打ち水というものをご存知でしょうか?
聞いたことはあるものの、実際にしたことがない、何のためにするのか分からないという人もいるのではないでしょうか?
ここでは、夏に行われる打ち水について詳しくご紹介します。
打ち水とはどんなもの?
打ち水(うちみず)という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。
打ち水とは、道路や庭先などに水を撒くことをいいます。手で撒く場合も、散水車やスプリンクラーなどを利用し撒く場合も打ち水といいます。
昔ながらの打ち水は、桶に柄杓を使い撒くものですが、バケツでそのまま撒いても、ホースを使用し撒いても結果的には同じ打ち水効果が得られます。
打ち水は江戸の時代から行われていて、浮世絵にも登場します。
打ち水は、地球温暖化対策、酷暑対策として政府が推奨しているもので、
東京都では、2003年から「大江戸打ち水大作戦」と銘打って、使用する水にも一定のルールを設けて始められました。
近年では、小中学校や保育園・幼稚園などの運動会や体育祭が気温の高い時期に行われることもあり、
練習や本番当日の休憩時間にグラウンドのスプリンクラーを回し打ち水をする所も増えています。
打ち水は、乾燥を防ぐ目的もあるため、冬場でも行われる場合があります。お店の前やグラウンドなどで撒かれています。
ただ、水の量を多くしてしまったり、水はけが悪い場合は水が凍ってしまうことがありますので、注意しましょう。
打ち水の具体的な効果は?土やアスファルトに直接撒いて良いの?
では、打ち水には具体的にどのような効果があるのでしょうか?
まず、「土埃や砂埃が舞うのを抑える」という効果が考えられます。夏の強い日差しを浴びた土や砂は乾燥し、少しの風で広範囲に舞い上がります。
目や口に埃が入る事もあり、非常に厄介なものです。打ち水をして湿らせることで、土や砂が舞い上がることを防ぎ、
グラウンドなどが滑り辛くなったり、地面のひび割れ対策にもなります。
次に、「気化熱を利用して空気中の熱を冷ます」という効果が考えられます。
水が蒸発をする際には気化熱というものが発生し、周囲の熱を奪って涼しくなるといわれています。
気化熱は水1グラムが蒸発するとおよそ0.58キロカロリーの熱が奪われるというものです。
打ち水をすることで地面の温度が上がりにくくなり、冷やされた地面付近を通る風も涼しくなります。そのため、自宅の庭に撒くだけでも、大きな効果が出ます。
また、「ヒートアイランド現象の対策になる」というのも大きな効果です。
日本の都市部では、アスファルトやコンクリートで舗装された箇所が多く、アパートやマンションなどもコンクリート製になっています。
猛暑になると、これらのアスファルトやコンクリートの内部に熱が溜まり、周辺の気温が下がりにくくなります。
これがいわゆるヒートアイランド現象なのですが、打ち水でコンクリートやアスファルトを冷やすことで防ぐことができます。
土やアスファルトに直接撒くことはもちろん、アパートやマンションのベランダなどにも打ち水は効果的なのです。
二次利用水や雨水を打ち水として再利用する意味は?
我が国で推奨されている打ち水には、水道水をなるべく使わないというルールがあります。
打ち水には、雨水や二次利用水が使われます。例えば、家庭の場合は、お風呂の残り湯、エアコン室外機から排出される水、
米のとぎ汁、洗い物をした後の水、掃除の際に使用した水などが対象です。
夏場でお子さんがいるような家庭では、こどもの水遊びやプールに使用した水なども打ち水として使えます。
企業や団体では、プールの水や井戸水、噴水の水や製氷機の古い氷なども対象です。
打ち水に使用する水はあくまでリサイクル水で、資源の一つである水を大切にするという意味も持ち合わせます。
この時、注意したいのは大量の油や腐るものが混じった水は使わないという点です。
例えば、天つゆや麺つゆ、洗剤が多く混じる水など、時間が経つと匂いや汚れが気になるものを撒くのは危険です。
水分なら何でも良いという意味ではないのです。明らかに環境に害を及ぼす可能性がある汚水を打ち水として使うのは危険なので止めておきましょう。
打ち水をするのに最適な時間帯は?
打ち水をするのにも、最適な時間があります。気温が上がりきる前の朝から午前中、気温が下がってくる夕方の2回です。
朝方に打ち水をすれば、午前中に気温が一気に上昇するのを防ぎますし、夕方の打ち水は周辺の気温を下げ熱帯夜になるのを防いでくれます。
昼間の暑い時間帯に撒いた方が良いのでは?と思いますが、炎天下での打ち水作業は熱中症を引き起こす恐れがあり危険です。
また、あまりに暑い時間だと、撒いても湿度だけが上がり、思うような効果が得られないことも考えられますし、
効果が得られないのに水ばかりが無駄になるという悪循環が生まれてしまいます。
少し気温が低い時間帯に撒くことで、効果を実感しやすいのです。最適な時間帯に打ち水を行なえば、2度も体感気温が低くなるともいわれています。
皆が自宅に居る朝方や夜のエアコン消費を抑えることで、エアコン室外機から排出される熱を少なくする目的もあります。
雨と打ち水は違うの?
雨は天然の打ち水といわれています。夏の暑い時期に一気に降る夕立やゲリラ豪雨は、迷惑と感じる人も多いかも知れませんが、
地面が一気に冷やされ体感気温が10度近くも下がるとされています。
手で水を撒く打ち水よりも、一度に広範囲に水を行き渡らせるため、涼を得るには自然の雨が適度に降るのが一番良いのです。
また、雨雲は涼しい風も運んできます。雨雲に日差しが遮られ、涼しくなるのです。
でも、思い通りの時間や時期に雨を降らせることができないのが難点です。待ち望んだ雨でも、極端に集中して降ると、大きな災害を生むこともあります。
水を撒くと蚊が心配という人にオススメは?
打ち水のように水を撒くと、蚊が増えると心配する人がいます。
蚊は溜まった水に卵を産みますので、常に水溜りの場所が1週間単位であれば蚊が発生し続けます。
打ち水をしてもすぐ乾燥してしまう場所であれば、特に心配は要りません。日陰や水はけの悪い場所ををなるべく避けて行なえば問題ありません。
それでも、打ち水をすることで他の虫などが出てこないか心配というのであれば、打ち水にハッカ油を混ぜることをおススメします。
ハッカ油は天然の虫よけとも言われていますし、夏はお風呂などに垂らすだけでも清涼感を感じられます。
精油を水に1~2滴垂らすだけで完成です。家の軒先や庭などに撒けば、ハッカの成分が苦手な虫よけの効果が得られます。
虫よけの代わりに毎日撒くと、打ち水効果も期待できるので一石二鳥ではないでしょうか。
有名な打ち水のイベントはあるの?
毎年夏になると、日本各地で打ち水のイベントが行われます。
特に東京都は打ち水に力を入れていて、新宿、六本木などで行われています。
近年では、打ち水大作戦のハッシュタグを付けてツイッターなどに投稿してもらうことで、各地の打ち水風景を見ることができます。
毎年、打ち水大作戦のサイトなどで各地のイベントを紹介しています。
例年、7月下旬から8月一杯くらいまで行われます。あまりに酷暑となると、イベントを中止するところもありますので、事前に確認してみると良いでしょう。
海外では打ち水文化があるの?
打ち水は日本だけで行われていると思いがちですが、実は海外にも同様の文化があります。
インドの一部地域では、家の前の道路や軒先に水を撒き、そこに米粉で模様を描き神様を迎え入れるというお祭りが行われています。
神様を迎え入れるため、家の前を清めるという意味があるのでしょう。
夏場に涼を得るためという日本の目的とは少し異なる部分も有りますが、かつては日本でも茶室の前の地面の汚れを払うために打ち水を行っていました。
所謂おもてなしの心なのですが、それと同じ意味合いなのでしょう。
また、スペイン南部の砂漠地帯周辺地域では、自宅の玄関に海水を撒いています。乾燥対策と言われていますが、少なからず涼を得ることもできるのでしょう。
日本以外でも様々な場所で打ち水という文化が根付いているのですね。
まとめ
打ち水は、基本的に暑い夏に涼を得るために行われます。
気化熱を利用し、地面の温度を下げ少しでも涼しさを得ようとしているのです。
本当は、適度に自然の雨が降ると良いのですが、丁度良い具合に降らせることはできないため、人工的に打ち水をするのです。
打ち水をする際には、すだれやよしず、グリーンカーテンなども同時に使い、エアコンの使用頻度を少しでも下げるようにしましょう。