茶席で茶碗をくるくる回す作法をご存知の人も多いのではないでしょうか?でも、それは一体何のためにしているのでしょうか?意味も無く回しているわけでは無さそうです。ここでは、そんな茶席で茶碗を2度まわす理由を中心に、茶道の作法を詳しくご紹介します。
茶席で茶碗を2度まわすのはなぜ?
茶道の茶席では、茶碗を2度ないし2度半まわす作法が存在します。茶道について詳しく知らない人でも、何となく茶碗をくるくる回しているというイメージだけは持つ人も多いのではないでしょうか。では、なぜ茶席では茶碗を2度まわすのでしょう。
茶道の世界では、亭主と呼ばれる主が常に茶碗の正面を意識しながら茶を点てます。そして、招待したゲストの前に正面を向けてお茶を出します。正面の一番美しい所を向けて出すのは、ゲストに敬意や尊敬を表わしているからです。「一番美しい状態で提供し、相手に目でも楽しんでもらう」というおもてなしの心なのです。
でも、そんな美しい茶碗の正面を、お茶を飲むことで汚してしまうのは非常識ですし、絵柄が浮き出た仕様の茶碗の正面は飲み辛いため、少し回して正面を避けて口を付けるようになったのです。
時計回りに2度、もしくは2度半ほど回し、相手に正面を向けて=正面とは正反対の場所に口を付けて飲むのが一般的です。
茶道の作法には意味がある!!
茶道では、茶碗をまわす以外にも様々な作法があります。
茶席では私語は慎むものですが、主と客が作法によりコミュニケーションを取っています。茶室で空間を共にする者同士がその茶席を造り上げるのです。全く同じメンバーが集まる茶会でも、毎回異なる茶会になるのが面白いところです。
では、主にどんな作法があるのか?裏千家の作法を見てみましょう。
〈掛物の拝見〉
茶室へ招かれたら、まず床の間に飾られた掛物を拝見をします。一緒に生け花などのお花が飾られていることもあります。拝見の前に正座をして一礼します。ここに掛けられているのは、茶会のテーマになっていることも多く、なかなか見られないものもあるため、ゆっくり楽しみましょう。
〈釜の拝見〉
次に点前座へ進み、釜や風炉を拝見します。
拝見が終わる頃、亭主が入って来ます。
〈亭主のお点前開始〉
亭主は右手に棗、左手に茶巾、茶杓、茶筅を持ってきて点前座に座ります。
湯が沸く音、茶を点てる音も楽しみます。
〈菓子の振る舞い〉
お点前が進んでいくとお菓子が振る舞われます。亭主がお菓子をどうぞと声を掛けますので、速やかに懐紙に取り「頂戴致します。」と亭主に挨拶します。次客には「お先に」と挨拶をして食べ始めます。
〈お茶をいただく〉
お茶が点てられ次第亭主が出してくれます。
ゲストは茶碗を次客との間に置き、「お先に」と声をかけます。前のゲストがいる場合には、その人に向かって「ご相伴にあずかります」と声を掛けます。次に自分の膝の前に置き、「お点前頂戴いたします」と亭主に声を掛け一礼します。左手に茶碗を乗せ、右手で2度回し正面を避けておしいただきます。
最後の一口だけは音を立てて吸い切り、飲み終わりを知らせます。
〈茶碗の拝見〉
飲み終わったら、親指と人差し指で飲み口を拭き、その指を懐紙で素早く拭き取ります。茶碗を反対周りで2度回し、正面に戻します。膝の前に置き直し、両手を付き茶碗全体を拝見します。裏の刻印などを見たい場合には、畳の上へ戻す前に少し傾けて見てみましょう。持ち上げて拝見するのは粗相の元になり兼ねませんので避けましょう。
それから出された場所へ茶碗を戻します。
次客がお茶を頂き終えるまで静かに待ちましょう。
このように、様々な動作に意味があり、亭主や次客などを思いやる優しさが持たれています。
茶碗の正面はどこ?左右どちらに回すべき?
お茶の席で出される茶碗は実に様々です。お茶を頂く際は正面を避けることは分かっていても、正面が分からなくては困ってしまいます。では、正面はどこなのでしょうか?
茶碗の正面は、一番美しく華やかな絵が付いている場所です。
お茶を点ててくれる亭主は、正面をゲストに向けて置きます。そのため、お茶を飲む前は、向かって右=時計回りに少しずつ2度まわします。飲み終わったらまた左=反時計回りに2度回し元に戻します。
難しいのは絵柄の無い茶碗の場合です。絵柄の無いシンプルな茶碗にも実は正面があり、茶碗の作者が裏面に刻印を押しています。その刻印が左側になっていれば、それが正面です。慣れればすぐに分かりますが、慣れないと戸惑うかも知れません。
柄を避けた飲み方は日本人ならでは!!
お茶を頂く際に柄を避けるのは、謙遜の意味があります。実に日本人らしく、奥ゆかしい考え方です。この飲み方は外国の人には理解しがたいもののようです。「一番素敵な所で飲むのが礼儀だろう?」と外国の方は口を揃えて言いますが、飲み終えてから絵柄を見る際に、汚れていては良いものが見れない、絵柄に汚れが入るかも知れない、絵柄のせいで口当たりが変わるという点まで考え避けているのです。
このように、茶道の世界では随所で心遣いがみられます。
茶席では余計なお喋りや音を立てないのが決まりですが、最後に入室した者が襖を音を立てて閉めます。これは、ゲストが全員入室しましたという合図です。
前述の様に、音を立てて飲み干すのも飲み終わりの合図です。
また、茶会に初参加のゲストや、作法に不慣れな下司とは最初と最後を避けて座ることができるのも優しい配慮です。
菓子を食べるにも作法があるの?
茶道では、菓子を食べる際にも作法があります。
中でも一番不思議な作法は、お茶を飲む前にお菓子を食べてしまうというものでしょう。一般的なティータイムのように、お茶とお菓子を一緒に味わうものではなく、初めにお菓子を味わい、それが終わると口の甘さをお茶で流すというものです。これは、それぞれをしっかり味わうことができる独自のものです。
また、お菓子はお皿では無く懐紙の上に自分の分を取ります。数枚の懐紙を皿代わりに使います。慣れないと持ち辛さを感じますが、手皿のように使えますし、食べ終わった後も楊枝と一緒にサッと仕舞えて便利です。
懐紙は万能!携帯しておくと便利
懐紙は茶道だけで使う物と勘違いしている人も多いのではないでしょうか?でも、実は携帯しておくと非常に便利なアイテムなのです。懐紙は食べ飲みした後の口を拭う事にも使えますし、茶道のように紙皿代わりにも使えます。その他にも、グラスやコップを置くコースター、箸やスプーン、フォークなどを置く箸置き代わり、ポチ袋、メモ用紙、一筆箋、感染症が流行る時期にはマスクを取り外しておく際に挟んで置いたり、予備のものを持ち歩く際にも使えます。
色柄も豊富なので、自分好みが見つかります。外国の方への贈り物にしても喜ばれるでしょう。
着物や浴衣を着る時だけでなく、普段も忍ばせておいて便利に使ってみましょう。
まとめ
茶席で茶碗を2度まわすのは、正面を避けてお茶を頂くためです。茶会に招かれた人が茶碗の色柄を守り、亭主を敬い謙遜する気持ちを表しています。意味も無くくるくる回しているかと思いきや、深い理由があったのです。
茶道では、それ以外にも沢山の作法があり、その一つずつに相手を思いやり、敬う気持ちが伺えます。初心者でも茶会を楽しめる工夫もありますので、興味がある人は是非体験してみてください。