虫干しと聞いてあなたは何を想像しますか?そう、衣替えの時の衣服を虫干しすることを想像されると思います。虫干しするのは洋服だけじゃないのはご存じでしょうか?
今回ご紹介するのは、虫干しについてです。まだ虫干しなんてしたことないって方は一度やってみませんか?
虫干しの意味とは
虫干しとは衣服だけではなく、書物や調度品、絵画など虫やかびを防ぐために、風を通し、日を当てることをいいます。湿気の多い日本ですから、湿気を防ぐのが一番の目的ですね。
湿気を含んだままにすると、かびも付きやすくなります。お風呂がいい例ですよね。いくら掃除していても、湿気が完全に取れることのないお風呂はかびが付きますよね。それを見て見ぬふりにしていたらかびは増える一方です。
衣服や書物、調度品、絵画など保管場所に仕舞いっ放しの物は、知らない間に湿ってきます。その湿気をとるために行うのが虫干しです。
ある程度湿気ると虫にとっても恰好の住処になってしまい、せっかくの衣服や書物、調度品、絵画などが虫に食われたり、気づいたら衣服などは穴が空いていたなんてことになります。
虫干しの歴史は古かった
虫干しの歴史は古く、平安時代の宮中行事として行われていました。虫干しには異名がたくさんあります。
- 虫払い
- 土用干し
- 夏干し
- 風入れ(かざいれ)
- 虫振い
- 曝涼(ばくりょう)
などと呼ばれます。地方によって呼び方もかわってきます。
宮中行事として行われていた時代は曝涼と呼ばれていました。中国でも古くから行われていましたが、日本でも正倉院やその他の寺社で蔵書、蔵物などの曝涼が行われていました。平安時代初期の正倉院の曝涼帳が現在に伝えられています。
曝涼帳は延喜式という平安時代の法令書の中にあり、曝涼も当時は法律で決まっていました。
虫干しに適した時期は
虫干しには適した時期があります。昔はクリーニングなどない時代でしたので、年3回行われていたようです。
- 夏の土用の時期に梅雨の間についた湿気を取る「土用干し」
- 10月1日の衣替えの頃には夏の間についた虫を払う、タンスや竹や柳であんだ蓋つきの籠で衣服を入れていた昔の衣装ケースの行李(こうり)の掃除をする「虫払い」
- 1月の下旬から2月節分あたりの「寒干し」
土用干しは干す対象によって意味がことなります。
衣類・書籍などの土用干しは夏の土用の頃に風通しのよい部屋で風に通しながら日光に直接当てずに陰干しし、虫やかびが付かないように湿気をとります。書籍の場合、曝書(ばくしょ)ともいいます。
田の土用干しは夏の土用のころに地域によって違いはありますが、一週間ほど田んぼの水を抜くことによって、稲の根が水を求めてよく張り、台風にも負けない強い稲に育ち、一週間後に水を入れると稲が水を吸い、穂をよく実らせることができます。
梅の土用干しは梅干を製造する過程の梅を干すことをいいます。6月頃に収穫した熟した梅を塩漬けし3日くらい日干しにすることを土用干しといいます。
虫干しの方法
昔から衣類のお手入れとして「虫干し」があります。天気の良い空気が乾燥した日に陰干しして、虫やかびを防ぐ方法です。衣類以外にも書物や調度品、絵画なども仕舞っている箱から出して、並べて陰干しします。
衣類など虫干ししているときに、傷んでいるところがあれば、繕い大切に扱われてきました。現在ではブランドものなどを何度も修理して長い間大切に扱っているのと同じですね。
着物の虫干し方法
1.虫干しは、2日以上晴れの日が続いた翌日の午前10頃から午後2時ごろまでの間の4時間くらいを目安に行います。早朝や夕方は湿度が高いので行いません。
2.虫干しを行う部屋は西日にも注意しましょう。直接日に当たると色落ちする場合もあります。できれば、西日の当たらない部屋を選びます。
3.虫干しをする部屋は風通しをよくし、部屋の風通しが悪い時は、扇風機を使います。風が送れるように工夫します。
4.着物は敷き紙ごとにタンスから出して、着物用ハンガーに吊るしていきます。汚したり、着物を傷めてしまったりする恐れがるので、直接畳や床に置かないようにします。着物の型崩れなどを防ぐためにも、着物用のハンガーを使うことをお勧めします。干すときは裏返しで干しましょう。裏返しにすることによって、日に焼けて変色したり、埃で汚れたりすることを予防できます。
5.虫干ししている間に、着物を包んでいたタトウ紙、タンスの手入れをします。掃除機をかけタンスのゴミや埃を取り除き、からぶきしタンスは干して湿気を払います。タトウ紙も湿気を含みやすいので、タンスから取り出して一緒に干します。
6.着物のシミやかびも確認します。シミやかび・ほころびが無いか点検し、もしあれば適切に処置します。特にかびはそのままにしておくとタンス全体に広がるので、発見した場合は別の場所に隔離します。
干す時間帯は、午前10時から午後2時までの間で虫干しを終わらせます。タンスに防虫剤と防湿剤をいれて虫干しした着物をきれいにたたみタンスにいれます。
お茶やお華、着付け、踊りなど着物を着る機会の多い方は、こまめに虫干しされた方がいいですね。年に数回でも手を通した着物ならなおさらです。
汗やほこりがついて汚れたままにしていると、着物だけじゃなく、洋服でも汗染みや皮脂の汚れ、食べこぼしなど気が付かないところが汚れている場合もあります。
手軽に洗濯できる洋服なら洗濯して、よく乾かし仕舞えばいいのですが、着物は手軽に洗濯できません。
そのことを考えると、こまめなお手入れが長い間使用するのに必要であることがわかります。
江戸時代では、ちょっとした品評会のような感じだったようですよ。みなで着物を陰干しして並べて自慢する場でもあったようです。
着物と一緒に調度品や他のものも虫干ししているので、子どもなどは五月の節句のかぶとをかぶって怒られたり、そういった内容の句なども残っています。楽しんで虫干しをしていたんですね。
庶民では着物も2枚くらいしか持っていなくて、その2枚で着物を洗い張りしながら、丁寧に長い間使用していたようです。
簡単な虫干しの仕方
日々忙しい毎日を送っている方にとって、虫干しするのも大変ですよね。休みの日が雨だったり、虫干しに1日時間を取られてしまうと考えると、後回しになってしまうと思います。そうこうしているうちに、虫干しも出来ずじまいに終わってしまう。
そんな方のために、簡単に虫干しをする方法をご紹介します。この方法なら、簡単に虫干しもでき、クローゼットから衣服を全部出してきて、終わったらまたきれいにたたんでしまう。そういったことをする手間もかかりません。試してみてください。
虫干しをする日のポイントは晴れた日の空気が乾燥しているときがチャンスです。天気が2日くらい続いた日の次の晴れた日なんて絶好の日よりです。土用でなくてもいいので、秋の晴れの日なんて時期的に空気が乾燥していて、虫干しに最適です。
やり方
- 家じゅうの窓を開け放し、家の中に風を通す。
- クローゼットは扉を開け放つ。
- タンスは引き出す。
- 押し入れは襖を開ける。
- 本棚は、扉があれば扉をあける。
- 靴箱の扉を開け放つ。
- 食器棚の扉があれば、扉をあけ、引き出しがあれば引き出しも出す。
部屋中の扉を開け放ち、引き出しは引き出して、風が当たるようにします。
たったこれだけです。注意する点はお天気と湿度、風です。
虫干しに適した日と時間帯
虫干しは空気が乾燥した晴れの日が適しているといいました。雨が降った翌日はいくらいい天気でも、空気は乾燥していませんので避けます。
時間帯は、朝早い時間はまだ気温も上がらず、湿度が高いのでさけます。また夕方もだんだん気温が下がり、湿度が高くなってくるので避けます。
では、何時がいいのかと思いますよね。お勧めする時間帯は午前10時から午後2時頃までの2~3時間です。この間に虫干ししましょう。これは夏の日の虫干しも、冬の寒干しも同じです。
虫干しに適した日と時間はこの条件がそろった日は土用なんて気にせず、虫干しする絶好の日よりです。簡単な虫干しの方法なら、条件がそろった日に即実行されても問題ありません。
むしろこの機会に虫干しするだけで、年間3回以上も虫干しできることになります。虫干しして快適にくらしましょう。
まとめ
虫干しの歴史は古く、クリーニングの無いような時代から、着物を長持ちさせる方法として年中行事で行われていました。庶民は2枚くらいの着物を洗い張りも併せて丁寧に扱い長い間使用していました。
今では、物にあふれた時代に住んでいる私たちは、物を大切にするという気持ちを忘れているところがあると思います。壊れたらまた買えばいい、気に入らないからせっかく買ったものも着ない。着物は今の時代レンタルで十分。と考えている方も多いと思います。
そんな物にあふれた時代に生きているからこそ、自分のお気に入りは長く使いたいと思いませんか?
虫干しは面倒だと思っていた方は簡単な虫干しの方法を試してみてください。
虫干しの時期と時間を間違えなければ、きっと今のお気に入りと長い間一緒に生活していけると思います。