日本には、新年二日目に書き初めする風習があります。一字や四字熟語などの言葉を書いて、自身の夢や目標の決意を固めたり、一年の幸福や健康を祈願したりします。
書き初めの歴史は古く、起源をたどると平安時代に行きつきます。現代でも書き初め大会が開かれているように、日本人の文化にとって重要な行事です。
この記事では、新年二日に書き初めする意味や起源、書き初めに適した言葉の選び方などを紹介します。
新年二日に書き初めする意味と由来とは
新年二日目に書き初めする意味には、この日に書道をおこなうことによって、腕前が上達するという言い伝えがあるからです。
日本には、古くから「事始め」や「仕事始め」と呼ばれる風習があります。元旦を一区切りとして、新年の安全や幸運を願った後に、新年二日から仕事を始めるという風習です。新年二日に芸事を始めると、上達が早いとも言われています。
書き初めの由来は、平安時代の新年の行事である吉書初め(きっしょぞめ)です。平安時代の宮中では、元旦に初めて汲んだ水(若水)を使って墨をすり、恵方(福徳を司る歳徳神がいるとされる方向)を向いて、詩歌を書いたと伝えられています。
吉書初めの風習は、江戸時代の寺子屋の普及によって、庶民にも広がり始めます。やがて明治時代になると、義務教育の一環として書道がおこなわれるようになり、書き初めの風習が普及しました。
書き初めはいつまでに終わらせればいいのか
書き初めは、なるべく1月7日までに終わらせた方がいいでしょう。
書き初めの作品は、どんど焼き(正月飾りやお札などをお焚き上げする行事)にて処分する方法が正式とされています。
どんど焼きの開催日は、地方によって異なります。かつては1月15日におこなわれる習わしでした。現在では、一般人が参加しやすいように、15日より前の土曜日・日曜日に開催されることが多くなってきています。早いところでは、松の内の最終日である1月7日におこなうようです。
あなたの地域のどんど焼きの開催日を考慮して、早めに書き初めを終わらせましょう。面倒だからといって、ゴミ箱に捨てて処分しないでください。
新年二日に書き初めする言葉の選び方
書き初めとして書かれている言葉には、いくつかの種類があります。
種類ごとに、書き初めにオススメの言葉をいくつか紹介します。
【目標】
- 心機一転:あることをキッカケにして、すっかり心を入れ替えること。
- 鴻鵠之志:鴻は「おおとり」、鵠は「くぐい」の意味。どちらも大きい鳥であることから、大人物の考えのたとえとして使う。
- 初志貫徹:初めに心に定めた志を最後まで貫き通すこと。
【努力】
- 一意専心:余計な物に惑わされず、ひたすら1つのことに専念すること。
- 粉骨砕身:骨を粉にし身を砕くほど、特定のことに対して努力する。
- 有言実行:自分の口にしたことは必ずやり遂げる。
【活躍】
- 獅子奮迅:獅子が奮い立って暴れるように、勢いよく物事に対処すること。
- 勇往邁進:目標に向かって、勇敢に突き進んでいくこと。
- 飛竜乗雲:「竜が雲に乗って空へ舞い上がるという」意味から、時代の流れに乗って、賢者や英雄が才能を発揮することのたとえ。
【真心】
- 誠心誠意:嘘偽りや打算をなどを持ちこまず、真心をもって事に当たること。
- 公明正大:私心を持ち込んだり、問題を隠し立てしたりせず、良心に従って正々堂々と行動すること。
- 瑣砕細膩:情や心遣いが細かなところまで行き届いていること。
【健康】
- 無病息災:病気にかからず、元気でいられること。
- 質実剛健:中身が充実していて飾り気がなく、強くてたくましいこと。
- 万寿無疆:いつまでも健康で長生きすること。
【幸福】
- 大願成就:大きな願いごとが叶うこと。また、神仏に祈ったことが実現すること。
- 歓天喜地:非常に喜ぶ様子。天を仰いで歓び、地に向かっても喜ぶ意。
- 益者三楽:有益な3つの楽しみ。礼儀と音楽に調和のとれた暮らし。他人の美点を話題にする。立派な友人を多く持つ。
【平和】
- 泰然自若:落ち着いていて、どんなことでも慌てふためかない様子。
- 明鏡止水:「明鏡」は一点の曇りもない鏡、「止水」は静かにたたえた水のこと。心にわだかまりがなく、澄みきっていること。
- 悠々自適:ゆったりと心静かに、思うがままに暮らすこと。
【家族】
- 一家団欒:家族が集まり、楽しく談笑していること。
- 琴瑟相和:琴と瑟の音が調和することから、夫婦の仲が非常に良いことのたとえ。
- 大衾長枕:同じ布団で寝るほど、夫婦仲や兄弟仲が良いこと。
新年二日の書き初めに必要な道具
書き初めといっても、必要な道具は、一般的な書道の道具と変わりません。
書き初め用紙のオススメの大きさは、大きい順に半切(35cm×136cm)・半紙三枚判(24.3cm×100cm)・八ツ切(17cm×68cm)の3種類です。
【必要な道具】
- 書き初め用の筆
- 名前書き用の筆
- 書き初め用紙
- 下敷き
- 文鎮
- 固形墨または墨汁
- すずり
書き初めする際のルール
書き初めに厳密なルールはありませんが、昔からの風習を考慮するなら、次の2点は守った方がいいでしょう。
- その年の恵方を向いて書き初めをおこなう
- どんど焼きが開催されるまでに書き終えて、作品をお焚き上げする。
まとめ
新年二日の書き初めは、平安時代の宮中でおこなわれていた吉書初めに由来します。江戸時代の寺子屋で一部の庶民に広がり、明治時代の義務教の授業に取り入れられることで、一般人にも普及しました。
書き初めとして書く言葉には、これといって決まりはありません。多くの方々は、自身の夢や目標、一年の幸福や健康、良好な家族仲を意味する言葉などを書いています。
書き初めの作品は、どんど焼きでお焚き上げすることが正式な処分方法とされています。遅くとも1月7日までに書き終えて、あなたの地域で開催されるどんど焼きの会場に持っていきましょう。