを司る宮内庁の一部局)から発せられた「官国幣社の祭式を定めた式部寮達【神社祭式】」にたどり着くようです。
式部寮達【神社祭式】では、神職がおこなう祝詞奏上や拝礼についての作法として「再拝拍手」とだけ記されています。当時の内務卿である伊藤博文は、「一揖再拝二拍手一揖」を正式な作法としました。一揖とは、浅いお辞儀ことを意味します。
1907年(明治40年)の「神社祭式行事作法」にて、あらためて祭式の作法が定められます。この段階の作法は「再拝⇒二拍手⇒押し合せ⇒祝詞奏上⇒押し合せ⇒二拍手⇒再拝」であり、まだ二礼二拍手一礼よりも長い動作です。再拝とは、深いお辞儀を2回することを意味します。
1942年(昭和17年)に「神社祭式行事作法」が改訂されます。拍手の工程が削除された結果、「再拝⇒祝詞奏上⇒再拝」となりました。
そして、1948年(昭和23年)の改訂にて「再拝⇒祝詞奏上⇒再拝⇒二拍手⇒一拝」となります。一般の参拝者は祝詞の奏上をおこなわないので、この改訂よって、現行の二礼二拍手一礼になったと考えられます。
神社の二礼二拍手一礼のやり方
二礼二拍手一礼の起源について説明したところで、二礼二拍手一礼の具体的なやり方を紹介します。
鳥居に入ってから拝殿に到着するまでの作法については、ここでは割愛いたします。
- 賽銭箱の前に到着したら、拝殿に向かって軽くお辞儀します。
- 賽銭箱に賽銭を入れます。賽銭を入れる理由は、お金に自身の穢れを込めて、賽銭として切り離すためと言われています。賽銭を置くようにして入れることで、なるべく音が鳴らないようにしましょう。賽銭の額ですが、決まりはありません。語呂合わせをおこないたいなら、次のいずれかがオススメです。
- 5円玉を1枚(ご縁)
- 5円玉を5枚(二重のご縁)
- 5円玉を9枚(始終のご縁)
- 上部に鈴が付いているようなら、吊り紐を引っ張って、鈴を鳴らしてください。鈴の音には魔除けの効果があると考えられており、参拝客の穢れを浄化します。
- 拝殿に向かって、深いお辞儀を2回おこないます。このお辞儀は、神様に対する挨拶と感謝を示すものです。
- 両手を胸の高さまで持ち上げて、手のひらを重ね合わせます。この際、右手を少し手前に引いた状態にしてください。左手を「霊」、右手を「体」として、まだ神様と人が一体になっていないことを意味します。
- 拍手を2回おこないます。叩き終わった後、左手と右手の高さを同じ高さに戻します。これは、神と人が一体になったことを意味します。
- 両手を重ね合わせた状態で、神様に対して願いごとを念じます。普段の安全や幸運に対する感謝を念じても構いません。自分の名前と住所も添えて念じると、神様に念が伝わりやすくなるとも言われています。
- 両手を下ろして、1回だけ深くお辞儀します。神様に対する感謝を示すとともに、自分の目の前に現れていたかもしれない神様を丁重に送り出すためです。
- 最後に、拝殿に向かって軽くお辞儀します。
神社によってお辞儀と拍手の回数は違う
拝殿の前における一般的な作法は、二礼二拍手一礼です。ただし、神社によっては、別の作法を採用していることもあります。
たとえば、出雲大社では、二礼四拍手一礼を正式な作法としています。四拍手の理由は、「四は四季を表し、豊穣と繁栄を祈願するため」とも「四方(東西南北)を守護する神々に対して感謝を示すため」とも言われています。
また、出雲大社の例祭(毎年5月14日に開催)では、特別に二礼八拍手一礼が採用されます。「八百万」という言葉があるように、古来から「八」は無限を意味する数字です。そこで、八拍手をもってして、神様に対して限りない感謝の意を示すと考えられています。
お寺では二礼二拍手一礼をおこなわない
二礼二拍手一礼は、神社の参拝における作法です。お寺の参拝ではおこなわないので、注意してください。
参考までに、お寺の拝殿に到着した際の作法を紹介します。
- 拝殿内に設定されている賽銭箱に賽銭を入れます。投げ入れず、置くようにして入れましょう。賽銭の金額に決まりはないため、語呂合わせで金額を決定しても構いません。
- 胸の前で両手を合わせて、一礼します。
- 賽銭箱のそばにお香が置かれているので、右手の親指・人差し指・中指でお香をつまみ上げます。左手を軽く添えつつ、額の前に掲げます。その後、香炉の中へ静かにお香を落とします。焼香の回数は、宗派によって異なります。具体的な回数が分からなければ、1回だけ構いません。
- お香の代わりに線香が用意されている場合は、近くに設置されているロウソクなどで火をつけます。線香の火は、息で吹き消さず、手であおいで消します。その後、線香皿に供えます。
- 合掌しつつ、願いごとや日々の安全の感謝などを念じます。最後に、一礼します。
まとめ
神社における二礼二拍手一礼は、式部寮達【神社祭式】から様々な変更が加えられつつ、現行の作法となりました。1つ1つの動作に、きちんとした意味が込められています。
賽銭箱に入れる賽銭の額は、これといって決まりはありません。こだわりが無ければ、語呂合わせで決めるといいでしょう。
二礼二拍手一礼は、あくまでも神社の参拝作法です。お寺の参拝方法は、また別に存在します。混同しないように注意しましょう。